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2019年07月22日

このブログについてのお知らせ!

営業のKです。

皆様、お疲れ様です!

大変、突然ではありますが、諸般の事情によりまして、こちらの

ブログに載せてある「怖くない話」は、全て削除させて頂く事にしました。

ですので、こちらで私の怖くない話が読めるのは今週いっぱい、

ということになります。

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、

ご理解頂けると助かります。

こちらに掲載されております「怖くない話」は基本的に殆どが

私の個人ブログ

「およそ石川県の怖くない話」というサイトに移設済みであり、また、

そちらの個人ブログでは、これからも更新を続けていく予定ですので、

良かったら、どうぞ!

http://isikawakenkaidan.blog.fc2.com/


それから、コメント欄に関してですが、今のところ、これまで通り交流に

お使い頂ければ結構だと思いますが、もしも問題があるようなら、

こちらからご報告させて頂きます。

以上、突然のご報告になりますが、

何卒宜しくお願い申し上げます!
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:25Comments(0)

2019年07月18日

8ミリビデオ

彼女は今でこそ普通の生活を送っているが幼い頃は祖父が社長をしていた

会社のお嬢様だったらしく、幼い頃の写真や映像が今も残されている。

召使いやお手伝いさんを使用していたというからきっとかなりのものだった

のだろう。

そんな彼女が大人になり結婚した頃、既にその会社は倒産していたそうなのだが、

実家から1本の8ミリのビデオテープが見つかったのだという。

既に世の中にはまともに動く8ミリビデオの映写機などなかなか見つからない

というのが実情だったから彼女はそのテープを譲り受けてからずっと中身を

観る事が出来なかった。

しかし、最近は便利なもので8ミリビデオのテープをDVDに焼き直してくれる

サービスというものがあるらしく、かなり高額ではあったが思い切って

その8ミリのテープのダビングを依頼する事にした。

その8ミリのテープが収められているケースには、しっかりと彼女の名前が

書いてあった。

だから、きっと幼い頃の自分と、もう他界してしまった母親が一緒に映っている

映像が見られるのではないか、という期待があったらしい。

しかし、ダビングが出来上がる日、彼女がワクワクしながらDVDを受け取りに

行くと、どうも店の人の様子がおかしかった。

怪訝そうん顔で、

こういうのは困りますから2度と持ち込まないでください!

そう言われたという。

彼女はかなり気分を害して帰宅したらしいが、そこまで言われるからには

いったい何が映っているのか、逆に気になってしまう。

そこで、彼女は帰宅した夫と一緒に早速そのDVDを再生した。

暫くのノイズ画面の後、ようやく幼い彼女が映る。

誰かと一緒に遊んでいる自分を見て、彼女は自分が全く楽しそうな顔ではなく、

何かに脅え泣きそうな顔をしている事に気付いた。

そこで、彼女はDVDの再生を止めた。

見るに堪えなかったという。

そして、もうひとつ気になる事があった。

それは、その映像の中で幼い彼女と一緒に遊んでいる女がいったい誰なのか、

全く思い出せなかった。

そこで、彼女は父親や兄弟、そして親戚にも、その映像を見せて、その女の顔に

見覚えがないか?と聞いてみた。

しかし、不思議な事に誰もその女の顔は知らない、と答えた。

それどころか、映像に出てくる場所というのは、当時の家でもなく、とても

暗い感じのする廃屋のような場所だった。

ますます、不安に駆られた彼女は思い切って、最後までその映像を

観てみる事にした。

そうすると、色んな事が分かってきた。

ボール遊びをしているように見えたのは、明らかに幼い彼女に何かをぶつけている

映像だった。

また、鬼ごっこのように追いかけっこをしている映像には、まるで恐ろしい何か

から必死の形相で逃げている幼い彼女が映っていた。

そして、それらの映像が全て何台かのカメラで、ズームを織り交ぜながら現代の

映画のように撮影されている事も・・・・。

当時のカメラにそれほどの性能は無かっただろうし、何より、そんな撮影を

しようとすれば、かなり大勢の人間とカメラが必要になるのは素人の彼女にも

容易に想像できた。

そして、それに気付いた時、彼女はその映像を観るのを止めるべきだった。

もしかしたら、彼女にはそのまま映像を見続ければもっと新しい事実が

発見できるかもしれない、と思っていたのだろう。

そして、そのまま映像を見続けた彼女は最後の部分で完全に固まってしまう。

見知らぬ女が彼女を抱きかかえたまま、1人で歩いている・・・・。

そして、目の前には大きな池が現れる。

すると、その女は抱きかかえていた幼い彼女を池の中へと静かに沈めた。

ゆっくりと沈んでいく彼女。

そして、全く動く事が無いまま、彼女は池の底へと沈んでいった。

とても透明度が高いのか、沈んでいく彼女の姿はずっとカメラの中に

収められていた。

そして、その池もかなりの深さがあるのか、どんどん沈んでいった彼女の姿は

やがて薄らと揺れたかと思うと、そのまま見えなくなる深さまで沈んでいった。

彼女はその映像を見た時、思わず大声で悲鳴を上げていた。

何故、幼い自分が池で水死する映像が映っているのか?

テープが入っていたケースには、間違いなく彼女の名前が書かれていた。

だとしたら、今、映像を見ていた自分はいったい何者なのか?

そして、幼い自分を池の中に沈めた女はいったい何者なのか?

そのどれ一つも彼女にはいまだに分からないらしいが、その映像は最後に満足そうな

満面の笑みを浮かべる女の顔のアップで終わっていた

そして、その女の顔は彼女がそれまで見てきたどんなホラー映画よりも気持ち悪く、

直視していると気が狂いそうになる程の不気味な顔だったという。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:55Comments(2)

2019年07月14日

浴室

今考えると、少し前からおかしな事があったのだ、と彼女は言った。

マンションで一人暮らしをしている彼女は昼間の仕事が終わってから

夜の店でバイトをしていた。

勿論、経済的な理由だったが、昼間の仕事だけではとても生活していけない

らしく、週に3日~4日は夜のバイトで働いていた。

元々、人と話すのが嫌いではなかったので、夜の仕事にもすぐに慣れる事が

出来たし、何より昼間の時給に比べて夜の仕事の方がかなり良い時給だった

から、彼女はずっと夜のバイトを続けていこうと思っていたという。

夜のバイトが終わるのは午前12時くらいだったが、そのまま寝るわけにも

いかず、帰宅すると最初にお風呂に入ってから寝るのが習慣になっていた。

確かに、最近では午前0時時過ぎに帰宅すると、それまで誰かが部屋の中に

居た様な気配を感じる事はあったが、楽天家の彼女は元々、心霊現象の類は

一切信じておらず、さほど気には留めなかったという。

更に、朝になると、つい先ほどまでお湯が張られていたかの様に浴槽が

濡れている事もあったが、それも自然現象だと気に留めなかった。

そんなある日、彼女が夜のバイトから戻り着替えをしていると、突然、浴室の

折りたたみドアがカチャッと音を立てて開く音が聞こえた。

窓を開けたままにしておいたのかもしれないと思った彼女は、その音にも

動じずそのまま着替えを続けていると、今度はパタンという浴室のドアが

閉まった様な音が聞こえた。

その時にも彼女はまた風のいたずらか?と思ったらしいのだが、さすがに

煩く感じてしまい、着替え途中のまま、浴室へ行き開いている窓を閉めて、

ついでにお風呂の湯も張ってしまおう、と思った。

鼻歌交じりに浴室へと歩いていき浴室の明かりを点けてドアを開けた。

え?

その時はさすがの彼女も唖然としてしまう。

浴室の窓はしっかりと閉められ鍵も掛けられていた。

それじゃ、なんで?

どうしてドアが勝手に開いたり閉まったりするの?

そう考えて少しゾッとしたらしいが、もしかしたら隣の部屋から聞こえてきた音

だったのかもしれない、と自分に言い聞かせ、そのまま浴槽の蛇口からお湯を出して

リビングへと戻った。

珍しく心臓がドキドキしていたが、それでもテレビの深夜番組を見ていると

すぐに恐怖感も和らいでいく。

普通ならば、そんな夜は風呂に入るのは止めておくか、朝方に入るのが

当たり前なのだと思う。

しかし、彼女はお風呂に入ってからでないと寝つきが悪いらしく、結局

部屋中の電気とテレビを点けたままお風呂に入る事にした。

浴室に行くと熱いお湯が浴槽を満たしていた。

そこから立ち上がる湯気を見ていると不安もすぐに消し飛んだ。

湯船に浸かり、浴槽から上がって体と髪を洗い、また湯船に浸かる。

部屋中の電気を点けてきたせいか、もう恐怖は感じなかったという。

寝船の中で鼻歌を口ずさみながら手足のマッサージをした。

疲れがすっきりと解消されていくのが分かった。

そして、彼女は固まった。

先ほどから歌っている鼻歌が、どうしても自分だけの声には聞こえない事に気付く。

まるで、誰かが一緒に歌っているように・・・。

だから、彼女は突然、鼻歌を止めた。

すると、声など聞こえない。

やっぱり気のせいだよね・・・・。

そう思い、ホッとしている彼女だったが、突然、クスクスという誰かの笑い声が

聞こえてきた。

やはり、それも隣の部屋から聞こえてくる笑い声なのだと思いたかったが、その笑い声は

しわがれた女の声であり、隣の部屋には女など住んではいなかったし、そんな真夜中に

高らかな声で笑う事など在る筈も無かった。

彼女はまた固まった。

浴槽の中で裸、という無防備な状態でいる事が彼女の恐怖心を一層掻き立てた。

彼女は浴槽の中でお湯から顔だけを出すような恰好で全神経を耳に集中した。

笑い声はすぐに聞こえなくなった。

彼女は急いで湯船から上がり、明るくテレビが点いているリビングに行こうと

浴槽から体を上げた。

その瞬間だった。

彼女の目の前で信じられない光景が起こる。

浴室のドアからうっすらと見えている部屋の中の明かりが次々に消えていく。

リビングの明かりが消え、廊下の明かりも消え、浴室の外が真っ暗になっているのが

分かった。

彼女はその時、泥棒か変質者が部屋の中に侵入したのた、と思ったという。

それならば、先ほどからの不可解な現象も全て説明がついた。

確かに恐怖しか感じなかった。

だが、相手が人間であり、先ほど聞いた声の主なのだとしたら、その侵入者は

女性という事になる。

そして、女性であれば自分でもなんとか出来ると思ったのかもしれない。

彼女は浴槽から出ると、大きな声で、

誰かいるんでしょ?

警察にもう電話したから!

もうすぐ此処に駆けつけてくるからね!

逃げるんなら今のうちだよ!

と叫んだ。

真夜中に大声を出す事など迷惑以外の何物でもないのは分かっていたが、それでも

その声が誰かに聞こえ、そして助けてくれるかもしとれない・・・。

そう思ったらしい。

しかし、全く反応は無かった。

だから、彼女は耳を澄ませて次に自分はどうすれば良いのか?を見極めていた。

と、次の瞬間、カタンという音が聞こえ浴室のドアが開いた。

生きた心地がしなかったが、それでも彼女は必死に拳を握りしめて恐怖に耐えた。

浴室の折りたたみ式のドアが50センチほど開いていた。

そして、そこからは真っ暗な廊下が見えるだけで誰かがいる気配は一切

感じなかった。

それどころか、先ほど点けてきたはずのリビングのテレビの音も全く聞こえない。

彼女は真っ暗な廊下に向かって、

誰かいるんでしょ?

顔を見せなさいよ!

と再び叫んだ。

しかし、次の瞬間、開いていた浴室のドアがカチャッという音を立てて

独りでに閉まった。

其処に誰もいないのは間違いが無かった。

誰かがいたとすれば、ドアのすりガラスを通して確認出来た筈だった。

彼女は得体の知れない悪寒を感じ、慌てて再び浴槽の中に入った。

沈黙が恐怖でしかなかった・・・。

だから、彼女は浴槽の蛇口を捻ってお湯を出そうとした。

その時だった。

浴室の明かりが消えて、真っ暗になった。

突然の出来事に何も見えず浴室の白い壁だけがボーっと浮かび上がっていた。

もう彼女は動けなくなっていた。

本当は浴室から出てすぐにでも明かりを点けたかったし、浴槽の蛇口からお湯も

出したかった。

しかし、一瞬でもそのドアから視線を外せば、何か恐ろしい事が起きるのでは

ないか、と思い、恐怖で完全に固まっていた。

真っ暗な中での怪異に人間の神経は耐えられるものではない。

彼女は大声で悲鳴を上げて浴室から逃げ足そうと決意した。

その時、ポチャンと天井から水滴が浴槽のお湯の上に落ちるような音が聞こえた。

ヒッと思わず声を出して体をこわばられる彼女。

その時、突然、彼女の両肩に何かが乗せられたのが分かった。

とても冷たくゴツゴツしていたが、彼女にはそれが誰かの手にしか思えなかった。

そして、

今夜は一緒だねぇ・・・・。

という声が聞こえた。

彼女は遠ざかる意識の中で必死に浴槽の水栓につながったチェーンを探し、それを

引っ張った。

そうしなければいけない、と自分の中の何かが教えてくれたという。

彼女はしわがれた女の笑い声を聞きながら、そのまま意識を失った。

そして、朝になり目が覚めた時、彼女はまるで何かに背中から押さえつけられた

かのように、うずくまった状態だったという。

きっと、あの時、とっさに湯船の栓を抜かなければ、私は死んでいたんだと

思います。

彼女はそう震えながら話してくれた。

そして、それから彼女はすぐにそのマンションから引っ越しを決めた。

ちなみに、引っ越し先では彼女の周りで怪異は一切発生していないそうだが、

噂では、彼女がそれまで住んでいたマンションの部屋は、誰も入居者が

現われず開かずの間になっているという事だ。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:26Comments(0)

2019年07月12日

助けてください・・・・。

これは知人男性から聞いた話。

彼は会計士として小さいながらも会計事務所を経営していた。

年度末という事もあり、仕事がかなり忙しく数日間は家に帰れない日が

続いていた。

そして、その夜も残業に従事していたが、どうやら一段落つく事が出来たようで

家に帰ってぐっすり眠ろうと思い立った。

そうと決まれば彼の行動は早く、一緒に残業していた社員達を帰宅する様に促し

彼自身も車に乗ってさっさと帰路に就いたという。

時刻は既に午前1時を回っていた。

自宅までは車で30分ほどの距離だったので、彼はコンビニに寄り眠気覚ましの

缶コーヒーとおにぎりを買い、それを運転しながら食べつつ家路を急いでいた。

すると、突然、お腹が痛くなった。

とても家まで我慢できる状態ではなかったという。

彼は仕方なく公園に車を停めると、急いで敷地内に在るトイレへと駆け込んだ。

誰もいない公園はそれなりに不気味ではあったが、まだ新しい公園のせいか、

随所に照明も設置されており、トイレ内も明るく綺麗だったから、彼は

そのままトイレで用を足す事が出来たという。

お腹もすっきりした彼は車に戻ろうとトイレの個室から出た。

そして、手洗い場に行こうとすると彼は思わずぎょっとしてしまった。

手洗い場に女が1人、無言で手を洗っていた。

どうして男性用のトイレで手なんか洗うんだよ・・・・。

そう思って彼はしばらくその様子を見守っていた。

しかし、その女はいっこうに動く気配が無かった。

彼は仕方なくそのまま車に戻ろうと女の後ろを通り過ぎようとした。

その時、彼の耳には、

助けてください・・・・・。

と聞こえた。

え?

と思い、思わず立ち止まった彼は鏡越しにその女を見た。

笑っていた。

ニタリとした気味の悪い顔で鏡越しに彼を見ながらその女は手を洗い続けている。

時刻は既に午前1時半を回っていた。

そんな時刻に、手を洗いながら笑う女。

それだけで、彼にとっては十分過ぎる恐怖だった。

彼は固まり動けなくなっていた。

すると、その女が、また

助けてください・・・・。

そう言った。

確かに不気味なシチュエーションではあったが、もしかしたら本当に何か

困りごとがあるのかもしれない、と思った彼は勇気を出して、

何かお困りなんですか・・・・・・?

と呟いた。

その女の目が大きく開き、何もしていないのに水道の水が止まった。

彼はその一部始終を目撃した。

そして、その女の口がより大きく開き、更に気持ちの悪い笑みを浮かべる。

これは人間じゃない・・・・。

その時、彼はそう確信した。

そして、それと同時にそれまで固まって動けなかったのが嘘のように、反射的に

その場から駈け出していた。

生きた心地がしなかった。

後ろを振り返る余裕も無かった。

それでも何とか車まで戻った彼は、一気に車に飛び乗ると、キーを回して

エンジンをかけた。

そこで、彼は初めて先ほどのトイレの方を確認する。

しかし、もう其処にはその女の姿は無かった。

もしかして、車の側に隠れているのかとも思い何度も確認したが、やはり

何処にもその女の姿は無い。

彼はホッと胸をなでおろしてその場から車を発進させた。

その時、彼はとにかく家に帰りたかったという。

家に帰り、家族の寝顔を見れば、安心できる・・・・。

そう考えて。

だからなのかもしれない。

彼は車が他に1台も走っていない事で気が急いていたのかもしれない。

いつもよりもスピードを出して走っていた彼の車は真っ直ぐな道で突然

ハンドルを取られてそのまま電柱に激突した。

自分の意志とは違う方向に突然車が向きを変え、ブレーキを踏む間もなく、

ノーブレーキで電柱に突っ込んだ。

フロントのボンネットが電柱を飲み込んでいくように壊れていき、その直後、

彼の体を激痛が襲った。

骨の折れる嫌な音もはっきり聞こえた。

そして、車は運転席をえぐるように大破し、歩道に乗り上げて停止した。

助けを呼ばなくては・・・・。

そう思いながら、どんどん意識が遠くなっていく彼の眼に、何かが映った。

それは、紛れも無く先ほどトイレで見た女だった。

割れたフロントガラスから身を乗り出す様にして彼を見るその眼は、とても

満足そうに笑っていた。

彼は痛みと恐怖の中で意識を失ってしまう。

そして、彼が次に目を覚ましたのは病院の集中治療室だった。

彼が意識を取り戻した事に周りの看護師や医師が驚いたかのように、どんどんと

集まって来た。

それほど酷い状態だったのだと初めて分かったという。

それから彼は1年以上の入院生活を送り、退院した現在でもリハビリを繰り返す

日々を送っている。

それでも、どうしても彼は自分がもう歩く事は不可能なのだと感じているらしい。

そして、彼が事故を起こした現場には花がたむけられている。

それは、彼に対するものではなく、そこで以前事故で亡くなった女性への

花束なのだと聞いた。

そして、その場所では酷い事故が多発しており、どうやら最初の女性の死亡事故

があってから、既に3人が同じ場所で事故死しているのだと。

其処は、死亡事故が多発する場所であり、事故で亡くなった女性の霊が

頻繁に目撃されている曰くつきの場所なのだ、と。

だから、俺は死ななかっただけでも儲けものなのかもしれない・・・・。

そして、きっとあの女は、真夜中の通りを彷徨いながら、自分と同じように

死んでくれる仲間を探しているんだろうな・・・。

ただ、あの時、その女が言っていた、”助けて”という言葉の意味はいまだに

見当もつかないんだ・・・。

そう彼は震えながら語ってくれた。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:47Comments(0)

2019年07月11日

その日も彼女は仕事が終わりバスで最寄りのバス停まで移動し、そこから

徒歩で家路を急いでいた。

子供が大きくなり、再び仕事に就いた彼女だったが、やはり仕事と家事の

両立は大変だった。

だから、最初は出来るだけ人気の多い大通りを通って帰る様にしていたが、

慣れてくると時間が勿体なく感じるようになり、いつしか出来るだけ

直線距離で自宅へと向かえる道を探して歩く様になっていた。

実際、バス停から自宅まではそこそこ距離があったので、道をショートカット

することでかなりの時間を短縮出来たという。

とても道とは呼べないような場所を周りの目を気にしながら歩く。

最初はそれが苦痛ではあったが、慣れてしまえば全く気にならなくなり、

いつものようにいつもの道を歩くだけ・・・。

そんな感覚だったという。

ただ、1カ所だけ、どうしても慣れる事が出来ない場所があった。

それは家と家の間を通り抜けるような道であり、両側に古く壊れかけた

家が建っており、そこだけはどうしても落ち着かなかった。

誰かの目が気になる・・・というのではなかった。

その場所を通ること自体が気味が悪かったのだという。

しかし、時間短縮という大義名分の前では、そんな不安感など気にして

いられる余裕は無かった。

そして、その日、彼女はいつものようにその場所までやって来た。

いったん立ち止まった後、彼女は大きく深呼吸してから再び歩き出す。

向って右の家は良くある古い木造の日本家屋。

そして、左の家は、まるで倉庫の様な形をした洋館という形容がピッタリ

くるような造りだった。

彼女は少し早歩きになってその家の間の隙間を進んでいく。

どうせ、どちらの家にも人など住んでいる筈が無かったから、そういう意味では

気が楽だった。

そして、ちょうと真ん中辺りまで進んだ時、彼女は思わず、ヒッという声を

出してその場に立ち止まった。

左の洋館の少し窪んだ場所に在る扉が少しだけ開いていた。

そして、そこから誰かがこちらを見ている。

睨みつけるような怖い顔の男がその隙間から顔半分を覗かせていた。

彼女は一瞬固まっていたが、ハッと我に帰ると、小さな声で、すみません!

と呟き、その場から逃げるように走り去った。

今まで誰も住んでいないと思っていた古い家に誰かが住んでいた。

そして、その道を通る彼女を怖い眼で睨んでいた。

その事実が恐ろしかった。

しかし、家に帰るといつものようにバタバタとした家事に追われることになり、

彼女はすぐにその時の恐怖を忘れてしまった。

そして、その夜、二人いる子どもの1人が階段から転げ落ちた。

打撲と捻挫程度で済んだらしいが、それでもおかしな事を言っていた。

階段を降りようとした時、誰かに階段の上から押された・・・と。

しかし、怪我も大した事が無かったので、きっと気のせいに違いない、と

いうことで、そのまま有耶無耶になってしまった。

そして、その翌日、彼女は不思議な行動をとる。

前日、あれほど怖い思いをしたというのに、またあの道を使い、そして

古い家の間を通り抜けようとした。

自分でも何をしているのか、分からなかった。

まるで、何かに操られる様にして、その道を通ってしまった・・・と。

そして、彼女は再び、左側の家で、前日と同じ男を見てしまう。

扉は前日よりも少しだけ大きく開き、そしてそこから覗く男の顔が全てはっきりと

見えたという。

その瞬間、彼女は前日と同じように、その場から逃げる様にして走り去った。

そして、その夜、また彼女の家ではもう一人子供が足に火傷を負った。

今度は酷い火傷だったので、すぐに病院へと連れていった。

そして、その時も、突然誰れかに突き飛ばされた、と子供は証言した。

そんな感じで、彼女は毎日、気が付くとその場所を通り、そして、睨んだ顔の

男の顔を見た。

そして、その男が覗く大きな扉が少しずつ開いていくのがはっきりと分かった。

それでも彼女はその道を通るのをどうしても止められなかった。

自分の意志ではどうしようもない、操られているような感覚。

そして、その度に、家に帰ると家族の誰かが怪我をする事になっていた。

そして、何日目だっただろうか・・・。

彼女がいつものようにその場所を通ると、扉が殆ど開いており、そこには

満面の笑みを浮かべる男が立っていた。

そして、その夜、彼女自身が大怪我を負った。

2階のベランダで洗濯物を干していた時、何故かバランスを崩してそのまま

地面まで落下した。

死んでもおかしくない程の大怪我だった。

彼女はそのまま長期入院を余儀なくされた。

そして、その時、彼女は初めて家族にその場所を通ると現れる男の話をした。

そして、その場所を通るたびに、家族が怪我をしたのだ、という事も

しっかりと話したという。

そして、何とか彼女が退院し、普通の生活を送れる様になった時、夫が

こう言ったという。

何かその場所に魅入られてしまっている様だから、一度一緒にその場所を

見に行かないか?と。

その場所に固執し恐れ、それでも頭から離れないのは彼女自身が一番

分かっていた。

だから、夫からの提案を彼女もすぐに了解した。

そして、彼ら夫婦はすぐにその場所に向かった。

夫もその場所に何があるのか、しっかりと自分の眼で確認したかったらしい。

そして、その場所に到着した彼女は思わず絶句してしまう。

少しだけ開いていた扉がどんどん大きく開いていく様になった扉。

その場所には扉など無く、あるのは錆びて朽ち果てどうやっても開きそうもない

大きなシャッターだけだった。

自分はいったいその場所で何を見ていたのか?

そして、その場所に立っていた男はいったい何なのか?

どうしてその男を見た後、必ず家族の誰かが怪我をする事になったのか?

それらはいまだに全く分からないのだという。


  


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2019年07月10日

潜在能力

その日、俺はAさんと一緒に曰くつきの祠へと出向いた。

目的はひとつ。

その祠に近づいた為に、何日も高熱にうなされている友人を助ける為。

勿論、自らそんな曰くつきの祠に近づいたのだから、高熱にうなされるのも

反省には良いのかもしれなかったが、その高熱というのが在りえないほどに

体温でありこのままでは死に至ると判断した為に、やむ負えずAさんに

ご足労願った。

ホント…馬鹿ばっかりですね・・・。

一回死なないと分からないんですよ・・・・。

まあ、Kさんの友達になるくらいだから、馬鹿なのはしょうがないかも・・・・。

と相変わらず酷い言われ様だったが、それでも件の祠に到着したAさんは、

祠の前に立ち、珍しくしゃがみ込んでお辞儀をし、そして何やらブツブツと

呟いていた。

そして、しばらくすると、

駄目ですね・・・・。

許す気は無い・・・って言ってます。

まあ、悪いのはこっちの方ですからね・・・・。

と困った顔をする。

それでも、俺が両手を合わせてお願いすると、

ホント!いつもそうやって頼めば何とかなるって思ってませんか?

まあ、Kさんの友達をこのまま死なせるわけにもいかないんでしょうけど・・・。

分かりました。

気は進みませんが・・・・。

そう言って、立ち上がると両手を祠に向かってかざす。

すると、俺の目の前で祠がガタガタと震えだし苦しそうな声が聞こえた後、

静かになった。

はい・・・終わりましたよ!

もう勘弁してくださいね・・・。

祠の中には危険なものも沢山ありますけど、それを建てられたのにも色々と

理由があるんですから・・・・。

今回もかなりヤバかったです・・・。

そして、とても疲れました・・・・。

そう言って俺を見る目は明らかに何かを要求している眼に他ならなかった。

俺はその帰り道にいつもの喫茶店に寄って、Aさんに大量の料理とスイーツを

御馳走させられる羽目になった。

喫茶店のマスターも、またいつもの事か、と笑って見ているのが恥ずかしかった。

他人の視線など全く気にしないAさんは、テーブルマナーなど関係無しに

どんどんと料理を口に運ぶ。

これ以上はもう口の中に入りきらないほどの料理を頬張っては、それをすぐに

胃へと送り込み、すかさず次の料理を頬張る。

この細い体の何処にそれだけの食べ物が貯蔵されていくのか?

Aさんと出会った頃はその食べっぷりを見ているのも楽しかったが、最近では

見慣れてしまい退屈な時間でしかなくなっている。

だから、俺はこんな話を切りだした。

あのさ・・・凄いよね・・・・Aさんも姫ちゃんも・・・・。

どんな悪霊でも怨霊でも簡単に処理しちゃうしさ・・・。

何か特別な人間って感じだよね?

選ばれた能力者っていうか、とにかくある意味、化け物じみてるし・・・・。

やっぱり優越感とかっていうのは感じたりするの?と。

すると、Aさんは不思議そうな顔で俺を一瞬見た後、またすぐに食事に集中する。

だから、俺はまたこう続けた。

確か、Aさんの家系って霊能者の血筋だったじゃない?

だから、きっと小さな頃から自分は違うんだって思ってたんじゃないの?

でも、姫ちゃんは、普通の家系の女の子みたいだし・・・・。

それって、どういう事なのかな?

先天性の才能と後天性の才能って事なのかな?

だとしたら、俺にも後天性の才能が開花する日がいつかは来るのかもしれないよね?

そして、開花した才能がAさんや姫ちゃんを凌駕してたりしたら凄いよね?

あっ、でも俺にも強い守護霊がいるみたいだから、もしかしたら既にその才能が

開花してるってことになるのかもしれないよね?と。

すると、さっさと料理を食べ終わったAさんが、マスターに食後のデザートを

お願いします!という合図を送ってからこう言った。

本当によく喋りますよね・・・・。

まあ、人の食事の邪魔をする才能は認めてあげますけどね・・・。

でも、聞いていて思わず吹き出してしまいそうになりましたよ・・・。

こいつは寝てもいないのに、何を寝言を言ってるんだ・・・って。

いいですか?

姫ちゃんはともかくとして私は少しも凄くなんかありませんよ?

確かに小さな頃からそういう能力があるのは自分でも分かっていましたし、そういう

家系の中で育ったから、それが普通なんだろうって思ってました。

でも、全然普通なんかじゃなかった。

だから、小さな頃はイジメられたりはしませんでしたけど、でも心から親しくしてくれる

友達も少なかったんですよね・・・。

やはり周りはそういう能力を怖がって避けようとしますから・・・。

だから、いつも自分の事が嫌で嫌で仕方なかった。

こんな能力なんか無くなってしまえばいいのに・・・って。

でも、ある時気付いたんです。

私が持っている能力って、間違いなく誰もが持ち合わせている能力にすぎないって。

人間が本来持ち合わせている能力の何パーセントかしか使えていないって話を

聞いた事がありませんか?

だから、私が持っている能力は基本的に誰もが本来持っている潜在能力の1つ

にすぎないんです。

それに気付いてから私はそれなりの修行を積んで今の様になったんです。

あの師匠の下で・・・・。

それこそ、死と隣り合わせの修行を毎日毎日繰り返して・・・。

だから、今私が使っている力は元々あった小さな力を努力で大きくしていっただけ。

でも、世の中には本当に凄い人も沢山いるはずなんです。

身近にも居るじゃないですか?

私はいつも姫ちゃんは別格だと言ってますけど、つまりそういう事です。

あの娘は生まれ持って強い能力を持って生まれてきています。

それも最初から能力が開花した状態で・・・。

あの娘の守護霊とか使役している神獣は関係無く・・・・。

あんな守護霊や神獣を従えているからあの娘は凄いんじゃなくて、あの娘が

凄いから、あんな守護霊やら神獣が後から憑いてきただけですからね。

だから、あの娘が本気で修行なんかしたらそれこそ凄まじい事になるのだけは

間違いないです。

絶対に的に回してはいけない存在ってやつです。

敵に回したらそれこそ手に負えませんから・・・。

でも、あの娘の性格は優しさと癒しの塊ですから、きっとそんな使命を持って

生まれてきたんでしょうから、そんな心配は要らないと思いますけどね!

とにかく、人間っていうのは誰もが凄い潜在能力を隠し持っているんです。

要はそれを使えていないだけ・・・・。

そして、その力はいつ目を覚ますかは誰にも分からないんです。

修行をするのも1つですし、霊能力を持っている人の側にいるだけでも

能力に目覚める場合もありますし・・・。

だから、必要以上に霊というものを怖がる必要は無いんですよね。

アレらは、霊になった事で生きている人間よりはそんな能力が使えるだけ。

本来は生きている人間の方がより強い力を持っていますから。

まあ、だからといって用も無いのに、こちらから危険に飛び込むのも

馬鹿としか言えませんけどね・・・・。

そう言って、Aさんは運ばれてきたケーキを頬張りながらこう続ける。

ちなみに、Kさんの場合、望みは薄いですかね・・・。

こんなに沢山の時間、私や姫ちゃんと一緒にいるのに、何も目覚めない。

まあ、危機感が欠如しているとも言えますけどね。

とにかく、Kさんが、私や姫ちゃんを超えるなんていうのは夢の中だけに

しておいてくださいね。

笑えてお腹が痛くなりますから・・・・。

そう冷たい眼で言われてしまった。

しかし、それでもめげない俺は、

でも、俺の守護霊って凄いんでしょ?

と聞くと、

守護霊と本人の能力は別物だってさっき言いませんでしたっけ?

まあ、こんなだらしない依り代だからこそ、あんな強い守護霊が憑いていて

くれてるのかもしれませんけど・・・・。

そう言われて、さすがのおれももう何も言い返せなかった。
  


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2019年07月07日

安らかな死

彼女と知り合ったのはボランティア活動をしている知人の紹介だった。

その時の年齢は26歳。

俺が書いているブログのファンであり、どうしても一度会ってみたいという

話を聞いた俺は、すぐに即答でOKした。

元々、ブログを書いているだけで人より何かが優れている訳でもなく、そんな奴が

ファンだという方に会ってがっかりさせることはしたくない。

だから、いつもなら、丁重にお断りをしているのだが・・・・。

ただ、その時は事情が違った。

実は彼女は重い病気を患っており、生まれてからずっと家と病院しか知らないのだと

聞いた。

しかも、病気のせいで成長も遅くなり、ここ数年は喋る事すら侭ならない。

家にいる時も医療器具に囲まれ、体中に喉の痰や排泄物を取りだす為の穴も

開いている。

1日のうち、ほとんどを人工呼吸器の助けを借りて過ごす。

出来るだけ部屋の中だけでも動くようにしていたそうだが、最近ではそれも

出来なくなり寝たきりの時間が多くなっていた。

そんな彼女が俺に会いたいのだという。

もしも、それが俺に出来る唯一の事ならば、どんなに忙しくても、最優先で

彼女に会いに行かなければ、と思った。

その時、彼女は病院にいた。

知人と一緒に病室に入り、俺を紹介された時の彼女の嬉しそうな顔が今でも

脳裏に焼き付いている。

はじめまして!

と挨拶をする俺に彼女は心からの笑顔で応えてくれた。

そして、俺は驚かされた。

俺が喋り、そして彼女が筆談で返してくれる。

正直なところ、とても26歳には見えなかった。

もっと幼くそして、とても細い腕が痛々しくさえ感じられた。

しかし、その屈託の無い笑顔や元気なしぐさは、俺なんかよりもはるかに

生き生きとして見えた。

あまり、長居するのも彼女の体に障るのでは、と思い30分ほどで病室を

後にした。

そして、帰る際、

御迷惑でなければ、また来てくださいませんか?

今度は、Aさんも連れて来てくれると嬉しいです!

と書いたノートを俺に見せた彼女のキラキラとした瞳が忘れられない。

しかし、俺には彼女の元にAさんを連れていく事など出来る筈も無かった。

きっとAさんならば、彼女の事を話せば、会ってくれるのは間違いない。

しかし、そうなると、俺がAさんの事をブログに書き、そしてそれを

出版までしている事が完全にバレテしまう。

思い病気で苦しんでいる彼女に対して、ブログには一切触れず、Aさんを

ただの見舞客の一人として振る舞って欲しいなどと頼める筈も無かったから。

だから、俺はそれからなんとなく彼女のお見舞いに行くのを心のどこかで

避けていたのかもしれない。

そんな時、知人から知らせが来た。

彼女が延命治療を拒否したという事を・・・・。

やはり、彼女の命を維持する為にはかなり高額な医療費がかかり、そしてそこから

回復する見込みはゼロだった。

きっと彼女の事だから、自分の為に親がお金を苦労して捻出し続けている事が

申し訳なくなってしまい、その苦労から家族を解放してあげたいと思ったのは

容易に想像できた。

そして、やはり生命を維持しているとはいえ、彼女の生活には俺などには

想像も出来ない程の苦痛が伴っていたのだろう・・・。

そこから自分を解放し楽になりたいと思ったとしてもそれは誰にも

責められるものではなかった。

それを知った俺は知人と連れ添って彼女の病院へとお見舞いに行った。

すると、彼女は自宅に戻ったと教えられた。

自宅で家族が見守る中で旅立っていきたい・・・・。

それが彼女の最後の希望だったのだと教えてもらった。

だから、俺達は急いで彼女の家へと向かった。

初めて訪れる彼女の家は、お世辞にも綺麗だとは言えないような古い家だったが、

それだけに、全てのお金を彼女の生命維持の為に費やしてきたのがよく分かった。

ご両親に挨拶すると、笑顔で彼女の部屋へと案内してくれた。

しかし、その時から俺には何か普通ではない空気が感じられたのも事実だった。

部屋に入ると、其処には病院と比べても遜色がない程の医療機器に囲まれた

様子に驚かされた。

そして、其処に置かれたベッドに横たわる彼女にも・・・・。

それは、以前、お見舞いに行った時に見た彼女とは別人に見えた。

痛みで苦しみながら、時折、顔を持ち上げて回りに暴言をまき散らす。

そして、またベッドの上でのたうち回る。

その顔は、まるで老婆の様に年老いて見えた。

これほどまでに短期間で人の顔が変わってしまうなんて・・・・。

唖然としている俺に、背後からご両親がこう話してくれた。

本来なら痛み止めの薬も以前より強くなっていますから、痛みは軽くなっている

筈なんですけど・・・・。

もしかしたら、命を終わらせるという決断をして精神が高ぶっているのかも

しれません・・・・。

出来る事なら私達が代わってあげたいくらいですから、あの子にどんな酷い

言葉を投げかけられても、それは全て私達の大切な宝物になります・・・と。

俺には彼女が、俺が一体誰なのかも判断出来てないのだと感じた。

だから、これ以上、彼女に負担をかけない為にも、すぐにこの部屋から

出なければ・・・。

そう思った。

そして、俺が立ちあがったとき、彼女の顔が一瞬だけ以前の顔に戻ったような

気がした。

そして、ノートに走り書きをした彼女は、俺にそれを見せて、更にそのボールペンを

俺に手渡してきた。

ノートにはこう書かれていた。

助けて、こんな終わり方はいや、Aさんにわたして。

俺は最初、意味が分からなかったが、彼女が又すぐに先ほどまでのように

暴れ出したのを見て、これは俺なんかには対処できないものなのだと

その時初めて確信した。

俺は彼女の家を出ると、急いでAさんに電話をかけた。

相変わらず面倒くさそうな声で電話に出たAさんだったが、俺の様子がいつもとは

違う事に気付き、

すぐに行きますから・・・・。

と言って電話が切れた。

待ち合わせの喫茶店に入り、席に座ると、間髪を入れずにAさんも店に

入って来た。

俺はコーヒー、Aさんはケーキセットを二つ頼んで本題に入った。

俺は彼女と知り合った成り行きは話さなかったが、それ以外の事は全て

話した。

ふーん・・・・と言いながら聞いていたAさんだったが、俺が彼女から渡された

ボールペンをAさんへと手渡すと一気にAさんの顔が変わった。

Kさんは何も感じませんでしたか?

彼女の家で・・・・。

そう言われて俺は、

確かに家の中、特に彼女の部屋の中は異様なくらいの寒さや空気の重たさ

を感じたけどね・・・。

と返すと、Aさんは急に怒りだした。

どうして、そう感じた時点ですぐに電話して来ないんですか?

その女性は短い人生を必死に生きてきて、そして自分の最後も決めたんです。

人生は決して長さが大切ではありませんけど、その女性には最後の時間は

家族と一緒に穏やかに過ごして、しっかりとお別れを言ってから旅立つ

権利があるんです!

その女性がどうして私にそのボールペンを渡して欲しいと思ったのかは

分かりませんが、これは明らかに彼女からのSOSなんですよ!

ボールペンからは、明らかに悪霊の気が感じられます。

つまり、彼女は今、悪い霊にとり憑かれてしまっています!

病院で憑いてきたのか、は分かりませんが、彼女の選んだ死という決意を

嘲笑い罵るかのように、苦しみと傷みを与え、弄んでいます。

今、この時も!

そんな事を見過ごせるはずがありません!

私が一番嫌いな事を、その悪霊は行っています!

それなら、私は私に出来る事をして彼女を護るだけですね!

そう言うとAさんは、まだ運ばれてきたばかりのケーキセットには手もつけず、

席を立って、そのまま店を出ていく。

俺は慌てて、会計を済ませて、店の外に出ると、そこには自分の車に乗った

Aさんが待機している。

あの…私、その女性の家・・・・知らないんですけど?

勿論、Kさんが案内してくれるんですよね?

そう言われ、俺は大きく頷いた。

そして、Aさんの運転で彼女の家へと向かった。

彼女の家の近くに車を停めて、俺達は歩いて家へと向かった。

そして、家の前まで来ると、Aさんが真剣な顔で、

悪霊が1体だけかと思ったら・・・3体も・・・・。

寄ってたかって弱い者を苦しめやがって・・・。

あいつら、絶対に許さない!

あっ、Kさん。

少しずつ静かに離れていってください・・・。

一瞬で終わらせますから・・・。

そう言うと、Aさんは大きな水晶を取りだすと、それを両手で包みこみ、

次の瞬間、それを持ち上げて彼女の家の方へとかざす。

眩しい光が辺りを包みこんだが、どうやら他の人には見えていないようだ。

そして、家の中から逃げ出す黒いものが中へと飛び出す。

しかし、次の瞬間、まるで燃え尽きる様にして一瞬で消えた。

茫然としている俺に、Aさんが言った。

何してるんですか?

もう終わりました・・・。

それじゃ、その女性に会いに行くとしますかね・・・・・と。

彼女の部屋へ入ると、以前の明るい表情の彼女が笑っていた。

もう痛みに歪んだ顔は何処にも無かった。

そして、Aさんを見ると、それがすぐに本人だと分かったのか、あり得ない程の

満面の笑みがこぼれた。

それから、彼女はAさんが喋り、彼女が筆談するという二人だけの会話の時間が

流れたが、彼女はブログの事もAさんの能力の事も一切知らないフリを続けて

くれた。

そして、1時間ほどが過ぎた頃、俺達が帰ろうとすると彼女が俺達に握手を

求め手を伸ばしてきた。

俺もAさんも、彼女の手をしっかりと握り返したが、その小さな手は誰よりも

暖かく感じた。

そして、帰り際、Aさんがこう話してくれた。

少しでも彼女が楽になるように私の気を分け与えてきました。

そして、ついでに強力な結界も・・・・。

これで、彼女はきっと安らかなお別れが出来ると思います。

そう言ったAさんの顔はとても悲しそうに見えた。

そして、それから1週間後、彼女が安らかに旅立ったと教えられた。

その死に顔はとても幸せそうに笑っていたそうだ。

彼女の選んだ死という決断は決して自殺ではないそうだ。

だから、無事にあの世に行って転生出来るだろう、とAさんが教えてくれた。

もしかしたら、彼女が選んだ選択に異論を唱える人もいるのかもしれない。

しかし、俺と個人的に、

彼女が生きた短い人生を讃えると共に敬意をもって彼女の決断を尊重したい。

彼女は精一杯生きたのたから・・・・。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 19:51Comments(0)

2019年07月06日

ぬいぐるみ

これは知人女性から聞いた話。

人形には霊魂が入り込むという話をよく聞く。

日本人形や西洋人形に拘わらず、やはり人の形を成している物には、亡くなった

者の霊魂や思いが乗り移ってしまうのかもしれない。

しかし、これから書く話は人の形をした人形ではない。

可愛いという理由で、どの家にも1つや2つは在るであろう、ぬいぐるみに

関する話になる。

そのぬいぐるみが彼女の元にやって来たのは小学生の頃だったという。

拾ったり中古品をもらったりした訳ではなく、両親が彼女の誕生プレゼント

として新品を購入してプレゼントしてくれたものだという。

それは、可愛いクマのぬいぐるみであり、彼女がずっと前から欲しいと両親に

ねだっていたぬいぐるみらしい。

だから、彼女もそのぬいぐるみが大層気に入って、名前をつけて可愛がっていた。

寝るのも一緒、部屋で何かをする時にはいつもすぐ近くに置いて、たまに

話しかけたりしながら楽しく過ごした。

家族で旅行に行く時にも、いつも大きなバックの中にそのぬいぐるみを入れて

一緒に連れていった。

兄弟のいなかった彼女にとって、そのぬいぐるみは、親友であり、そして

兄弟でもあったのかもしれない。

そして、彼女が中学に入り、そして高校生になっても、その関係は変わらず、

悩み事があると、いつもそのぬいぐるみに語りかける様にしていたし、寝るときにも

いつもベッドの上に、そのぬいぐるみを置いて寝ていたのだという。

しかし、彼女が大学に合格し、実家から離れて生活を始める時、引っ越しの荷物の中には

そのぬいぐるみの姿は無かった。

1人暮らしのアパートはそれほど広くはなかったし、なにより親元を離れてしまう

自分の代わりに、そのぬいぐるみを実家に置いておきたかった。

そう彼女は言った。

しかし、実際のところ、その頃になると、彼女がぬいぐるみにそれほど愛着を

感じなくなってしまっていたのも事実だった。

彼女が言うには、高校生の時、家族で1週間程海外に旅行した事があったらしく、

旅行から帰ると、そのぬいぐるみの顔が変わったような気がしたのだという。

可愛いというよりも、いつも彼女を睨んでいるような視線にいつしか彼女も

気味が悪くなり、いつしか押し入れの中に仕舞いっ放しになったしまった。

だから、彼女としては、1人暮らしを始めるにあたり、そのぬいぐるみを

一緒に連れていくという選択肢は最初から無かったのかもしれない。

そして、彼女は引っ越し先での一人暮らしを始めた。

生まれて初めての1人暮らしはなかなか大変でホームシックにかかったりも

したらしいが、すぐに友達も出来て少しずつではあったが、充実した新生活

を送れるようになっていく。

そんなある日、実家から電話がかかって来た。

彼女の部屋に置いてあった、くまのぬいぐるみが消えたのだという。

そのぬいぐるみは、彼女が家を離れる際、机の上に座らせてきたままに

なっていた筈だったし、母親も、たまに彼女の部屋に行ってはそのぬいぐるみを

見ながら彼女の事を思い出すのを楽しみにしていたらしい。

そして、その部屋には母親以外に誰も入る筈も無かった。

それなのに、ぬいぐるみが突如、消えたのだと言われた。

その時、彼女は、

もっと良く探してみれば?

案外、机の後ろに落ちていたりするんじゃないの?

等と言ったらしいが、どうやら既に部屋中を探したが見つからないのだと

言われてしまう。

そして、その時、彼女は母親を慰めるつもりで、こう言ったのだという。

気にしなくていいよ・・・・。

もう、あのぬいぐるみは、そんなに大切な物ではないから・・・と。

そして、電話を切った彼女だったが、何か不安な気持ちになったという。

そのせいか、その夜、彼女は夢を見たのだという。

夢の中で、ぬいぐるみが彼女の元を目指して道を歩いてくる夢だった。

その顔には憎悪が満ち溢れ、そしてその手には小さなナイフが握られていた。

そして、彼女は悪夢にうなされた末に夢から目覚めた。

体中にべっとりと気持ちの悪い汗をかいていたという。

やはり、昼間にあんな電話をもらったからだ・・・・。

彼女はそう思った。

しかし、その夜から毎晩、彼女は同じ夢を見る様になった。

しかも、ぬいぐるみが歩いている道はその日によって周りの風景が変わっていた。

だから、その余りにもリアルすぎる夢に彼女は次第に恐怖の念を抱くように

なっていき、夜も寝られない日が続いたという。

そんなある日、大学から帰宅した彼女はアパートのドアの鍵穴に何かを突っ込まれた

様にガタガタに壊されている事に気付いた。

泥棒・・・・?

そう思った彼女はすぐに警察を呼んで事情を話したという。

しかし、警察はその場で変わった遺留物を見つけてしまう。

それは、合成繊維で出来た短い茶色の毛・・・・・だった。

警察もそれが何か分からなかったようで、毎日、何回か、アパートの周りを

パトロールしますから・・・と言い残して帰っていったという。

アパートの中に1人残された彼女は、不安で一杯だった。

そして、考えているうちに、ある事を思い出した。

そういえば、あのぬいぐるみの毛も短い茶色だったはず・・・・。

それを思い出すと、彼女は恐怖で押しつぶされそうになった。

とても1人で居られる心境ではなかった。

だから、その日の夜は友達のマンションに泊めてもらう事にしたという。

友達のマンションで食事をしてテレビを見て色々と話していると、すっかり

恐怖も消えていったという。

そして、友達と一緒にその日は遅くまで話し込んでしまい、寝たのは午前0時を

回っていた。

安心して熟睡したはずの彼女だったが、何かの物音で目が覚めたという。

彼女が上半身を起こすと、友達もその音で目が覚めたのか、ゆっくりと

起き上がったという。

カリカリ・・・カリカリ・・・・カリカリ・・・・。

それはまるで、窓を何か固いもので引っ掻くような音だった。

ただ、彼女一人だけなら恐怖で固まるしかなかったが、その時は友達が

隣にいた。

だから、彼女は勇気を振り絞ってそま音がする方へと近づいていった。

姿勢を低くして、窓の方へと近づく。

そして、窓まで来ると、そのままカーテンの蔭から外を見た。

息が止まるかと思った。

そこには、紛れも無く、くまの形をした何かが窓に張り付くようにしながら

ごそごそと蠢いていた。

その姿、そして大きさは間違いなく彼女が実家に残してきた、ぬいぐるみにしか

見えなかったという。

追い掛けてきたんだ・・・・・私を・・・・・・。

殺す為に・・・・・・・。

そう思うと、恐怖でその場にへたり込んだ彼女は、その場で嗚咽する様に

泣き続けるしかなかったという。

そして、何とかそのまま朝になり、カリカリという音も聞こえなくなったが、

彼女は友達に、そのぬいぐるみの事を話す事が出来なかった。

友達が外に出て窓の辺りを見てみると、やはり茶色の短い毛が、まるで存在を

主張するかのように大量に落ちていたという。

もう彼女には自分のアパートの部屋に戻る勇気は無かったという。

急いで支度をして電車に乗り実家を目指した。

まだ、きっと、ぬいぐるみはアパートの近くにいるはず・・・・。

だから、今のうちに実家に戻って何か対策を講じなければ・・・・。

そう思ったという。

駅に着いた彼女は時間が勿体なかったので、タクシーに乗り実家へと急いだ。

そして、家族が待つ実家へとたどり着いた彼女は、急いで玄関へと入った。

驚いた顔で出迎えてくれた母親。

そして、母親から予想していなかった言葉を掛けられた。

あのね・・・・不思議な事もあるもんだけど・・・・・。

以前、消えたって言ってたあのぬいぐるみ・・・・。

さっき、確認したらちゃんとあったのよ・・・・。

あんたの部屋に・・・・・。

その言葉を聞いて彼女はパニックになった様にその場で号泣したという。

逃げ場はない・・・・。

そう悟ったという。

そして、此処からの話は安全の為に割愛させていただく事にする。

勿論、読まれる皆さんの安全の為に・・・。

ただ、その後、彼女は瀕死の大怪我を負う事になり、片目を失った。

そして、現在、そのぬいぐるみは富山の住職の寺にしっかりと安置されている。

Aさんと姫がありったけの霊力を注いだ護符を張り巡らせた鉄の箱に

入れられて・・・・。

供養の為の読経もしてはいない。

まだ、危険すぎるから・・・・。

Aさんと姫が二人かがりで対処しなければいけない程の、ぬいぐるみとは

いったい何なのか?と俺には分からないが、きっとそうしなければ彼女は

間違いなく瀕死の重傷と固めの喪失だけではなく、間違いなく命を落として

しまっていたという事なのだろう。

そして、そのぬいぐるみに入り込んだモノは、どうやら彼女だけが標的なのではなく、

人間全てを標的にしているのだと聞かされた。

そして、その時、Aさんが、こう言っていた。

ぬいぐるみを可愛がるのはいいんですけど、名前をつけたり話しかけたりするのは

絶対に駄目です!

ぬいぐるみに魂が宿ってしまいますから・・・。

勿論、その人が死ぬまで大切にして変わらぬ関係を保てるのなら何も言いませんが、

そんな事はなかなか出来るものじゃありませんしね・・・・。

可愛がれば可愛がるほど、その人の態度が冷たくなった時、ぬいぐるみが

感じるのは淋しさだけではありません。

恨みや怒り、そして殺意ですから・・・・。

そして運悪く今回の様に強くて悪いモノが入り込んでしまった場合には、

対処する術がありませんからね・・・・と。

あなたの家に在るぬいぐるみは大丈夫ですか?


  


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:42Comments(0)

2019年07月05日

令和元年7月場所

営業のKです。

皆様、お久しぶりでございます。

コメント欄も一杯になっているのも気付かず・・・・。

本当に申し訳ありません。

新しい場所を作っておきますので、

どうぞご自由にお使いください!
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 18:00Comments(46)

2019年06月30日

廃村の女

これは知人男性が体験した話。

彼の趣味はバイクでのソロツーリング。

日本中の何処にでも1人で走っていき、決して立派なホテルなどに泊まる

ことはせず、地元の食堂で普通の食事をして可能ならば道の駅や公共施設を

使わせて貰いその場で寝袋に包まって一夜を明かす。

決してお金に困っている訳ではないのだが、そういう旅をしているうちに、

豪華な旅行てば決して味わえないその土地ならではの慣習や地元民とも

触れ合う事が出来て最高なのだという。

そんな彼がある時、新潟県を通って東北へと向かうツーリングに出た。

彼のバイクは元々大型のツアラータイプだったので、金沢からはずっと

北陸自動車道を使い北上した。

彼のいつものパターンで出来るだけ効率良くさっさと目的地に到着し、其処では

出来るだけお金を使わないようにして地元に溶け込んで過ごす。

彼にとってはいつもの行動だった。

新潟で高速道路を下りた彼は山形県を北上し秋田県に入った。

彼はいつも決して県庁所在地には近づかない。

賑やかな都会が苦手な彼はいつも、少し廃れた地方都市を目的地に選ぶ。

しかも、目的地もその土地に行ってから決めるというのだから、まさに

気ままな一人旅といった感じである。

そして、彼は旧道を使い駅までの道を走っていると1つの集落が道の両側に

広がっているのが分かった。

その場所からはそれほど遠くない場所に満ち波も見渡す事が出来、とても眺めが

良かった。

そこで彼はその場でバイクを停めて、その集落の中を視て廻った。

いわゆる、廃村という奴だった。

彼は1軒1軒、ごめんください、と挨拶しながらしらみつぶしに見て回ったという。

しかし、誰一人姿は見えず、彼はその家々にはとうに誰も住んではおらず、

完全に廃村になっているのだと確信した。

それにしても、家の中は予想外に綺麗だった。

傷みも無く、中には建てたばかりなのではないのか?と思える家も在った。

それを見た彼はいつもとは違う行動をとった。

その家でその日一夜を過ごさせて貰おう、と思ってしまったのだ。

いつものように街まで降りて銭湯を探してひと風呂浴びると、その後は

スーパーで食料とお酒を買い込み、彼はいそいそと再びその廃村に戻って来た。

もう夕方になっていたが、いつも野宿ばかりしている彼にとって廃村は怖い

場所ではなく最高にくつろげる場所だった。

そして、その日の宿を決めようとして廃村に並ぶ家々を見渡した時、

彼は何故か一番新しい家を選ばずに、古い長屋造りの家を選んだ。

古い家ならば間違いなく誰も住んでいないだろう、という考えからの選択

だったが、それ以上に、彼の本能的なものが働いたのかもしれない。

やはり、野宿をしていると色々な事があるらしく、彼はいつでも、いざという時に

逃げやすい場所を寝場所として選んでしまう癖がついていたようだ。

古い家の中の1軒をその日の宿と決めると、彼はそのまま2階へと上がり

道路に面した窓がある部屋に荷物を降ろした。

狭く陰気な畳張りの部屋だったが、その日、道路の上で寝るのに比べれば

天国の様な居心地の良さだった。

飼いこんできた弁当を食べ、缶ビールを2本ほど飲み干した頃には彼はすっかり

酔いが回ってしまい旅の疲れもあったせいか、そのまま知らないうちに眠りに

就いてしまった。

疲れていた彼はとても深い眠りに就いていたのだと思う。

しかし、酷く恐ろしい夢を見て眠りから覚めた。

体中にべったりと汗をかいていた。

彼は喉が渇いている事に気付き、ペットボトルの飲み物を口にした。

そして、しばらくの間、ぼーっと窓の外を見ていたらしいがその時、誰かの

喋り声の様なものが聞こえ、驚いて聞き耳をたてた。

その声はどうやら外の道路から聞こえてくる。

もしかしたら、警察官が巡回していて乗って来たバイクを見つけて、不法侵入が

バレてしまったのかも・・・・。

そう思い、ゆっくりと、そして静かに立ち上がると、そのまま窓際へと近づいた。

そして、そーっと窓の下の道路へと視線を落とす。

すると、そこには20人ほどの女達が無言のまま、斜め前の家に向かってまっすぐに

並んでいた。

その女達は全員が着物を着ており、そして何故か裸足だったという。

こんな真夜中に何をしているんだろうか?

そう思い、じっとその女達を凝視していた彼だったが、次の瞬間、背中が凍りつく

ような気がしたという。

その女達は1人1人順番に、斜め前の家の中へと入っていった。

しかし、その動きは明らかに歩いているのではなく、スーッと滑るように

移動していった。

そして、女達が入ると、家中を細かく回っているのか、部屋のあちこちから

ボウっとした弱い明かりが見えた。

そして、家の中の見回りが終わったのか、その女達が外へ出てきたとき、全員が

まさに彼の方を見て、満面の笑みを浮かべた。

バレてるのか?

咄嗟に身を隠す彼。

しかし、彼の心臓は早鐘の様に鼓動を速くし、まるで蛇に睨まれたカエルのように

身動きが取れなくなる。

どうすればいい・・・・。

このまま隠れていても大丈夫なのか?

そんな事が頭の中を駆け巡るが、考えがいっこうにまとまらない。

すると、彼が寝床にしていた家の1階から、ガタンというもの音が聞こえた。

それと同時に聞こえてくる階段を上って来るような音。

彼はそれまで固まっていたのが嘘のように、一気に立ち上がると窓へと駆け寄り

その窓を開けて小屋根へと飛び出した。

もう、音が聞こえないように・・・という事を考えている暇は無かった。

そして、その小屋根から、雨どいを伝って何とか屋根の上に登る事が出来た。

もしも屋根の上まで追いかけて来られたら・・・・。

そう思うと、生きた心地はしなかったという。

しかし、それから何も彼の耳に聞こえてくる音は無くなった。

それでも恐怖に飲み込まれていた彼には、その場から動く勇気など無く、じっと

身を固くしてその場にへたりこんでいたという。

しかし、それから1時間近くが過ぎたが、やはり下からは何も聞こえてこない。

そして、少し気持ちが落ち着いて来ると、今度は自分のバイクの事が心配に

なった彼は、勇気を振り絞って屋根の端まで移動すると、そうっと下の様子を

確認した。

心臓が止まるかと思った。

其処には、下のの道路に1列で横に並び、じっと屋根の上にいる彼の方を見ながら

不気味すぎる満面の笑みを浮かべ続けている女達の姿があったという。

結局、彼はそのまま屋根の上で固まったまま朝を迎えたという。

そして、朝になっても恐怖が消えなかった彼は、昼頃になってようやく通りかかった

農家の方に大声で助けを求め、結局、警察の方が助けに来るまで、その屋根の上から

降りる事が出来なかったそうだ。

警察官から、こっぴどく叱責された彼だったが、そのまま警察へ連れて行かれる

事も無く、厳重注意だけで解放されたという。

そして、その際、昨夜体験したことを話した彼は、警察官に尋ねたそうだ。

あの女達は何なんですか?

それに、この廃村には本当に誰も住んではいないんですか?と。

すると、警察官は困った顔をして、

まあ、その地域ごとに色々と事情があるから・・・・・。

それに知らない方が貴方の為だと思いますよ・・・・。

そう言われて、逃げるようにその場からバイクで走り去ったそうだ。

そして、実は彼はそのツーリングの帰り道、命にかかわる程の事故に

巻き込まれている。

もしかしたら、その時見た女達が何か関係しているのでは?

俺にはそう思えて仕方がないのだ。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 20:30Comments(0)

2019年06月26日

龍の住む・・・・。

以前、こんな体験をした事がある。

これは俺の大学時代の友人から依頼されて他県へと出掛けていった時の話だ。

その池で友人の姪っ子が命を落とした。

友達と遊んでいて行方不明になり湖の岸辺に横たわっているのを発見されたが、

既に死亡していたのだという。

検死の結果、遺体には異常は無く、きっと遊んでいて湖に落ちたのだろう、と

いうのが警察の見解だった。

そして、どうやら同じ様な事件が近年多発しているのだという。

その姪っ子は子供のいない友人にとっては自分の子供のように可愛がっていた

女の子。

そのまま事故で終わらせる訳にはいなかったようだ。

友人はこう言った。

そもそも姪っ子が友達と遊んでいたのはその湖からかなり離れた場所であり、

車でも1時間ほど掛るほどの距離があった。

そんな遠い所にどうやって姪っ子は歩いていったというのか?

そもそも、その湖と言うのは昔こそ、地域住民の憩いの場所として人が行き来

していたらしいが、最近では悪い噂が流れてしまい、子供どころか大人までも

近付かなくなってしまっている場所。

鬱蒼と茂った森の中を1人で歩いていき、湖の中へ誤って落ちる、などということが

考えられるだろうか?と。

しかも、亡くなった姪っ子の体には、藻が巻き付き巨大なウロコのようなものさえ

付着していたのだという。

そして、友人はこう言った。

その湖には太古の昔から龍神が住んでいると言われていて、実際にその姿を

見たという目撃談も沢山あるんだ。

だから俺は姪っ子の命を奪ったのは龍神で間違いない、と思っている。

龍神か何か知らないが、子供を手に掛ける奴は絶対に許すわけにはいかないだろ?と。

その話を聞いて俺はかなり興味が湧いてしまった。

昔話によく出てくる龍神というものが実在しているのならば、一度はこの目で

見てみたいものだ、と。

そこで、Aさんと姫に頼み込んでその湖に出掛けることになった。

あくまで美味しいものを食べ歩くドライブのついで、ということで。

早朝に出発して、その湖に着いたのは午前10時頃だった。

日帰りの予定だったから、俺と友人は急いでAさんと姫を湖の岸辺へと

案内した。

相変わらず機嫌の悪そうなAさんだったが、姫は何か観光にでも来たような

ワクワク顔だった。

俺はAさんに聞いた。

あのさ・・・もしかして本当に龍神とかが現れたら、どうするの?

神なんだよね?

退治出来る?と。

すると、Aさんは冷たい眼で俺を見ながら、

馬鹿ですか?

特撮映画じゃないんですからね?

と返してきた。

だから、俺は、

それって龍神なんて存在していないって事?

と聞き返すと、面倒くさそうに、

本当に短絡的な脳ですよね?

龍神っていうのは確実に存在します。

だけど、Kさんが思っている程ホイホイと姿を見せるものでもありませんよ!

私が特撮映画って言ったのは、Kさんが私を龍神と闘わせたがってるのが伝わって

くるからです・・・。

まるで昔の特撮映画の様な戦いをワクワクしながら待っているとしか思えないので。

だとしたら、私は巨大化して戦えば良いんですか?

そして、手からビームでも出して・・・・。

あっ、それよりもKさんを餌にしておびき寄せる作戦にします?

それなら龍神の姿が拝めるかもしれませんよ?

と返してくる。

だから、俺は、

龍がいるのに闘わないって、つまり逃げるっていう事?

神と言うくらいだから、やっぱりAさんでも敵わないんだ?

と聞き返すと、

あ~もううるさい・・・。

良いですか?

龍神というのは水の守り神なんです。

全ての湖にいる訳ではありませんけど、この湖には今でもしっかりと存在しています。

さっきからずっと龍神の息吹を感じますから・・・。

そして、確かに怒らせると恐ろしい存在ではありますけど、はっきり言えば、

人間側に付いてくれている神なんですよ・・・・。

だから、人間を襲う、と言う事は基本的にはあり得ませんね・・・。

もしも、そんな事が起こったとすれば、その人間が龍神を怒らせる様な酷い事

をした時だけでしょうね・・・。

しかも、今回の被害者は小さな女の子。

そんな子供を龍神が襲う筈はありません!

これだけは断言できますね。

そう返してきた。

そして、姫もうんうんと頷きながらニコニコと笑っている。

それだけ言うと、Aさんは湖の中へ手を入れて何かを手探りで探している。

そして、しばらくそんな動作を続けていたが、1人で何かを見つけた様で

こちらへと戻って来て俺達にこう言った。

こり湖で女の霊が目撃されたという話は聞きませんか?と。

すると、友人は、

確かにそんな噂が広まった時期がありましたけど・・・・。

でも、最近はめっきり聞かなくなりましたけど・・・・。

と返した。

すると、Aさんは全て分かったという顔をして、

やはり、今回の姪っ子の事件は事故ではありませんね。

そして、人間の仕業でもありません。

どうやら、女の霊がこの湖に住み着いて悪さをしているみたいです。

自分の子供を殺された女の霊。

とても古い時代の霊でかなり強力ですね。

しかも、かなり狡猾な霊で、私達が此処に来た事も分かっていて決して湖の底

から上がって来ようとはしません。

この湖の底にいる限り、安全だという事がよく分かっているみたいです。

龍神に喧嘩を売る馬鹿はいませんからね・・・。

これじゃ、私達も手が出せませんね!と。

そう言われて、俺は、

折角、犯人が分かったっていうのに手が出せないって事?

何か方法は無いの?

Aさんが湖の中に潜るとか、姫ちゃんが飼っている?狐とかヘビとかを使って・・。

このままじゃ、また子供が殺されちゃうかもしれないんでしょ?

それにもしかしたら龍神とその女の霊が繋がっているかもしれないじゃない?

と聞くと、Aさんは、手招きして姫を呼ぶ。

そして、こう言った。

龍神と、その女の霊が繋がっている訳がないじゃないですか。

かたや神獣の最高位、そして女は単なる怨霊なんですから。

その女は龍神に近づく事も出来ませんよ。

各が違いすぎますからね・・・・。

だから、その女の霊は、この龍神が住みかにしている湖を隠れ家として

利用しているだけです。

上手くいけば、全てが龍神の仕業と言う事で済ませられますから・・・。

でも、そんな狡猾な霊を放ってはおけませんよね?

ということで、

これから先は私じゃなくて姫ちゃんの方が向いてますから・・・。

私が何かしてしまうと、本気が龍神を怒らせてしまうかもしれませんから。

その点、姫ちゃんは、神獣の類と仲良くなるのが上手ですからね・・・。

かといって、キツネやヘビの神を龍神の住処であるこの湖に入らせてその女の霊を

探し出す事も出来ないですし・・・。

それにそんな事をしたら下手すれば本当に特撮映画みたいな闘いになって

しまうかもしれませんしね。

そう言うとAさんは姫を読んで何かを耳打ちする。

それを聞き終えた姫は、湖の岸に立ち、眼をつぶって何かぶつぶつと呟きだす。

そして、10分ほどそれを続けた後、湖に向かって深々と頭を下げた。

こちらを向いた姫の顔はニコニコと笑っていた。

もう大丈夫だって言ってます・・・。

お前たちの助けは要らない・・・。

子供の命を幾つも奪った、あの女を絶対に許さないから、と。

この湖で起こった事は自分で片をつける、と。

龍神様が、もう二度とその女が湖の中から出られないようにしてくれるそうです。

そして、子供の命を奪った何倍もの苦しみを与えるから安心しなさいって。

やっぱり龍神様って子供が大好きみたいです・・・。

だから、絶対に許さないそうです・・・。

そう俺達に伝えてくれた。

それを聞き終えたAさんは、

さっ、それじゃ私達はもう用済みということで・・・。

さっさと帰りますよ!

そう言って車へと戻っていく。

それから車で帰路に就いた俺達だったが、不安が払拭できない俺に対して、

帰り道で見つけた色々な食べ物を食べまくるAさんと、景色を見ながら

キャーキャーと喜んでいる姫を見ていると、本当にこの二人に

頼んで正解だったのかと更に不安になった。

しかし、その後、友人から連絡が来て、それ以後、湖での溺死事故は完全に

無くなり、そして湖の雰囲気自体も明るいものに戻ったという事だった。

そして、不思議な事に俺達が帰ってから数日間、湖の辺りにだけずっと雨が

降り続けていたそうだ。

やはり、姫が話したという龍神は本当に実在していたのだろう。

それにしても龍神と話したり出来るというのも凄いのだが、俺としては

やはり龍神の姿を一度だけでもこの目で見てみたかった。

というか、この二人には一般的な常識というものは全く関係無いのだ、と

改めて思い知らされた一件だった。

  


Posted by 細田塗料株式会社 at 20:34Comments(4)

2019年06月20日

守護霊を生かす方法

Aさんからよく言われる言葉がある。

それは、

自分の守護霊を全然活かせてませんよ!

本当に豚に真珠とはよく言ったものです!

という言葉である。

確かにそう言われれば返す言葉もないが、いかんせん自分の守護霊が視えない

俺にとっては守護霊が何を考え、そして何を望んでいるか、など

分かる筈もない。

そして、一度、酒の席でAさんにじっくりと聞いた事がある。

勿論、”守護霊の活かし方について”に他ならない。

それなりにアルコールも進みかなり気分が良かったのか、Aさんは面倒がらずに

色々と話してくれた。

それは、こんな会話だったと記憶している。

あのですね。私はいつも本気で感じてるんですけどKさんくらいの守護霊が

憑いていたら間違いなく高名な霊能者になれるはずなんですよ。

別に霊能者になれって言ってるんじゃありませんよ。

私は霊能者と呼ばれている類は大嫌いなので・・・・・。

でもね。もしもKさんにそれなりの力があったとしたら、私や姫ちゃんにとって

凄い助けになる筈なんです・・・・。

それなのに、いつまで経ってもお荷物状態じゃないですか?

それに、私や姫ちゃんにいつも難題を持ち込んでくるのは決まってKさん

なんですからね?

分かってます?

自分の事は自分でしましょう!って学校で習いませんでしたか?

そう言われ、俺は苦笑いするしかなかった。

すると、Aさんは酒癖の悪さも手伝って更に畳みかけてくる。

いいですか?

姫ちゃんは完全に別物だと考えてくださいね。

あんな守護霊とか守護神としての霊獣が憑いていたらkさんも何もしなくても

大丈夫なんでしょうけど、というか、あれは姫ちゃんの霊的な器の大きさが

あるから為せる状態ですからkさんに、あんなのが憑いたらすぐに取り込まれて

しまうでしょうけど・・・。

そもそも、あんな守護霊と霊獣が憑いていたら、私だったらさっさと

地球征服でも真面目に考えますけどね!

そして、とりあえず飲食店とケーキ屋は全て無料にしちゃいますけど!(笑)

明らかに話が別の方向へ向かいそうなので、俺はこんな質問をした。

あのさ・・・Aさん、この前言ってたでしょ?

もっと自分の守護霊を活かせ!って。

それって、どういう意味なのかな?って・・・・。

考えても分からないからさ・・・・。

そう言うと、Aさんはかなり上から目線でこう返してきた。

先ず、Kさんの場合、自分の守護霊がどんなタイプなのかをちゃんと

把握してあげないと・・・・。

守護霊にだって性格もあれば、特性もあるんです。

攻撃的な守護霊もいるし、防御に特化した守護霊もいますから・・・。

ちなみに、kさんに憑いてるのは防御しか出来ない守護霊です。

お姉さんが必死にkさんを護ってくれている。

ただ、防御しか出来ないといっても、その防御力は相当なものです。

並大抵の悪霊なんかは近づく事さえ出来ないす程の・・・。

私や姫ちゃんはそのお姉さんと仲良くさせて貰ってますから気になりませんけど、

はっきり言って敵には回したくない厄介な守護霊ですから。

そういう事をちゃんと分かってます?

だから、もしもkさんが霊的な修行をしたりお経を覚えたりするだけでも、かなりの

戦力になるんです。

なにしろ、kさんは攻撃だけに集中できる訳ですから!

そう言われて俺はこう返した。

それじゃ、俺って基本的にどんな時でも霊障を受けたりとり殺される心配は

無いっていう事だよね?と。

すると、Aさんは少しだけ残念そうな顔をして首を横に振った。

あのですね・・・・どんな時でも護ってもらえるとは考えない方が良いかも。

kさんだって、今まで自分の守護霊と長い間付き合ってきて、今日は調子がわるいな、

とか、今日は調子が良いなって日が在ると思うんですけどね?

それは守護霊に調子の波があるというのではなくて、拠り所である当人の問題です。

守護霊というのは手下でもなければ奴隷でもありませんからね。

誰だってそうだと思うんですが、やる気の無い奴を助けようとは思わないのと

同じで、守護霊だって助けてあげたいと強く思う場合もあれば、なんか助けたくないな、

って時があるんです。

それじゃ、どうすれば守護霊の力を引き出せるのかといえば、やはりその本人が

いかに頑張っているか、という事に尽きますね。

頑張っていれば、何とかして助けてあげたくなりますから!

それと、自分の守護霊の力を信じてあげること。

確かに万人に強い守護霊が憑いている訳ではありませんけど、その守護霊の力を

信じてあげる事で、守護霊も本来の力以上の強さを発揮出来るんです。

本来は守護霊としても力が20しかなくても、その力を信じてあげる事で

20が100,とか200に上がりますから。

そして、もう一つは善い事を行うという事。

悪行には守護霊は力を貸してはくれません。

良い行い、更に他人に対して何かをしてあげようとしたり、願ったりする事で

守護霊も思う存分力を発揮出来ます。

だから、守護霊の力を高めようと思ったら、自分の為ではなく誰かの為に

尽力してみるのも良いのかもしれません。

そして、最後に、これは全ての事に通じる事なんですが・・・・。

生きていれば色んな辛いこと、悲しい事、嫌な事があると思うんですけど、それでも

無理してでも笑顔をつくる。

それって大変な事なんですけどそのぶん、しっかりと見返りはあります。

勿論、守護霊達も、笑顔になることで、陽の力を沢山吸収できますから。

だから、笑顔ってとても大事なんですよ!

そう語ってくれた。

ただ俺はその時どうしても腑に落ちない事があった。

それは、どうして笑顔を殆ど見せないAさんにそんな事が分かるのか?

という事だった。

だから、俺は率直に聞いた。

それにしても笑顔なんてめったに見せないAさんは守護霊なんて要らないと

思ってるんだ?と。

すると、Aさんは少し考えてから、

私の守護霊は変わりものなので・・・・。

それに、いつもどこかへ出かけてるし・・・。

まあ、私と相性も良くないので・・・。

と支離滅裂な答えになっていた。

まあ、こんなAさんに憑いている守護霊なのだから、変わり者なのはお互い様

なのでは?

俺はそう思ったが、勿論、それを口に出す事は止めておいた。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:05Comments(1)

2019年06月18日

存在しない部屋

これは知人女性が体験した話。

彼女はその時、郊外のマンションから市街地のマンションへと引っ越しした。

元々は市街地のマンションを物色していたのだが、家賃が高く経費もかなり

高額だったから、断念して郊外にある新築の賃貸マンションに住んでいた。

しかし、ある時、仕事で偶然通りかかった市街地の不動産屋で信じられない程安価な

家賃のマンションが目にとまった。

正直なところ、現在住んでいるマンションからだと会社までの通勤に1時間以上

掛っていたが、そのマンションからなら、20分も掛からなかった。

その辺は決断の速い彼女だったから、すぐにその不動産屋に飛び込んで色々と

詳しい話を聞いたという。

勿論、それだけ安いのだから事故物件の可能性もあるな、と思いつつ説明を

受けていると、どうやらその類の理由で安いのではないという事が分かった。

要はその部屋の隣には非常階段があり、其処を利用する人の靴音が部屋の中に

入り込む為、その迷惑料としてかなり安価な設定にしていると

聞かされた。

しかし、その部屋はちょうど角部屋にあたり、住環境としては申し分なかったから、

彼女はすぐにそのマンションを契約したのだという。

引っ越し当日、彼女は引っ越し業者は使わず、友人達にバイト料を払って

引っ越し作業を手伝ってもらう事になった。

元々、殺風景な部屋に住んでおり大きな家具など皆無だったから、引っ越し作業は

順調に進み、夕方にはほとんどの作業が終わったという。

だから、その日の夜は友人達と買い出しをして一緒に飲み明かそうという事になった。

翌日も休みだったことから

酒宴は盛り上がり、気が付くと既に深夜11時を回っていた。

そして、誰かがこんな提案をした。

これから同じ階にどんな人が住んでるのか、見に行ってみない?

彼女の部屋はマンションの6階だったらしく、これから生活していくマンションの

同じ階にどんな人達が住んでいるのか、というのは彼女自身もとても興味があった。

だから、二つ返事でその提案に乗った彼女は、友人達と一緒に静かに玄関から

廊下へと出た。

マンション自体は新しいものだったが、何故か廊下の灯りは今にも切れそうに

点滅を繰り返していた。

これは管理人さんに言って直して貰わなきゃ・・・・・。

そんな事を考えながら彼女達は出来るだけ迷惑にならないように静かに廊下を

進んだ。

しかし、どれだけ進んでも窓から明かりが漏れている部屋は一つも無かった。

明日は休みなんだからこんなに早く寝る筈はないのに・・・・。

そんな事を考えながら彼女達はどんどん廊下を進む。

そして、廊下の突き当たり近くまで来た時、その階に在る部屋からは誰かが

住んでいる気配が感じられない事に気付いたという。

きっともう寝ちゃったんだよ・・・・。

今日と明日がお休みだから、きっとみんな何処かへ旅行にでも行ったのかも?

そんな言葉を掛けられたが、彼女の不安は増すばかりだった。

すると、突然エレベータが止まる音と扉が開く音が聞こえてくる。

彼女達は息をのんでどんな人が降りてくるのかをじっと見ていた。

しかし、そのままエレベータはドアを閉めて下へと降下していった。

誰かがボタン押し間違えたのかなぁ?

そんな事を話していると突然廊下の一番奥の部屋のドアがゆっくりと開いた。

そして、そこから体を半分だけ覗かせた女が、じっとこちらを見ているのが

分かった。

すみません…引っ越してきたばかりで・・・・・。

煩かったですか?

彼女はそう話しかけた。

しかし、女は何も答えず、何かをぶつぶつと呟きながら指を動かしている。

あの・・・すみません・・・・。

彼女はそう言ってその部屋に近づこうとしたがすぐに止めた。

その女は何かを数える様に指を折りながらぶつぶつと呟いていた。

そして、その指を折った数は、その時その場にいた彼女達の数と同じだったという。

それを見て彼女は何か嫌な予感を感じ、その場から逃げる様にして部屋へと

戻った。

彼女の異様な態度を察して友人達も一緒に部屋へと戻って来た。

その場にいた全員が何も喋らなかった。

全員が何か異様な雰囲気を感じていたという。

もう酒を飲む気にはなれなかったから、その夜はもう寝ることにしたという。

1人きりならとても寝る気にはならなかったが、友人達が一緒にいる事で

彼女も少しは気丈でいられた。

お酒のせいか、寝つきは良かったという。

しかし、彼女は真夜中に突然目が覚めた。

時計を見ると時刻は既に午前2時を回っていた。

どうして自分はこんな時間に起きてしまったのか?

そんな事を考えていると、突然、非常階段を歩く足音に気付いた。

ああ…不動産屋さんが言ってたのは、この足音の事なんだ・・・・。

そう思ったがすぐに不自然さに気付いた。

エレベータが一体誰が設置されているというのに、一体誰がこんな真夜中に

非常階段など利用するというのか?

しかも、彼女の住む6階には誰もいないのは既に確認済みだった。

そう…あの女を除けば・・・・。

彼女は先ほど見たドアの隙間から体半分だけを覗かせた女の姿を思い出して

しまい、一気に恐怖が襲ってきた。

誰か、起きてる?

彼女は誰に語りかけるでもなくそう言った。

すると、熟睡していると思っていた友人達がその言葉に応えてくれた。

誰も寝てはいなかった・・・・。

それが心強かったと同時に一層不安感を掻き立てた。

あの音・・・なんだろ?

誰かが言った。

しかし、それからは誰も喋らなくなった。

カンカンカンカン・・・・カンカンカンカン・・・・・。

非常階段を歩く靴音にその場にいた全員が聞き耳を立てていた。

なんか、あの足音、降りてきて必ずこの階で止まってない?

友人の1人がそう言うとその場にいた全員が凍りついた。

実はそのマンションは6階建てであり、その上には屋上しかないのは分かっていた。

そして、当然、屋上には簡単には昇れないようになっている。

それがどうして屋上から降りてきてこの6階で足音は止まるのか?

すると、突然、部屋の窓がノックされた。

6階に在る部屋の窓がノックされるなどあり得ない事だった。

しかも、非常階段からその部屋の窓まではかなりの距離があり、手を伸ばしたとしても

到底届く距離ではなかった。

彼女達は先ほどの女が体を異様に伸ばして窓をコツコツとノックしている姿を

想像して恐怖した。

全員が部屋の中央に集まって息を殺した。

すると、しばらくすると窓をノックする音は聞こえなくなる。

ホッと胸をなでおろしていた時、今度は突然玄関のチャイムが鳴った。

玄関のモニターを確認するが誰もいない。

だから、友人の1人が玄関の側まで行って覗き穴から外を確認した。

大きな悲鳴が部屋中に鳴り響いた。

其処には大きく口を広げた女が玄関ドアに張り付くようにしてうねうねと

動いていた。

結局、朝方まで玄関のチャイムは鳴り続け、そして明るくなった頃、

静かになった。

そして、彼女を含め友人たち全員が一睡も出来ぬまま朝を迎えていた。

朝になり、窓を確認すると窓には人の指の跡が無数に残されていた。

彼女達はそのまま不動産屋に電話をかけて、すぐに来て欲しいと連絡した。

しばらくすると不動産屋が一人ではなく数人でやって来てチャイムを鳴らした。

彼女達がドアを開けて外へ出ると、ドアにはベッタリと手の跡が幾つも

残されていた。

彼女達は昨夜見た女の部屋へ不動産屋を連れていき、昨夜起こった事を詳しく

説明しようと廊下の突き当たりの部屋へと歩いていく。

しかし、其処には部屋と呼べるものは存在していなかった。

彼女たち全員が間違いなくその眼で見た部屋。

昨夜確かに存在していた女のいた部屋は

跡形もなく消えていた。

玄関ドアがあった場所にはコンクリートの壁しか存在しておらず、

そこには人の形のシミだけが不気味に浮かび上がっていた。

それを見た彼女は、もうこんな所に住んでいられない、と不動産屋に契約の

解除を申し出たが、意外な事にそれは二つ返事で受理されたという。

そして、その際、彼女は不動産屋にこう聞いたという。

あの6階には私以外に誰も住んではいないのですか?と。

すると、不動産屋は少し困った顔をしながら、

あの階の他の部屋はまだ契約解除はしていません・・・・。

ただし、もう誰も住んではいませんが・・・・。

何があったかは分かりませんが、

皆さん、逃げる様にして部屋から出ていってしまって・・・・。

それ以来、顔も見ていないんですよ・・・。

だから、家賃はきちんと頂いてます・・・。

そう言われたという。

彼女はそのから友人の家を泊まり歩く事になり、次のマンションが見つかると

今度は引っ越し業者に全てお任せで引っ越しを済ませた。

そして、それからしばらくの間、そのマンションは住人を募集していたが、

1年ほど前に突然取り壊されたという。

勿論、彼女にはその理由は分かっているようだが、決して他言はしていないのだという。

あの時の話を誰かに話してしまったら、あの女が今住んでいるマンションにも

やって来るような気がして・・・・。

彼女は蒼ざめた顔でそう話してくれた。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 20:46Comments(3)

2019年06月15日

山びこ

これは知人女性が体験した話。

彼女はその頃、運動をして体を動かし汗をかくということにとても興味が

あったのだという。

特に太っている訳でもなかったが、それまであまり体を動かす運動をしていなかった

彼女は年齢を重ねるにつれて体調が優れない日が多くなっていたが、友人に

誘われてジョギングや自転車、スポーツジムなどで汗をかく事でかなり体が

改善されたのか、体調の良い日が続くようになったという。

それからというもの、彼女は自分から率先してテニスをしたりゴルフをしたりして

汗をかくのを日課にしていた。

そして、それまでやった事の無かったテニスやゴルフもやってみるとそれなりに

楽しく、それからは彼女は常に新しいスポーツを求めてトライするようになったという。

そんな彼女がある時登山に誘われた。

登山といっても楽に日帰り出来る程度の山だったし、何よりも、誘ってきた女友達が

以前から山の素晴らしさを力説するのを聞いていたから彼女はその場でその誘いを

了承したという。

彼女の仕事は平日の水曜日だけが休みという感じだったので、登山の決行日は

翌週の水曜日に決まったという。

事前にその友達から、用意するものを聞いていた彼女は、靴屋で登山に向いた

シューズを購入し、背中に担ぐリュックバックも購入した。

そして、登山当日、彼女はおにぎりを作り水筒を持って集合場所へと車で

向かった。

集合場所に着くと一緒に登る女友達が既に到着していたが他に登山客の姿は

見えなかった。

平日だしまだ時刻も早いから、そんなものなのかな、と彼女は思ったという。

そして、いよいよ登山が始まるとそれ程傾斜のきつくない山だというのに

とても足腰にこたえるのが分かった。

30分も経たないうちに息は切れ足が棒のようになったがそれでも彼女は

友人に遅れまいとして必死に山道を登った。

ただ、周りの景色、そして空気の美味しさは格別のものがあった。

確かに体は辛かったが、少しだけ街を離れただけで、こんなにも別の世界が広がり、

そして其処には街中では決して味わえない自然の素晴らしさが在るのだという事に

驚きながら登っていると、次第に体も慣れていくのが分かったという。

それにしても、不思議だった。

その山というのはそれなりに登山客が多い山だと聞いていたし、登山口には

しっかりとした施設まで備わっていた。

それなのに、彼女達はかなり遅いペースで登り続けているというのにいまだに誰にも

追い越されるという事が無かったのだから・・・。

それでも何とか頑張って山の8合目辺りまで登った時、彼女は突然、

トイレに行きたくなってしまう。

しかし、そんな山の中にトイレがある筈もなく、彼女は1人友人から離れて

森の中で用を足す事にした。

友人から離れて森の中に入る。

誰もいないと分かってはいても、どうしても人目につき難い場所を探してしまう

ものらしく、彼女はなかなか用を足す為の場所が見つからずに右往左往していた。

そんな事をしているうちに、彼女の服はびしょ濡れになってしまう。

そして、ようやく目立たない場所を見つけて用を足していると、突然、辺りが

どんどん暗くなっていき強い雨が降り出した。

バケツの水をひっくり返したような強い雨の勢いに彼女は近くに在った大樹

の蔭に隠れて雨に濡れないようにするのが精いっぱいだった。

雨は20分ほどて小降りになったが、相変わらず辺りは暗いままだった。

彼女は突然不安に駆られてしまい大きな声で友人の名前を呼んだ。

しかし、彼女の声に反応するものは何一つ聞こえなかった。

彼女は森から出て出来るだけ開けた場所へと歩いた。

其処は崖の近くに広がる空間ではあったが、そこなら自分の声がもっと遠くまで

聞こえるのではないか、と思ったのだという。

おーい!○○さ~ん!

彼女は友人の名前を叫んだ。

おーい!○○さ~ん!

1人で山を降りる勇気など無かった彼女はそうやって何度も友人の名前を

叫び続けた。

しかし、全く反応が無かった。

まさか、私を置いて1人で山を降りたんじゃ・・・?

そう思うと不安で頭がいっぱいになった。

だから、彼女はこんな叫び声で呼びかけた。

誰かいませんか~!

私はここにいます!

誰か助けて!と。

しかし、そう叫んでもやはり誰からの返事も無かった。

ただ諦める訳にも行かず彼女は、そんな言葉を叫び続けた。

そして、3回目の呼びかけの後、何処からか、

何処にいるの?

という男の子の声が聞こえてきたという。

それは彼女が立っている場所よりもかなり高い場所から聞こえてくる。

しかも、山の上の方はすっかり霧に覆われており、真っ白で何も

見えなかった。

相手が子供なのは不安だったが、とにかく自分の事を認識し助けてくれようと

している者がいる・・・。

それだけで彼女には少しだけ元気が戻った。

だから、彼女はその声に呼応するように、

此処よ!ここに居ます!早く助けて!

そう叫んだという。

すると、またしても霧の中から、

其処だね!逃げないでよ!今すぐ行くから!

という声が聞こえたという。

其処で彼女は初めて疑問を抱いた。

どうしてあんなに真白な霧の中を近づいて来られるのか?

私達を追い越していった者など1人もいなかったはずなのに、どうしてあの子供の声は

此処よりも高い場所に在る霧の中から聞こえてくるのか?と。

それに、どうして子供が1人でこんな場所にいるの?

そう思うと、一気に恐怖が押し寄せてきて彼女は一気に山を下り始めた。

何処をどう降りれば良いのか、は全く分からなかった。

だから、とにかく下に続く道を行けば良い・・・・。

そう思って彼女は必死に山道を走り続けた。

すると、背後から霧がどんどん近付いてくるのが分かった。

どうして突然、霧が近づいてきたのかは分からなかったが、その霧に飲み込まれたら

お終いになる・・・。

そんな確信があったという。

そして、霧が近づくにつれて聞こえてくる子供の声も、より大きくはっきりと聞こえだす。

ねぇ・・・待ってよ~!

すぐに行くからさ~

そう、聞こえてくる声は助ける等とは一言も言っていなかった。

こちらに来る・・・・?

だとしたら、こちらにきて何をしようというのか?

そう考えると恐怖で足がすくんでしまい上手く走れなかった。

すると、彼女の視線の先に信じられないものが映り込んだ。

それはまさに緊急避難用のコンクリート製の建物にしか見えなかったという。

あの建物の中に逃げ込めばきっと助かる・・・・・。

そう思い、彼女は一気に方向を変えて1段低い所に在るその建物へ駆け寄ろうとした。

その時、彼女の背中をガシッと掴む手があった。

小さな悲鳴を開けで振り向くと、其処には驚いた顔の友人が立っていたという。

何してんの!

もうちょっとで死ぬところだったよ?

そう言われて彼女が自分の足元を見ると其処には100メートル以上は在りそうな

断崖絶壁が広がっていた。

あと50センチ前に手でいたら自分は滑落死していた・・・・。

その事実に彼女はその場でへたり込んだという。

その後、友人から聞いた話では、用を足しに行ったきり戻らない彼女を探していると、

突然、彼女が訳の分からない言葉を叫びながら山道を走り降りていくのが見え、

それを追っていくと彼女が崖の方へと向きを変えたので急いで駆け寄り背中の

リュックを掴み、何とか止める事が出来たという事だった。

その間、雨も降っていなければ、辺りに霧も立ち込めてはいなかったという。

だから、彼女も一時的に幻覚を見たのだと思った。

しかし、彼女の証言通り、彼女の着ている服は雨でびっしょり濡れていたし、

そうして話しているうちに、彼女と友人の周りにはうっすらと霧が立ち込め出した

らしく、さすがに気味が悪くなり二人は急いで下山したという事だ。

ちなみに、彼女にそれ以後怪異は起こっていないが、もしかしたら彼女は

その時、全く別の世界に迷い込んでしまっていたのかもしれないし、

少なくとも、その時聞こえた声は彼女を救おうとしたのではなく、殺そうと

していたのではないか・・・・。

そう考えなければ説明がつかない話の様に感じた。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:06Comments(1)

2019年06月13日

霊のいる廊下

これは知人女性から聞いた話。



彼女は大学を卒業すると某メーカーの研究室へと就職した。



勿論、大手メーカーに就職して、大学で学んで知識を生かし研究に没頭するのは



彼女の夢でもあった。



明るい性格の彼女は、ずくに職場にも溶け込む事が出来、彼女の所属する



チームが手がける商品開発も彼女がチームに加わった事で大きく前進し



彼女にとってはまさに順風満帆のスタートといえたのかもしれない。



誰もが彼女に優しく接してくれたし、会社での評価もうなぎ登りに上昇し、



彼女にはまさに怖い物など無かった。



しかし、そんな彼女の奢りのようなものが他人からははっきりと見て取れて



いたのかもしれない。



彼女は幾つかの裏切りに遭い、仕事での評価を落としてしまう。



勿論、それは彼女の失敗などではなかったが、彼女を妬む者達に結託されては、



彼女には弁解する余地など無かったという。



そして、彼女には部署の移動が命じられた。



その部署というのは、以前所属していた研究グループとは同じ敷地に在ったが、



いわゆる旧館と言われている古い研究棟であり、彼女はとても落胆したという。



なにしろ車内での評価で言えば、それまで所属していた部署が最先端の研究



をする部門だったとすれば、彼女が移動を命じられた部署は、どちらかといえば



マイナーな研究ばかりをしている部門だったのだから。



実際、それぞれの部署に割り当てられている研究費というものにも、かなりの



格差があった。



しかし、彼女を落胆させた理由は、実はその他にもあったのだという。



実は彼女には顕著なものではないが確かに霊感というものが備わっていた。



そして、辞令のあった新しい職場に行くには古くて暗い長い廊下を歩いて



行かなければならなかった。



そして、どうやら、その廊下には昔から女の幽霊が出ると噂されていた。



だから、彼女はその廊下に近づいた事も無かったし、まさか自分がその



研究棟に配属されるとは夢にも思っていなかった。



しかし、実際にその職場に配属されたという事は必然的にその廊下を通らなければ



いけない事になる。



正直、彼女は仕事を辞めてしまおうとさえ思ったという。



既に同僚や先輩からの裏切りに遭い、彼女の心はボロボロだったし、新しい研究グループ



での開発内容は彼女の得意分野でもなかった。



それに加えて、その職場に行くには幽霊が出ると言われている廊下を確実に



通らなければいけなかったのだから、そう考えるのも無理はないのかもしれない。



しかし、彼女には簡単に辞表を出せない理由があった。



その頃、彼女は東京のマンションで一人暮らしをしていた。



順風満帆だった頃に買い揃えた家具や電化製品、そして車のローンの支払いも



まだまだ残っていた。



だから、辞めるに辞められなかったというのが本音かもしれない。



そして、いよいよ転属初日の日がやって来た。



彼女は朝早くに会社に来て、誰かがその廊下へとやって来るのを待った。



どうしても、1人でその廊下を歩いていく勇気が持てなかったという。



しばらく待っていると、二人組の男性がやって来た。



彼女は、転属の挨拶をすると、そのままその男性社員2人と一緒に



廊下を進んでいった。



廊下には、幽霊らしきものは何もいなかった。



彼女はホッとして、そのまま平静を装い歩き続けた。



そして、廊下が終わりにさしかかった時、彼女の耳には確かに、



ねぇ・・・・。



という女性の声が聞こえた。



驚いた彼女は思わず、ヒッ!と声を出してしまい誤魔化すのに苦労したという。



霊を見てしまう事も嫌だったが、それと同じくらいに自分には霊の姿が



視えてしまうのだという事が知られるのが恐ろしかったという。



やはり、彼女自身も、霊感があるという事で一時期、いじめの対象にされた



事もあったから・・・・・。



しかし、転属初日は、それ以後、何事もなく終える事が出来た。



そして、それから数日は何事もなく過ぎていった。



しかし、やはり彼女にとって、新しい配属先はつまらなく感じられた。



設備や人員の数など以前の部署に比べると明らかに見劣りした。



そんな気持ちの彼女は自分から心を開く事も出来ず、次第に一人きりで



いる事が多くなった。



研究中も会話もせず1人で黙々と作業をこなし、お昼時間も一人きりで



研究室の中で過ごしていたという。



そんなある日、彼女はいつもの様に1人で部屋に籠り、黙々と研究を続けていた。



同僚が帰っていくのも気付かない程、没頭して・・・。



そして、ハッと時計を見ると時刻は午前0時を回っていた。



彼女は慌てて帰り仕度をしたが、その時初めて自分が一番最後なのだと



気付いたという。



研究室の部屋の灯りを消して廊下へと出た。



廊下にはまだしっかりと明かりが灯っており彼女は胸を撫で下ろした。



そして、1人で廊下を歩いていく。



自分の靴音しか聞こえない廊下は、とても不気味に感じられた。



すると、前方に誰かが立っている。



壁を背にして俯いたまま背の高い女性が立っている。



季節はずれのコートを着て長い髪がだらりと垂れ下がり、その顔を隠していた。



その姿を見た時、彼女はそれが人間ではない事に直観として気付いた。



やっぱり本当にこの廊下にはいたんだ・・・・・。



正直、迂回して帰りたかったが、その廊下を通らなければ会社から出られない



事は分かっていた。



彼女は息を止め出来るだけその女の方を見ない様にしながら怯えているのを



悟られない様にしながら、自然に歩いた。



怯えているのを悟られた挙句、怖い思いをしてしまった事が彼女には何度もあったから。



心臓の鼓動がどんどん速くなった。



それでも彼女は意識的にその女の方を見ない様にして歩き続けた。



そして、ちょうど、その女の横を通りかかった時、



あぁ~



というため息の様な声が聞こえ彼女は思わずその場で固まってしまう。



そして、彼女の意志とは逆に、彼女の視線はゆっくりとその女の顔へと



向いていった。



その顔はもう俯いてはいなかった。



まっすぐに彼女の方を向いたその女の顔はとても悲しくて苦しそうな顔に



見えたという。



彼女はその瞬間、一気に走りだしていた。



もうその場から一刻も早く逃げ出したかった。



そして、息が続く限り走り続け、ようやく長い廊下を渡りきった時、その女の



気配も全て消えていたという。



そして、何故か廊下の明かりもすっかりと暗くなっていた。



どうして、つい今しがたまでは明るかった廊下が私が通り過ぎると同時に



暗くなるんだろう・・・・・・・?



それは彼女にも気になったが、その時はそんな余裕も無かったという。



恐ろしいモノを見てしまった・・・・。



彼女はそのまま恐怖に怯えながら帰路につき、夜も明かりを点けたまま寝た。



しかし、脳裏に焼きついたその女の顔が恐ろしくて結局その夜は一睡も出来なかった。



それから、彼女は毎日のように、その廊下でその女を目撃した。



やはり、彼女にとってその女は恐怖でしかなく、次第に仕事も手につかなくなっていく。



そんな毎日を続けていた彼女は、全てが上手くいかず、その上幽霊さえ見えて



しまう自分自身を嘆いた。



そして、今度こそ、その仕事を止めようと思い始めたという事だった。



そんなある日、彼女が出社してその廊下を歩いていると、朝だというのに



その女が立っているのが見えた。



恐怖で体が硬直し、今にも仕事を投げ出してその場から逃げ出したかった。



それでも、彼女がそのままその女の前を通り過ぎようとした時、突然彼女の耳に



おはよう・・・・・。



という声が聞こえてきた。



驚いた彼女は辺りを見回したが、廊下には彼女とその女しかいなかった。



そして、彼女は咄嗟に、



おはようございます・・・・。



と返してしまったという。



霊の声が聞こえている事、そして姿が視えている事を知られてしまった!



彼女は、自分のしでかした大きなミスを嘆いた。



その女の霊の姿や声が自分には視えているし聞こえている、という事を知られる



という事は、その女の霊がより自分に接近してくる様になる事は容易に想像できた。



彼女は頭の中が真っ白になった。



そして、その場から逃げる様にして小走りで自分の部署へと逃げ込んだという。



そして、その日仕事が終わり、再びその廊下へと差し掛かった彼女は、またしても



思いがけない声を聞いたという。



おつかれさまでした・・・・。



その声は確かにそう聞こえた。



そして、辺りを見回すと、いつもの女が廊下の隅っこに立っていた。



気のせいか、女の顔は前回とは違い恐ろしく感じなかったという。



彼女は無意識に、その女に小さくお辞儀をすると、そのまま小走りで



廊下を駆け抜けた。



それから、その女の姿を毎日見る様になった。



不思議と怖さを感じなくなっている自分に気付いた。



そして、その女は彼女が通りかかる度に彼女に必ず声を掛けてくれた。



おはよう・・・・。



こんにちは・・・・。



おつかれさま・・・・。



それは何の変哲もない挨拶でしかなかったのに、彼女にはとても暖かく感じたという。



そうしているうちに、彼女場自分の中からその女に対する恐怖が



消えている事に気付き始めた。



こんな霊もいるんだ・・・・。



きっと最初に会った時に廊下の照明が明るかったのも、もしかしたらこの女の人が



私を怖がらせまいとして、してくれた事なのかも・・・・。



そう思い、自分の勝手な先入観で、その女の事を邪悪で恐ろしいものと決めつけて



いた自分を心から懺悔したという。



そして、それから彼女は毎日、その廊下を通り、女を見かける度に自分から



おはようございます・・・。



こんにちは・・・・。



おやすみなさい・・・・。



と声をかける様になった。



そして、そんな言葉を掛けられたその女は、いつも小さく会釈を返してくれた。



それが彼女にどんな変化をもたらしたのかは分からないが、



いつしか彼女はその女の存在を怖がらなくなっていた。



そして、ちょうどその頃から、彼女は新しい職場でも明るく周りに



溶け込む事が出来る様になった。



自分の研究はヤル気さえあれば、どんな所ででも出来る筈!



先入観だけで職場も仕事も人間も、判断してはいけない!



彼女はそう考えて仕事にも没頭した。



その結果、彼女の転属先の部署は、輝かしい成果を残すようになり、やがて



彼女も、最新設備の整った新しい部署へと転属が決まった。



その部署のリーダーとして・・・・。



ただ、彼女はいまだに、仕事やプライベートで悩んだりすると必ず、



その廊下へとやってきて、独り言を喋っているのが頻繁に目撃された。



変な噂を流す者もいたが、彼女はもう周りの噂など一切


気にしなくなっていた。



そして、その独り言の相手は、紛れもなく廊下に現れる女だった。



今では彼女の悩みを聞いてくれる大切な親友になっている。



そして、今では彼女も自分に霊感があって良かったと心から感謝している、



という事だ。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:02Comments(2)

2019年06月10日

最終値下げ! ミマキJV33-130極上中古機

SOLDOUT!
お買い上げ、ありがとうございました!





最終値下げ!
15万円(税別)




ミマキJV33-130の中古機が入荷しましたので

ご案内させて頂きます。





いわずと知れたミマキのベストセラー機。

現行機種からは外れましたが、現在でもなんら

遜色のない性能であり、故障も少ない

溶剤プリンタの名機です。

画像では7色仕様なっておりますが、

現在は、プリンタヘッドの交換と併せてインクも

4色×2本仕様になっております。(今年の6月にヘッド交換済)

機械の状態としては、使用期間が4年間で、使用頻度も

高くなかったようです。

プリンタヘッド及び周辺消耗部品は全て新品に

交換済みになりますので、最高の状態で

ご使用頂けると思います。

勿論、サーバ用として画像のPCセットと

ラスターリンクPRO5が付属致します。

お買い上げの流れとしましては、

引き取り当日、トラックもしくはプリンタが

そのまま積み込める大きさの車をご用意ください。

弊社においでいただき、プリンタの動作確認と操作説明を

させて頂きます。

プリンタとソフトの説明はしっかりとさせて頂きますので、

プリンタ初心者の方でも安心です。

そのうえで、了解いただいたうえで、プリンタの代金を

お支払い頂ければ、と思います。

お引取りの際、車への積み込みはお手伝いさせて頂きますが、

車に積み込んだ際の確認、そして弊社からの帰り道における

保障は対象外となりますので、できるだけプリンタに衝撃が

加わり難いハイエース(ハイルーフ仕様)で引き取りに来られるのが

良いのかもしれません。

そして、プリンタをお引き渡し後も、不具合や質問などには

しっかりと対応させて頂きます。

以上、かなり極上の中古機です。



ご不明な点は、お気軽に当社までお問合せ頂ければ、

と思います。

細田塗料株式会社 TEL076-243-3344 担当 平尾

宜しくお願い致します。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 07:56Comments(0)

2019年06月09日

お寺で過ごした・・・・。

これは俺がかなり前に体験した話。

俺は友人2人と一緒にとある心霊スポットにでかけた。

そこは昔、処刑場として罪人が命を断たれたという曰くつきの場所だった。

その場所は市街地の中にひっそりと隠れるようにして存在していた。

当然、近づく者は誰もおらず、またその土地を利用して何かを建てようとすれば

必ず怪異が起こり怪我人死人が出てしまう。

まさに、リアルな曰くつきの場所だった。

俺は真夜中にその場所に到着し、車から降りたところまでは記憶している。

しかし、それから後の記憶が完全に飛んでしまっていた。

俺はその場所で急に意識を失い、その後、意識を取り戻すと訳の分からない

行動をとり、女の様な声ですすり泣いていたという。

慌てた友人達は俺を急いで病院に運んだが、精神に異常をきたしていると

診断され、逃げるように病院から抜け出してきた。

俺としてはAさんに相談するのが一番なのは分かっていたが、心霊スポットになど

行ったのがバレると、それこそ頭ごなしに激怒されるのは目に見えていた。

だから、俺は友人のアドバイスに従い、とあるお寺に向かった。

そこで俺を見た住職は、今すぐに対策を講じないと命さえ危ういと言った。

どうやら、俺の腕には薄く青いあざの様な輪が描かれていたようだ。

それが目印となり、俺には逃げる術は無いのだと・・・。

そして、住職は俺に対して冷静にこう言い放った。

あなたには昔、その処刑場で命を断たれた女性の怨念が憑いています。

無実の罪で恨みの中で死んでいった女の怨霊です。

そして、あなたにもその苦しみを知って貰い、そのまま冥府に連れて行こう

としています。

その証拠があなたの腕に付けられた青い輪のの様な痣なのです。

それを断つには、あなた自身で除霊をするしかありません。

良いですか。

これからあなたは3日間、この寺でお経を唱えなくてはいけません。

私も、その間、この寺を離れます。

あなたは一人だけでその間、線香とロウソクの火が消えないようにしながら

このお堂の中で過ごさなくてはいけません。

外に出たら、二度と助かる方法は無いと思ってください。

良いですか?

私も、そしてあなたの知人もその3日間、絶対にこのお堂の外からあなたを

呼ぶことはありません。

3日目の朝、あなた自身でこのお堂から出て来てください。

その時には、きっとその女の霊も貴女から離れるしかなくなる筈ですから・・・。

そう言われた俺は、急に恐ろしくなった。

お堂に入る前には住職が俺の体を清めてくれ、そのうち、俺も事の重大さに

気付いていった。

そして、俺をお堂の中に一人残して住職が出ていく際、俺に対してこう言い残した。

良いですか?

霊は自らこのお堂の中に入る事は出来ません。

だから、何があっても、絶対にお堂の外に出てはいけない!

お堂から出たら、死ぬ・・・・。

お堂から出なければ助かる・・・・。

簡単な事です・・・。

と、言葉とは裏腹に心配そうな顔で、そう言った。

そして、一日目がスタートした。

お堂の中では、かなり自由に過ごす事が出来た。

パンやおにぎり、お菓子なども用意されており、スマホの使用も許されていた。

お経を読めとは言われたが、それは、危険を感じたり何かの気配を感じたり

した場合だけで良いと聞かされていた。

だから、俺も簡単な事だと高をくくっていた。

自分からこのお堂を出る事などあり得ない事だ、と。

しかし、丸3日間、お堂の中で過ごすという事は実際にやってみると

なかなか退屈なものだった。

それでも、何とか1日目の昼が過ぎ、そして夜になった。

夜になると、お堂の中の明かりはとても心細いものでさすがに不安になる。

お堂の中は決して広いものではなかったが、それでも時折聞こえる猫の鳴き声や

床板のきしみ音に彼は思わずビクッとしてしまう。

ロウソクの炎が消えそうになり、俺は新しいロウソクを立て、それに火を点けた。

ロウソクの明かりがこんなに暖かく、そして心強いものだとは、俺はそれまで

知らなかった。

そのロウソクの明かりをぼんやりと見ていると、俺の気持ちも落ち着いてきたのか、

すぐに眠気に襲われ、知らぬ間にその場で寝入ってしまった。

それから、どれ位の時間が経過したのか・・・・。

深夜、俺は、カタカタという音で目が覚めた。

ハッとして起き上がると、お堂の障子が音を立てて揺れている。

思わず、身構える俺。

すると、次の瞬間、お堂の障子が誰かが爪で引っ掻いたかのように全て同時に

破られていく。

そして、その破れた隙間から沢山の顔がこちらを見ていた。

明らかに恨みと憎しみのこもった冷たい眼差し。

俺は思わず、座ったまま後ずさりしてしまう。

すると、今度はお堂の入り口の戸がコンコンとノックされ、

○○、大変な事になったね!

でも、もう大丈夫だよ!

もっと安全に隠れる事が出来る場所が見つかったから、ここから出ておいで!

という声が聞こえた。

それは限りなく俺の母親の声に似ていた。

しかし、母親がこの状況を知っている訳が無かった。

だから、俺は体を固くしながら無言を貫いた。

すると、今度は入口の木製の戸が強い力で叩かれる。

ドンドン!・・・・ドンドン!・・・・。

戸を叩く音はどんどん大きくなっていき、いつ戸が壊されるのか、と不安で

いっぱいになった。

そして、俺はその時、気が付いた。

破かれた障子の隙間から無数の顔が、こちらを覗き込んでいるのを・・・。

もう生きた心地はしなかった。

それから朝まで俺は固まったまま動く事が出来なかった。

必死でうろ覚えのお経を口ずさみ、目を開ける勇気も無かった。

そうしているうちに、夜が明けたのか、お堂の中が静かになった。

ぐったりした俺は、そのままじっとしていたかったが、やはりお堂の戸が

気になってしまい、その場から立ち上がると、入口の戸へ向かって歩き出した。

見れば見る程凄まじい光景だった。

お堂の入り口の戸は、強い力で潰された様になっており、その状態を見る限り

とても3日間もの間、俺を護り抜いてくれる様には思えなかった。

朝になると、住職が様子を見に来てくれたがお堂の中には入ろうとはせず、

お堂の外から、

あ~、こりゃ凄いな・・・・。

大丈夫でしたか?

と声をかけてくれたが、俺がお堂から出ようとすると、

出てはいけません!

私も中に入らないのは、同じ理由なのですから!

このお堂の中にはとても強力な結界が張ってあります。

ただ、それは誰か人間が中に入ったり貴方がお堂の外に出たりすれば、それで

結界の効果は消えてしまうのです。

外回りは出来る限り塞いでおきますから、辛いでしょうが、自らの招いた

厄災なのですから、どうか気持ちを強く持ってください!

それにしても、貴方に眼をつけた怨霊というのはかなり強力なようですね。

それなら、尚更の事、このお堂以外に貴方が助かる場所は在りませんし、もしも

中に入られたとしたら、それは貴方が何処に隠れても結果は同じ、という事

なのですから、どうか諦めてください。

とにかく、気持ちを強く持って・・・・。

そう言われた。

住職にそう言われてしまうと俺には何も返す言葉が無かった。

それから、お堂の入り口の戸は補強され、障子も綺麗に張り替えられた。

しかし、そんな事で、あの怨霊から身を護れるのか、は甚だ疑問だった。

そうしているうちに、また夜が来た。

俺は、気持ちが動揺してしまいじっと座っている事など到底出来なかった。

用意された食べ物も喉を通らず、ただじっとお経の本をぼんやりと

眺めているだけだった。

そうして、時刻は午後10時を回った頃だろうか。

突然、お堂が大きく揺れた。

地震か?と思い固まっている俺の目の前でお堂の床がゆらゆらと揺れて見えた。

いったい何が起こるのか?と目を凝らしている俺の目の前で、何かが床を

通り抜けてお堂の中へと押し上がって来るのが視える。

呆然とする俺の前にそれは姿を現した。

その姿は、まるで昔の幽霊画から出てきたように醜悪でおぞましい姿をしていた。

俺は悲鳴を上げてお堂の中を後ずさりする。

そして、それは俺の後を追うように移動するが決して俺に近づこうとはしなかった。

俺はパニックになった頭で考えた。

もしかしたら、これは俺をお堂の外に逃げさせようとしているのかもしれない、と。

ただ、そうだとしても俺の目の前にある恐怖に変わりは無かった。

その時だった。

突然、お堂の戸が、ドンドンと叩かれた。

思わず、ビクッとなった俺だったが、何故かその音が聞こえた途端、目の前の

幽霊も消えてしまった。

どうなってるんだ?

今度はどんな手を使うつもりなんだ?

そう考えていると、お堂の障子がビリビリと音を立てて破られるのが分かった。

そして、再び、お堂の戸が大きく叩かれる。

と、すかさずまた障子がビリビリと音を立てて破られる。

その度に俺の体はビクッと反応してしまったが、そのうちに想定外のものが

俺の眼に映り込んだ。

破れた障子の隙間から、手が差し込まれ、その手はしっかりとピースサインを

している。

ちょっと、待て・・・・。

ピースサインをする怨霊って・・・・・?。

すると、突然、お堂の戸が蹴破られた。

そして、其処に立っていたのは紛れもなくAさんだった。

はぁはぁ…・まだ元気みたいですね・・・。

そう話すAさんは、肩で大きく息をしていた。

俺が、

どうしたの?凄く疲れてるんじゃないの?

と聞くと、

ああ・・・ちょっとKさんを怖がらせようとして頑張ってしまったので・・・。

と返してきたので、

あの・・もしかして、さっきからお堂の戸を叩いてたのも障子を破ってたのも、

もしかして、Aさんなの?

と聞くと、

怖がってくれるかな・・・って思ったもので・・・。

でも、良かったじゃないですか?

私が来たお蔭で、悪い霊も消えたでしょ?

そう言われて、俺はある事に気付いた。

そう、Aさんは、結界を張ってあるお堂の中へ堂々と入って来ていた・・・。

あのさ・・・どうしてくれるの?

Aさんがお堂の中に入って来たから、もう結界が効力を失っちゃったじゃん?

とAさんに嫌味を言うと、

ああ・・・こんな結界じゃ無理です。

あの悪霊は祓えませんよ・・・。

すぐにお堂の中に入られて、Kさんはあちらに連れて行かれると思いますよ!

とはっきりと言ってのける。

反省のかけらもない・・・。

俺が呆れてAさんを見ていると、

そもそも、Kさんが、そんな場所に行くからいけないんですよ!

私が偶然、Kさんが此処に居るっていうのを知ったからまだ良かったですけど

あのままだったら、間違いなくKさん、朝には遺体となって発見されてましたからね!

そう勝ち誇ったような顔で言われるとさすがにむかついてしまう。

そして、Aさんが続ける。

という事で、乗りかかった船なので私が力を貸しましょうか?

今なら私も金欠状態ですから、次の給料日まで、晩御飯を御馳走してくれるという

バーゲンプライスで協力しますけど?と。

本当ならムカついていたので、即座にその申し出を断りたかったが、Aさんの力は

十分分かっていたし、やはり死にたくもなかったので、俺はAさんの提案に

賛同するしかなかった。

だから、俺は、

分かったよ!

それじゃ、Aさんもお堂の中に早く入ってよ!

と言うとAさんは冷たい眼で

なんで、そんな面倒くさい事をしなきゃいけないんですか・・・・。

違いますよ・・・・こんな処で悪霊さん達がお出ましになるのを待っていたら、

いったい、いつになることやら・・・。

だから、こっちから悪霊の元に出向きます!

今すぐに!

さっさと案内してくださいね・・・。

そう言うと、Aさんはお堂の中に置かれていた御菓子類を可能な限りボケっトと

バッグに詰め込んで嬉しそうにお堂から出ていく。

あの・・・・それって俺がお堂の中で過ごす為のお菓子なんだけど・・・?

と言うと、Aさんは涼しい顔で、

もう必要ないから貰ってあげるんですよ!

つべこべ言ってないでさっさとその場所まで案内してくださいね・・・・。

と俺を促す。

俺はAさんの車に乗り込むと、そのいわくつきの場所へと案内した。

時刻は既に12時を回っていた。

辺りは異様な雰囲気に包まれている。

そして、目的地に到着すると、

Kさんは、このまま車に残っていてくださいね・・・。

と言うので、俺は

いや、あの・・・車に一人きりで残されるのも怖いんだけど・・・・。

と返すと、Aさんは少しだけ笑って、

私の車にちょっかい出してくるほど度胸のある霊なんていないから大丈夫!

そう言って、車から降りて1人で暗闇の中へと消えていった。

それから、暫くして、辺りが一瞬明るくなった。

すると、Aさんが戻って来て、車に乗り込むと、

まあ、ざっと、こんなもんです!

良かったですね?

私と知り合いで!

と上から目線で言われてしまった。

結局、それから怪異は全て収まったが、俺にはお寺の修繕費とAさんへの

奢りという地獄が待ち受けていたのは言うまでもない。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 20:24Comments(3)

2019年06月09日

誰か・・・・・いる・・・。

これは以前、飲み屋で偶然知り合った男性から聞かせて貰った話である。



彼はその頃、単身赴任で関西方面のとある県で働いていた。



とは言っても就職難の折り、期間工として出稼ぎ労働的な仕事に従事



していたそうなのだが・・・・。



毎日の仕事は3交代制で深夜労働も多く、決して若くはない彼にとっては



かなり辛い仕事だった。



そのせいなのか、ある時、彼は体調を崩し仮住まいとしていたアパートで



寝込んでしまった。



かなりの高熱に苦しみ、何も食べられず、まさに生死の境を彷徨う状態だった。



そして、1週間程経過した頃、ようやく何とか起き上がれる様になった彼は



体が完治していないのも承知で職場に復帰した。



しかし、そこで言い渡されたのは、解雇というつらい現実だった。



確かに彼は、人づてに体調不良で欠勤する旨を伝えていたらしいのだが、



どうも、それは職場の上司には全く伝わっていなかった。



そして、それを何度弁解しても全く取り合っては貰えなかった。



結局、彼の言い分は少しも通る事はなく、彼はそのまま解雇となった。



会社が用意したアパートからもすぐに出ていかなければならず、彼は途方に



暮れた。



結局、翌日には社宅アパートを引き払わなければいけなくなり、彼は失意



の中でアパートを出たという。



荷物だけは数日間だけそのままでも良いという許可をもらったので、それまでの



間に新しい仕事と、そして新しい部屋を確保する必要があった。



所持金もわずかであったが、何よりも遠い地元で暮らす奥さんと子供には



期間工をクビになった事はどうしても言えなかった。



だから、生活費を極力節約して、何とか一日でも早く新しい働き口を探す事に



専念する事にした。



しかし、夏ならば公園のベンチで寝泊まりする事も可能だったかもしれないが、



その頃はちょうど初冬。



そんな事をすれば下手をすれば死んでしまう。



彼は、とりあえずその夜なんとか寝る事が出来るスペースを探して街をふらつく事に



した。



駅の構内や公共施設など色々と回ってみるが、どこも警備が厳重で侵入する事は



出来なかった。



ふらふらになりながら必死に寝床となる場所を探していた彼だったが、やはり



簡単には見つかるばすも無かった。



そして、もう諦めかけた時、彼はとある廃マンションに辿り着いた。



そのマンションは明らかに誰も住んでいなかったが、まだそれなりに綺麗な



状態であり、周りの街灯もしっかりと辺りを照らしていた。



実は彼は廃墟といわれる建物を探していたのではなかった。



元々、心霊スポットというものは苦手で一度も行った事も無かったのだから。



しかし、そのマンションは入口に立ち入り禁止の立札こそ置かれているものの



それ以外は綺麗で明るいマンションに見えた。



だから、彼はかなり切迫していたこともあり、何とかその日の夜をそのマンションで



過ごす事に決めた。



玄関に入ると正面にエレベータがあったが、当然稼働しているはずもなく、



彼は階段を使って2階へとのぼった。



そして、1軒1軒、ドアの鍵が開いている部屋を探しだした。



しかし、鍵が空いている部屋などどこにも無かった。



そりゃ、そうだよな・・・・。



鍵が空いてたら不用心すぎるもんな?



そんな独り言を呟いていると、今まさに部屋へ忍び込もっとしている自分自身が



とても滑稽に感じて思わず、クスッと笑ってしまった。



2階、3階、4階と階段をのぼっていき、その階の全ての部屋を確認したが



やはり鍵が掛っていない部屋など一つもなかった。



しかし、それでも彼はよかったのだという。



マンションの中はそれなりにしっかりとした造りであり、外気があまり侵入して



こなかったから、万が一の時には、廊下の隅にでも寝れば良い。



さすがに低い階だと周囲の住民に感ずかれて警察に連絡される恐れがあったが、



高い階までのぼってしまえば、少なくともその危険だけは回避出来る。



彼はそう考えていた。



そんな事を考えながら、最上階である8階までのぼって来た時の事。



他の階と同じように1軒1軒、ドアの鍵を確認していると、なんと1軒の家で



玄関の鍵が掛っていなかった。



恐る恐るドアノブを回して部屋の中に入る。



出来るだけ音がしない様に静かにドアを閉める。



部屋の中はガランとして殺風景だったが、フローリングは綺麗であり、月の明かりで



部屋の中も暗くはなかった。



彼は用心の為に玄関の鍵を内側から掛けて部屋の中へとゆっくり入っていく。



ついそれまでの癖で玄関に靴を脱いでから部屋の中へ入ってしまったが、一時的に



部屋を使わせて貰うのだから土足で部屋の中を汚すのはマズイと思い、そのまま



靴は玄関に脱いだままにしておいた。



窓際のフローリングの上に座った彼は、スーパーで買ってきた半額のパンと



ジュースを取り出してゆっくりと食べだした。



その部屋の窓から見える夜景を見ながら、本来ならこんな部屋に住めるのは



相当なお金持ちなのかもしれないな、と思いながら明日からの不安を払拭する



ように彼はパンとジュースを味わいながら食べた。



こんな場所に侵入して、それでも少しも恐怖を感じない自分に彼自身が一番



驚いていた。



勿論、やはり警察の世話になるのだけは避けたかったから、聞こえる筈の無い



高さの部屋に居るにもかかわらず彼は出来るだけ物音をたてない様にした。



部屋の中は初冬だというのにかなり快適で寒さは少しも感じなかった。



彼は着ているジャンバーのチャックを閉めて襟首を伸ばすと、そのまま



フローリングの上で横になった。



これで何とか、今夜は無事に過ごせそうだ・・・・。



そんな安心からか、彼はそのまま睡魔に襲われて寝てしまったという。



そして、彼はふと真夜中に目を覚ました。



玄関の外の廊下から何かの音が聞こえていた。



もしかしたら、警察?



彼はハッとして息を殺し耳に全神経を集中させた。



廊下からは人の声は聞こえてはこなかった。



ただ、誰かが廊下を固い靴で歩く音とドアが開いたり閉まったりする音が



何度も聞こえていた。



はじめはその音がする度に体を固くして息を殺していた彼だったが、どうやら



その音はいつまで経っても聞こえ続けている。



だから、彼は玄関の方へゆっくりと進むとドアに耳をつけて外の様子を窺おう



とした。



しかし、ドアに耳を寄せると先ほどまで聞こえていた音が全く聞こえてこない。



しばらくは様子をうかがっていた彼も、さすがに外の様子が気になってしまい



ゆっくりとドアの鍵を開けてドアノブを回しなるべく音がしない様にドアを



半分ほど開けて廊下へと顔を出した。



そして、左右を確認したが、其処には静かな廊下が続いているだけ。



先ほどから聞こえていた音は一体何だったのだろうか?



彼は首をかしげてしまう。



その音は確かに彼がいる8階から聞こえてきていたのは間違いなかった。



もしかしたら、俺と同じようにホームレスの人達も此処を利用しているのかも?



そう思った彼は恐る恐るドアから出ると廊下を探索し始める。



しかし、明らかに彼がやって来た時と様子が変わっていない。



そこで初めて時計を見ると、時刻は午前2時半くらいだったという。



部屋に戻って寝なおそうと思った彼の眼に不思議な事が映る。



それはエレベータホールの方からぼんやりとした明りが洩れているという事。



暗闇の中の明かりというものは人を惹きつけてしまうのか、彼はその明かりの正体を



確かめる為にエレベータに向かって歩き出した。



そして、エレベータの近くまでやって来た彼は、思わず、えっ?と声を出して



しまう。



彼が来た時には動いていなかったエレベータが動いていた。



そして、そのエレベータの中から漏れる明かりが廊下を照らしていたのだと分かった。



明かりの正体は分かったが、彼の心中は穏やかではなかった。



何しろ、電気が来ていないはずの廃マンションのエレベータが稼働しているという事に



奇妙な感じがしたし、何よりこのマンションが本当に誰も人が住んでいない



廃マンションなのか?と疑問に思ってしまった。



しかし、マンションの入り口には管理会社が出しているであろう立ち入り禁止の



立札とマンションを取り囲むようにしっかりとロープも張られていた。



だから、きっと廃マンションなのは間違いないのだろう・・・・。



だとしたら、どうしてエレベータだけがしっかりと動いているのか?



そんな事を考えていると、突然、ゴーッと大きな音がしてエレベータがのぼって来る



音が聞こえた。



彼はそのエレベータが何階で停まるのかを見てやろうと思い、しばらく



柱の陰からエレベータをじっと見ていた。



しかし、どうやら、そのエレベータが彼がいる8階で停まるのが分かると、



慌てて廊下を走り、先ほどの部屋へと入ってドアの鍵をかけた。



少なからず、もしかしたら警察なのでは?という恐怖があったのか、彼はドアの



傍で息を殺して再び意識を耳に集中した。



すると、誰かが廊下をコツコツと靴音を鳴らしながら歩いてくる。



彼の心臓の鼓動はどんどん速くなっていく。



すると、その足音は彼のドアの前を通り過ぎて、どうやら隣の部屋へと入っていく。



隣の部屋のドアが開く音とそしてパタンとドアが閉まる音がはっきりと聞こえた。



そして、隣の部屋からは深夜だというのに子供の笑い声と、そして奥さんと



思われる女性の声が聞こえてきた。



やっぱり誰かが住んでいたんだ・・・・・。



もしかしたら、このマンションの最後の住民なのか・・・・。



もしも、そうだとしたら、このマンションが無人状態で手をつけられない理由も



なんとなく理解できた。



そう思うと、気分が軽くなった。



さすがにこの広いマンションに一人ぼっちというのは怖いものがあった。



不法侵入している身とはいえ、自分の他に、このマンションに家族が



住んでいるのだ、と分かるとそれはそれで心強いものがあった。



彼はそのまま安心して眠りに就いた。



そして、朝になって目覚めた彼は、隣の住人達にばれないように静かにドアを開けて



廊下へと出ると、出来るだけ音をたてないようにしてエレベータまで進む。



しかし、其処には真っ暗な状態のエレベータドアがあるだけで、とても稼働している



様には見えなかった。



おかしいな・・・・。



そう思いながら、彼は少ない荷物を抱えて、階段を静かに降りていった。



勿論、彼としても、そのマンションに泊まるのはその夜だけのつもりだった。



朝から職探しに精を出した彼は、昼になると、またスーパーで半額のおつとめ品の



食料を買って公園で食べていた。



すると、彼と同じようなホームレスらしき人が彼に話しかけてきた。



その人も必死に仕事を探しているとの事で、彼は色々な話をして盛り上がった。



故郷の話、家族の話、そして昨夜泊った廃マンションの話。



しかし、それを聞いた途端、その人は驚いた顔をしたという。



あんな恐ろしい場所で一夜を明かしたのか?



何か恐ろしい目に遭わなかったか?と。



だから、彼は笑いながらこう返したという。



あそこに住んでるのはお化けなんかじゃなくて、普通の家族だよ・・・。



きっと立ち退きを拒否してるんじゃないのかなぁ・・・と。



すると、その人は、



そんな事は絶対にない筈だ!



あそこは心霊スポットになっていて誰も近づかない場所なんだ・・・。



それに、電気も来ていないマンションでどうやって家族が生活出来るんだ?



と、真剣に言ってくる。



それなら、今夜、一緒にもう一晩だけあのマンションに泊まらないか?



と彼は提案したが、彼はすぐに首を横に振って、



あんな所には絶対に近づきたくないよ!



君もあそこにはもう近付かない方がいい!



そう言って、去っていったという。



勿論、彼はもうあのマンションに泊るつもりはなかったから、すぐに忘れて



午後からの仕事探しに精を出した。



しかし、やはりその日も仕事は見つからず、その夜はネットカフェに泊まろうと



したらしいが、やはり金銭的に辛く断念した。



そして、その時、彼の頭の中には、あのマンションの事が浮かんでいたという。



もう一晩くらいならばれないだろう・・・・。



そう思った彼は、夕方の早いうちに、食料を買い込んでその廃マンションへと



向かった。



もう一度、入口を確認したが、やはり「立ち入り禁止」の文字がはっきりと



読み取れた。



あの家族はどうして立ち退きを拒否し続けているんだろうか?



そんな事を考えながら彼は、また階段で8階を目指す。



体力だけには自信があったから、8階までの階段も苦ではなかった。



8階までのぼり、エレベータを確認すると、やはり稼働はしていない様子だった。



彼は出来るだけ足音をたてないように静かに歩き、昨夜泊った部屋の前へと



やってきた。



昨夜は気が付かなかったがドアにはまるで鋭利な刃物でつけられたような



傷跡が無数に残されていた。



しかし、そんな事を気にしている余裕も無かった彼はそのまま静かにドアを開けて



部屋の中へと入った。



部屋の中へ入ると、彼は誰に言うでもなく、



今晩もう一晩だけ泊めてください・・・・。



と呟くと、昨夜の同じ場所に静かに座った。



そして、昨夜と同じように的から見える景色を眺めながら食事をし、



それからゆっくりと横になった。



昼間、精力的に就職活動をしたせいか、彼はすぐに睡魔に襲われて、すぐに



眠りに落ちた。



そして、その晩もな夜中に目が覚めた。



やはり廊下を歩いてくる靴音が聞こえていた。



時計を見ると、やはり午前2時半を少し回っていた。



またこんな遅くに帰宅なのか?



一体どんな仕事をしているんだろう?



そんな事を考えながら、彼は再び眠りに就こうと横になった。



すると、突然、部屋の壁が、ドンドンドンと大きく3階叩かれた。



ビクッとして起き上がる彼。



まさか、俺がこの部屋に居るのがバレてるのか?



いや、極力、静かにしていたのだからそんな筈はない・・・。



それにしても、こんな真夜中に部屋の壁を叩くなんて何か喧嘩でもしてるのか?



そう思って彼はゆっくりと、そして静かにフローリングから立ち上がった。



とりあえず、何かあったらすぐに逃げ出せる準備だけはしておこう・・・。



そう思って、彼は持ってきた荷物をひとまとめにして持つと、玄関へ行って



靴を履いて来ようと思った。



すると、その時、再び、部屋の壁が、ドンドンドンドンと今度は4回



大きく叩かれる音がした。



彼がいる部屋の中にも振動として伝わってくる程に・・・。



その時、彼は異様な違和感を感じたという。



どんなマンションでも隣家の壁との間にはそれなりの消音材が使われている。



それなのに、先ほどから聞こえてくる音は、まるで、彼が居る部屋の壁を叩いている



様に大きく振動を伴って聞こえてきていた。



その時、彼は背中に悪寒が走った。



もしかして、叩かれているのは隣の部屋の壁ではなくて、この部屋の壁



なんじゃないのか?



そう思って、ゆっくりと暗いリビングを振り返った。



声が出なかった。



それと同時に耳のすぐ傍で心臓の鼓動が早鐘の様に脈打つのが分かったという。



彼の部屋のリビングには、大人の男女と、そして小さな男の子が正座して



彼の方を見ていた。



彼は固まったように全く動けなかった。



どれ位の時間、そうして固まっていたのか、覚えてはいない。



ただ、その時は何も考えられず呼吸をするだけで精いっぱいだった。



こ・ろ・さ・れ・る・・・・・・・。



死の恐怖を彼はその時初めて感じていた。



そして、その時、正座した家族は同時に薄気味悪い笑みを浮かべた。



その笑みを見た瞬間、その不気味さに彼は弾かれたように玄関へと走りドアの鍵を



開けようとする。



しかし、先ほどまで簡単に回っていた鍵は、とてつもなく固く、びくともしない。



彼は完全にパニックになっていた。



リビングの方から何かが動く音がした。



彼は自分自身に落ち着きように言い聞かせると、もう一度ゆっくりとドアの鍵



を回す。



すると、カチャッという音がして鍵が開いた。



彼は恐怖で後ろを振り返る事も出来ず、そのまま転がるように廊下へと飛び出した。



逃げなくては!



そう思った彼はいつもの階段へと走った。



どうしてそれまで気付かなかったのか、マンションの廊下はとても寒く、そして



完全なる漆黒の闇を作りだしていた。



ただ、彼の頭の中には階段までの経路はしっかりと記憶出来ていた。



彼はがむしゃらに走った。



もう、近隣住民に聞こえようが、どうでも良かった。



いっそ、大声で助けを呼びたいくらいだったが、それはしなかった。



何故なら、その状況はまるで異世界にでも迷い込んで様に感じていたのだから、



きっとどれだけ大声を出してもきっと誰にも聞こえはしない気がしたという。



階段まで走った彼は急いで階段を駆け下りようとしたが、何故かその時、



エレベーターがその階で停止し、まるで彼が乗るのを待っていてくれている



様に感じたという。



彼はその時、初めて後ろを振り返った。



すると、彼が先ほどまで居た部屋のドアがゆっくりと静かに開くのが見えた。



彼にもう迷いは無かったという。



急いでエレベーターに飛び乗ると、息つく暇もなく1階のボタンを押した。



ゆっくりとエレベーターのドアが閉まっていく。



そして、ゴーンという機械音とともに彼が乗ったエレベーターは静かに



降下し始める。



生きた心地がしなかった。



彼は恐怖のあまり目を閉じてエレベターの中にうずくまっていた。



エレベーターは何事もなく降下し続け、1階に到着したのか、静かにドアが



開く音がしたという。



彼はマンションから一刻も早く逃げようと目を開けて立ち上がろうとした。



そして、そこで固まった。



エレベーターの階数表示は8階を示していた。



どうして?



間違いなく下へ降りた筈なのに・・・・。



彼は何が何だか分からなかったがすぐに先ほどの親子の事を思い出し、慌てて



エレベターたから出ようとしたらしいが体が固まって動かなかった。



その時、彼は見てしまった。



飽いたままのエレベーターのドアの間から地べたを這うように何かが近づいてくるのを。



ズズズッ・・・・ズルズル・・・・ズズズッ・・・・ズルズル・・・・。



彼にはその黒い3つの塊が、先ほどの親子である事は容易に想像できたという。



体は身動きひとつ出来ず、エレベーターの開閉ボタンも押す事が出来なかった。



彼は息苦しさと共に背中を冷たい汗が流れ落ちるのを感じていた。



彼の視線は完全に、這って近づいてくるその親子に釘づけになっていた。



どうすればいい?



俺はこんな所で死ななければいけないのか・・・・。



そう考えると、大粒の涙が溢れてきた。



そして、彼は恐怖の中で、まるで死を覚悟した様に、奥さんと子供の名前を



呼んで謝り続けたという。



命乞いという気持ちはなく、不甲斐ない自分を必死で詫びたという。



何もしてあげられていないのに、こんな所で死んでごめん!



そんな事を考えていた時、突然エレベーターのドアが閉まった。



そして、何も押してはいないのに、エレベーターはゆっくりと降下し始める。



彼は突然の出来事に唖然としていたが、もしかしたら助かるのではないか?



という希望が一旦芽生えると、その気持ちはどんどん大きくなり、やがて、



こんな所で死んでたまるか!



という気持ちになってきたという。



その時だった。



どうやって移動しているのかは分からないが、彼が乗ったエレベーターが



別の階に停止しようとする。



彼にはあの親子が先回りしてエレベーターのボタンを押したとしか考えられなかった。



そして、エレベーターのドアの窓に突然貼りつくようにして、その不気味な顔が



現われる。



彼は恐怖した。



心臓が止まるかと思った。



しかし、エレベーターのドアは開く事はなく、また静かに動き出した。



ホッとしたのも束の間、また別の階へエレベーターが停止すると、先ほどの親子が



ドアの窓に貼り付いてくる。



それでも、何故かエレベーターは彼をその家族から護るかのように決してドアを



開く事はなく、再び静かに動き出す。



そんな事を繰り返しているうち、彼は無意識のうちにポケットから携帯を取り出し、



110番で助けを求めると、そのまま意識を失ったという。



そして、次に彼が目覚めたのは、心配そうに見つめる警察官に揺り起こされた



時だった。



警察官からは厳しく叱責されたが、彼は助かった喜びで、再び大粒の涙を



流した。



そして、警察に行き、簡単な事情聴取を受けた時、彼はその時体験した話を



詳しく話した。



とても信じて貰えるとは思わなかったが、警察官は真剣な顔で、そして辛そうに



その話を聞いてくれた。



そして、今回だけは特別、という言葉とともに解放されることになった彼に、



警察官はこう言ってくれたという。



あのね…少なくとも私は貴方の話を信じていますよ・・・・。



だって、貴方は電源が無く稼働もしていないエレベーターの中で意識を



失っていたんですから・・・・。



それにね・・・・実は私も見たんですよ。



あのエレベターターの窓に無数に付着した人の顔の跡と気味の悪い笑い声を。



だけど、もう決してあんな所には近づかないでくださいね。



曰くつきの場所にはそれなりの理由があるんです。



そして、今回みたいに私達が助けられたのもある意味、奇跡かもしれませんから。



そう言って悲しそうな顔をする警察官に彼はそれ以上、何も聞き返す事は



出来なかった。



ちなみに、それ以後、そのマンションの近くを通るたびに、8階の廊下から



彼に手を振っている3人の姿を何度も見る様になった彼は、それからすぐに



家族が待つ故郷へ帰ったという事だ。
  


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2019年06月09日

高校生の時、事故に遭った

これは俺が体験した話である。



高校時代は自転車通学をしていた。



実はかなりの距離があった為、最初は何度かバス通学を試みた。



しかし、バス通学の場合、渋滞に巻き込まれることが多く、かなり早めに



自宅を出る必要があった。



そして、一番耐えられなかったのは、バスの中の異様な混み具合だった。



乗継ぎ地点までのバスはそうでもなかったが、乗り継いでからのバスの中は



複数の高校生が入り乱れ、それこそ体が全く動かせなかった。



しかも、バスの中では頻繁に高校生同士の喧嘩まで起こっていたから、俺は



早々にバス通学を諦めて自転車での通学を選んだ。



自転車で通学するようになると、帰り道に色んな遊び場にも寄る事が出来たし、



いつもは行かないような場所にも友達と行くようになった。



だから、自転車通学に切り替えた事を俺は心から良かったと思えた。



ただ、雨の日だけは別だった。



本来なら雨の日はバス通学をするのが当然なのかもしれないが一度自転車通学の



楽さを知ってしまった俺には、もうバスで通学する気など微塵も無かった。



だから、雨の日は片手で傘をさしながら自転車を漕いだ。



その頃は普通に考えれば分かる様な事に無頓着だった。



傘をさした状態で自転車に乗るなど言語道断なのは今の日本ならば当り前。



しかも、黒い傘を持ったまま自転車に乗るなど自殺行為としか思えないのだが、



その頃には、そんな事にまで気が回らなかった。



透明な傘という選択も無かった訳ではないのだが、その頃には何故か透明の傘が



格好悪く見えていた俺は、迷うことなく黒い傘をさして自転車に乗っていた。



それでも、事故を起こして加害者にも被害者にもなっていなかったのは、



ある意味、奇跡と言えるのかもしれないが・・・・。



そんなある日の朝、俺はいつものように高校へと自転車で向かった。



朝からポツポツと雨が降っていたが、風は強くなったので俺に気にせず、



そのまま傘をさしていつものように自転車を漕いだ。



いつもの道をいつものように自転車で走った。



時折、雨が強くなったが、しばらく雨宿りをしているとすぐに雨は弱くなったから



また、俺はせっせと自転車のペダルを漕ぎ続ける。



そして、俺はいつもの坂道の上へとやって来た。



その坂道は帰りには酷いのぼりになるが、行きは長い下り坂になり、自転車を



漕いでいなくてもかなりのスピードが出せる坂道だった。



そこを颯爽と自転車で下る時の爽快さは言葉では説明できない程気持のよい



ものだった。



勿論、雨の日にその坂道を下るのは初めてではなかった。



だから俺は特に身構える事もなく、そのまま自転車で坂道を下り始めた。



傘をさしながらギリギリの角度で視界を確保する。



それは、ある意味、俺にとってはいつも通りの行動だった。



自転車はどんどんと速度をあげていく。



と、その時、突然、雨が一気に強くなった。



まるで横殴りの雨といった表現がピッタリくる様な強い雨だった。



俺は学生服を濡らさないように、傘を前方へと降ろす。



正直、前方の視界は皆無だったが、さほど怖さは感じなかった。



というよりも、せっかくの坂道でブレーキをかけるのが勿体なかったというのが



本音だったかもしれない。



俺が乗る自転車はどんどんとスピードを上げていき坂道が終わる頃には相当な



スピードになっていたのだと思う。



グシャッ・・・・・。



突然、嫌な音が耳に飛び込んできた。



そして、次に俺の体に鈍い衝撃が走る。



うっ・・・・痛っ・・・・・。



そう感じた次の瞬間、俺の体は宙を舞っていた。



何かにぶつかった・・・・。



それは理解できたが、それ以上、何も考える余裕は無かった。



かなりの滞空時間だったのだと思う。



俺はそのまま地面に叩きつけられた。



咄嗟に受け身を取ったつもりだったが、その時俺は自分の骨が折れる音を



初めて聞いた。



痛いというよりも全身が痺れて麻痺している感覚だった。



地面に顔と胸を酷く打ちつけた俺は、自分の周りに血が流れていないか、と



焦って確認する。



しかし、雨で所々に水溜りが出来ているだけで、血の様な赤いものは一切



確認できなかった。



死ぬ事はないのかも・・・・・。



そう思うと今度は自分がいったい何にぶつかったのかが妙に気になった。



感触からすれば車、しかも、停止している車にぶつかったと考えるのが



理にかなっていた。



走っている車に追いつける程のスピードでは無かったし、もしもそうなら、



宙に舞うほどの衝撃はないのだろう。



そして、逆に対向車とぶつかったとすれば、こんな程度では済まない。



そして、前方から突っ込んでくる自転車を見れば、クラクションを



鳴らすのが普通だろう。



だとしたら、停止している車にぶつかってしまった俺は、車の修理代を



請求されるのかもしれない。



そう考えると、やはりぶつかったのが、高級車なのか、それとも普通の



乗用車なのか、がとても気になってしまう。



俺は痺れる体をなんとか曲げる様にして後方を確認した。



すると、其処には見た事もない程古い車が停止していた。



黒塗りの古いセダン。



車には興味があったから大体の車なら一目見るだけで車種を言い当てる自信が



あった。



しかし、その時、俺が見た車は、明らかに俺の知っている類の車ではなかった。



まるで昭和初期を思わせるような古い外観。



バンパーなど付いていない、いかにも鉄の塊といった造形。



あんな車にぶつかったのか・・・・。



よく、まあ、これくらいの怪我で済んだな・・・・。



そう思ったのをはっきりと覚えている。



そして、次に俺が考えたのは、自転車で事故を起こしたのだから、間違いなく



親に怒られる、という恐怖だった。



だから、その現実から逃避しようとしたのかもしれない。



俺は雨が降りしきる中、痺れた手足で地面を少しずつ這いながら、その車から



遠ざかろうとしていた。



幸か不幸か、その車のドライバーはまだ車の外へは出てきてはいなかったから。



必死になって俺はアスファルトの地面をまるでほふく前進でもするかの様に



少しずつだが進んだ。



何とか、車から逃げられれば、自転車の単独事故として、両親からの厳しい



叱責は免れる事が出来るかもしれない。



その思いだけで・・・・。



しかし、やはり怪我の程度は俺が考える程軽いものではなかったらしい。



俺は必死に手だけでアスファルトを掴んでいたが、そのうちに突然意識を



失った。



気が付いた時、俺は病院のベッドに寝かされていた。



意識が戻った俺を見て、看護師が慌てて医師を呼びに行ったのが分かった。



結局、俺の体は両足の骨折と肋骨が数本折れているという状態だった。



ただ、それ以外は内臓の損傷も無く、重篤な状態ではなかった。



それなのに、俺が目覚めたのは、あの日から10日以上経過した日曜日だった。



しかし、驚いたのはそれだけではなかった。



俺が見つかったのは、川の縁だったという。



その川の水に、顔が半分浸かった状態で見つかったのだと教えられた。



ただ、俺の自転車は、俺の記憶通りにあの坂道の下で、何かに押しつぶされた



状態で見つかったが、最初はそれが自転車だとは誰も気付かない程の酷い


潰れ方だったという。



そして、俺の話を聞いた両親が警察に事故の届けを出し、警察がその事故現場



を調べたらしいが、其処には事故の痕跡を証明する様な物は何一つ



見つからなかったし、ちょうどその時間帯にすぐ近くで農作業をしていた


数人の男女も、そんな事故のような音は一切聞いていないと


証言した。


もしも、それが本当だとしたら、俺はいったい何処で何とぶつかったというのか?



そして、もうひとつ俺がその後知った事がある。



それは、俺がその車と事故を起こした、ちょうどその日に、遠い親戚で俺が



幼い頃、俺を養子として貰いたがっていた男性が亡くなったという事。



亡くなった時にはかなりの高齢だったその男性は、若い時にはまだ日本には珍しかった



車という乗り物に、大金をはたいて無理をして乗っていたらしい。



全ての話を俺から聞いた父がこう言った。



もしかしたら、お前の事を一緒に連れて行こうとしていたのかもしれないな、と。



それを聞いて俺は思わず背筋が寒くなったのをよく覚えている。  


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2019年06月09日

子供にしか視えないモノ

これは行きつけのスナックの女性スタッフから聞いた話。



彼女が小学校4年生の時、クラスの男の子が交通事故で亡くなった。



特に目立つ生徒でもなかったらしいが、どうやらそのクラスの全員が



皆、分け隔てなく仲良くしていたそうだ。



その事故の事は新聞にも小さく載ったという。



ただ夏休み終了間際の事故だったので、特に保護者間での連絡が行われた訳でもなく



クラスの級友たちは彼女を含めて、その男の子が事故で亡くなった事を



誰も知らずに過ごしていたらしい。



知っていたのは教師とその男の子の家族だけだったという訳である。



実際、不思議な話なのだが、いつものように遊び場に行くと、いつものように



その男の子もその場所に遊びに来ていた。



勿論、その男の子が死んだという事実も知らなかったし、居間にして思えば



少し元気が無いように感じたが、それでも、本当にいつもと変わらない楽しい



時間を其処に集まった仲間達は過ごした。



野球をしたりかくれんぼをしたり、と。



勿論、亡くなった男の子も初めは元気が無いように感じはしたが、すぐに



元気を取り戻して他の友達以上に楽しそうに走り回っていたという。



いつものようにいつもの場所に集まって、楽しい時間を過ごし、その場で



お別れする。



ただ、今にして思えば、その男の子は友達がどんどん家に帰っていくのにも



拘わらず、ずっとその場所に立ったまま帰っていく友人達に笑顔で手を振っていた。



まるで、帰る家が無いかのように・・・・・。



そんな日が何日も続いたという。



そして、夏休みが終わり2学期が始まると、担任教師から意外な報告があった。



それは夏休みの間に、クラスの仲間である男の子が事故で亡くなった、という



知らせだった。



しかし、クラスメイトの誰も、その教師の言う事を半ば笑って聞いていた。



きっと担任教師のいたずらなのだと思っていたという。



何故なら、その男の事は夏休みの間、ずっと一緒に遊んでいたし、



なによりも、その男の子は夏休み明けのこの教室にちゃんとやって来て、いつものように



自分の机に座って今、先生が話した知らせを顔色一つ変えずに聞いていたのだから。



だから、先生にしてはなかなか手の込んだ悪戯だと思ったという。



しかし、良く見るとその男の子が座っている机の上には白い花が生けられた



花瓶が置かれていたのが気になったという。



そして、全体朝礼の際に校長先生から、その男の子が事故で死亡した事実。



それから、その男の子はひき逃げに遭い現在も犯人が捕まっていないのだという



事実。



そして、此処にいる生徒は今後、より一層事故には気を付けるようにというお話があり、



さすがの彼女達も、その男の子が本当に死んだのかも?と思い始めたそうだ。



しかし、初めて見る幽霊だというのに全く恐怖は感じなかったという。



それどころか、その男の子は何も喋る事はなかったが、教室で座っている事が



嬉しくてしょうがない、といった様子でニコニコと笑っていた。



だからなのかもしれない・・・・。



彼女達は思い切った行動に出てしまう。



先生がいない休み時間に、彼女達はその男の子に近寄ってこう尋ねたという。



あのさ・・・・○○君って本当に死んじゃったの?



もしも、そうだとしたら、どうして此処に座ってるの?と。



その言葉を聞いた時、それまでニコニコと笑っていた男の子は急に



何かを思い出したような顔をして暗い顔になって俯いてしまった。



そして、何も言えずただ俯いて震えている男の子を見て、その場に居た



全員は男の子の死が事実なのだと悟ったという。



そして、誰ともなく、男の子にこんな言葉をかけた。



生きてても死んでいても関係無いよ!



これからもずっと友達だから!と。



すると、男の子は顔をあげてまるでお辞儀でもするかのように周りの友人達



を見ながら笑ってくれたという。



それからはクラスの全員がそれまで通りに男の子と接した。



どうやら担任などの大人には男の子の姿は見えていなかったらしいが、



そんな事はどうでも良かったという。



そして、学校が終わると彼女達クラスの全員が一斉に帰るようになった。



帰り際、1人教室に残って窓から彼女達を寂しそうに見送る姿を見ると



心が痛んだが、それでもどうやら彼女達にはやるべき事があったのだという。



それは、その男の子は事故で死んだ訳だが未だにその犯人は見つかって



おらず、彼女達はどうしても自分達の力でその犯人を見つけ出したかった



のだという。



下校時に男の子が事故死した場所の近辺にクラスの全員が散らばって刑事



さながらの聞き込みをしたり、目撃者探しのビラを自作して配ったりもした。



来る日も来る日も夕方暗くなるまで、それは続けられた。



そして、その事が学校にも知られてしまい、学校からは注意と禁止を言い渡されたが



彼女達クラスの仲間は決してそれを止めなかったという。



やがて子供たちの行動はいつしか両親までも巻き込み、そうなると学校側も簡単に



それを止める事が出来なくなった。



そして、その行動はどんどんと大きくなっていき、やがて学校側も全面的に



協力してくれるようになった。



無駄なこと・・・・。



そう言ってしまうのは簡単だが、何もしなければ奇跡は起こらなかったのかもしれない。



そして、何と男の子が事故死してから14日目。



ひき逃げ犯は警察に出頭したという。



偶然、近くを通りかかった犯人は、街ぐるみの犯人探しを見て、もう逃げ切れないと



覚悟して、警察に自首してきたのだと聞かされたそうだ。



そして、翌日、彼女達は早く学校に行って男の子に犯人が捕まった事を報告



してあげようと急いで登校した。



しかし、いつも男の子が座っている席に、その姿はなかったという。



その代わりにクラス全員の机の上には、四葉のクローバーが一つずつ置かれていた。



男の子を探していると先生が来て、クラス朝礼が始まった。



彼女達は男の子の事が気になって朝礼どころではなかったが、そんな彼女達の



目の前に立つ担任教師の隣に男の子の姿がはっきりと見えたという。



そして、嬉しそうに笑った後、彼女たちを見回すようにしながら何度も何度も



お辞儀をした。



そして、笑っている顔からは大粒の涙がこぼれ落ちているのも見えたという。



彼女達も気が付くと涙を流していた。



すると、男の子の姿はゆっくりと薄くなっていき最後には完全に視えなくなった。



クラスの全員が男の子に駆け寄ろうとした為、担任教師は驚いて注意したらしいが



それでも彼女達の気持ちを抑える事は出来なかった。



男の子が今しがたまで立っていた場所にすがりつくようにしながらクラス全員は



大声で泣いたそうだ。



結局、その後、男の子の姿を視る事は一切無くなったそうだ。



そして、彼女はこう言っていた。



もしかしたら、あの子は犯人が見つかったら、あっちの世界に行かなければいけなかった



のかもしれませんね・・・・。



だとしたら、もっと時間をかけて犯人を見つけたかったって後悔する事もあります。



でも、犯人が見つかって本当に良かった。



あれは私たちクラス全員の友情の証なんですから・・・・。



あの子も今頃はきっと幸せに過ごせてると良いんだけど・・・・と。



どうやら、そのクラスでは今でもたまに同窓会が開かれており、参加者のリスト



には、しっかりとその男の子の名前が書かれており、そしてその男の子の席も



ひとつだけ空けられているそうだ。



そして、クラス全員はその男の子が残していってくれた四葉のクローバーを



今でも大切に保管している。



その男の子を忘れないために・・・・・。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 19:06Comments(0)
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