2019年05月06日

最恐の悪霊と最強の除霊師

これは、以前、Aさんの旅行友達から聞いた話。

Aさんは、かなり旅行が好きらしい。

しかも、思い立ったらすぐに行動する性格のせいで、その女友達もかなり

振り回されているのだという。

しかも、基本的に全てが突然だから宿も決めずに出発する。

だから、旅行をする際には、お金に余裕を持ち、現地に着くと先ずその日の

宿泊先を探す事から始めなくてはならないそうだ。

そして、その時も彼女の元に突然Aさんから電話が入ったという。

あのさ・・・・今、テレビ視てたら、なんか凄く美味しそうな物が映ってた

んだけど・・・・。

明日って、暇?

そういう電話だったらしい。

独身であり、自営業の彼女は、特に翌日の予定も無かったので、即答で、

うん…大丈夫だと思うけど・・・・・。

そう返事をしたらしい。

すると、Aさんから、

それじゃ、明日の朝8時頃に迎えに行くから、ちゃんと旅行の用意しておいてね!

そう言って電話は切れたという。

彼女としても、Aさんの行動パターンには困らせられる事もあったが、

それ以上に、Aさんと一緒居ると、何か自分まで幸せな気分になれるらしく、

言われたとおりに旅行の用意をして、翌朝に備えて寝たそうだ。

翌朝は、ピッタリ朝8時にAさんの車が迎えにきた。

車の運転が好きなAさんがいつも運転手役らしく、道中、相変わらず

食べ物の話で盛り上がっていたそうだ。

その時、向かったのは関西方面のとある温泉地。

そして、旅館案内所でその日の宿を抑えようとしたらしいが週末ということもあり、

どこの宿も満室だと告げられた。

仕方なく彼女達は大きめの宿を一軒一軒しらみつぶしに当たってみる事にした。

しかし、案内所で言われた通り、どこの宿も一杯だったという。

彼女がAさんに、

どうする?

どこの宿も空いていないんじゃ日帰りにする?

と言うとAさんはしばらく考え込んだ後、

まあ、仕方ないか・・・こんな状況だし・・・・。

それじゃ私に着いてきてね!

そう言って、車に乗り込むと温泉街の中をゆっくりと車を進める。

彼女はてっきり日帰りに変更して帰るのか、と思っていたそうだが、

どうも様子がおかしい。

それで、Aさんにこう聞いたという。

日帰りにするんじゃないの?

無理だって見つかりっこないと思うよ?

すると、Aさんは、

こういう温泉宿っていう所には絶対に開かずの部屋になってしまつている部屋

が在る筈だから・・・・。

今、その霊気みたいなものを探ってるから、少しだけ静かにしててね!

そう言われたそうだ。

確かに彼女もAさんの霊力というものを知っていたし、その時は奇跡が起きるのを

待つ気分でAさんの言うとおり、喋らない様にしていた。

その間、Aさんは、

あっ、ここは弱いから大した部屋じゃないな・・・・・とか、

此処は大して迷惑になっていないな・・・・とか言いながら運転を続けていた。

そして、一際大きな旅館の前に車を停めたAさんは、

うん!・・・此処なら、きっと宿の人達も困りきってるはず!

そう言いながら勝手に車を駐車場へと停めて荷物を持って玄関へと向かう。

ちょっと!

まだ泊めて貰えるって決まってもいないのに・・・・。

と彼女が言うとAさんは、

たぶん、大丈夫だと思うから!

と意気揚々と玄関のドアを入っていく。

いらっしゃいませ!

ご予約のお客様ですか?

そう言われてAさんは、いいえ、と首を横に振る。

すると、従業員さんは、

あの…申し訳ありませんが、当館は本日は満室でございまして・・・・。

と告げたが、Aさんはニコニコと笑いながら、

あの…女将さんを呼んでい頂けませんか?

とても重要なお話があるものですから!

と元気に返したという。

しばらくするとその宿の女将さんらしい50代位の女性がやって来た。

女将さんはAさんの前にやって来るとすぐに頭を下げて、

本日は大変申し訳ございません。

あいにく全てのお部屋が埋まっておりまして。

と丁寧に謝罪してくれたが、Aさんが、

あの・・・・この旅館って曰くつきの部屋がありますよね?

そのせいで、ずっとお客さんを泊める事も掃除する事も出来ない部屋が!

そう言うと女将さんの顔は、一気に曇り、Aさんの方を怪訝そうな

眼で睨むようにして見たという。

そして、女将さんはこう言った。

誰も知らない筈なんですが・・・・。

誰からそんな話を聞かれたんですか?と。

すると、Aさんは、

別に誰から聞いたという訳じゃないんですけど・・・・。

お困りなのかな?って思いまして・・・・。

すると、女将さんは、

貴女は除霊とかそういう事に長けている方なんですか?

そんな華奢な体格なのに・・・・。

すると、Aさんは、

華奢に見えますか?

ちゃんと出るところは出てますし、引っこんでるべき所も引っこんでますけど!

それに、霊を祓うのに体格は関係ありませんから(笑)

そう言うと、女将さんは、

それじゃ、貴女が化け物を退治してくれるというのですね?

でも、まさか、ボランティアではないでしょうし・・・・。

お幾らぐらいご希望ですか?

そう返してきた。

すると、Aさんは、

あっ、私はお金は貰わない主義なので!

その代わりと言ってはなんですけど、除霊に成功してもしなくても、今晩、

その部屋に泊まらせて欲しいんです!

それと、除霊するとお腹が空くので料理は3人分でお願いします!

と元気に答えた。

女将さんはしばらく考え込んだ後、

わかりました!

でも、死んでも知りませんよ?

何十年間も続いている開かずの間ですから。

除霊しようとした方達は全てもうこの世にはおりません!

1年に1度だけ何とか掃除だけはしていますが、もう何人もの霊能者やお坊様が

除霊の為にその部屋へ入られましたが、誰ひとり生きて帰る事はなかった。

見たところ、とても霊能者には見えませんけど?

そう言われるとAさんは、大きな声で、

ええ、私、霊能者じゃないんで・・・・(笑)

と明るく笑って返した。

女将さんは、建物の奥へ奥へと進んでいく。

そして、鎖で閉じられた鉄製の扉を開けると、長い廊下の手前で立ち止まり、

この廊下を進んだ処にある、あの離れの部屋が、開かずの間です。

中には着物を着た化け物の様な不気味な女がいる、と伝え聞いております。

どうしますか?

本当に除霊する勇気はありますか?

本物ですからね?

と、どうやら、Aさんに思い留まらせようとしているように感じたという。

すると、長い廊下の手前で立ち止まっている女将さんと彼女の目の前で

Aさんは、すたすたと軽快に廊下を進んでいったという。

女将さんは、目を点にして信じられないといった顔をしている。

空気が異様に冷たくなり、それが廊下の手前まで伝わってくる。

そして、地響きの様な音がして辺りが暗くなる。

酷い耳鳴りがして、彼女は知らぬ間に体中に鳥肌が立っている事に気付く。

彼女自身、いつもAさんと旅行している事ですっかり霊感が強くなって

いたから、その離れの中に居るという霊の恐ろしさだけは分かったという。

何かあったら、どんな事をしてもAさんだけは助け出さなければ・・・・。

そう思っていた。

すると、女将さんがこう尋ねてきた。

あの・・・・あの方っていうのは、そんなに凄い霊能者なんですか?

今まで何事もなく離れに近づいていった者は1人もおりません・・・。

なのに・・・あの方は・・・・・。

そう聞くと、彼女もAさんの凄さを思い出して、

相手がどんなに凄い最強の悪霊でも、彼女だけは別格ですから!

最強の除霊者・・・・いいえ、ある意味、彼女を怒らせる事が一番危険

かもしれませんね!

そう返したという。

そうしていると、風も強くなって来て辺りに苔むした様な匂いが充満していく。

離れの部屋の引き戸や窓がガタガタと音を鳴らす。

部屋の中からは唸るような苦しそうな声がどんどん大きくなっていく。

彼女と女将さんは、目を閉じてその場にうずくまる様に動けなかった。

その時、Aさんののんびりした声が聞こえてきたという。

すみませ~ん・・・・・。

ごめんくださ~い・・・・。

ちよっといいですかね~?

その声に、え?と思って顔を上げると、Aさんは片手をポケットに突っこんだまま

もう片方の手で離れの引き戸を開け、吸い込まれる様にして部屋の中へと

入っていった。

しばらくの沈黙の後、

いや、そう言わずに・・・・。

私にも女将さんにああ言った手前、立場というものが・・・・。

ほんと、強情な人ですね・・・・いや、人じゃないか・・・・・。

ほんと、嫌われますよ・・・・・あっ、もう嫌われてましたね・・・・。

と1人でボケとツッコミを繰り返した後、離れの部屋の中から眩しい光が

彼女達がいる廊下まで届いて来て、思わず目を閉じたという。

そして、その後、再び、離れの引き戸が開いて、そこからAさんが出て来ると、

すみませ~ん・・・・除霊は終わったので、お掃除をお願いします!

それと2人分の寝具と3人分のお料理も!

私は疲れたので、このままお風呂に行ってきますから!

女将さん、約束は守ってくださいね!

そう言って嬉しそうに本館の方へと歩いていった。

結局、その夜は豪勢な料理が食べきれない程出され、夜寝た時も何も怪異は

起こらなかったそうだ。

そして、翌日の朝、帰り際には女将さんからそれなりの金額のお礼を渡されたが

Aさんはすぐにそれを返したらしいが、結局、宿の宿泊費は全てタダにして

貰えたそうだ。

そして、その帰り道、彼女はAさんに尋ねたそうだ。

その凄い悪霊っていうのはしっかりと退治出来たの?と。

すると、Aさんは、

うん…でも、話してみると人間の方にも問題があるし、何よりそんなに危険な

奴ではなかったから・・・・。

だから、浄化はしてないげと、もうあの宿には入っては来られないし、人に悪さも

出来なくしたから・・・・・。

そう言っていたそうだ。


  


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:08Comments(45)