2019年05月15日

呪われた結婚式

これは知人女性から聞いた話である。

彼女にはとても仲の良い友達がいた。

会社に同期として入社して以来、その女性とはいつも休みの日になると

一緒に何処かへ出かけていたそうだ。

だが、何年か経つうちに、彼女の方から誘ってもなかなか会ってくれなくなる。

そんな感じで疎遠になった頃、その友達から結婚の招待状が届いた。

慌ててその女性へ電話をかけお祝いの言葉をかけると、照れ臭そうに

ありがとう!と言ってくれた。

彼女にとってもこれ以上無いほどに嬉しい知らせであり驚きだったという。

それから、結婚相手である彼氏を紹介もされたし、これからもずっと

親友で居てね!とも言われた。

二人はまさにお似合いのカップルであり、彼女にはまだ彼氏もいなかったが

そんな事はどうでも良かった。

後は、二人の幸せな結婚式を待つばかり・・・・。

彼女はそう思っていた。

しかし、ある日、彼女の元に訃報が届いた。

それは妻となるその女性が運転中の事故でそのまま即死したというものだった。

信じられなかった。

結婚式まで、あと2週間あまりだった。

彼女は酷く落ち込んでしまったが、夫になる男性の悲しみを思えと

胸が苦しくなった。

彼女の葬儀は、しめやかに執り行われ、彼女も当然、参列した。

結局、棺のふたが開けられる事はなく、最後の対面も叶わなかったが、

葬儀に参列した者達は、その事故が相当無残な死に方だったのでは?と

噂していた。

そして、そんな中、気丈に振る舞う彼氏の姿が可哀想で見るに堪えなかったという。

そして、葬儀から1週間あまり経った頃、彼女の元に意外な物が届いた。

それは、二人の結婚式を予定通り行うとの知らせであり、当然ご祝儀は必要ないが、

是非、亡くなった新婦の為にも出席して欲しい、との旨が書かれていたという。

彼女自身、とても驚いたが、それでも新婦になる筈だった娘の無念さを少しでも

慰めてあげたいという親の気持ちと、彼氏の気持ちを考えると、どうしても

欠席するわけにはいかなくなったのだという。

そして、執り行うのは披露宴だけであり、結婚式自体は行わないのだと聞いて

彼女は亡き友達の為にも出席を決めたのだという。

当日は、朝から生暖かい雨が降り続いていた。

予定通り、元々着ていくはずだったスーツに身を包んだ彼女は急いでタクシーに乗り

式場であるホテルへと急いだ。

ホテルに到着すると、本当に華やかに彩られた装飾に彼女は目を見張った。

そこには、まさに本物の結婚式と同じような豪華さがあった。

受付をする際に渡された挨拶文には、

今日は精一杯楽しんでいってください・・・・・。

そして、涙はお控えください・・・・。

そう書かれており、彼女はその文面を見て少しホッとした気分になったという。

彼女は指定された座席表野テーブルに着席した。

丸テーブルが幾つも並び、一段高い所に新郎・新婦の席が設けられていた。

空いている席は無く、きっとその誰もが、自分と同じ気持ちでその披露宴に

出席しているのだと少し感傷的になったという。

そして、いよいよ披露宴がスタートすると、その進行といい、運ばれてくる

料理といい、まさに本物の披露宴そのものの豪華さだった。

挨拶文の通り、涙する者は一人もおらず、披露宴は終始和やかな雰囲気で

進行していった。

しかし、突然、1人の出席者から悲鳴があがる。

新婦の姿を見た!

そう言って恐れおののく姿は、とても演技には見えなかった。

そして、1人また一人と気分を悪くして披露宴会場から退席していく。

更に、途中から照明が明滅したり、マイクの音が聞こえなくなったりしてしまい、

その度に会場は大きな悲鳴に包まれていった。

そして、いよいよ新郎の挨拶の段になり、決定的な瞬間が訪れてしまう。

スポットライトの中、マイクを持った新郎が出席者達への挨拶を話しだそうとした瞬間、

突然、ライトが消えた。

そして、数秒後に再びライトが点いた時、新郎の横には無残な姿をしたまま

純白のウエディングドレスを着た新婦が立っているのがはっきりと見えた。

とても、余興として行われているジョークだとは誰も思わなかった。

その姿は、血にまみれ崩れた顔でにっこりと笑う新婦の顔が不気味という言葉

以外には表現出来ない程、おぞましい姿として、其処に存在した。

固まって動けなくなる者・・・・。

その場て悲鳴を上げる者・・・・・。

泣き崩れる者・・・・・。

反応はそれぞれだったが、次の瞬間、けたたましいばかりのマイクのハウリング音

が会場に響き、その瞬間、新婦の姿はその場から煙の様に消えてしまった。

友達である新婦の変わり果てた姿に彼女はその場て嗚咽したという。

そんな事があって、披露宴はすぐに中止され、お開きとなった。

彼女もすぐに自宅へと戻ったが、しばらくは新婦の姿が目に焼き付いてしまい

夜も寝られなかったという。

そして、その披露宴以来、ずっと何か不吉な物を感じていたのだという。

そして、それから数日後、彼女の耳に知りたくない事実が届いた。

披露宴の後、新郎の姿が忽然と消えてしまったのだという。

披露宴の後、ガタガタと震えていたという新郎は、披露宴会場から帰宅する際、

そのまま何処かへ消えてしまった。

何処をどう捜索しても新郎の姿を発見する事は出来なかった。

だから、披露宴に出席した者は、

きっと、新婦が新郎を連れて新婚旅行に行ってしまったのだはないか?

と噂していたという。

そして、新郎が消えてからちょうど7日後、新郎が山の中で発見された。

無残な遺体となって・・・・。

その遺体は披露宴で来ていたタキシード姿のままであり、全身はまるで

車に乗ったまま大事故に巻き込まれたかのようにグチャグチャに潰されていた。

まさに、あの披露宴で見た新婦と釣り合いが取れるかのように・・・・・。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:41Comments(33)

2019年05月06日

最恐の悪霊と最強の除霊師

これは、以前、Aさんの旅行友達から聞いた話。

Aさんは、かなり旅行が好きらしい。

しかも、思い立ったらすぐに行動する性格のせいで、その女友達もかなり

振り回されているのだという。

しかも、基本的に全てが突然だから宿も決めずに出発する。

だから、旅行をする際には、お金に余裕を持ち、現地に着くと先ずその日の

宿泊先を探す事から始めなくてはならないそうだ。

そして、その時も彼女の元に突然Aさんから電話が入ったという。

あのさ・・・・今、テレビ視てたら、なんか凄く美味しそうな物が映ってた

んだけど・・・・。

明日って、暇?

そういう電話だったらしい。

独身であり、自営業の彼女は、特に翌日の予定も無かったので、即答で、

うん…大丈夫だと思うけど・・・・・。

そう返事をしたらしい。

すると、Aさんから、

それじゃ、明日の朝8時頃に迎えに行くから、ちゃんと旅行の用意しておいてね!

そう言って電話は切れたという。

彼女としても、Aさんの行動パターンには困らせられる事もあったが、

それ以上に、Aさんと一緒居ると、何か自分まで幸せな気分になれるらしく、

言われたとおりに旅行の用意をして、翌朝に備えて寝たそうだ。

翌朝は、ピッタリ朝8時にAさんの車が迎えにきた。

車の運転が好きなAさんがいつも運転手役らしく、道中、相変わらず

食べ物の話で盛り上がっていたそうだ。

その時、向かったのは関西方面のとある温泉地。

そして、旅館案内所でその日の宿を抑えようとしたらしいが週末ということもあり、

どこの宿も満室だと告げられた。

仕方なく彼女達は大きめの宿を一軒一軒しらみつぶしに当たってみる事にした。

しかし、案内所で言われた通り、どこの宿も一杯だったという。

彼女がAさんに、

どうする?

どこの宿も空いていないんじゃ日帰りにする?

と言うとAさんはしばらく考え込んだ後、

まあ、仕方ないか・・・こんな状況だし・・・・。

それじゃ私に着いてきてね!

そう言って、車に乗り込むと温泉街の中をゆっくりと車を進める。

彼女はてっきり日帰りに変更して帰るのか、と思っていたそうだが、

どうも様子がおかしい。

それで、Aさんにこう聞いたという。

日帰りにするんじゃないの?

無理だって見つかりっこないと思うよ?

すると、Aさんは、

こういう温泉宿っていう所には絶対に開かずの部屋になってしまつている部屋

が在る筈だから・・・・。

今、その霊気みたいなものを探ってるから、少しだけ静かにしててね!

そう言われたそうだ。

確かに彼女もAさんの霊力というものを知っていたし、その時は奇跡が起きるのを

待つ気分でAさんの言うとおり、喋らない様にしていた。

その間、Aさんは、

あっ、ここは弱いから大した部屋じゃないな・・・・・とか、

此処は大して迷惑になっていないな・・・・とか言いながら運転を続けていた。

そして、一際大きな旅館の前に車を停めたAさんは、

うん!・・・此処なら、きっと宿の人達も困りきってるはず!

そう言いながら勝手に車を駐車場へと停めて荷物を持って玄関へと向かう。

ちょっと!

まだ泊めて貰えるって決まってもいないのに・・・・。

と彼女が言うとAさんは、

たぶん、大丈夫だと思うから!

と意気揚々と玄関のドアを入っていく。

いらっしゃいませ!

ご予約のお客様ですか?

そう言われてAさんは、いいえ、と首を横に振る。

すると、従業員さんは、

あの…申し訳ありませんが、当館は本日は満室でございまして・・・・。

と告げたが、Aさんはニコニコと笑いながら、

あの…女将さんを呼んでい頂けませんか?

とても重要なお話があるものですから!

と元気に返したという。

しばらくするとその宿の女将さんらしい50代位の女性がやって来た。

女将さんはAさんの前にやって来るとすぐに頭を下げて、

本日は大変申し訳ございません。

あいにく全てのお部屋が埋まっておりまして。

と丁寧に謝罪してくれたが、Aさんが、

あの・・・・この旅館って曰くつきの部屋がありますよね?

そのせいで、ずっとお客さんを泊める事も掃除する事も出来ない部屋が!

そう言うと女将さんの顔は、一気に曇り、Aさんの方を怪訝そうな

眼で睨むようにして見たという。

そして、女将さんはこう言った。

誰も知らない筈なんですが・・・・。

誰からそんな話を聞かれたんですか?と。

すると、Aさんは、

別に誰から聞いたという訳じゃないんですけど・・・・。

お困りなのかな?って思いまして・・・・。

すると、女将さんは、

貴女は除霊とかそういう事に長けている方なんですか?

そんな華奢な体格なのに・・・・。

すると、Aさんは、

華奢に見えますか?

ちゃんと出るところは出てますし、引っこんでるべき所も引っこんでますけど!

それに、霊を祓うのに体格は関係ありませんから(笑)

そう言うと、女将さんは、

それじゃ、貴女が化け物を退治してくれるというのですね?

でも、まさか、ボランティアではないでしょうし・・・・。

お幾らぐらいご希望ですか?

そう返してきた。

すると、Aさんは、

あっ、私はお金は貰わない主義なので!

その代わりと言ってはなんですけど、除霊に成功してもしなくても、今晩、

その部屋に泊まらせて欲しいんです!

それと、除霊するとお腹が空くので料理は3人分でお願いします!

と元気に答えた。

女将さんはしばらく考え込んだ後、

わかりました!

でも、死んでも知りませんよ?

何十年間も続いている開かずの間ですから。

除霊しようとした方達は全てもうこの世にはおりません!

1年に1度だけ何とか掃除だけはしていますが、もう何人もの霊能者やお坊様が

除霊の為にその部屋へ入られましたが、誰ひとり生きて帰る事はなかった。

見たところ、とても霊能者には見えませんけど?

そう言われるとAさんは、大きな声で、

ええ、私、霊能者じゃないんで・・・・(笑)

と明るく笑って返した。

女将さんは、建物の奥へ奥へと進んでいく。

そして、鎖で閉じられた鉄製の扉を開けると、長い廊下の手前で立ち止まり、

この廊下を進んだ処にある、あの離れの部屋が、開かずの間です。

中には着物を着た化け物の様な不気味な女がいる、と伝え聞いております。

どうしますか?

本当に除霊する勇気はありますか?

本物ですからね?

と、どうやら、Aさんに思い留まらせようとしているように感じたという。

すると、長い廊下の手前で立ち止まっている女将さんと彼女の目の前で

Aさんは、すたすたと軽快に廊下を進んでいったという。

女将さんは、目を点にして信じられないといった顔をしている。

空気が異様に冷たくなり、それが廊下の手前まで伝わってくる。

そして、地響きの様な音がして辺りが暗くなる。

酷い耳鳴りがして、彼女は知らぬ間に体中に鳥肌が立っている事に気付く。

彼女自身、いつもAさんと旅行している事ですっかり霊感が強くなって

いたから、その離れの中に居るという霊の恐ろしさだけは分かったという。

何かあったら、どんな事をしてもAさんだけは助け出さなければ・・・・。

そう思っていた。

すると、女将さんがこう尋ねてきた。

あの・・・・あの方っていうのは、そんなに凄い霊能者なんですか?

今まで何事もなく離れに近づいていった者は1人もおりません・・・。

なのに・・・あの方は・・・・・。

そう聞くと、彼女もAさんの凄さを思い出して、

相手がどんなに凄い最強の悪霊でも、彼女だけは別格ですから!

最強の除霊者・・・・いいえ、ある意味、彼女を怒らせる事が一番危険

かもしれませんね!

そう返したという。

そうしていると、風も強くなって来て辺りに苔むした様な匂いが充満していく。

離れの部屋の引き戸や窓がガタガタと音を鳴らす。

部屋の中からは唸るような苦しそうな声がどんどん大きくなっていく。

彼女と女将さんは、目を閉じてその場にうずくまる様に動けなかった。

その時、Aさんののんびりした声が聞こえてきたという。

すみませ~ん・・・・・。

ごめんくださ~い・・・・。

ちよっといいですかね~?

その声に、え?と思って顔を上げると、Aさんは片手をポケットに突っこんだまま

もう片方の手で離れの引き戸を開け、吸い込まれる様にして部屋の中へと

入っていった。

しばらくの沈黙の後、

いや、そう言わずに・・・・。

私にも女将さんにああ言った手前、立場というものが・・・・。

ほんと、強情な人ですね・・・・いや、人じゃないか・・・・・。

ほんと、嫌われますよ・・・・・あっ、もう嫌われてましたね・・・・。

と1人でボケとツッコミを繰り返した後、離れの部屋の中から眩しい光が

彼女達がいる廊下まで届いて来て、思わず目を閉じたという。

そして、その後、再び、離れの引き戸が開いて、そこからAさんが出て来ると、

すみませ~ん・・・・除霊は終わったので、お掃除をお願いします!

それと2人分の寝具と3人分のお料理も!

私は疲れたので、このままお風呂に行ってきますから!

女将さん、約束は守ってくださいね!

そう言って嬉しそうに本館の方へと歩いていった。

結局、その夜は豪勢な料理が食べきれない程出され、夜寝た時も何も怪異は

起こらなかったそうだ。

そして、翌日の朝、帰り際には女将さんからそれなりの金額のお礼を渡されたが

Aさんはすぐにそれを返したらしいが、結局、宿の宿泊費は全てタダにして

貰えたそうだ。

そして、その帰り道、彼女はAさんに尋ねたそうだ。

その凄い悪霊っていうのはしっかりと退治出来たの?と。

すると、Aさんは、

うん…でも、話してみると人間の方にも問題があるし、何よりそんなに危険な

奴ではなかったから・・・・。

だから、浄化はしてないげと、もうあの宿には入っては来られないし、人に悪さも

出来なくしたから・・・・・。

そう言っていたそうだ。


  


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:08Comments(44)

2019年05月01日

生きるという事

これは知人女性から聞いた話。

彼女は元々の生まれは四国のとある県なのだという。

大学進学で石川県にやって来て、そのまま金沢市の会社に就職した。

俺とは直接のつながりは無かったが飲み友達の紹介で知り合ったという関係。

何事にも流されてしまう彼女の生き方はよく言えば今風なのかもしれないし、

悪く言えば、自分に自信が無いのかもしれない。

そんな彼女がある時、四国の実家から呼び出された。

かなり疎遠になっていたから彼女としても久しぶりに両親や親戚の顔でも

見よう、という軽い気持ちで帰省したそうだ。

ところが、実家に戻ってみると、そのまま本家の在る隣の町まですぐに連れて

行かれたという。

どうやら、彼女の家系はかなりの資産家として地元でも有名らしく何をするにも

仕来たりだとか本家の意向というものが最優先された。

そして、彼女自身もそんな古い風潮が嫌で、わざわざ大学進学の際、遠く離れた

石川県を選んだ様なのだが・・・・。

本家に連れて行かれた彼女は突然驚くべき事実を告げられた。

それは、どうやら彼女の寿命に関する話だったらしく、唐突に残された寿命が

残り1年しかないと聞かされた。

確かに、彼女の家系では数十年に一度くらいの割合で若くして亡くなってしまう

者がおり、それがその家系の根源に関わる罰のようなものなのだと聞いた

事はあった。

しかし、まさか、その生贄が自分に回って来るとは思ってもいなかった。

両親たちの顔を見ると、申し訳なさそうにしているだけで特に何も言ってくれない。

結局、彼女はその事実だけを告げられると、そのまま半ば強制的に本家から

追い出された。

そして、自分の家族や親戚を巻き込みたくなければ、このまま静かに誰とも

会わずに帰りなさい・・・・。

そう言われたそうだ。

まさに青天の霹靂といった彼女としては、当然そのまま帰るわけにも行かず

何とか親戚や従兄弟に会って相談させて貰おうとしたらしいが、どの家でも

まるで門前払いの様に追い返された。

そして結局彼女はそのまま地元を離れて石川県に帰るしかなかった。

ただ、彼女が自分のアパートに戻り悶々とした日々を送っていると、突然

母親から電話があったそうだ。

電話の向こうからは母親の泣き声ばかり聞こえ、ごめんね・・・・ごめんね・・・

と呟く声だけが記憶に残ったという。

ただ、その電話の際、彼女はある事実を聞かされたのだという。

詳しくは分からなかったが、どうやらその呪いの様なものは犬神様に関係が

在るらしく、本家の当主が生まれてから死ぬまでの間に生贄となる者を1人選び

差し出さなければ、その家系の本家が呪いに満たされ廃れてしまうという事

だった。

だから、本家の人間が一族の中から生贄になるべき人間を選び、分家筋の者は

その決定に従わなければいけない。

本家の決定は絶対であり、逆らう事は許されないことであり、何より本家の衰退は

一族全員の根絶を意味しているそうであり、だから誰もその決定に反対できる

者はいない。

そういう話だった。

彼女は母親の電話の後、しばらくは茫然として部屋から出なかったが、本当に

この現代において、そのような呪術的な呪いが実在するのか?と疑問を感じると

急いで色んな占いや霊能者の元を訪ね回った。

しかし、どの占い師も、そして霊能者も彼女の顔を見るなり、

口籠って何も言えなくなるか、もしくは、はっきりと

貴女には死相が出ています。間違いなく1年以内に命を落とします!

と告げられるだけだった。

彼女が初めて感じる絶望は彼女の生活をどんどん暗く生気の無いものにしていく。

そして、偶然、街中で彼女と出会った俺は、彼女の容姿の変わり様に唖然とし

これはただ事ではないと感じたのは言うまでもない。

そして、彼女と喫茶店に入り彼女から話を聞いた俺は、いつものようにAさんに

助けを求めた。

どうやら寝起きだったAさんはとにかく機嫌が悪かった。

それでも何とか頼み込んで待ち合わせのファミレスに来てもらった。

彼女を見ても、Aさんは、

あっ、ども・・・・・。

と言うばかりで気乗りしないのが伝わってくる。

俺は何とかメニューから好きなものを頼んで良いから・・・という条件をつけて

ようやく彼女の話を聞いてもらう事が出来た。

彼女の話を聞き終えたAさんは、

う~ん。これはかなり厄介な話ですね・・・・・。

確かに死相もはっきりと出てますし・・・・。

もう手遅れというか・・・・・。

それに他の占い師や霊能者からも、その呪いみたいなもので貴女の寿命は

あと残り1年くらいだって言われてるんですよね?

だとしたら、そういう事なんじゃないですか?

それが現時点での貴女の運命という事です。

そう言われて、彼女は明らかにがっくりと肩を落としている。

俺はAさんに、

あのさ・・・・もしも、そうだと下も、もう少しソフトな言い方って出来ないの?

と声をかけるとAさんはこう続けた。

だって、これが現時点でのこの人の運命なんですから遠まわしに言ったって結論は

同じじゃないですか!

それと、貴女に質問したいんですけどいいですか?

そう言われた彼女はハッとして顔を上げた。

すると、Aさんはかなり強い口調でこう言った。

それにしても、どうして貴女はそんなに暗くどんよりとしてるんですか?

まるで生きた屍の様にしか見えませんけど?

そんな顔してると1年生きれるのが1か月になってしまうかもしれませんよ?

残りの人生が1年と言われて長く感じる人もいるかもしれないし、短いと感じる

人も勿論いるんでしょうね?

でも、今の貴女の状態でたとえ1年の寿命が10年に伸びたとしてもしょうがない

のかもしれませんよね?

生きたくても病気で長くは生きられない人もいて、逆に自殺という形で

自分の人生を短く終わらせようとする人もいる。

勿論、自殺は論外ですが、結局、人生なんて大切なのは長さじゃなくて中身だと

私は思ってます。

生まれてから十数年しか生きられない人の中にも充実した幸せな生き方をした方も

いる筈ですし・・・・。

だから、もしも私が貴女の立場ならこう考えますけどね・・・・。

呪いか何か知らないけど絶対にそんなものに振り回されないぞ、って。

自分の為でも良いし他人の為でも良いからとにかく何かをこの世に残す為に

精一杯生きますね・・・・。

1分1秒も無駄にしない様に・・・・。

そうしたら、もっと違うものが視えてくるかもしれませんからね・・・・。

とにかく呪いなんかに振り回されないで残された人生に悔いが残らない様に

生きてみたらどうですか?と。

そこまで聞き終えた彼女はしばらく黙っていたが、突然立ち上がると、

そうですね・・・・そうなのかもしれません・・・・。

そう言ってお辞儀をして急いでファミレスを出ていった。

そして、その場に残されたのは頭を抱えてぐったりする俺と、大量の料理に

目移りしながら凄い勢いで食べる事に没頭するAさんだけだった。

気まずい空気が流れつつその場はそのままお開きになった。

そして、俺は翌日、彼女にお詫びの電話をかけた。

電話に出た彼女は、

あっ、Kさん、昨日はありがとうございました。

それと、今忙しいので、後から電話して貰っても良いですか?

と元気な声で言われ、急いで電話を切った。

そして、元気な声を聞けた俺はその後彼女に電話をかける事はしなかった。

ただ、周りからは彼女に関して色々な噂が耳に入って来た。

ボランティア活動に精を出している・・・・。

仕事をとても頑張っている・・・・。

幾つかのサークルに参加して余暇を楽しんでいる・・・・。

婚活に邁進している・・・・。

犬を飼い始めた・・・・。

それらはとても以前の彼女からは想像も出来ないことであり、そうしている事で

彼女は以前とは違い、とても輝いて視える、と聞かされた。

そんな話を聞いてから、もう既に1年半以上が経過している。

そして、彼女が死んだかといえばNOである。

今でも一層充実した日々を過ごしているようだ。

そして、Aさんに会う機会があった俺はこう聞いてみた。

あのさ・・・あんな冷たい態度とってたけど、本当はその呪いみたいなものを

断ち切ってあげたんでしょ?と。

すると、Aさんは一瞬、ポカンとした顔をしたから大笑いしてこう言った。

Kさんって、本当におめでたいというか幸せな人ですよね?(笑)

そんな簡単に呪いなんか断ち切れるわけないじゃないですか・・・と。

そう言われた俺は、

それじゃ、やっぱり寿命が1年しかないっていう呪いは単なるデマだったの?

と返した。

すると、Aさんは、

いえ、きっとその地方に昔から伝わっているものですから、きっと本物の

呪いだと思いますよ・・・。

だから、あのままだったら、彼女もきっと1年と持たなかったのかもしれませんね。

でもね…私はこう言ったんですよ。

「現時点での運命」だと・・・・。

運命なんてその人次第でいくらでも変えられるんです・・・・。

人が純粋に人生を楽しもうとする力は、呪いにも勝るということです・・・。

呪いか何か知りませんけど、そんなものに人生を決められたたまるかって

事ですよ!

だから彼女がまだ生きているのだとしたら彼女は呪いに勝ったんですよ!

知らないうちに自分の力で・・・・。

人間にはそれだけの力がしっかり宿ってますから・・・。

皆が気付かないだけで・・・・・。

だから、もう大丈夫ですよ!

彼女は間違いなく長生き出来ますから!

そう言われ、俺は思わず納得してしまった。

しかし、その後すぐに疑問が浮かんだ。

これだけ立派な事を言ってのけるAさんなのだが、Aさんこそ、もっと真剣に

一生懸命に生きるべきではないのか?と。

まあ、Aさんには、どんな聖人のありがたい言葉もきっと届かないとは

思うのだが・・・・・。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:40Comments(24)