2019年06月08日

スマホに残されていたもの

彼は仕事では、よくスマホのカメラを使っている。



現場の写真やクレーム箇所を撮影してメーカーとのやり取りに利用する事で



仕事がそれまでよりもスムーズに回るようになった。



以前は、いつも車の中にコンパクトカメラを置いておき、必要らなると



そのカメラを引っ張り出していたらしいのだが最近の



スマホのカメラの性能は素晴らしく、十分鮮明で詳細な写真が撮影できる



為、今ではコンパクトカメラを持ち歩く必要は無くなったのだそうだ。



そんな彼がある日、困った顔で相談してきた。



どうやら、スマホのの保存画像の中に、自分では撮影した記憶が無いものが



知らない間に増えていっており、それを消して良いものか悩んでいるのだという。



撮影した記憶が無く、必要の無い写真ならば消せばいいのに、と思ったが



詳しく話を聞いていくと、それほど簡単な話ではないらしい。



そこで、思い切ってその画像を見せて貰った。



すると、そこには連続写真の様に、真っ暗な背景の中に、接近して撮影した様な



女性の顔が写り込んでいた。



そのどれもが大きく口を開け、顔が斜めに半分だけ写り込んでいる。



俺の経験上、それは簡単に消してはいけない部類のものだ。



だから、俺は、



まあ、撮影した記憶が無いのなら、そのうち消えるかも・・・・。



と言うしかなかった。



そして、その後も、その女の写真は増え続けているという。



見兼ねた俺は、彼に対して、



俺がお寺で処分して貰おうか?



と聞いたが、彼は首を横に振った。



なんとなくではあるが、その写り込んだ女の顔に見覚えがある事に



気付いたのだという。



自分でも忘れている様な遠い記憶であり、はっきりとは思い出せないらしいのだが、



それはどうやら昔、彼が中学生の頃、いじめというものに加担した事に関係



しているのではないか、と言った。



そして、後日、彼はこう言っていた。



実は、先日、中学校時代の友達に聞いたんだ。



昔、いじめてた女の子はどうなったのか?と。



まだ、元気に生きてるんだよな?と。



そこまで話して彼はより一層顔を曇らせてこう続けた。



この女の事を思い出した時は、きっと俺が死ぬ時だと思う。



それだけは何となくだけどはっきり分かるんだ・・・・。



だって、今もその画像はどんどんと増えていっているんだから・・・・と。



そこまで聞いて俺には察しが付いてしまった。



きっと、そのいじめられていた女の子はもうこの世にはいないのだ、と。
  


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2019年06月08日

助け歩求める少女

その日、彼は休日を利用して溜めこんでいた洗濯物をベランダで



干していた。



すると、何処からか助けを呼ぶ声が聞こえてきた。



助けて!・・・・誰か助けて!・・・・。



彼は慌てて声のする方を見ると、其処には小学生位の女の子が隣のベランダに



摑まって今にも落ちそうになっていた。



女の子の泣きながら必死に彼に助けを求めてきた。



もう落ちちゃう・・・・お願い、助けて!



彼は慌ててベランダをつたって隣の部屋に移動すると、その少女の手を



しっかりと掴んだ。



すると、少女も彼の手を痛いほどしっかり掴んできた。



もう、大丈夫だから・・・・。



そう言おうとして彼の体はそのままベランダから落下した。



在り得ない程の重さだった。



彼の体はそのまま落下して芝生の上に足から落ちた。



骨が折れる嫌な音と同時に鈍い痛みが体中に走った。



薄れる意識の中で彼は、自分の横に立ち、ニコニコと嬉しそうに笑っている



少女をぼんやりと見つめていた。



彼は病院に緊急搬送され、すぐに手術が施され、そしてそのまま入院と



なった。



そして、その少女は救急車の中でも、手術室の中でも、病室の中でも、



ずっと彼の横に立ちニコニコと嬉しそうに笑っていた。



そして、彼の命が助かったのを知ると、つまらなさそうな顔をして、何処かに



消えていったという。



彼はもっと早く気付くべきだった。



隣の部屋はもうずっと以前から空いたままだということを。
  


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2019年06月08日

2階の窓から見えた女の子

彼は小学6年の時、通学途中に在った中学校の体育館から見える



女の子に一目惚れした。



体育館の2階の窓からほおづえをつく様にして遠くを見つめているその子は



小学生の彼にとって、とても大人びて見えた。



彼にとって小学校の登下校はとてもドキドキ出来る至福の時間になった。



そのうちに、その女の子も彼の存在に気付き、彼に笑顔で手を振ってくれる



ようになった。



早くその中学に通いたい・・・・。



彼はそう思っていた。



そして、いよいよ彼は中学生にらなり、その入学式が、その体育館を利用して



行われた。



ドキドキしながら入場した彼だったが、、思わず自分の目を疑った。



体育館には2階は無く、高い場所に窓は付いていたがとても人間が登れる



様な場所ではなかった。



あの女の子は、どうやってあの窓から外を見ていたのか?



しかし、その答えが見つかる筈もなかった。



そして、それ以降も彼の登下校時、体育館から、その女の子がいつも手を



降ってくれたが、彼はその場所を恐怖で顔をひきつらせながら走り抜ける



様になったということだ。
  


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2019年06月08日

ブランコ

彼女は市役所に勤めている30代。



そろそろ結婚の話も聞こえてきそうなものだが、当分結婚する気は無いのだという。



どうやら自宅マンションで小型犬と一緒に生活しているらしく、そのせいか、



全く寂しさは感じないのだという。



そんな彼女は毎日、朝と夕の犬の散歩を欠かさない。



真面目な彼女らしく、いつも決まった時刻に決まったコースを散歩するそうだ。



そして、その散歩コースには児童公園があるらしく、夕方の散歩ではその公園を



通るのが午後7時頃になるらしい。



そして、ある時、彼女は気付いた。



公園のブランコが勝手に大きく振れている事に。



それを見るのは決まって夕方の散歩だけらしく、更に言えば、彼女が来るのを



待っていたかのようにブランコはやっくりと、そして次第に大きく振れ始める。



やはり気持ちが悪かったので出来るだけ、その公園は早足で通り過ぎるように



していた。



しかし、ある日、ハッとして気付くと、誰も乗らずに大きく振れているブランコに



並ぶ様にして彼女自身がブランコに乗っている事に気付いた。



知らない歌を口ずさみながら・・・・。


それからは、同じような事が続くようになり、ハッとして気が付くと


無意識にブランコに乗り知らない歌を口ずさんでいる自分がいた。



自分ではどうしようもなかった。



ただ、ある時、彼女は知らない人の怒号でハッと我に帰った。



気が付くと、彼女はブランコの支柱にロープを掛けたまま、その先端を


自分の首に巻きつけて


ブランコに乗っていた。


そして、彼女が乗るブランコはいつもよりも大きく揺れていた。


今にもブランコから彼女の体が飛び出しそうな勢いで・・・・。



もしも、その人が止めてくれなかったら・・・・・。


彼女は全身に悪寒が走るのを感じた。



彼女はそれ以来、犬の散歩コースを変えたらしいが、それ以来、不思議なものを



観る事は無くなったそうだ。
  


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2019年06月08日

少しずつ・・・燃えていく

これは知人男性から聞いた話。



彼は今でこそ家庭を持ち、父親として頑張って働いているが以前は時代が



就職氷河期だった事もあり、大学は出たものの正社員には成れず、かなり



苦しい生活を余儀なくされていた。



地元に帰れば父親のコネで定職に就けそうだったのだが、やはり都会の生活



に慣れてしまった彼には地元に帰り、そこで生活する、という選択肢は



無かったようだ。



ボロボロのアパートは家賃が安く、貧乏な彼にはうってつけだったが、それでも



引き籠る様な生活を数日続けると、生活費が底をついてしまい、一時的に



バイトに精を出した。



つまり、その頃の彼は自堕落な生活の中で何の楽しみも無く、ただ日々を



送っていたようだ。



そんな彼にとって唯一の楽しみは携帯を使って色々なサイトを見て回る事だった。



今と違ってそんなに多種多様なサイトが在った訳ではなかったが、それでも



毎日、暇を持て余していた彼にとって、携帯を見ている時間だけがある意味



現実逃避出来る時間だったのかもしれない。



そして、その頃、テレビのニュースでも話題になっていたのが、所謂



「自殺問題」だったのだという。



勿論、彼に自殺願望があった訳ではなかった。



ただ、彼にしてみれば自殺を考えるほどの人間というのはある意味、自分よりも



不幸な人間なのだと思え、少しだけ優越感に浸れるものだったのかもしれない。



そして、彼は自殺掲示板というものを覗いてみる事にした。



ほんの興味本位で・・・・。



しかし、彼が覗いてみた自殺掲示板というものは、彼が考えている様な暗く



閉ざされた空間ではなかった。



本当に自殺を考えている人間が集まっているのか?と思える程、そこに集う



者達には、元気もあり明るさもあったという。



そのせいか、彼はそのサイトが自殺掲示板である事をすっかり忘れて掲示板での



会話に夢中になったという。



日頃、社会の中で自分が思っている不平・不満がそのサイトにいる人達とは



共有できた。



だから、いつしか、彼はそのサイトに顔を出すのが毎日の日課になってしまった。



そして、そのサイトの中でも特に仲の良い仲間が5人ほど出来たという。



彼は自分が書き込む世の中への不平・不満に対して、その仲間達がいつも



同調してくれる事に喜び、いつしか価値観を共有できる一生涯の仲間なのだと



思うようになっていく。



そんなある日、彼はいつものようにその日に感じた普遍・不満を書き込んで



いると、



それなら会おうよ!



会って話そうよ!



という返事が返ってきた。



彼としても掲示板を通してのやり取りにはかなりの面倒さを感じていた事もあり、



即答で会う事を了承したという。



市内のファミレスで待ち合わせる事にした。



集まるのは、そのサイトで最も仲の良い男3人女2人、そして彼を含めると



合計6人だったという。



彼は初めて会う仲間に緊張したらしく、自分が持っている中でも一番気に入っている



服を着ていく事にした。



待ち合わせの場所に行くと、既に他の5人が集まっていた。



どうやら、その5人も実際に会うのは初めてだったらしく、それを知って彼の



緊張もいくぶん和らいだ。



そして、実際に会ってみると、その5人はとてもお洒落であり、どこにも暗い感じが



しなかった。



特に2人の女性は、どこから見ても美人といえるだけのルックスをしていた。



それから、ファミレスで時間をつぶし、話も盛り上がった。



彼はその時会っているのが自殺サイトの仲間たちなのだということを完全に



忘れていたという。



そして、夜になった頃、5人の1人がこう提案した。



俺は今、小さいが一軒家に住んでいるんだ。



良かったら、これから俺の家に移動して飲み直さないか?と。



他の4人はすぐに賛成した。



そして、彼にも夜の予定など何も無かったから、そのまま流されるように



その飲み会に参加する事になったという。



ファミレスからその家まではタクシーに分乗して移動した。



タクシーに乗ってからは急に会話が途絶えたが、30分ほどで、その家に到着



したので、特に違和感は感じなかったという。



そして、その家に上がると、既に最初からその家での飲み会が予定されていたかのように



沢山の酒と料理がすぐに運ばれてきた。



日頃、美味しいものを食べる機会など無かった彼はそれだけで舞い上がってしまい、



おおいに飲み、そして食べまくったという。



最初に違和感を感じたのはその頃だったという。



彼は酒を飲んでも酔い潰れる事も無かったし眠たくなるという事も過去には一度も



無かった。



しかし、その時に限って、酷い睡魔に襲われたという。



そして、彼がウトウトし出した頃から会話が殆ど無くなり、他の5人はまるで



彼がそのまま眠りに就くのを待っているように見えたという。



その時の他の5人の表情は、無表情で無感情に見え、それが怖かったという。



そして、彼はそのまま眠りに就いた。



そして、何故かその時にはいつもは決して見る事など無い夢を見たという。



その夢というのはかなりの悪夢であり、彼はうなされる様に眠りから覚めた。



その時、何が起きているのか、理解出来なかったという。



その部屋の中には彼と、そしてサイトで知り合った5人が寝ていたのだが、



その部屋全体が真っ赤に燃えあがっていた。



まだ夢の中なのか?と思い何度も頬をつねった。



しかし、それが現実の火事なのだと分かると、彼は必死の思いで立ちあがり、



周りに寝ている5人の体を揺すって声をかけた。



しかし、誰からも反応は無かった。



このままでは自分まで焼死してしまう・・・・。



そう考えた彼は、悩んだ末に、とりあえず自分だけでも、その場から逃げようと



した。



しかし、その瞬間、間違いなく、寝ている筈の5人の顔が彼の方に向き、



恨めしそうな顔で睨んだという。



彼は、思わず、ヒッと声を上げたが、何とかその部屋から出る事に成功した。



しかし、部屋から出てみると、その家全体が既に炎に包まれおり、外からは



消防が必死に消火活動をしているのが分かったという。



彼は何処をどう彷徨ったのか、全く思い出せないのだという。



しかし、気が付いた時には、彼は消防士に助け出されていた。



そして、そのまま病院に運ばれ手当てを受けた。



それからしばらくの間、入院生活が続いたらしいが、その間、警察が来て、



色々と事情を聞かれたという。



そして、その会話の中から、他の5人が、その夜、全員焼死したのだと分かった。



体は全て炭化しており、人間の体を成していなかったと聞かされた。



ここまで書いた話は今から15年ほど前に起きた事件だ。



そして、今、彼は立派に立ち直り、家族を支える大黒柱として懸命に働いている。



あの頃とは全く事情が違うのだ。



しかし、あれから15年以上経った今でも怪異は続いている。



別に実害があったり霊障があるというのではない。



実は、彼がその仲間たちと会った時、ファミレスで全員が写った写真を撮影した。



しかし、あの事件の事を一刻も早く忘れたかった彼は、そのカメラに入っていた



フィルムを現像せず、そのまま廃棄したのだという。



だが、その事件の1年後、彼が部屋のに戻ると、1枚の写真が机の上に置かれていた。



そして、その写真があの時撮った集合写真だと分かった時、彼は凍りついた。



彼は間違いなく、そのフィルムを廃棄していたし、何より、朝、彼が



部屋を出る時にはそんな写真など机の上には無かった。



さすがに気味が悪かった彼は、その写真を近くのコンビニのゴミ箱に捨てた。



間違いなく・・・・。



しかし、翌日の朝、目を覚ますと、再び、その写真が机の上に置かれていたという。



それから彼は何度もその写真を捨てた。



しかし、その度に必ず翌日には彼の部屋に、その写真は戻って来ていた。



もう、これは何かの霊的現象だ、と確信した彼は、お寺に出向き、その写真を



供養してもらえるように頼み込んだ。



しかし、やはり、翌日にはその写真は彼の元に戻って来た。



だから、彼はその写真を捨てる事を諦め、二度と目に付かないように、厳重に



梱包し、頑丈な鉄の容器の中に納めた。



そして、それからは、その写真が彼の前に現れる事は無くなった。



そう思っていた。



しかし、1年に一度、ちょうど、あの火事があった日になると、その写真は



鉄の容器から解放されて、机の上に置かれているようになった。



そして、毎年、少しずつ、その写真がまるで燃えた様に焦げているのが分かった。



そして、それは毎年少しずつ、焦げた部分を広げつつ現在に至っている。



昨年、その写真が彼の前に現れた時は、周りの5人の姿は既に燃えて無くなっており、



彼の体も、かなりの部分が焦げて黒く変色していた。



だから、彼は言っていた。



きっと、あの写真から俺の姿が焦げて消えてしまった時が、俺が死ぬ時なんだと思う。



そして、それはもしかしたら今年なのかもしれない・・・・と。



その夜、焼死した彼らが今でも彼が死ぬのをじっと待っている、という事なのか?



勿論、安易な気持ちでそんなサイトに近づいた彼に責任はあるが、どうにか



撃つ手はないものか・・・・・。



そう思い、俺はAさんに聞いてみた。



しかし、返って来たのは、



無理です・・・・遅すぎますね・・・・。



という、つらい言葉だった。

  


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2019年06月08日

扉から解放したモノ

彼女が行ったのは、間違いなく人助け(救助)という行為だった。



仕事ではジムのインストラクターとして



働き、体力には自信があった。



そして、何よりも、困っている人を放っておけない性格。



そんな彼女だったから、きっとその時も、行動に移さずにはいられなかった



のかもしれない。



話の発端は実に単純だった。



その時、彼女は友人の見舞いで病院を訪れていた。



そして、知り合いが入院している病棟とは別の、既にその機能の殆どが



閉鎖されている病棟に



足を踏み入れてしまったのも何かの因縁なのかもしれない。



彼女の話では、病院の敷地に入ると、大きな建物が二つ建っているのが分かった。



そして、彼女は古いほうの建物へと進んでいった。



実は、その既に使われなくなっている病院には1階に飲み、検査施設が残されており、



2階から上の階層は完全に立ち入り禁止になっていた。



しかし、その時、彼女が訪れた時には、2階から上の階には沢山の看護師や



患者さん達の姿が見えたのだという。



そして、その時、彼女はどうしても3階まで昇らなければいけない、という



不思議な使命感に駆られていた。



それは、病院の敷地に入った時、古い建物の3階の一番端にある窓から小さな



女の子が彼女に向って大きく手を振りながら、



助けて~助けて~!



と叫んでいるのを見てしまったから・・・・・。



だから、彼女は階段を駆け上がるように3階を目指した。



女の子が助けを求めている・・・・・



そして、それだけではなく、3階の窓から助けを求めていた女の子の姿を



彼女は過去に何度か見た記憶があったのだという。



慌てて階段を駆け上がり3階に到着したが、そこには誰の姿も無かった。



だから、彼女は大声で女の子を呼んだ。



助けにきたよ!



何処にいるの?



すると、廊下の一番奥の部屋から、ドンドンと扉を叩く音が聞こえてきた。



彼女は急いでその扉に駆け寄ると、



この中に居るの?



大丈夫?



と声を掛けた。



すると、扉の中から小さな女の子の声で、



怖いよ・・・・はやく此処から出して~



お願い・・・・助けて・・・・。



という声が聞こえてきたという。



彼女はついさっきまでは窓から顔を出していた女の子が、どうして扉の中に



閉じ込められているのか?という疑問は少しも浮かばなかったという。



一刻も早く扉の中から女の子を助けなければ!



そんな気持ちしかなかった。



だから、その扉には立ち入り厳禁、という張り紙や、その取っ手には明らかに異常



としか思えない針金が巻きつけられ取っ手が動かない様にしてあった事にも



何も感じなかった。



彼女は急いで取っ手に巻かれていた針金を手際よく外すと、そのまま一気に



その思い扉を開けた。



扉の内側には真っ暗な空間が広がっており何も見えなかった。



彼女はそれでも大きな声で、



助けにきたよ!



何処にいるの?



出ておいで・・・・。



と優しく声を掛けた。



すると、突然、暗闇の中からヌッと小さな手が現れた。



彼女は一瞬、ドキっとしたが、すぐにその小さな手を握って、こちらに引っ張りながら



もう大丈夫だからね・・・・。



と優しく声を掛けた。



暗闇の中から少しずつ女の子の姿がはっきりと見えてくる。



おかっぱ頭の小学校の低学年の女の子に見えた。



女の子の姿に変わったところは無かった。



ただ、その女の子は今までこの暗闇の中に閉じ込められていたとは思えないほど



ギラギラとした眼で、子供とは思えない様な気味の悪い笑い顔をしていた。



彼女は一瞬、背中に冷たいものを感じたという。



それでも、一刻も早く目の前の女の子を部屋の外に出してあげなければ・・・。



そう思い、女の子の手を強く引いて、部屋から出してあげようとした。



その間、その女の子はずっと彼女の顔を見ていた。



薄気味悪い笑い顔で・・・・。



そして、彼女は女の子を無事に扉の中から解放してあげた。



そして、再び扉を閉めて、女の子の方へ振り向くと、其処には女の子の姿は



見えなかった。



何処にも隠れる場所も無かったし、そんな時間も無かった筈なのに、



間違いなく、其処には彼女一人が暗い廊下に立った1人で立ち尽くしていた。



彼女はうすら寒いものを感じ、もう一度、扉の方を向くと、扉の中からは



ドンドンという誰かが扉を叩く音と、ゲラゲラゲラという笑い声が



聞こえてきて、彼女は恐ろしくなってその場から逃げだした。



結局、その日は知り合いを見舞ってから、すぐに帰宅した。



彼女はすっと、その時の女の子がいったい何処へ消えたのか?と考える事が



多かったが、すぐにそれを止めた。



拘わってはいけないもの・・・・。



そんな思いが強かったのだという。



そして、その頃から彼女の周りでは怪異が起こる様になる。



夢の中にいつもあの時の扉が現れて、彼女の前でゆっくとり扉が開いた。



そして、無数の手が暗闇の中から彼女に手招きをした。



すると、彼女の体は彼女の意思ではなく、ゆっくりとその扉に近づいていく。



止まって!と何度も叫ぶが、彼女の声は自分の体が扉に向かって歩いていくのを



どうしても止める事が出来なかった。



そして、扉の前まで来ると、彼女の体は吸い込まれるようにその暗闇の中へと



入っていく。



ゆっくりと閉まっていく扉。



そこで、彼女はようやく体の自由が利くようになって慌てて扉を開けようと



するが、どうやっても扉は開いてくれない。



彼女は扉をドンドンと叩きながら、



誰か・・・誰か助けて!



と大声で叫び続ける。



すると、突然、背後から冷たい何かが彼女の背中に覆いかぶさってくる。



そこで、悲鳴を上げる彼女。



いつも、そこで彼女は夢から目覚めた。



体中にびっしょりと冷たい汗をかいていた。



夢だと分かっていたが、まるで、現実に自分の背中に何か冷たいものが覆いかぶさって



きたかのような、感触と冷たさが背中に残っていた。



そして、そのうち彼女は真夜中に夢遊病のように意識もないまま動くようになる。



家の中を彷徨い歩き、気が付くと家の外まで出てしまい、ハッと目が覚めると



電車の線路の上に立っていた。



そして、またある時にはビルの屋上に上る非常階段の途中で壁から身を乗り出して



いた事もあった。



彼女は、自分の行動が恐ろしくなってしまい神経科の病院へ入院する事を考えた。



そんな時、彼女が家の中を彷徨っている時、偶然、夫が彼女が歩いていく



後ろ姿を目撃し、その後を追った。



すると、その時、夫は彼女の手を引いて歩く小さな女の子の姿を目撃してしまう。



その話を夫から聞かされた時、彼女は自分が病気なのではなく、もしかしたら



あの時の女の子にとり憑かれているのではないか、と愕然とした。



彼女にとっては人助けのつもりの行為が、もしかしたら、とんでもないモノを



扉の外に出してしまったのではないか?と。



それから何人もの霊能者という方達に除霊を頼んだが、高い報酬だけを請求され、



結局は何の解決にも至らなかった。



そんなある日、彼女は思い切った行動に出てしまう。



彼女は自分なりに考えたそうだ。



あの病院の、あの扉を開けた事が全ての悪夢の始まりなのだとしたら、もう一度



その場所に行けば何か解決策が見つかるのではないか?と。



無謀とも思える行動だったが、毎夜、夢遊病のように彷徨い続けている彼女には、



そのうち、自分はきっと夢遊病のまま殺されてしまう・・・・。



そんな恐怖が常に頭の中にあった。



かくして、彼女はその日のうちに粗塩と御札を用意して、翌日の朝からその病院



に向かった。



病院に着くと、急いで古い建物の3階を目指した。



エレベータは動いていなかったので前回と同じように階段を利用して駆け足で



3階ので駆け上がった。



そして、廊下に出ると、例の扉が大きく開いたままになっていた。



大きく開いた扉の中からは、真っ暗な暗闇が無限に広がっている様に見えた。



彼女は持参した懐中電灯を点けるとゆっくりと扉へと近づいていく。



扉の中に入る前に懐中電灯で中を照らしたが、その内部は全く見えなかったという。



意を決した彼女は、そのまま扉の内側に進む。



すると、先ほどまで開いていた扉がまるで自動ドアのようにゆっくりと閉まっていく。



彼女は必死でそれを止めようとしたが、何故か扉はびくともせずそのまま扉は



閉まってしまう。



彼女は懐中電灯の光で必死に視界を確保しようとした。



しかし、何故か懐中電灯の明かりは、すぐに消えてしまい完全に視界を奪われて



しまう。



完全な闇の中で彼女は動く事が出来なかった。



耳からの情報だけで状況を把握しようとしたが、そこには何の音も存在していない。



そして、次の瞬間、消毒の匂いと、何かが腐ったような匂いが混ざり合い彼女の



鼻を刺激した。



彼女は酷い吐き気に襲われその場に嘔吐しそうになったが、何も吐き出す



事は出来なかった。



そして、次の瞬間、はっきりと音が聞こえてきた。



ズルッ・・ズルッ・・ズルッ・・ズルッ・・



それはその部屋の中を何かが這いずる様な音だった。



そして、苦しそうな息使いと、苦しそうな呻き声が聞こえてくる。



何かがこの部屋の中にいる・・・・・。



彼女は恐怖した。



何も見えない真っ暗やみの中で何か存在している。



自分とは違う・・・・いや、人間ではない何か・・・・・。



彼女は恐怖でじりじりと後ろへと後退した。



すると、先ほど自分が通って来た扉が背中にぶつかった。



もう逃げ場が無い・・・・。



そう考えると気が狂ってしまいそうだった。



しかし、彼女はハッと思いだした。



自分は、このような場所だと知った上でこの場所に来たのだ、と。



そして、此処で何とかしない事には自分の命は風前の灯なのだという事を。



だから、思いっきり大声で、うわあ~!と叫んだ。



そして、その場に立ちあがると大声で叫んだ。



隠れてないで出てきなさい!と。



すると、一瞬の沈黙の後、部屋の中から



ゲラゲラゲラという笑い声が聞こえたという。



その声は全ての気力を奪ってしまうほど不気味な笑い声であり、彼女はまた



その場にしゃがみこんでしまう。



そうして、前方を見つめていると、自分の目が暗闇に慣れてくるのが分かった。



そこには両腕の無い女がズルズルと体だけでこちらに向かって這いずって



いるのが、うっすらと見えた。



彼女は悲鳴を上げた。



悲鳴を上げなければ気が狂ってしまいそうだった。



彼女は絶望の中にいた。



どうして自分がこんな事になってしまったのか?と考えたが、人助けをしようとした



事を後悔したくはなかった。



そして、夫の為にも自分がここで頑張らないでどうする?



と自分を励まし続けたという。



すると、背後の扉の向こう側。



廊下の方から、コツコツコツコツという足音が聞こえてくる。



ハイヒールで歩くような足音。



彼女は更に恐怖で固まってしまう。



前から化け物・・・・そして背後からも化け物・・・・。



どうすれば良い?



彼女は必死に考えたが答えなど見つかる筈もなかった。



そして、背後から近づいてきた靴音が扉の向こうで停止した。



ソレはもう扉の前まで来ている・・・・。



ドアノブをガチャガチャと回しているのが分かった。



更にドアを蹴る様な音まで聞こえてくる。



扉の外にいるモノが何なのかは分からなかったが、それだけで彼女を恐怖の底へと



落とすのに十分だった。



彼女は死というものを生まれて初めて覚悟したという。



すると、知らないうちにボロボロと大粒の涙が頬を伝った。



おかしいな・・・これって外側へ開くんだよね・・・・・。



なんで開かないの・・・・。



まあ、いいか・・・・。



突然、そんな声が聞こえたという。



と、次の瞬間、あれほど重かった扉が簡単に、そして一気に開いたという。



すると、そこには20代後半くらいの女性が立っていた。



その整った顔立ちと細い体は、一瞬、人間ではないかの様に思えたという。



すると、次の瞬間、



あっ、やっぱり此処にいた!



もう大丈夫ですよ!



そう言うと、その女性は片手で引きずっていた何かを扉の中へと放り込んだ。



彼女には、それが、あの時見た女の子の姿に見えたという。



そして、彼女を廊下へ連れ出すと、



それじゃ、此処で待っててくださいね・・・。



私はこれからやらなくちゃいけない事があるんで・・・・。



そう言って、その女性は扉の中へと1人で入っていき、そのまま扉を閉めた。



あんた達・・・いい加減にしときなさいよ!



こらこら…逃げるともっと酷い目に遭わせるからね・・・・。



そんな声が聞こえたという。



そして、そんな声を聞きながら彼女はその場で意識を失った。



そして、気が付いた時には自宅のリビングに寝かされていたという。



何事が起ったのか、全く理解出来なかった彼女だが、それ以後、怪異は一切



起こる事は無かった。



そして、俺はお礼の電話かけた。



さすが、Aさん、仕事が早いね!



お蔭で俺の顔も立ったよ!



すると、Aさんは、



まあ、それなりに骨は折れましたけどね・・・・。



それにしても、Kさんの知り合いの厄介事ばかり、頼んでくるの、止めて貰えます?



私もこう見えてかなり忙しいんですから・・・・。



そう言われてしまったが、それでも、その後、スイーツでのお礼を提案すると、



まあ、次回も何かあったらいつでも言ってくださいね!



と上機嫌だったのは言うまでもない。



それにしても、どれだけ恐ろしい霊であっても、Aさんの手に掛かれば、まるで



恐ろしいものではない様な気がしてくるから不思議である。



  


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2019年06月08日

怖がりな?幽霊

金沢市内に在る24時間営業のスーパーマーケット。



広い駐車場もあり、飲食店も備わっているその店舗は



やはり24時間、客足が途絶える事は無い。



そして、そこに彼女は立っていた。



初めて彼女を見かけたのは、雨の夜。



時刻は午後11時を回っていた。



俺はといえば、仕事が遅くなってしまい、とりあえず半額の弁当でも残って



いないか、とそのスーパーに立ち寄った。



そして、彼女はといえば、いかにも高校生という制服を着て、



傘を差したまま、キョロキョロと辺りを見回していた。



何かを探しているのかな?



そして、



こんな時間に女子高生が何してるんだろ?



俺はそう思ったのを覚えている。



しかし、俺がそのスーパーに行く度に、彼女はいつもその場所に



立っていた。



朝でも昼でもそして真夜中でも・・・。



スーパーの入り口近くの自転車置き場の前。



そんな場所に彼女はいつも、ニコニコと笑って、落ち着き無く立っていた。



雨の日も晴れの日も・・・。



落着き無く、と書いたのは、彼女がせわしなく動き回っていたから。



泣いている子どもがいれば、すぐに駆け寄って必死に頭を撫でていたし、



可愛い犬を連れた客が来ると、その犬を抱きしめる様にして嬉しそうに



笑っていた。



そして、たまに派手に転んだりもする。



本当に無邪気で優しい女の子という感じだった。



そして、スーパーを訪れる客の中には、彼女の姿が見える人も



いるのだろう・・・。



たまに、彼女の姿を見て、不思議そうな顔で通り過ぎていった。



そんな時、いつも彼女は、ごめんなさい、とでもいう様に大きくお辞儀をして



後ろに下がっていった。



そして、いつしか俺の中で彼女は生きている人間ではないという



確信が芽生えた。



なにしろ、いつ、どんな時間に行っても、いつも彼女は其処に立っている



のだから、そう判断せざるを得なかった。



それにしても、彼女は俺が知っている霊達とはまるで異質のものだった。



だから、俺は、Aさんに聞いてみた。



○○町にある24時間スーパーに立っている女の子、知ってる?と。



すると、Aさんは、



ああ、あの娘なら知ってますよ。



凄く良い子なんですよ。



だけど、凄く怖がりなので、いつもあそこに居るんです。



あそこは、いつだって人が居なくなる事が無いし、それに明るい



ですからね!



そう言われて、俺は、



幽霊なのに、怖がりなの?



幽霊って暗い所が好きなんじゃないの?



と聞くと、



ゴキブリじやあるまいし、暗い所が好きな訳ないじゃないですか。



まあ、たまにそういうのも居ますけどね。確かに・・・。



でも、いつも言ってるでしょ。



人間も霊も変わらないって・・・・。



霊だって、元々は人間なんですから、暗い所が怖い霊だって居ますよ。



まあ、あの娘の場合、少し怖がり過ぎなところもありますけどね。



つまり、あの娘は自縛霊なんですよ。



だから、あの場所からは動けないんです。



いや、動かないって言った方が正しいのかもしれませんけど・・・。



そう聞いて、俺はいつもの好奇心が湧いてしまい、その理由を聞いた。



すると、Aさんは、



まあ、それには少し悲しい事情があるんですけどね・・・・。



そう言った後で、こう続けた。



あの女の子は、ずっといじめられていたみたいで・・・。



それで、自殺しようとしていたんでしょうね・・・・。



そこに私が偶然通りかかって・・・・。



そして、自殺というのはどんなに苦しみが続くものなのか、ということや、



自殺する勇気があるのなら、その気持ちを周りの人を幸せにする事に使って



みたらどうか?と説得したんですよね。



で、あの女の子も、それが分かってくれたみたいで、それからは自分の家族や



同級生達に、心から無償の善意や愛を注ぐ事を頑張ったんですよ。



すると、いじめも無くなり、それまであまり感じなかった家族の愛情も感じられる



様になったみたいで・・・・。



まあ、そこまでは良かったんですけどね。



その後、彼女はとある病気にかかってしまって・・・。



それが、俗にいう不治の病というやつで・・・。



でも、あの子は自分の命が残り僅かだと知ってからも、いや、知ってからは更に



家族や友達に素直に愛情を持って接し続けていました。



ボランティアにも率先して行く様になったし、バイトにも精を出して



そのお金をせっせと募金までして・・・・。



そして、彼女が死ぬまでの間、彼女は私の所に何度も足を運んで来たんですよ。



人が死ぬっていうのは、どういう事なのか?というのを知りたかったみたいで。



だから、私は教えてあげたんです。



人は死んでもそれで終わりではないよ、と。



そして、その人がこの世に存在していたという最も大切なものは、寿命の長さや



どれだけ成功したか、ではなく、死んだ後も、それまでに関わってきた



人達の中で大切な記憶としてずっと生き続けられるか、だとという事を。



理不尽な事、泣きたくなる事が沢山あっても、その中でどれだけ自分らしく



生き続けられるか・・・。



その為にはいつも笑っていられる様に努力しなさいね、と。



笑顔は周りにどんどん広がっていくものだから、と。



それを聞いて彼女も元気になれたみたいですけど・・・。



そして、彼女は考えたんですよね。



どうやったら、自分が死んだ後も、家族の負担にならないようにしながら、



家族の姿をたまに見る事が出来るのか?と。



そして、彼女が選んだのが、あの24時間のスーパーなんですよね。



あの子は自らこの世に残る事を選んだんです。



勿論、あちらの世界に行くという選択も出来たはずなんですけど・・・・。



呪いとか恨みを晴らしたいというのではなくて、家族を蔭から見守りたい、



という気持ちで。



それが彼女が望んだ幸せなんでしょうね。



だから、毎日、彼女の母親が買い物に来るそのスーパーに自ら留まってるんです。



だから、Kさんはいつも暇なんですから、あの子と友達になってあげると良い



のかもしれませんね。



まあ、Kさんみたいな、おじさんと友達になってくれるかどうかは判りませんが・・・・。



あっ、それと、勿論、姫ちゃんもあの子とは大の仲良しなんですよ。



そう説明された。



それから、俺はそのスーパーに行く度に、その女の子を見つけると



何故かしっかりと観察するようになってしまった。



そんな悲しい過去があったにも拘らず、彼女はいつも優しい目で立っていた。



いつもキョロキョロとと辺りを見回しては、ホッとした顔をする。



その動きだけで、彼女がとても怖がりな幽霊なのだと納得出来た。



俺はなんだか気持がほっこりと温かくなった気がした。



しかし、それからしばらくして、俺の耳に、ある噂が聞こえてきた。



それは、彼女がいつも立っているあのスーパーで霊障が発生しているというもの。



しかし、俺にはどうしても、あの子がそんな事をするとは思えなかった。



そこで、色々と調べているうちに、ある事実が判明した。



それはあるグループが一人の女子学生を虐めており、それを見兼ねた彼女が



そのグループを驚かせて、その女子学生を助けようとした。



しかし、その時、彼女は自らの顔を肥大させ、不気味な顔で驚かしてしまった



為、その場が大騒ぎになってしまったようだった。



それは彼女が悪いのでは決してなかった。



しかし、そのスーパーも変な風評被害を受けたくはなかったのだろう。



除霊出来る霊能者に頼んで、その悪霊を浄化してしまおうという事になった。



勿論、その悪霊というのは、彼女の事。



そんな馬鹿な、と思い、俺は、その除霊を行うという霊能者の元を訪れた。



かなり力のある霊能者なのは噂に聞いていた。



そして、頼み込んだ。



なんとか、彼女を祓わないで欲しい、と。



すると、彼らは、



人を驚かすという事だけで、十分に悪霊だ!



それに、それなりの報酬ももらっているのだから!



と言って、頑として除霊の中止を断ってきた。



そうなると、俺にはもうAさんに頼るしか残された道は無かった。



Aさんに、その話をすると、



ふうん…そうですか。分かりました。



と、あまりにも反応が悪かったので俺は不安になってしまった。



そして、いよいよ、除霊が行われるという深夜。



俺は急いで現地の24時間スーパーに向かった。



しかし、そこにはAさんの姿はなかった。



そこで、俺はすぐにその女の子の霊に駆け寄って、



今すぐ、此処を離れないと!



消されちゃうんだから!と。



すると、その女の子は首を振ってから大きくお辞儀をしてきた。



なんで?



何も悪い事なんてしてないのに・・・・。



そう思いながらも、俺は再び、その霊能者の元に駆け寄り、何度も懇願した。



なんとか助けて欲しい、と。



すると、その霊能者は笑いながら、



あんたも悪霊にとり憑かれて気が変になってるんじゃないのか?



俺は正義の為にやってるんだよ!



邪魔するならあんたも一緒に消してやろうか?



と声を荒げた。



ふうん・・・そうなんだ。消しちゃうんだ・・・なんか笑える・・・。



背後からそんな声が聞こえた。



それは明らかにAさんの声だった。



俺が振り向くと其処にはAさんと姫が立っていた。



Kさん、こんばんは。お久しぶりですね(笑)



私もよくこのスーパーに来るんですよ~



一緒ですね~



私はこのスーパーのお寿司コーナーが好きなんですよね!(笑)



Kさんも、お寿司ってお好きなんですか?(笑)



と姫は、いつものゆっくりとした口調で笑いかけてくる。



だから、俺は、



いや、今はそんな呑気な事言ってる場合じゃないから・・・・。



そう言うと、姫は笑って、



大丈夫ですよ・・・。



Aさんも私も、あの子を助ける為に来たんですから・・・・。



と返してきた。



そして、Aさんは、



誰が誰を消すって?



なんでも簡単に、消す、とか言って、馬鹿なんじゃないの?



悪霊かどうかも見分けが付かないんなら、霊能者なんて名乗る資格ないよ!



そして、この娘が選んだ幸せを誰にも邪魔する権利なんて無いんだ!



言っておくけど、その女の子の霊も、そしてそこにぼーっと立っている、あんた



が消すって言った、このおじさん(俺のこと?)も



どちらも私達の大切な仲間だから・・・。



まあ、そのおじさん(俺の事?)の方はたいして大切じゃないから別に良いけど・・・・。



だから、ちょっとでも手を出したら、次の瞬間、あんたが消えちゃう事になるからね!



そして、Aさんは、こちらを振り返ると、



姫ちゃん、お願い。アレ、やってね!と姫に合図を送った。



すると、姫は、大きく頷いてから、静かに、



お願いね。出てきて手伝って・・・・。



と言った。



その瞬間、大きな白い狐が目の前に現れる。



巨大な白い狐は尾が九つに分かれ、異様に怖い顔をしている。



思わず、その霊能者も恐怖で後ずさりする。



すると、Aさんは、



一応、ちゃんと、この九尾が見えてるんだ?



はい。これで私達もあんたの事を驚かしたんだから、悪者って事になるんでしょ?



どうぞ!消してみれば?



えっと、正義の為・・・だったっけ?



すると、その白く巨大な狐は、更にその霊能者の近寄り、不気味に喉を鳴らした。



その瞬間、その霊能者は、その場から腰を抜かしたように逃げて行った。



はい、ありがと!



姫がそう言うと、その巨大な白い狐は、先ほどまでの恐ろしい顔から一転して



笑っているかのような可愛い顔になる。



俺は姫に近づき、



ここまで姫の言う事を聞くんだ?



凄いよね。使役って言うんだったけ?



そう言うと、姫は笑いながら、



別に上下関係なんてありませんよ。



ただの友達・・なんです(笑)



そう俺に説明した。



すると、Aさんは、ぶっきらぼうに、



終わった~、じゃあ、帰ろう!



そう言って、さっさとその場から立ち去ってしまった。



ただ、俺は知っている。



その後、Aさんと姫が、そのスーパーを説得して除霊を断念させた事を。



そして、実は、その際、そのスーパーに来ていたお客さんの中からも、除霊を



中止する様に沢山の歎願が集まったらしい。



確かに、視える人達にとって、あの子は恐ろしい存在どころか、心癒してくれる



貴重な存在なのは言うまでも無かったから・・・・。



俺と同じように・・・・。



そして、その後もそのスーパーは繁盛を続けている。



そして、今日もあの女の子の霊は、あの場所で家族に会えるのを楽しみに



ニコニコと笑いながら待っているのだろう・・・・。
  


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2019年06月08日

居留守

これは知人女性が体験した話である。



彼女は夫婦二人だけで金沢市郊外の1戸建てに住んでいる。



彼女の仕事の休みは毎週水曜と日曜日であり、日曜日は夫婦で出掛ける日とし、



水曜日は家事に費やす事に決めていたという。



だから、その日も朝から洗濯掃除をこなし、テレビを見ながら早めの昼食を



食べているとなんだか眠たくなってしまった。



いつも、リビングで、うたた寝をしては夫から叱られている彼女は、すかさず



2階の寝室に行きベッドに潜り込んだ。



ところが、ベッドに潜り込んだ途端、玄関のチャイムが鳴る音が聞こえた。



誰?今から寝ようとしてるっていうのに・・・・・・。



彼女はそう思って居留守を決め込んだ。



それでも、チャイムは何度も何度も鳴らされる。



ただ、彼女には平日の昼間、家を訪ねてくる者など居なかったから、どうせ



何かの勧誘かと思い、そのまま放置していたという。



とれだけチャイムが鳴らされ続けただろうか。



そのうちに、彼女も知らぬ間にうつらうつらしてしまい、気が付いた時には



チャイムの音はもう消えていた。



これでゆっくり眠れる・・・・・。



彼女はそう思いながら、そのまま深い眠りに就くはずだった。



ベッドで横たわる彼女の耳に、1階の廊下を何かが動いている様な音が



聞こえた。



気のせい・・・・・・。



そう思ったが、彼女の体にはザワザワと鳥肌が立ち始める。



やっぱり何かいる・・・・・・。



そう思った彼女はもう睡魔は完全に飛んでしまい、1階から聞こえてくる音に



聞き耳を立てていた。



ギシッ・・・・スー・・・・ギシッ・・・・スー・・・・。



それは忍び足で歩いているのとも違った。



歩きながら何かを引き摺っている?



まるで、長い着物を着た女性が、着物の裾を擦りながら進んでいるように。



彼女の頭は混乱していたが、誰かが家の中に侵入しているのは間違いなかった。



泥棒なの?



もしかしたら、チャイムの音に反応が無かったから家の中に入って来たの?



そう思うと、彼女は生きた心地がしなかった。



見ず知らずの、しかも泥棒が家の中にいる。



もし、見つかったら、そのまま殺されてしまうかもしれない・・・・。



完全にパニックになっていた彼女だったが、すぐに自分が携帯を手に持っている事に



気付いた。



急いで、蒲団の中に潜り込み、夫に電話をする。



お願い!早く電話に出て!



しかし、携帯からは呼び出し音すら聞こえなかった。



だから、今度は思い切って110番に電話したという。



しかし、やはり呼び出し音すら聞こえなかったのだという。



彼女は携帯を見ると、電波もしっかりと繋がっておりどこにも異常は見当たらない。



彼女は、もう一度警察に電話しようと携帯の番号を押そうとした。



その時、1階から不気味な声が聞こえてきた。



此処にもいない・・・・ゲラゲラゲラ・・・・。



それは間違いなく女の声だった。



なんなの?



泥棒は女なの?



その女の声はまだ若い声であり、その下品な笑い声と相まって、とても不気味に



聞こえた。



此処にもいない・・・って、もしかして、私を探してるの?



彼女は、ベッドから起き上がって部屋の中に何か武器になる物が無いか、と



辺りを見回した。



しかし、あるのは掃除機くらいのもので、とても武器になりそうになかった。



すると、1階からコンコンと天井を叩くような音が聞こえてきた。



此処にもいない・・・・ゲラゲラゲラ・・・・・。



どれだけ背が高かったら天井に手が届くの?



彼女はその女の姿を想像してしまい、更に恐怖が増してしまう。



すると、1階からの音が消えた。



彼女は更に集中してその女の動きを掴もうとした。



すると、今度は何かが階段を上って来るような音が聞こえてくる。



ズルズル・・・・ガサガサ・・・・ズルズル・・・・ガサガサ・・・・。



その音は歩いて上って来るというのではなく、這いずりながらのぼって来ている



としか思えなかった。



彼女は寝室に鍵を付けていなかった事をその時程、後悔した事は無いという。



階段を這い上がって来る音はどんどん近付いてくる。



彼女は藁にもすがる思いで、警察に電話をかけ続ける。



しかし、やはり何度かけても電話はつながらない。



すると、突然、2階の廊下から、バターンという大きな音が聞こえてきた。



彼女はビクッとして、思わず大きな悲鳴をあげてしまいそうになったが、何とか



声を押し殺す事が出来た。



此処にもいない・・・ゲラゲラゲラ・・・・・・。



もう、2階まであがって来たんだ・・・・・・。



彼女は恐怖で身動き出来なくなってしまう。



そして、再び、廊下からバターンという大きな音が・・・・。



2階には今彼女が隠れている寝室の他に2部屋しかなかった。



つまり、次はこの部屋にやって来る・・・・。



彼女は生きた心地がせず、そして頭もパニックになっていた。



もう、その女が人間だとはとても思えなかった。



そして、自分がこの部屋に隠れている事を分かっていてわざと怖がらせているのだ、と



その時、確信した。



彼女は布団の中に隠れながら震えていた。



知らないうちに大粒の涙が頬をつたっている。



私はこのまま死ぬんだ・・・・。



いや、死にたくない・・・・。



誰か助けて・・・・・。



と、その時、彼女の頭に浮かんだのは、2年前に死んだ飼い犬の事だった。



いつも一緒にいていつも護ってくれている気がしていた。



もう一人の家族・・・・。



大切に可愛がっていたのに死んでしまった愛犬。



その愛犬が死んでしまってから、もう二度と犬は飼わないと心に誓った程



大切な存在だった。



あの子が此処にいてくれたら・・・・・。



彼女は知らぬ間に、その愛犬の名前を呼びながらおお泣きしてしまっていた。



すると、寝室のドアがスーッと静かに開く音が聞こえた。



ホッホッホッホッ・・・・・・・。



部屋の中で聞くその声は更に不気味に聞こえたという。



そして、先ほどまでとは違うその笑い声は、自分の事を見つけたのが、さも



嬉しそうに聞こえたという。



彼女は自分でもどうしようもないほど震えていた。



きっと蒲団の上からもはっきりと分かってしまう程の震えだったが、自分では



どうしようもなかった。



女が部屋の中を歩き回る音が聞こえた。



スー・・・スー・・・・と滑るように歩くその音は、やはり人間とは到底



思えなかったという。



彼女は布団の中で固まっていた。



何とかやり過ごしたい・・・・。



その一心で。



しかし、その時、突然、携帯が鳴りだした。



慌てて画面を見ると、発信番号が表示されてはいなかった。



そして、また、その声が聞こえた。



見いつけた~



そして、そのすぐ後に、



ゲラゲラゲラゲラ、と震えあがるほど不気味な笑い声が聞こえ、彼女の心臓の鼓動は



早鐘の様にけたたましく脈打った。



お願い・・・・誰か助けて!



彼女にはもうそう祈るしかなかった。



すると、次の瞬間、彼女が隠れていた布団があっさりと取り払われた。



彼女は死を覚悟したという。



そして、どうせ死ぬのなら、その女の姿や顔だけは絶対に見たくない、と思い、



ドアに背を向けて寝返りをうった。



その時である。



突然、犬が吠える声が聞こえた。



キャンキャン・・・キャンキャン・・・・。



それは小型犬が吠える声であり、間違いなく彼女の死んだ愛犬が吠える声



だったという。



威嚇する様な声とともに、何度もその女に飛びかかっているのが彼女にも



分かった。



しかし、彼女は恐怖でそれを確認する事は出来なかった。



そして、2分間ほど、その状態が続いたあと、部屋の中が急に静かになった。



恐る恐る、彼女が振り返ると、そこにはもう、女の姿も愛犬の姿も



居なくなっていたという。



急いで1階へ降りると、部屋の中や廊下にまるで大きな蛇でも這ったかのような



濡れた跡が続いていたという。



そして、彼女はいまだに、その家に住んでいる。



怖くないの?



と聞くと、彼女は嬉しそうに、



うん、もう居留守は使わない事にしたから・・・・。



それに、今でもあの子が私の事を護ってくれているみたいだから・・・。



そう言ってくれた。
  


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2019年06月08日

午前2時14分

これは知人女性から聞いた話。



彼女は仕事とプライベートで同じスマホを利用していた。



最新型のスマホが出る度に、欲しい衝動に駆られるが、やはり



昔から使い慣れている



スマホを捨てる事が出来ず、ずっと使い続けていたそうだ。



そんな彼女はある時、真夜中に着信があった事に気付く。



いつも、彼女は寝る前にスマホをマナーモードにしてそのまま充電しており、



その間に、どうやら着信があったようだった。



しかし、発信履歴には公衆電話としか表示されておらず、相手を確認する事も



出来なかった。



その時は、真夜中に公衆電話から電話をかけてくるなんて、一体誰なんだろ?



と思ったらしいが、すぐにそんな事は忘れてしまったという。



しかし、どうやら、その着信はそれから毎晩、彼女のスマホにかかって来る



様になる。



気になった彼女は留守番電話の機能も使ってみたらしいが、そこに録音されている



のは、風の音とも海の音とも分からないような不思議な音だけだった。



土曜日の夜などはわざと夜更かししてその電話を待っていたらしいが、どうやら



電話がかかって来た時には何も気付かず後になって着信があった事が分かる、



という感じだったそうだ。



そして、相変わらず発信履歴として表示されているのは「公衆電話」という



文字だけだった。



そして、その電話がかかって来るのは、決まって午前2時14分。



そんな真夜中に、決まって公衆電話から電話をかけてくるなんて、どれだけ



暇な奴なのか?



そう思った彼女だったが、さすがに毎日掛って来るその電話に気持ち悪さを



感じ、ある夜、思い切ってスマホの電源を落としてから充電機に繋いでそのまま



寝る事にした。



だが、翌朝起きた時、彼女は驚いてしまう。



電源を落とした筈のスマホが勝手に起動し、その画面には、またいつもの



着信履歴が表示されていた。



いったい、どうなっているのか、不安になった彼女は携帯ショップに相談した。



すると、もしかしたらストーカーかもしれませんので、警察に相談されるか、



もしくは、思い切って電話番号を変えてみられたらどうですか?



とアドバイスされ、迷った挙句、思い切って電話番号を変える事にした。



これでもう大丈夫!



そう思った。



しかし、その日の夜も、やはり同じ時刻に着信履歴が残されていた。



さすがに怖くなった彼女は、警察に相談した。



警察は、彼女のマンション周辺を毎夜、特にその時間帯にパトロールしてくれる



と約束してくれたという。



しかし、相変わらず真夜中の着信が無くなる事は無く、警察が不審者を



見つける事も無かったという。



彼女は不安で眠れなくなり、昼間の仕事にも支障をきたすようになってしまう。



そんなある日の夜、相変わらず彼女が眠る事も出来ず布団の中で苦しんでいると



スマホに着信があった事を知らせるバイブレータが作動している音を聞いた。



着信があった時に彼女自身がそれに気付けたのは、その時が初めてだった。



彼女はベッドから飛び起きて、電話に出ると大声で、



あんた、何のつもり!



私を苦しめて嬉しいの?



と怒鳴った。



すると、電話の向こうから初めて声が聞こえてきた。



それは、女の声で、



まど・・・・・・・。



と小さくつぶやいただけの声だった。



それでも、慌てて彼女は窓の方へ近づき、外を見た。



すると、そこには窓の下の通りに在る公衆電話ボックスの中からこちらを



見つめる女の姿があった。



一瞬、見ただけで、



ヤバい!



そう思ったという。



その女の姿は、遠巻きに見ても明らかに不自然な造りで、とても人間には見えなかった。



かろうじて、着ている衣服が女性であると主張している感じだったという。



彼女は慌てて窓のカーテンを閉めると、部屋の明かりを点けたまま、蒲団の中に



潜り込んだ。



見てはいけないモノを見てしまった・・・・・。



体はガタガタと震え、歯もガチガチと音を立てていた。



すると、彼女の耳に、



コツコツ・・・・・コツコツ・・・・・



という音が聞こえてきた。



彼女には、その音が、先ほどの女が窓の外からコツコツとガラスを爪で叩いている



音にしか聞こえなかった。



その音はずっとなり続けていたが、朝の訪れとともに聞こえなくなったという。



彼女はその日、会社を休み、スマホショップに朝から出掛けた。



そして、起こっている事全てを店長らしき男性に相談したという。



最初は彼女の事をなだめすかしていた店長も、彼女の必死さに負けたのか、



普通では調べてくれないレベルまで彼女のスマホの着信履歴を調べて



くれたという。



そして、その結論として彼女は、予想すらしていなかった結果を聞く事になった。



彼女のスマホに電話をかけてきていたのは、何処かの公衆電話からではなく、



彼女のスマホからだという事だった。



しかし、実際に、彼女が電話の留守番録音を聞いた時にはザーザーと風か波の



音が聞こえていたし、昨夜などは、明らかに見知らぬ女が彼女に電話をかけて



きているのを目撃したはずだった。



それに通常は自分の携帯から自分の携帯に電話をすれば、その携帯番号が



発信履歴に残るはずだったが、それをその店長に聞いてみたが、それ以上は



分かりません、と言うだけだった。



彼女は、更に深まった謎に、更に体が重くなった気がしたという。



そして、その日の夜、やはり怖かったのか、友達に自分の部屋へ泊まりに



来てもらつたという。



やはり、友達が一人同じ部屋の中にいる、というだけで気分は全く違うものらしく、



その日、彼女は久しぶりに、睡魔に襲われ、すぐに熟睡してしまった。



とても深い眠りだった。



しかし、真夜中に彼女は眼を覚ましてしまう。



時計を見ると、ちょうど午前2時14分だったという。



泊まりに来ていた友人も、彼女の横で寝息を立てて熟睡している。



と、その時、突然、彼女は信じられない光景を目にする。



真っ暗な部屋の中。



突然、耳鳴りがしたと思うと、何かが天井から降りてくるのが見えた。



それは、真っ直ぐに直立した姿勢ののまま、足が降りてきて、次は腰、そして



上半身と続き、最後にはその顔が露わになり、そのまま部屋の床に降り立った。



それは、昨夜、公衆電話にいた女に間違いなかった。



彼女は金縛りにかかったように動く事も声を上げる事も出来なかったという。



そして、滑るように彼女のスマホに近づくとそれを手にとって画面を操作



しているのが見えた。



そして、女は嫌な笑いを浮かべると、そのスマホをそのまま彼女の耳に



あてがったという。



その瞬間、遠くなる意識の中で、再び、その女が天井に吸い込まれるように



消えていくのを見たという。



そして、次に彼女が目覚めたのは朝になってからだった。



昨夜の事を友人に話したが、全く覚えていない、と言われた。



それから、彼女は、その日、携帯ショップに行って、スマホの機種変更をした。



そして、それからはな夜中にかかってくる電話は無くなったのだという。



また、もしも電話がかかって来たらどうするの?



そう尋ねると彼女は首を横に振りながら、



いえ、もうかかって来ないって言ってましたから・・・・。



あの女にスマホを耳にあてがわれた時、確かに聞いたんです。



今度、電話がかかって来た時は私が死ぬ時だって、あの時の電話で言われましたから。



その為に、あの時、電話で聞いた言葉は、このまま死ぬまで誰にも話しては



いけないんです。



そう言って辛そうに目をつぶった。  


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2019年06月08日

ドッペルゲンガー

これは知人女性から聞いた話である。



彼女は車の運転が趣味だそうだ。



確かに乗っている車も、かなり高価な国産のスポーツタイプの車。



そして、暇さえあればサーキットに走りに行ったりジムカーナなどの



競技イベントに参加している。



だから、彼女は自分の運転技術にはかなりの自信を持っていたのだろう。



そんな彼女は仕事では、とある会社で事務員をしているらしく、会社の誰も



彼女がサーキットに行ったりジムカーナに参加している事は知らないそうだ。



そして、その日も彼女は仕事が終わると自慢の愛車に乗って自宅とは逆の方向の



居酒屋を目指していた。



彼女が所属しているジムカーナのチームの定例の飲み会がその居酒屋で



行われるのに参加する為に。



お店に着いた彼女はそのまま駐車場に車を停めて店の中へと入っていく。



既に飲み会は始まっており、その場はかなり盛り上がっていた。



だから、彼女も早速、その場に溶け込んでいった。



しかし、彼女は車で来ている時には、いつも一滴も酒は飲まないと決めていた。



だから、その時も彼女はひたすらウーロン茶を飲んで、皆と一緒に盛り上がっていた。



飲み会はかなり遅くまで続き、彼女がその居酒屋を出たのは既に午前1時を



回っての事だった。



愛車に乗り彼女は家路を急いだ。



翌朝には用事があったため、出来るだけ早く寝たかったそうだ。



しかし、車を走らせていると、何故か周りの雰囲気がいつもは違う事に



気付いた。



それは、他の車が1台も走っていないという事。



その日は金曜日であり、翌日が休みの人も多いから、いつもなら、通りには



ある程度の車が走っているのが普通だった。



しかし、その時、彼女の車の前にも後ろにも車らしきものは、ひとつも



見えなかったという。



なんか変だな・・・・。



そう思いながら彼女は車を走らせていた。



すると、前方の信号に1台の車が停まっている。



そして、近づいていくと、その車はどうやら彼女が今乗っている車と同じ型の車



であり、そしてその色も彼女の車と同じ限定色の赤だという事が分かった。



私とおんなじ車だ・・・・。



初めて見たかも・・・・。



そんな風に思って車に並びかけようとした時、ちょうど信号が青になり、その車は



一気に信号からスタートした。



とんでもない早さだった。



彼女自身、街中のスタートダッシュで他の車に負けた記憶は皆無だったから、



必死にその車の後を追ったという。



しかし、どれだけアクセルを踏んでも、いっこうにその差が縮まらないどころか、



どんどんとその差が広がっていった。



そして、そのままその車は彼女の視界から消えてしまったという。



何、あの車・・・・・。



どうして同じ車なのに、あんなに速いの?



そう思って、彼女は少しがっくりしていたが、すぐに気を取り直して運転に



集中した。



そして、また、前にも後ろにも全く車がいない状態が続いた。



こんなに車が少ない日もあるんだ・・・・。



そんな事を思っていた。



すると、それなりの速度で走る彼女の車の背後から眩しいヘッドライトの光が



ぐんぐん近づいてくるのが分かった。



すると、ちょうど前方の信号が赤になった。



彼女はゆっくりと速度を落とし信号の停止線で止まった。



すると、背後から近づいてきた車も、彼女の横に車を停めた。



彼女は横に並んだ車を見て、思わず、



え?



と声を出してしまった。



信号で彼女の車の横に停止した車は、またしても、彼女と同じ車種であり、



そして、色も全く同じものだった。



これって、さっき前を走ってた馬鹿っ速い車?



そう思った時、彼女は更に驚いてしまった。



はっきりと詳細に見えた訳ではなかった。



しかし、その車の運転席には明らかに女性が座っていた。



しかし、自分の姿と同じようなシルエットの女性が・・・・。



どういう事?



彼女は、そう思うと、信号が青になるのを待った。



今度こそ、絶対に離されないで着いて行こう・・・・。



そう思った。



そして、信号が青に変わるとその車はゆつくりとスタートした。



一気にダッシュするだろうと思っていた彼女は、一瞬拍子抜けしてしまったが、



それでも、その車の背後につくと、ある程度の車間距離を取って、その車の後ろに



着いて行った。



すると、あり得ない事に気付く。



信じられない事だが、今、彼女の前を走っている車は車種や色だけではなく、



車のナンバーまでが、彼女の車と全く同じだった。



彼女は頭の中がパニックになる。



これは、犯罪なのか・・・・。



そうでなければ、理由の説明がつかない・・・・。



そう思っていた時、突然、前を走る車が一気に加速した。



彼女も反射的に、その車に合わせて加速したという。



すると、突然、前を走る車のブレーキランプが点灯するのが分かった。



彼女も急いでブレーキペダルを強く踏んだ。



と、その瞬間、前を走る車が目の前からフッと消えた。



え?



そう思った時にはもう遅かった。



彼女は、減速が出来ないまま、突然目の前に現れた中央分離帯に激突した。



そして、そのまま浮き上がるようになり、次の瞬間、電柱に激突する。



自分の骨が折れる音を初めて聞いたという。



エアバックは装着していたが、何故か作動せず、彼女はハンドルとガラスに



顔面を強打して、そのまま動けなくなった。



自分の体から血が滴り落ちているのが分かったという。



両足は折れているのが、全く感覚が無かった。



早く車から脱出しなければ、と思ったが、体中の感覚が全く無く力も



入らなかった。



そして、何よりも、自分の顔が大きく裂けているのが分かって、訳が分からないまま



彼女は涙を流していたという。



すると、車の中で茫然としている彼女の視界に再び、先ほどの車が現れた。



その時、彼女ははっきりと分かったという。



今、自分が体験したのはドッベルゲンガーという現象なのだということを。



彼女の視界の中に再び現れたその車には、彼女が乗っていた。



いや、正確に言えば、彼女と瓜二つの別人格の女が乗っていた。



そして、嫌な笑いを浮かべながら、じっと彼女を見つめていたという。



そして、そのまま彼女は意識を失い、次に気が付いたのは事故の夜から数日経過



してのことだった。



近くの住民が、大きな音に気付いて救急車を呼んでくれたのだと聞いた。



そして、結局、彼女は両足と片腕、そして顔面に大きな亀裂が入る程の大怪我



をして、生死の境を彷徨ったのだという。



結局、彼女は数か月の入院の後、無事に退院出来たのだが、リハビリの甲斐もなく、



かなりの後遺症が残ってしまい日常生活にも支障が出てしまっている。



そして、彼女はこう言っていた。



あの時、ドッベルゲンガーに遭遇してしまった時点で私は死ぬ事が決まっていた



のかもしれない・・・・。



でも、助かったんだとしたら、それはそれで感謝しないといけないですね、と。



巷でよく耳にするドッベルゲンガーという現象だが、いったい誰が何の為に



そんな事をしているのか・・・・。



その理由は分からないが、もしかしたら、その理由を知ってしまった時が、



その人が死ぬ時なのかもしれない・・・。



そんな気持ちになった話だった。
  


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2019年06月08日

サイレンが聞こえる・・・・。

これは東京に住む知人から聞いた話。



彼は元々東京の生まれだそうだ。



東京で生まれ東京で育ち、東京の大学を出て東京に住んでいる。



俺とは仕事関係で知り合った仲になるのだが、出張などで東京に行くと



必ず一緒に飲み歩いてくれる愉快な男である。



彼は現在、結婚し子供も生まれ家族3人でマンションに住んでいる。



まあ取り立てて高級マンションという訳ではないが、それでもかなりの高層階に



住んでいるらしく、いつもその部屋から見える景色ばかりを自慢されてしまう。



そんな彼と一緒に酒を呑んだとき、突然、深刻な顔で話してくれたのが、



これから書く話である。



彼はいつも寝る時には部屋に1人で寝る様にしている。



それは、彼のマンションの部屋数に余裕があるという理由もあるが、それよりも



彼は誰かと一緒だと深い眠りにつけず結果として疲れが翌日に残ってしまうから



なのだという。



そして、その夜も彼は自分の部屋に1人で寝ていた。



ベッドではなく、フローリングの上に布団を敷いて寝る。



それが、彼のいつものスタイルだそうだ。



いつものように寝る前にウイスキーを少し飲んでから寝た。



それも、彼のいつものスタイル。



そうすれば、より深く眠る事が出来て朝まで決して目を覚ます事が無いそうだ。



しかし、その夜はいつもとは違った。



いつも通り、午後11時頃に寝た彼は、真夜中にハッとして目が覚めた。



酷い寝汗をかいていた。



時計を見ると、ちょうど午前2時半を回った頃だった。



なんで目が覚めたんだろう?



そんな事を考えていた時、彼は突然、蒲団から飛び起きる事になった。



ウー・・・・ウー・・・・ウー・・・・ウー・・・・・。



それはけたたましく響くサイレンの音だった。



それは消防車とか救急車の音ではなく、まるで記録映画で聞いた事のある



空襲警報のサイレンの音そのものだった。



彼は、まだボーっとしている頭で必死に考えた。



何故、空襲警報が聞こえるんだ?



戦争でも始まったとでもいうのか?



そんな事をぼんやりと考えていると、窓の外からカーテン越しに真っ赤な光が



部屋の中に差し込んでくる。



本当に戦争でも始まったのか・・・・・。



そう思って彼が起き上がろうとすると、突然体が重くなりその場から



身動きひとつ出来なくなったという。



金縛りの経験などあるはずもない彼は一体何か起こったのか、と頭の中は



完全にパニックになった。



外からはまるで大きな炎のような赤い光が揺れながら部屋の中まで明るく



照らしていた。



もうこれは何か大変な事が起こっているに違いない・・・。



そう思った彼は大声を出して家族を起こそうとしたらしいが、何故かその時は



かすれ声の様な小さな声しか出せなかったという。



そうしていると、今度は何かの音が近づいてくるのが分かった。



身動き出来ず声も出せない彼は、その音に全神経を集中させるしかなかった。



すると、その音は、最初はかなり小さく聞こえたいたのだが、次第に大きく



はっきりと聞こえる様になった。



それは紛れもなく、外を歩く靴の音だった。



ハイヒールなどではなく、固い靴底の皮靴・・・。



彼の頭にはそんな靴で外を歩いているようにしか聞こえなかった。



しかも、その音は一人や二人のものではなかった。



大勢の行列が、ザッザッザッザッと外を行進しているように聞こえた。



そして、その音はどんどんと大きくなっていき、まさに窓のすぐ外を



行進している様に聞こえだす。



そして、しばらくすると、その足音はどんどん遠ざかっていき、次第に



聞こえなくなっていった。



すると、彼の体は゛自由が利くようになった。



慌てて起き上がり、窓に駆け寄ると急いでカーテンを開けた。



しかし、そこには、いつものように東京の夜景が広がっているだけだったという。



赤い光も、サイレンの音も既に消えていた。



彼は狐にでもつままれたかのようにしばらくその場で立ち尽くしていたが、



翌日の仕事もあったから、その夜はまた布団にくるまって寝てしまった。



そして、朝になって家族に昨晩の事を話すと、



誰もそんな音や光には気付かなかった・・・と言われたそうだ。



だから、彼もきっと寝ぼけていたんだろう、と自分を納得させたそうだ。



しかし、彼はそれからも何度も同じ体験をしてしまう。



真夜中に目が覚めて、サイレンが聞こえ真っ赤な光を見て大勢の靴音を聞いた。



そして、そのうちに彼は夜寝られなくなってしまい、神経科の病院に通う



様になってしまう。



食欲も無くなり、酷く痩せていったという。



もっとも、それでも家族の生活の為に仕事を休むわけにはいかなかった



から、何とか毎日、仕事には出掛けていたという。



そんなある日、彼は仕事で遅くなってしまった。



既に終電は終わっており、タクシーに乗るお金も持っていなかった彼は



家まで1時間以上の距離を歩いて帰る事にした。



最初は辛かったが、しばらく歩いていると慣れてきたのか、体がとても軽く



感じ汗をかいている事がとても気持ち良く感じた。



そして、喉が渇いた彼は途中、自動販売機で冷たい缶コーヒーを買う事にした。



ボタンでコーヒーを選び、しゃがんで商品を取り出そうとした時、彼の背後から



また、あのサイレンが聞こえてきた。



いつも寝室で聞いているよりもかなり煩く耳がどうにかなりそうだった。



缶コーヒーを手に取った彼は慌てて振り返る。



すると、そこには、真っ赤に燃えた東京の光景が広がっていたという。



それも、現代の東京ではなく、彼が昔、記録映画で視たようなかなり古い



東京の街並みがそこには広がっていた。



そして、その街並みがいたるところで燃えていた。



彼はその場に茫然と立ち尽くすしかなかった。



すると、今度は遠くの方からザッザッザッザッという足音が聞こえ、それが



どんどん近づいて来るのが分かった。



彼は、初めて自分の目で見るその光景に呆気に取られながらも、視線は



足音が近づいてくる方へ釘づけになっていた。



すると、大勢の軍服を着た男たちの列が、こちらに近づいてくるのが見えた。



彼はその場から逃げ出したかったが、どうにも体が動こうとはしなかった。



そして、その行列が近づいてきた時、彼は恐怖で固まった。



軍服を着た大勢の男達は、整然と列をなしてこちらに近づいて来ていた。



だが、その男達の姿は、片足が無かったり、腕がもげていたり、そして顔が



欠損していたり、とその整然とした列とは対照的に、まるで死者の列の様に



見えたという。



そして、その列が彼の前を通り過ぎる時、首だけが彼の方を向いて、じっと彼を



見つめているのが分かったという。



彼は、その場で無意識に手を合わせた。



恐怖とか助かりたいから、という理由ではなく自然に彼は手を合わせていたという。



そして、その行列は遠ざかっていくのだが、それらの顔だけはしっかりと彼の



方へと向けられ、じっと彼を見ていたという。



そして、彼はその行列が通り過ぎた後も、しばらくの間、目をつぶって手を合わせ



続けたという。



そして、しばらくして眼を開けると、そこはいつもの東京の街に戻っており、



サイレンも赤い光も全てが消えていたという。



そうして、彼は再び歩き出して無事に家まで帰る事が出来た。



そして、その事があってから、彼が真夜中に目が覚める事は一切無くなった



ということである。



  


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2019年06月08日

手を繋いでくるモノ

今考えると、その日は全てがおかしかったと彼女は言った。



彼女は子供の頃はいつも男の子と遊んでいたという。



夏休みなどは朝から晩まで真っ黒になるまで遊んでは、暗くなってから



帰宅して両親に怒られていた。



しかし、その時は明らかにいつもとは違っていたという。



いつものように男の子たちと遊んで遅くなった彼女を待っていたのは両親の



満面の笑顔だった。



今とは時代が違い、親が平気で子供に手を挙げていた時代。



彼女も例外ではなく、一人っ子ではあったが、彼女はとても厳しく育てられた。



元々、厳格だった父が笑った事など殆ど見た事は無かったし、母親もちょっとした



事ですぐに彼女にお仕置きという名の暴力を振るった。



もっとも、それで両親の事を嫌いになる事など考えられなかったし、それが



当たり前なのだと思っていた。



だから、その日の両親の笑顔を見て、彼女は思わず固まった。



両親が激怒してお仕置きをされるよりも強い恐怖を感じた。



両親が彼女にお仕置きをする時には必ず彼女に非がある時だった。



だから、彼女も、それが両親の愛情なのだと感じていた。



そして、その日も、門限を破り遅い時間に帰宅した彼女を両親は決して



許してはくれないだろうと思っていた。



ところが、その時、彼女は両親の満面の笑顔で出迎えられた。



正直、その笑顔からは愛情というものは一切感じられなかったし、何より



彼女には、両親に愛相をつかされてしまう事の方が恐ろしかったから。



だから、彼女はその時、いつものように怒られている時よりも真剣に両親に



謝ったという。



もう絶対に約束は破りません・・・・。



もっと良い子になります・・・・。



必死で両親に懇願したという。



しかし、両親は不思議そうな顔をするが、すぐにまた満面の笑顔に戻ってしまう。



彼女は、ついに両親から愛相をつかされたと思い、落胆したという。



しかし、それからが異常だった。



満面の笑顔で出迎えてくれた両親はそれから彼女の手を握ったまま部屋の中に入る。



部屋のテーブルにはそれこそ、クリスマスにも見た事の無い程の豪華な料理が



並んでいた。



そして、彼女をテーブルに座らせると、両親は彼女を挟むようにして両側に座り、



ニコニコと笑いながら、好きなだけ食べなさいね、と優しく言うと、料理には



手もつけずに温かい目で彼女を見つめてくれた。



そして、彼女に、



今までで一番楽しかったのはどんな事?とか



何か買って欲しいものは無いの?とか



聞いてくる。



彼女は見た事もない程の豪華な料理を食べながらその質問に答えていった。



すると、彼女が答えた言葉に、両親はさも嬉しそうに、



そうかそうか・・・・。



と頷きながら聞いてくれた。



それは、彼女が知っているそれまでの両親の姿とは明らかに違うものだった。



しかし、その時、彼女は思ったという。



こんなに優しい両親も良いものだな・・・と。



そして、食事が終わると、一緒にゲームをし、テレビを観て、楽しい時間を



過ごした。



母親とは一緒にお風呂にも入った。



何年ぶりかだったので、彼女はとても嬉しかったという。



それらは、彼女にとってはまさに夢の様な時間だった。



そして、夜遅くなったので彼女は寝る事にした。



眠たい、というと、両親が一緒に寝室まで連れて行ってくれた。



いつもは自分の部屋で1人で寝ていた彼女にとっては、本当に予想外の



出来事だった。



そして、寝る時には、両親が彼女を挟むようにして川の字になって寝た。



そして、寝る時には両親が彼女の手を握ってくれた。



かなりしっかり握られて照れ臭かったが、それでも、彼女はとても嬉しい気持ちに



なったという。



そして、母顔に頭を撫でられているうちに彼女はそのまま眠ってしまった。



そんなに幸せな気持ちで眠りに就くのは、本当に久しぶりだったという。



そして、違和感を感じたのか、彼女は真夜中に目が覚めた。



何かが2階の廊下を歩いているのが分かった。



いや、歩いているというよりも、摺り足で動く着物の裾が廊下に垂れて、それが



音を出しているように感じたという。



いつもなら、そんな状況になったら、怖くて布団の中に潜り込むのだろうが、



その時の彼女は不思議と我慢できない程の恐怖は感じなかったという。



今、その時も、両親のてはしっかりと彼女の小さな手を握っていてくれて



いたのだから・・・。



何かあってもきっと両親が助けてくれる・・・・。



彼女はそれが何よりも心強かったという。



すると、廊下を擦る様な足音が急に止まる。



息を殺して彼女はじっと廊下の方を見ていたが、突然、部屋の襖がスーッと



ゆっくり開けられた。



さすがの彼女も固まってしまい、開いた襖から目を逸らそうとするが何故か



固まったまま顔が動かせない。



そうしていると、今度はその隙間から大きな女の顔がスーッと現れた。



縦に奇妙なほど長く伸びたその顔は、明らかに彼女が知っている



人間の顔ではなかった。



その女は必死に中を覗きこんで何かを探そうとしている様に見えたという。



しかし、しばらくすると隙間から女の顔は消えており、襖もゆっくりと



閉まっていくのが見えた。



彼女にとっては生れて初めて見る怪異だった。



震える程の恐ろしさと同時に、彼女は初めて見た、異形のモノに興奮していた。



そして、彼女は思っていた。



きっと今の光景を両親も見ていたに違いない、と。



そこで彼女は首を回して、右の方を見た。



え?



彼女は固まってしまった。



間違いなく右側から彼女の手を握ってくれている手があった。



それなのに、彼女が見た右側には寝ている筈の父親の姿はなかった。



でも、確かに、その時も彼女の右手をしっかりと握っている手がそこには



あった。



だから、彼女は恐怖した。



私の手を握っているのは一体誰の手なのか?と。



一刻も早く自分の手を握っている得体の知れない手を振りほどきたかった。



しかし、彼女にそんな勇気は無かった。



そんな時に限って彼女の頭はある意味、冷静だった。



そして、こんな事を考えてしまう。



右手を握っている筈の父親は、其処にはいなかった。



だとしたら、左で寝ながら彼女の左手を握っているばすの母親はどうなのか?と。



彼女は、恐怖に固まりながら、今度はゆっくりと首を左の方へと回してみる。



其処には誰かが寝ていた。



そして、そこから伸びた手がしっかりと彼女の左手を握ってくれている。



彼女は、一瞬、ホッと胸を撫で下ろしたという。



しかし、次の瞬間、横に寝ているものがゆっくりと起き上がった。



彼女は絶叫を上げた。



其処には、つい先ほど、襖の隙間からこちらを覗いていた女が薄気味悪い笑みを



浮かべて彼女を見ていた。



そして、彼女はそのまま意識を失った。



彼女が次に目を覚ました時、既に朝になっていた。



そして、恐る恐る起きていくと、其処にはいつもと変わらぬ両親の姿があった。



父親はしかめっ面で新聞を読み、母親は忙しそうに動き回っていた。



そして、彼女に向って、



ほら!起きたんならぼさっとしてないで手伝いなさい!



という母の厳しい声が飛んできた。



いつもは、ムッとするところだったが、彼女はいつも通りの両親に戻っていて



なんだか嬉しかったという。



優しい言葉を掛けてくれる事はなかったし、何かといえば小言を言われたりしたが、



それでも、彼女はそれで良い、と思った。



その方がしっかりと両親の愛情が感じられたから・・・。



しかし、それから彼女が成人するまでの間に、その夜と同じような事が何度か



あった。



両親が妙に優しくなる時があったそうだ。



あの夜と同じように・・・・。



そんな夜には決まって、あの夜と同じような足音が例外なく聞こえたという。



その足音と両親の態度が、どう関係しているのかは分からなかったが、それでも



彼女が成人する頃になると、そんな奇妙な事も一切起こらなくなったそうだ。



  


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2019年06月08日

最後の電話

これは知人から聞いた話。



彼は元々は九州の出身だそうだ。



そして、昔は九州各地の心霊スポットに遠征しては暇を潰していたのだという。



もっとも、心霊スポットに1人で行く事は無かった。



いつも、Hという友人と一緒に心霊スポットを巡っていた。



彼自身から心霊スポットに行こうと誘う事は無かったらしいが、Hはかなりの



心霊スポットマニアだったらしく、少しでも暇な時間が出来ると、必ず



○○の心霊スポットに行こう、と誘ってきたそうだ。



しかし、彼にとっての心霊スポットというのは、ある意味、遊園地のお化け屋敷よりも



平和な場所だった。



かなりの数の心霊スポットを巡ったらしいが、それでも、実害が及んだ事は



無かったし、実際にはっきりと幽霊というものを見た事も無かった。



白い霧のようなものを見た事は何度かあったらしいが、それでも本物のお化け屋敷



に比べれば、それほどの恐怖は感じていなかった。



そんな彼はある事を境にして、一切心霊スポットの類には近づかなくなった。



そして、これから書くのがその理由である。



その日、彼はいつものように自宅で暇を持て余していると案の定Hから電話が



かかってきた。



○○○の心霊スポットに行かないか?



今回はかなりヤバい場所だと思うから・・・・。



そんな誘い文句だったという。



しかし、今回こそはヤバい・・・というセリフを聞き飽きていた彼は、いつもの様に



二つ返事でOKした。



しかし、その時は何故か車のキーが見つからなかった。



そして、その事をHに伝えようと電話をするが、何故か何度かけても電話は



繋がらなかったという。



彼はどうしようかと悩んだらしいが、まあ、Hも1人で行く様な事はしないだろう、



と思い、その日は家から出なかったという。



妙に空気の生暖かい夜だった。



彼はベッドに入り電気を消すと、数多の中でHの事を考えていた。



まさか・・・あいつ、1人で行ってないだろうな・・・・・。



窓が何者かに爪でコツコツと突かれているような音が妙に気になったが、彼はそのまま



眠りに就いたという。



そして、何事も無く翌朝を迎えた。



そして、その日の夕方頃に、Hから電話が入った。



彼は愕然としたという。



なんと、Hは、1人でその心霊スポットに行ったのだという。



しかし、Hの声からは怒っている様子は伝わって来なかった。



いや、それよりも、Hは何かに脅えていた。



声はか細く、そして震えており今にも泣き出しそうな声に聞こえたという。



彼はすぐにそっちに行くからと言ってから電話を切った。



そして、急いでHの自宅へと向かった。



Hの家に着くと、急いで呼び鈴を押した。



すると、げっそりとやつれた様な姿のHが出迎えてくれた。



そして、彼を自分の部屋へと案内した。



そして、その間も、確かにHは何かに脅えているかのようにビクビクしながら



辺りを見回していたそうだ。



部屋に入ると、彼はすぐにHに聞いた。



いったい、その心霊スポットで何があったのか?と。



実際、彼がそれまでHと一緒に行った心霊スポットでは、怖い体験というものを



した事が無かった。



だから、きっとHは、もっと別の何かに脅えているのだろう、と思っていた。



しかし、Hは、何があったのかに点いては何も言わず、



あの女は言ったんだ・・・・・迎えに行くって・・・・・。



俺を連れていくって・・・・・。



だから、頼む・・・・助けてくれよ・・・・・。



その悲痛な叫びを聞いていると、彼にはHが言っている事が嘘だとはどうしても



思えなかったという。



本当は、彼もこう言いたかったそうだ・・・。



俺が護ってやるから!と。



しかし、彼の部屋からは何か得体の知れない気持ちの悪い空気を感じていた。



そして、彼らが話していると、誰かが窓の外からコツコツと窓を突いている様な



音が終始聞こえていた。



だから、彼はその場からさっさと立ち去る事にした。



大丈夫だよ・・・・



気のせいだから・・・。



それに家の人もいるじゃないか・・・・・。



そんな何の慰めにもならない言葉を残して彼はその部屋を後にした。



それから、彼は逃げるように自分の家に帰ったという。



そして、1人でいる事が何か恐ろしくて、ずっと家族と一緒に過ごしたという。



そして、午後10時を回った頃、彼に電話がかかって来た。



Hからの電話だった。



電話に出た彼は、わざと明るい声で、



ほら何も起こらないだろ?



大丈夫だって!



と言ったそうだ。



すると、電話の向こうからは、Hの涙交じりの声が聞こえてきた。



もう駄目だよ・・・助けてくれよ・・・・。



嫌だ・・・連れて行かないでくれ・・・・・・。



そう聞こえた、次の瞬間、彼は固まった。



うふふ・・・・駄目だよ・・・・・連れていくって言ったでしょ・・・・。



それは紛れもない女の声だった。



それでも、彼は、



なんだ?女性を呼んでるのか?



元気あるじゃないか?



そう声を掛けたが、彼は自分の声も恐怖で震えているのが分かったという。



そして、その後、



やめろ・・・・・やめてくれ・・・・・・・。



悪かった・・・・・どうすればいい・・・・・。



そんなHの声が聞こえた後、受話器からは、



うわぁ~、というHの断末魔の声が聞こえてきたという。



彼はすぐに電話を切った。



自分が恥ずかしい位に震えているのが分かった。



今すぐにでもHを助けに行かなければ・・・と思った。



しかし、先ほどのHの声を聞いてしまった彼は、既に頭の中が恐怖で溢れていた。



結局、彼はそのまま家から出る事も出来ず、その夜は両親に頼み込み何十年ぶりかで



両親と布団を並べて一緒に寝て貰った。



仏壇のある部屋で・・・・。



根拠は無かったが、そうしなければいけない、と思ったという。



そして、その翌日、友人からの電話でHが死んだ事を知らされた。



布団の中で目をカッと見開いたまま死んでいたらしく、そして、葬式の間も



ずっとHの目が閉じる事は無かったという。



自分が一緒に行かなかったからHが死んだ・・・。



Hを死なせたのは自分なんだ・・・・。



彼はそう言って自分を責めた。



そして、それからというもの、彼が心霊スポットの類に近づく事は一切無くなった。



しかし、この話には後日談がある。



ちょうど、俺と知り合った頃、彼は明らかに何かに脅えていた。



いったい何に脅えているのか?と聞いて事があるが、はっきりとした答えを



彼は最後まで言わなかった。



ただ、毎夜、何かが彼の部屋に訪れる様になったのだという。



そして、ある夜、彼の夢の中に死んだHが出てきたという。



見知らぬ不気味な女と一緒に並んで立っていた。



そして、こう言ったのだという。



迎えに行くから・・・・・。



連れていくから・・・・・と。



そしてこの話を俺に話した数日後、彼は行方不明になった。



警察が行方を捜査したがいっこうに見つからなかった。



彼がもしも、連れて行かれたのだとしたら、Hの死から20年ほど経った頃に



何故?という疑問が湧いてしまうのだが・・・・・。

  


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2019年06月08日

ハチに刺された理由

これは俺が小学生の頃に体験した話である。



ある日の朝刊にこんな記事が載った。



”遠足の小学生・・・ハチに襲われる”



そして、もうお分かりだとは思うが、その襲われた小学生というのは紛れもなく



俺が通っていた小学校の生徒であり、勿論、その中には俺も含まれていた。



そして、ハチに襲われる原因を作ったのも紛れもない俺達だった。



今は白山市に併合さそれてしまったが、今でもその場所に鶴○という地名が



残されている。



たぶん、石川県では一番有名な神社がある所。



そして、俺が幼少の頃から沢山の怪異に遭遇し、そして大人になってからも



それ以上の怪異に遭遇してきた場所だ。



そして、俺は以前、その土地に住んでいたことがある。



本町という場所だったらしいが、今ではその面影は残されてはいない。



そして、何故か、俺が結婚するまでは俺の免許証には、その土地の住所が



本籍地として記載されていた。



まあ、俺にとっては何かの縁の多い場所なのかもしれない。



もう既にその頃には金沢市内に住んでいた俺は当然、市内の中心部に近い場所



にある小学校に通っていた。



そして、確か、小学生の高学年、多分5年生か、6年生の頃だったと思うのだが、



俺の学年全員で、電車に乗って、その鶴○という場所に在る公園へと遠足に



出掛けた。



俺の学年は、確か1組~6組まで在ったから、1クラスが45人としても、



かなりの大人数での遠足だった。



しかし、やはり田舎の公園というのは、遊具の類は一切置かれてはいなかった。



自然の中で自然と親しめ・・・・・。



そういうコンセプトなのかもしれないが、実際にそれ程の大人数でその公園を



訪れてみると、やはりやる事が無かった。



学校側もそれは承知していた様で、写生をさせたり、グループに分かれて



簡単なオリエンテーリングなどもやらせるのだが、やはり時間は余ってしまい、



お弁当を食べ終わってから、その場所を離れるまでの3時間以上が自由時間



として割り当てられた。



そして、危険だから公園の外には一切出てはいけない!という優しい言葉まで



頂いて・・・・



そして、当の生徒達はその長い自由時間に途方に暮れてしまう。



あるグループは輪になって楽しそうに話しこんでいたが、当然俺達のグループには



そんな事を楽しいと思う奴等存在していなかった。



周りには公園外へは出るな、という言葉を残していった先生達の姿もない。



だから、俺達はお弁当のおにぎりを包んでいたアルミホイルを丸めたボール?



を利用して、野球の様な遊びをする事にした。



アルミホイルだからボールが遠くまで飛ぶことも無かったし、誰が言い出したのかは



分からないが、その状況で考えられる最高の遊びだった気がする。



しばらくは、そうして遊んでいたのだと思う。



確かに楽しかったし、無駄に長い自由時間を有効に過ごせていたのだと思う。



そんな時だった。



野球をやっている俺達を見ていた友達の一人が、



おい!あの木、おかしくないか?



と言い出したのだ。



その場にいた全員の視線がその木に一斉に集まった。



その木は、確かその公園の中に在る木の中では一番大きな木だったと思う。



そして、その木の表面に顔らしきものが確かに浮かんでいた。



まあ、確かに珍しいかもな・・・。



でも、あれって木の模様だろ?



そんな会話があったと思う。



しかし、その後、俺達は信じられない光景を見てしまう。



その木に浮かび上がった顔らしきもの・・・・。



それが、まるで表情を変えるかのように動いたのだ。



その場で野球をやっていた全員が大騒ぎになった。



そして、それはどんどんとその顔の輪郭までもはっきりと見えるほど、はっきり



とした物になってくる。



其処に浮かび上がった顔はどうやら女の顔であり、それがまるで木の表面から



起き上がるかのように、どんどんと隆起しているのが分かった。



普通ならすぐにその場から逃げだしたのかもしれない。



しかし、周りには女子生徒も沢山おり、目立ちたい盛りの俺達は、今考えると



信じられない行動に出た。



大急ぎで、その場に転がっている石を拾った俺達は、こともあろうか、その木の



顔めがけて、その石を投げ始めた。



確か、石を投げていたのは俺を含めても5~6人だったと思う。



今考えると、馬鹿な事をしたと思うが、その時にはその場にいる全員の安全が



俺達の手に掛っているという妙な使命感があった。



投げる石も、どんどんと大きななっていき、その顔に命中させる為に、俺達は



ドンドンと、その木に近づいていく。



そして、はっきりと見えた。



その木の表面に浮かび上がっている顔が明らかに、怒りの表情に変って



いる事に・・・・。



さすがの俺達もその顔を見た時、思わずその場に固まってしまった。



俺達はとんでもない事をしてしまったのかもしれない・・・・。



そんな後悔があった。



その木の顔は、今にもその木から抜け出してきそうなほど、大きく隆起



している。



その時だった。



突然、ブーンという音が聞こえ、その後であちらこちらから、



痛て!



とか、



キャー、



という声が聞こえてきた。



そして、次の瞬間、俺の耳元で大きくブーンという音が聞こえたかと思うと、



次の瞬間、俺の耳に激痛が走った。



俺は必死で耳元を手ではらった。



すると、何かが耳に刺さっている。



慎重にそれを抜いて手に取ると、それは見た事も無い大きな虫の針のようなもの



だった。



それから、その場から全員が逃げ出した。



どうやら、大きなクマンバチに襲われた様だった。



それから、その場には警察が来るわ、救急車が来るわ、と大騒ぎになった。



しかし、結局、酷いダメージを負った者は誰一人もおらず、全員が予定より



少し早くその場から帰る事になっただけだった。



そして、その間、ふと、先ほどの木の顔の方を見ると、既に普通の木に戻っていた。



その後、俺の耳は大きく腫れあがり、しばらく不自由な時間が続いたが、翌日には



すっかりと元に戻っていた。



ただし、その時、木に石をぶつけていた俺達は、学校や親たちから、厳しい



お説教を頂く事になった。



そして、以前、俺はこの話をAさんにした事がある。



その時の会話はこんな感じだった。



Kさんって、。そんな子供の頃から馬鹿だったんですね?



まあ、馬鹿に一日にして成らず・・・・っていうやつですかね(笑)



そう言われた俺は、



まあ、でも、あの時は必死でみんなを護ろうとしてた訳だから・・・。



すると、Aさんは、



本当にそれが馬鹿だって言ってるんですよ・・・・。



いつも、思い込みで突っ走って結局、事態を悪化させてる・・・。



それって、今のKさんと同じじゃないですか?(笑)



そう言われて何も返せない俺は、



でも、それにしても、あの時、偶然、ハチに襲われなかったらどうなってたか?



それを考えると、刺したハチを恨む気も起きないけどね。



そう言うと、Aさんは、冷たい眼で、



どこまでも幸せな人ですよね?



Kさんは、きっと木の中に宿っている何かを怒らせてしまったんですよ・・・。



真剣に・・・。



きっと、そのままだったら、きっと地獄の遠足として新聞に載っていたかも



しれませんね。



そして、クマンバチが襲ってきたのはきっと偶然じゃありませんよ。



クマンバチってそんなに攻撃的なハチじゃありませんから・・・・。



きっと、子供達を助ける為に、わざと刺してくれたんだと思いますよ・・・。



実際、それで、大騒ぎになって、大事には至らなかったんですから・・・。



だから、そのハチさんに感謝しないといけませんね?



まあ、私に言わせれば、木に石を投げたKさんだけでも、もっと酷い



刺され方をされれば良かったと思いますけどね。


それこそ、病院に担ぎ込まれるくらいの・・・・。



そうすれば、今はもう少し立派な大人になれてたかもしれませんからね。



そう冷たく言われてしまった。

  


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2019年06月08日

ずっと傍にいた・・・・。

これは知人女性から聞いた話。



彼女は現在、病気を持つ子供たちを支援する施設で働いている。



その施設には本当に様々な障害を抱えた子供たちが入所しており、彼女は



昼夜問わず、そして休みの日も関係無くその仕事に没頭している。



その子供たちを見ていると、幼い頃の自分の姿が重なってしまうんです、と



彼女は言っていた。



彼女は幼い頃、体がとても弱く、日光の光にも当たる事が出来ない程



だった。



だから、彼女が知っている世界は病院と家の中だけ・・・。



そんな生活を送っていたそうだ。



彼女には兄弟はおらず、両親も共働きだったから、基本的に彼女の身の回りの世話



は、彼女の祖母がおこなっていた。



ただ、祖母はとても厳しい人であり、事あるごとに彼女を厳しく叱った。



彼女は思っていた。



きっと、祖母は自分の事が大嫌いなのだろう、と。



だから、彼女は自分の部屋から出来るだけ出ない様に日々を過ごしていた。



毎日、目が覚めると食事の時以外は全て自分の部屋で過ごした。



勿論、体調が悪化して床に臥している場合もあったが、たとえ元気な時で



あっても彼女は頑なに自分の部屋から出る事を拒んだ。



それは、厳しい祖母が怖かったから・・・・。



そんな理由もあるのだろうが、実は他にも理由があった。



それは、その部屋にはいつも友達がいた、という事だった。



いつからその友達が部屋にいたのかは思い出せないという。



気が付いた時にはもう其処にいた・・・・。



そんな感じだったという。



”私も一人ぼっちなんだ・・・・・。



寂しいから一緒に○○○○?”



その友達が最初に話しかけてきたのはそんな言葉だった。



その友達とはちょうど彼女と同じくらいの歳の女の子。



おかっぱ頭で顔も丸くいつも着物を着ている女の子だった。



それまで友達というものが一人もいなかった彼女は、初めて同じ年頃の女の子から



話しかけられて少し戸惑ったが、それでも二人はすぐに仲良くなった。



ただ、彼女はその女の子が笑った顔というのは一度も見た事が無いのだという。



ゲームをしたりテレビを観たりお絵かきをしたり・・・・・。



どんな時でも常にその女の子は彼女の傍にいた。



それなのに、家族は皆、その女の子の存在に気付かないような素振りをした。



彼女は、



きっと家族はもう私の事になど興味は無いのだろう、と思ったという。



二人で部屋の中に居ても、特にお喋りする事など殆ど無かった。



ただ、二人で同じ空間にいるだけ・・・・・。



だだ、それだけの事だった。



しかし、それでも彼女にとってみると生まれて初めて出来た友達であり、



たとえ喋りあったり笑いあったりする事が無くでも、その女の子と一緒に



居るだけで何故か余計な事は考えずに済んだし、何より自分には友達が



居るのだという事だけでも、彼女に生きる勇気をくれたそうだ。



ただ、一つだけ気になっていた事があるのだという。



それは、テレビを見ていてもお絵かきをしていても、ふと彼女がその女の子の



方を見ると、その女の子はテレビや画用紙を見ているのではなく、明らかに



彼女をじっと見ていた。



まるで、彼女の様子を窺う様な眼に、彼女は時折、不安なものを感じていた。



それでも、彼女は、その女の子に対して、



どうしたの?



とは決して聞かなかったそうだ。



それはせっかく出来た友達を無くしたくなかったから・・・・。



だから、夜になりその女の子が部屋から出て行っても、また朝、目を覚ますと



既に部屋の中に座っていたとしても彼女はそれを女の子に聞く事はなかった。



本当は、



何処に行くの?



何処に住んでるの?



と聞きたかったらしいが、彼女にはその勇気は無かった。



そして、女の子は彼女の体調が悪くなり床に伏せっている時には何処にも行かず



一晩中傍にいてくれた。



祖母や母親が食事や薬を運んで来てくれた時には、一瞬だけその女の子は姿を



消し、そして祖母や母親が部屋から出ていくと、また知らぬ間にその女の子は



彼女の枕元に座っていた。



そして、呟くように声を掛けてくれたという。



苦しかったら○○○○?



辛かったら○○○○?



楽になりたかったら○○○○?



いつも、心配そうな声を掛けてくれたという。



いつしか、その女の子は彼女にとって祖母や母親よりも大切な存在になっていた。



いつまでも一緒に居たい・・・・。



そう思うほどに。



そして、彼女は思っていたそうだ。



自分の病気はきっと助からないのだ、と。



そして、このまま死んでいくのだ、と。



だとしたら、自分が死ぬ時には、友達であるその女の子に傍にいて欲しい・・・。



そう思う様になったという。



実際、彼女の病状は好ましいものではなく、特に部屋の中に籠るように



なってからは、病状が悪化する事が多くなり、彼女はどんどんやせ細っていった。



女の子はそんな彼女の姿を見ていても、



大丈夫だよ・・・・・。



と呟くだけだったから、彼女も、きっとそんなものなのだろう、と思い込んでいた。



そんなある日、彼女の病状が酷く悪化した。



呼吸が苦しくなり、体を動かす事すら侭ならなくなった。



それでも、その姿を見た女の子に、



大丈夫だよ・・・・・・。



そう言われると妙に気持ちが落ち着いた。



彼女を診察に来た医者も、彼女の状態を見て、表情をこわばらせた。



彼女はその時、思ったという。



自分はもうそろそろ逝くんだ・・・・・と。



実際、その時は家族の誰もが彼女の死を現実のものとして覚悟していたそうだ。



ただ1人、厳しい祖母を除いては・・・・。



そんな状態がしばらく続いたある日、突然、彼女の部屋に入って来た祖母の



顔色が変わった。



彼女は苦しい息の中で、



友達である女の子が見つかったらどうしよう?



そればかり考えていた。



祖母は、



大丈夫かい?



しっかりしないと駄目だよ!



と厳しい声を掛けてくれた。



ずっと祖母には嫌われているのだろう・・・。



確かにこんな病弱な体になってしまったのだから、祖母にとっては厄病神でしかない



のかもしれない。



それも、もっともなことだ。



だから、最後にきちんと謝っておかなければ・・・・。



ぼんやりする頭で彼女は、そう考えた。



だから、彼女は祖母に対して、



おばあちゃん、私、もう駄目だと思う・・・。



今までいろいろとありがとう・・・・。



おばあちゃんは、長生きしてね・・・・・。



そう呟いたという。



すると、祖母はすぐに立ち上がって、部屋から出ていくとまたすぐに戻って来た。



そして、大声で、



しっかりしなさい!



長生きしなくちゃいけないのはお前なんだよ?



お父さんやお母さんの為にも長生きするの!



そうすれば、友達だって沢山出来るんだよ!



お前のこれからの人生には楽しい事が沢山あるんだから!



だから、気持で負けちゃ駄目!



気持ちだけはしっかりと持ちなさい!



そう叫ぶと、彼女の体を蒲団から持ち上げて、部屋から出ていく。



そして、日当たりの良い、祖父母の部屋に連れて行って、そのまま寝かせたという。



家族は何事が起ったのか?と集まって来たが、祖母は全く気に留めず、



此処ならご先祖様がお前を護ってくださる筈だから・・・。



あんなモノに負けるんじゃないよ!



そう言って笑ったという。



そして、それから祖母は家族に対して、



これから明日の朝まで、絶対に誰もこの部屋には近付かないで!



あの子は私の宝物なんだから・・・・。



死なせてたまるもんですか!



だから、私があの子を護ってみせる!



そう言って、祖母は彼女がずっと籠っていた部屋の中へと入っていき、部屋の襖を



閉じると、そのまま静かになったという。



それから彼女はそれまでの病状が嘘のように奇跡的な回復をみせた。



そして、朝になる頃には後んから自分で起き上がり、食事もとる事が出来る



までに回復した。



家族は喜び、医師は奇跡だと言った。



そして、それを報告しようと祖母が夜を明かした部屋に入った時、家族は愕然とした。



其処には既に息絶えた祖母の遺体が横たわっていたという。



悲しみにくれる家族に、祖父はこう言ったという。



あいつは、昨日、あの子の部屋で悪いモノを見た、と言ったんだよ。



あの子の命を奪いに来ているのは、きっとそれなのだ、と。



大切な孫をあんな奴に絶対に渡さない・・・。



だから、これから何が起こったとしても絶対に悲しまないで・・・。



私はあの子を護れるのならば本望なんですから・・・。



笑って見送ってください・・・。



そう言って部屋から出ていったんだよ。



一度言い出したら聞かない奴だったからな・・・。



でも、最後まであいつはあの子の事を愛して、そして護りきって逝ったんだ。



だから、悲しまないでやってほしい・・・・。



そう話したという。



それから、彼女は順調に回復し、今では結婚もして元気に働いている。



そして、その当時、どうしても聞き取れなかった言葉。



あの女の子が言った呟いた数少ない言葉の最後の4文字。



それは今考えると、「死のうか」という言葉だった気がするのだという。



彼女は自分の経験を生かして、自分の幼少期と同じように、気持で病気に



負けないように厳しくそして、温かく接しているそうだ。



祖母が自分に対して、そうしてくれたように・・・・。



そして、今でも年に数回、祖母のお墓参りは絶対に欠かす事が無いそうだ。
  


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2019年06月08日

呪いと引き換え

彼女の実家は地方都市ではかなり有名な資産家なのだという。



その家系の者達は、その殆どが系列の会社で重要なポストに就いている。



そして、その家系の者以外は人間ではないかの様な扱いを平気で行っており、



彼女は自分がそんな風な事が出来る人間に染まっていくのが嫌で、素性を隠し



民間の小さな会社で事務員として働いているのだという。



元々、彼女は本家筋の人間らしいのだが、そんな事よりも対等な立場で人と



接していたいというのが彼女の望みだった。



だから、彼女は自分の両親や兄弟も含めての家族を嫌っていた。



そして、どうやら彼女がその家系の人間と接触しなくなった理由は他にも



あるのだという。



それは、その家系の人間以外には絶対に他言無用、という暗黙の了解が



存在していた。



それは決まって、1年に一人くらいの割合で、その家系の者が変死を遂げる



というものだった。



そして、その変死した者達は、半年くらい前から何かに脅え始め、暗闇を恐れる



様になり、夜、寝る時には決して部屋を暗くして眠る事は無かった。



そうして、死ぬ直前まで恐怖に苛まれたまま非業の変死を遂げる。



ある者は偶発的な事故で・・・・。



またある者は治療不可能な病で・・・。



中には恐怖に耐えられず自ら死を選ぶ者もいた・・・・・。



ただ、そのどれもに共通して言える事は、どんな死に方をしても、その遺体は



引き裂かれた様になったり、ミンチ状になったり、体を鉄の棒が貫通していたり、と



普通では考えられないような惨たらしい遺体となって発見された。



そして、顔だけは綺麗なままだったが、その顔は直視出来ない程、恐怖に歪んでおり、



まるで、死の間際に、耐えられない程の恐怖に直面したかのようだったという。



そして、その家系の者達はそれを、祟りだと感じていた。



当然、それほどまでにその家系が繁栄する為にはかなりの非道な事を繰り返して、



それは、現在にいたっても、実在する祟りとして生き続けているのだ、と。



そして、彼女は確かにその家系を嫌っていたが、それでも理不尽に死んでいく親族



の話を聞く度に、何とか出来ないものか?と、思慮していたという。



だから、彼女は色々と著名な霊能者といわれる人達や神社仏閣に相談した。



私の親族は何かに祟られているのではないか?



もしも、そうだしたら、その祟りを治める方法は無いか?と。



しかし、その誰もが、同じ事を言ったという。



貴女の家系は素晴らしく栄えています。



それほどの一族の栄華など、望んでも叶うものではありません。



だから、気のせいです・・・。



偶然、不幸が続いただけですから何も心配は要りませんよ!と。



相談した全ての人間からそう言われてしまい、更に高額な霊視の代金も



請求されたらしい。



だから、彼女も、そうなのだとしたら、何も自分が心配する必要など無い、



と思い、それ以後は親族について考えるのを止めたという。



しかし、やはり、それ以後も彼女の一族に不幸が続いた。



従兄弟が若くして亡くなったり、仲の良かった親戚の命までが簡単に奪われて



いった。



しかし、彼女は何も考えないように努めた。



彼女にはもう霊能者を頼む余裕も無かったし、何より彼女自身、親族とは完全に



縁を切っているつもりだったから・・・・・。



そんなある日の事だった。



彼女が電車に乗っていると汚い恰好をした僧侶らしき人が、ちらちらと彼女を



見ている事に気付いた。



そして、その僧侶は彼女が電車を降りてからも、しっかりと後ろを付いてきた。



彼女自身、以前、霊能者や神社仏閣に助けを求めた時、結局は大金だけを



取られて何の解決にも至らなかった為、僧侶というものに完全な不信感を



抱いていた。



しかも、薄汚れた容姿の僧侶に纏わりつかれるのはどうしても我慢ならなかった。



突然、立ち止まった彼女は、後ろを振り向くとその僧侶に向かって言った。



何か御用ですか?



私はお坊さんの類は一切信用していないんですけど?



と辛辣な言葉をかけたという。



すると、その僧侶は笑いながら、



それは申し訳ありません・・・・・。



ただ、私には貴女にとり憑こうとしているモノの姿が視えるものですから・・・・。



これから不幸になっていくのを分かっていて、そのまま黙っている事が



出来なかったものですから・・・・。



彼女は、その身なりとは裏腹に、とても丁寧に話す僧侶に戸惑った。



そして、自分にとり憑こうとしているモノ・・・・。



その言葉がどうしても聞き流す事が出来なかった。



だから、彼女はこう返したという。



すみません・・・。



本当にご無礼をいたしました・・・・お許しください・・・・。



ところで、私にとり憑こうとしているモノって、どういう意味ですか?と。



すると、僧侶は、



いえ、こちらこそ、突然失礼いたしました。



私は北の方から来た小さなお寺の住職です・・・・。



もしも宜しかったら、貴女にとり憑こうとしているモノを祓わせて貰えませんか?



そう言ってきた。



そして彼女が、以前、霊能者やお坊さんに頼んで高額な代金を請求された事を



話すと、



いえいえ、お代など必要ありませんよ・・・。



これは私が勝手にやらせて貰う修行の1つだと思っておりますから・・・。



そう言われ、彼女はそれ以上、何も言えなかったという。



そして、駅から出て公園まで行くと、僧侶は彼女をベンチに座らせてから、



お経を唱え始めた。



そのお経を聞いていると体が熱くなって来るのが分かった。



そして、それと同時に、体の中の何かが拒絶反応でも起こしているかのように



暴れだすのが分かったという。



彼女はもう何も考えられなくなり、そのまま目をつぶっていた。



そして、大きく背中を何度か叩かれた途端、彼女の両眼からは滝の様な涙が



溢れてきた。



何か温かいものに包まれてい様な安心感を感じたという。



そして、僧侶の、



はい・・・お疲れ様でした。



無事に悪いモノは祓う事が出来ましたよ・・・・・。



そう言われて、初めて目を開けた。



何か視界が違って見えたという。



体も軽くなり、それまでは耳に入って来なかった鳥や虫の鳴き声もはっきりと



聞こえたという。



彼女は、初めて本物の霊能者に会えたと思い、感動していたが、更にその僧侶が



話す言葉を聞いて、彼女は愕然としたという。



僧侶はこう言ったという。



貴女に憑いている悪いモノはしっかりと祓えました。



しかし、どうやら貴女の一族には深い、そして古からの呪いがかかっているようですね?



その一族にかけられた呪いの元凶を絶たない事には、またいつか、貴女にも再び



悪いモノが近寄ってきてしまいます。



ただ私にはある理由があって貴女の一族のご本家には近づけそうもありません。



ですから、貴女が私の代わりに、その呪いを断ち切る覚悟はありますか?と。



彼女は、すぐに返答した。



一族の呪いを断ち切れるのなら・・・・・。



でも、私なんかにそんな事が出来るのですか?と。



すると、その僧侶は、



別に難しい事ではありません・・・・。



貴女のご本家は一族の繁栄と引き換えに、呪いを受け入れてしまっています。



これは、今のあなた達には一切関係の無い、古い時代に犯した罪による



呪いです。



まあ、詳しくは言えませんが、ある姉妹があなた達のご先祖の手によって



非業の死を遂げている・・・。



深く強い呪いの念を持ったまま・・・・。



だから、一族の繁栄という栄華の中で、少しずつ確実に一族を根絶やしにしようと



しています。



じわじわとなぶり殺しにでもするように・・・・。



そこまで聞いて、彼女は、



私達の先祖がそんなひどい事をしてしまったんですね・・・・・。



どうすれば許して貰えるのでしょうか?



と尋ねた。



すると、その僧侶は、



いえ、あなた達はもうとっくにその代償を支払っています。



何代にも渡って数多くの人達が死んでいますからね・・・・。



それに、先代の呪いをあなた達までが背負う事はありません・・・。



あなた達は、何も悪い事はしていないでしょう?



だから、呪いなどというものは絶対にあってはならんのです・・・・。



それで、本題なのですが・・・・・。



貴女の一族のご本家には大切に保管されている家宝といわれるものがある筈です。



しかし、それは家宝などではなく、それ自体が紛れもない呪いの元凶です。



それを燃やす事が出来れば、あなた達の一族は死の連鎖から解放されるでしょう。



そして、その代わりに、確実に失うものも存在します・・・。



だから、その家宝といわれている物を燃やすかどうかは貴女が決められると良い。



確かに裕福に暮らす事も魅力的かもしれませんが、やはり決して裕福でなくても



安心の中で生きる事に



人生の幸福が在るのだと私は思っています・・・・。



そう言われたという。



彼女は、その僧侶にお寺の名前とおおよその場所を聞いた。



無事に呪いを開放出来た時、もう一度しっかりと


御礼に伺いますから、と。



そして、その僧侶と別れた彼女は、早速、本家を訪ねた。



ずっと疎遠だった彼女の訪問に、親族達も驚いたという。



そして、彼女は、僧侶から教えて者らった事を全て話した。



そして、親族達に聞いたという。



死に怯えながら裕福に生きていくのと、普通の生活でも死の恐怖から解放



されて生きるのとどちらが良いと思うのか?と。



彼女はそう言ってはみたものの、かなり不安だったらしい。



裕福な生活に慣れきっている親族達が、その生活を手放す決断が出来るの



だろうか、と。



しかし、親族達の答えは意外なものだった。



やはり、裕福に暮らしていても、その誰もが常に死の不安を抱えていたのだろう。



死の連鎖から解放されるのであれば、それ以上の願いは無い・・・・。



それが本家が出した結論だった。



そして、彼女は、本家に家宝とされているような物は無いか?と聞いた。



すると、本家の金庫の中に、



”神様から授けられたという1枚の紙”があるのだと教えられた。



彼女は早速、金庫の中からその紙を取り出した。



古いがしっかりとした木箱に納められたその家宝は木箱の表面にも、



「恵」という言葉が書き込まれていたという。



そして、親族が見守る中で、その木箱を炎の中に投げ入れた。



一瞬、断末魔の様な呻き声が聞こえた。



そして、木箱が燃えていき、中から白い紙が現れる。



しかし、その紙は何故かずっと燃えずに残っていたが、やがて白い紙の表面に



「呪」という文字か浮かび上がると、そのまま一気に燃え尽きてしまったという。



その日以来、彼女の親族から不幸な死を遂げる者は居なくなった。



そして、それと引き換えに、一族はどんどんと衰退していき、決して裕福という



生活ではなくなったらしいが、それでも皆の顔は以前よりも幸せそうに



見えるのだという。



そして、呪いを断ち切らせて貰ったお礼を言おうと、その僧侶から教えて貰った



お寺を探すが、どうしても見つからない。



仕方なく、現地に赴き、その土地を聞いて回ったらしいが、どうしてもその僧侶の



寺は見つける事が出来なかった。



ただ、ひとつ、彼女は情報を得る。



それは、今から数百年前には、その土地には、そんな名前のお寺が確かに存在



していたという情報だった。



ただ、それが、本当にその時の僧侶の寺なのかは、今となっては確認のしようが無い、



との事だった。
  


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2019年06月08日

いわくつきの笛というもの

これは知人男性が体験した話。



彼は現在、金沢市で公務員をしている。



真面目な中にもユーモアも忘れない性格だから、彼の周りにはいつも



友達で溢れている。



幽霊などというものは、全く信じておらず、廃墟や心霊スポットなど



近寄りもしない。



そして、彼には2歳年上の兄がいるのだという。



真面目な彼とは正反対の性格で、面白い事には目が無い性格らしく、その為なら



危険を冒しても構わないという具合で、彼とは当然不仲なのだろうと聞けば、



不思議なもので、かなり仲が良いらしい。



そんな彼の兄は、定職には就かず、ネットで生計を立てているのだという。



それも、ネットでお金を稼いでは、その全てを旅行や曰くつきの品物を



購入する資金として使ってしまう。



だから、彼の兄は、いつもお金に余裕が無く、結婚もしていないのだという。



そんな兄から、ある日連絡が入った。



久しぶりに二人で飲みに行こうという連絡だった。



勿論、彼としても酒を飲みながら聞く不思議な話や奇妙な体験というのは、



何処か心魅かれるものがあったので、その時も即答で飲みに行く事を



了解した。



そして、当日、兄に会うと、前回会った時よりも兄はかなり痩せていた。



どうしたのか?



と聞く彼に対して兄はこんな話をしてくれたという。



北海道に在るとある場所を旅していた彼は、ふらりと飲みに入った店で



初老の男性と隣り合わせになった。



ニコニコと笑っているその男性を見ていると、ずっと以前から友達だったかの



様な感覚になり、そのまま意気投合してかなり遅い時間まで一緒に飲んだ。



その男性は、どうやらアイヌに縁がある人物だったらしく、その土地に伝わる



色々な話をしてくれた。



そして、そういう話が大好きな兄も、食い入るようにしてその話に聞き入った。



その男性は、真剣に話を聞いてくれる兄の事を気に入ったのだろう。



別れ際に、そのアイヌの土地に伝わる古い笛を彼にプレゼントしてくれたという。



これを持っていれば、きっと他の人が絶対に体験出来ない程のスリルを味わえ



ますから・・・・。



そう言われて笛を渡されたのだという。



兄は彼が言った言葉の意味が良く分からなかった。



しかし、せっかく頂いた物だから、と大切に持ち帰り、自分のコレクションに



加えた。



それからも、特に変わった事は起こらなかった。



しかし、その笛自体は、とても古いものらしく、何処か赤黒く変色している



部分もあり、それが曰くつきな物に目が無い兄には堪らなく貴重な宝物に



感じていた。



そんなある日、兄はいつものように、コレクションの中から笛を取り出すと、



リビングで寝転びながら、ぼんやりとその笛を見ていた。



そして、そのまま笛を手に持ったまま寝入ってしまった兄は、凄まじい夢を



見た。



夢から覚めた時、思わず自分が生きているのか、と自分の体を触って確認



した程の衝撃だったらしい。



そして、その夢が、自分が痩せた理由なのだ、と力説したという。



そんな馬鹿な!



そういう彼に、兄は、自分のポケットからその笛を取り出して彼に手渡した。



そして、こう言ったという。



これは、お前にやる訳じゃないからな!



貸してやるだけだから・・・。



だから、お前も一度体験してみるといい・・・・。



安全に何の苦労も無く痩せられるんだから・・・と。



その時、彼はダイエットに励んでいた事もあり、また、兄が言う痩せる程の



夢とは一体どういうものなのか、とても興味が湧いてしまい、ついその笛を



受け取ってしまった。



確かに夢なのだから命を落とす事もない・・・・。



しかも、それだけで痩せられるのだとしたらこんなに美味しい話はなかった。



彼は自宅に戻ると、早速その笛を手に持ったまま布団に入った。



その笛を持っているせいなのか、は分からないが、いつもは寝付きの悪い彼が



その時はすぐに眠りに着く事が出来たという。



そして、彼はすぐに夢を見ることになる。



夢の中で彼は山道を歩いていた。



自分の着ている服などから、自分が夢の中でアイヌの民になっているのだと



すぐに分かったという。



すると、背後から獣の咆哮が聞こえた。



その咆哮に呼応するように振り返った彼を大きな黒い塊が顔をえぐった。



その場に倒れ込んだ彼に、その獣が覆いかぶさって来る。



重い、と感じるよりもその強烈な獣臭が全身の感覚を混乱させた。



顔と頭からは、何か温かいものがドクドクと流れだし、それが血なのだと気付く



のに、時間はかからなかった。



彼は夢の中で必死にその獣に抵抗しようとした。



しかし、次の瞬間、それが見た事もない程の巨大なヒグマなのだと気付いた時に



彼は抵抗を止めた。



食べられるというのが、どういうものなのか?



彼は初めて実体験として感じたという。



恐怖のあまり抵抗すら出来ず、ただ死を待つのみ・・・。



どんな感情なのか、自分でも良く分からなかったが、死にない間に涙が



ボロボロと溢れてきた。



ゴフォ・・・グオー・・・・・。



ヒグマは目の前の生きた餌に興奮しているのか、時折けたたましい程の



咆哮をあげる。



そして、次の瞬間、彼の耳には、信じられない音が聞こえてくる。



バキッ・・・・グチャ・・・バキ・・・・・。



それは、まだ生きている彼の体をヒグマが捕食している音だった。



彼の手足はあっさりと折られ、肉は容易に引きちぎられた。



そして、彼の腹に顔を突っ込んだヒグマは、唸り声を上げながら、彼の内臓



を美味しそうに咀嚼している。



痛みは感じなかった。



ただ、生きたまま食べられているという感覚と、もう助からないという絶望が



彼の思考の全てを支配していた。



結局、彼はそのまま最後まで意識を残したまま、そのヒグマに食べ尽くされてしまった。



そして、それと同時に、彼は夢から醒めた。



一瞬、自分の体が五体満足な状態なのか?と不安になる程のリアリティだった。



そして、まだ、あのヒグマが自分の部屋の中にいるような気がして、彼は



その場から動けなかったという。



かなりの間、彼はそうして固まっていた。



だが、しばらくして蒲団から出ると、兄に連絡して、その笛を取りに来て貰う



事にした。



あんな夢を見ていたら、痩せる以前に精神が崩壊してしまう・・・・。



そう感じたという。



そして、彼の兄はと言えば、その後もその笛を使って、あの凄惨な夢を見続けて



いるようであり、最近では、まるで死人のようにやせ細り、まさに生きる屍



といった表現がピッタリになってしまっているそうだ。



勿論、彼は兄に、その笛を処分する様に進言したが、兄は何があっても、



その笛だけは手放すつもりはないそうだ。



きっと、その笛には、ヒグマに食い殺された誰かの念が閉じ込められた



ままになっているのかもしれない。



そう感じた。
  


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2019年06月08日

暗闇の中の光

これは知人男性から聞いた話。



彼は幼少期を信州のとある県で過ごした。



生まれたのは、東海地区だったと思うが、父親の仕事の関係で小学校に



あがる前には既に、信州で暮らしていたそうだ。



もっとも、住む家には困らなかった。



彼の父親は元々、その土地の出身だったから、父親の転勤と同時に父方の



実家に同居する形になった。



彼の父も母も共働きだったらしく、彼の身の回りの世話は、その殆どが



祖父と祖母に頼る事になった。



もつとも、祖父と祖母も、可愛い孫の世話という事もあり嫌な顔一つせずに



引き受けてくれたらしいのだが・・・・。



家事の殆どは祖母が担当し、祖父はと言えば、彼が学校から帰って来てからの



遊び相手としての役割が多かったようだ。



遊び相手といっても、そこはずっと山の中での仕事を生業にしてきた祖父



だったから、余程の悪天候でない限りは家の中で遊んだりはしなかったそうだ。



いつも、学校から帰って来ると、祖父は彼を山へと連れていった。



そして、彼自身も、山に行くのが毎日の楽しみになっていた様だ。



山の中で渓流釣りを教えてくれたり、山菜を採りに行ったり・・・・。



その全てが彼にとっては、とても新鮮で楽しいものだったという。



いつも、ニコニコと笑っている祖父が彼は大好きだったそうだ。



そして、これから書くのはそんな山の中で彼が体験した不思議な話になる。



その時、彼と祖父は渓流釣りへと出掛けていた。



いつもは、釣れる場所に行くが、全く魚は釣れず、そのうちにどんどんと



渓流を上流に向かってのぼっていった。



山の奥深くに入っていった彼と祖父は、ようやく良い釣り場を見つけて、其処で



釣りを始めた。



彼自身、そんな山奥に行くのは場閉めての事だったから、何度も転んだり、



つまづいたりして、もう帰りたいと駄々をこねた。



しかし、ようやく、その釣り場に辿り付いてみると、その場所ではいつもとは



比較にならない程山魚が良く釣れた。



確かに、薄暗く気味の悪い場所ではあったが、そのうち、彼もそんな事などすっかり



忘れて渓流釣りに没頭していった。



そして、釣りを始めて2時間くらい経った頃、辺りがかなり暗くなってきた事に



彼は気付いた。



まだ、それ程遅い時間帯ではなかったから、彼自身も不思議に思っていた。



すると、祖父が急に真顔で、



今すぐ帰るぞ!



と言いだしたそうだ。



そう言われて、彼は、釣った魚を入れてあったバケツを持とうとしたらしいが、



何故か祖父は、それを止めた。



せっかく釣った魚が入ったバケツを持って行かないなんて、変な事を言うな・・・。



彼はそう思ったそうだ。



しかし、祖父は厳しい表情で、



バケツは持って行けない!ここに置いておけ!



怒鳴るように言ったという。



いつもは優しい祖父の厳しい顔と怒鳴り声に彼は、一体何が起こっているのか?



と不思議だったという。



茫然と立ち尽くしていた彼の手を取って、祖父は早足でその場を後にした。



そして、



しゃべるな!



後ろは絶対に振り返るな!



と、強い口調で言った。



彼は祖父に引っ張られる様にして、どんどんと川を下って行った。



そして、しばらく川沿いを降りていた時、突然、祖父が、



くそ!このままじゃ駄目か!



と小さいが強い口調で言った。



そして、彼の手を引いたまま、川から外れて山の林の中へと入っていく。



彼は、



ねぇ?おじいちゃん、どうしたの?



と何度も聞いたが祖父は何も答えてはくれず、



シッ・・・静かにしてろ!



と言うばかりだった。



そして、祖父は彼の手をひっぱりながら、林の中を右に左にと進んでいく。



眼の前に在る祖父の背中がとても大きく見えた。



そして、その時、彼は気付いたそうだ。



もしかしたら、祖父は何かを恐れているのではないか?と。



それは、彼の手を握る祖父の手が痛いほどしっかりと握られていたから・・・・。



そして、そう思って周りに視線をやると、真っ暗になりつつある林の中から、



ヒソヒソ・・・・・ヒソヒソ・・・・という誰かの話し声が聞こえてくる。



そして、林の木々の間から、見知らぬ大人達の顔がこちらを覗いていた。



その顔は、暗闇の中でも浮かび上がるようにはっきりと見えた。



彼は、思わず、



うわぁ!



と声を出したそうだ。



すると、祖父は彼の手を引っ張って林の中を駆け抜けながら、



本当にすまんな・・・。



ワシのせいで、お前を危険な目に遭わせてしまって・・・・・。



でも、大丈夫だ!じいちゃんが絶対にお前を護ってやるから!



そう言われたという。



真っ暗な林の中はとても恐ろしかったが、祖父が側にいてくれるという事が



彼にはとても心強く感じた。



そうして、どれだけの間、何かから逃げ回る様にして山を下りて行った



だろうか・・・。



丘を越えた所で前方に、ポツンと街灯が灯っているのが見えたという。



そして、彼の手を引っ張る祖父の力が一気に強くなったのを感じた。



祖父は、彼の手を引いたまま走る様にしてその街灯の下へと向かった。



その時には、何かが草を踏み折りながら、背後から近づいて来ているのが、



彼にも分かった。



彼はいつ、ソレに追いつかれるかとヒヤヒヤしながらも必死で祖父に付いて



走った。



そして、彼と祖父は倒れ込むようにして街灯の下に滑り込んだ。



真っ暗やみの中を必死で進んできた彼にとって、街灯の明かりはとても温かく、



そして心強いものだった。



だが、彼はすぐにある不安を抱き、祖父に尋ねた。



真っ暗やみの中で、こんな明かりの下にいたら、すぐに見つけられてしまうんじゃないの?



すると、祖父は、



この明かりの中にいれば大丈夫だ!



あいつらは、光の中には入って来れねぇ・・・。



だから、お前は何も見ないように目をつぶってろ!



本当にすまんな・・・・こんな目に遭わせてしまって・・・。



あいつらは、お前に目をつけてしまったみたいだ・・・・。



でも、おじいちゃんが、絶対に護ってやる!



だから、何かあっても絶対にこの光の中から出ちゃならんぞ!



そう言われたという。



彼は目をしっかりとつぶって、必死で祖父にしがみついた。



しかし、彼の耳には何かがぞろぞろと光に向かって集まってくるのが分かったという。



祖父は必死でお経の様なものを唱えていた。



祖父自身も恐怖で震えているのか、その震えが彼の体にも伝わってきて、彼は更に



強く目をつぶったという。



山の中にお経だけが響く不気味な空間だった。



そして、しばらくすると、何かが彼の服を掴もうと手を伸ばして来ているのか、



彼の服が何度も引っ張られることがあった。



その度に、彼は、ヒッと声を上げたが、それは祖父も同様だったらしく、途中、



何度もお経が途切れる事があったらしい。



ただ、その度に、祖父は、



何も心配しなくていい・・・・。



と優しく励ましてくれた。



彼は怖くて何度も祖父に聞いたという。



この明かりって消えないよね?と。



すると、祖父は、



神様が絶対に守ってくださるからお前は何も心配しなくてもいい!



と言ってくれたという。



それから、しばらくの時間が流れた。



彼は、祖父に抱きつくようにして眼をつぶっているうちに、つい、ウトウトと



してしまった。



そして、その時、彼は母親の声を聞いた。



もう大丈夫だよ!



早くこっちにおいで!



それは紛れもない母の声だった。



彼は、その声に思わず目を開けてしまった。



すると、そこには、母親とは程遠い、気味の悪い女がこちらへ手を差し伸べていた



そうだ。



ヒッ!



と声を上げた彼に、祖父は厳しい声で、



こら!見ちゃいかん!



と叱りつけたという。



それからも、明かりに群がる昆虫のように、どんどんと光の周りを取り囲むモノ達が



増えていくのを感じていたが、辺りが少しずつ明るくなっていくにつれて、



それらのモノ達が、1人、また一人と、その場から去っていくのが感じられた。



そして、祖父がお経を唱えるのを止め、彼に、



もう大丈夫だ!



と言ったのを聞いて、彼が目を開けると、すっかり夜が明けて朝の眩しい光に



包まれていたそうだ。



それから、祖父は彼を連れてすぐに山を降りたそうだが、もうその時には何も



恐怖を感じる事はなかった。



そして、そんな事があってから祖父が彼を山へへ連れていく事は無くなった。



彼にしてみれば、つまらない日常に戻ってしまったのだが、ある時、祖父が



お前は、もう山のモノ達に魅入られてしまっているから、もう山には連れていく



事は出来ないんだよ・・・・。



だから、お前も決して1人で山に入っては行かんぞ!



そのまま連れて行かれて、二度と戻っては来られなくなるからな!



そう言われて、彼も怖くなり、それ以後、二度と山に行く事はなかったそうだ。



  


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2019年06月08日

廃屋に置かれている・・・・。

これは知人が体験した話。



その時、彼は1人で車を走らせていた。



目的地は、山間にある、とある一軒家。



金沢市の外れにあるその家は、何故か周りに他の家が1軒も無い状態で、



ポツンとその場所に建っていた。



もう廃屋になってからかなりの年月が過ぎ、いつしか、その場所は曰くつき



の心霊スポットとして有名になっていた。



しかし、その心霊スポットというのは、他の心霊スポットとは明らかに違っていた。



普通なら、その場所で自殺があったとか、殺人事件があったとか、の噂がたつ



のが心霊スポットの認知度を増し、恐怖心を掻き立てる為の必要不可欠な



要素なのだろうが、その廃屋には、誰が住んでいた、とかこんな悲惨な事件が



在ったなどの噂というものが何一つ語られる事は無かった。



ただ、一つだけ、とある噂が流れていた。



その廃屋には、リビングに日記が置かれており、それが毎日のように更新され



書き加えられている、というものだった。



何人かの心霊スポットマニアがその場所を訪れるという噂が流れる事はあったが、



実際に、その場所に行ってみて、どうだったのか、という事は噂にすら



なることはなかった。



だから、



その心霊スポットには絶対に近づくな!



今でもその場所には日記を書き続ける為に何かが棲みついている・・・・。



というのか、マニアの間でも厳しく徹底されており、実際、その廃屋を



訪れる者は誰もいなかった。



そして、そんな廃屋をお度ずれようと思った彼は、必死で同行者を探したが、



友達にも、そして廃墟マニアにもあっさりと断られてしまう。



戻って来れなくなるから・・・・・。



そんな理由で。



実際、仲間を募った際、彼も真剣に止めておくように言われたという。



あそこだけは、別格だから・・・・・。



そう言われて・・・・。



しかし、一度行くと言ってしまった以上、彼の性格では、なかなか断念する事は



そのプライドが許さなかった。



結局、彼は周りの仲間たちに、例の廃屋に行って来る!と宣言してから、次の



日曜日、その廃屋に出かける事にした。



本当は朝早く、清々しい空気の中で廃屋に入りたかったが、生憎、朝から雨が降り、



昼頃になってようやく雨が上がったので、彼は重たい腰を上げたそうだ。



ネットでその辺りの地図を見て、そこまで掛る所要時間を把握して現地に



向かった彼だったが、実はネットで地図検索して際、その辺りには本当に



人家が1軒も無い山奥なのだという事が分かってしまい、本気でその廃屋へ



行くのを止めようかと思ったらしいが、やはり彼のプライドが邪魔をして



予定通り、決行する事に決めたそうだ。



その廃屋に向かって車を走らせているとどんどん景色は変わっていき、どうして



こんな山奥の1軒屋の為に、こんな道が未だに残されているのか?とかなり



疑問を感じた。



しかも、誰も通っていないのならば、その道は既に草木に占拠され、道が



分からない程に自然に帰っているのが普通だと思ったが、何故か、その道は



いまだに沢山の車の通行があるかのように、周りの雑草が生い茂る様とは



まるで違い、はっきりとした未舗装路が延々と続いていたそうだ。



何度もUターンして引き返そうと思いながらも、彼はそのまま惰性で車を



走らせ続けていると、突然、目の前が開けた場所に出た。



そして、そこには古びて朽ち果てた様な廃屋が確かに建っていた。



木造2階建てのその家は、壁には沢山のベニヤ板が貼りつけられ、その窓の中には



カーテンすら残されたままになっていた。



そして、玄関は木製の引き違い戸になっており、その造りから、かなり以前に



建てられた家なのだという事が分かったという。



目の前の廃屋からは、特に薄気味悪い雰囲気は伝わって来ない。



だから、彼はさっさと家の中を見て回り、其処に置かれているという日記を



確認して、暗くならないうちに帰路に就かなければ、と思い、早速玄関へと



向かった。



しかし、ある意味、異様だった。



彼がそれまでに行った事のある心霊スポットには、其処にきた事を誇示するかの様に



スプレー書きがされていたり、その建物自体が壊されているのが普通だった。



しかし、今、彼の目の前にある廃屋にはそういう誰かが来た痕跡というものが



全く残されてはいなかった。



本当に誰も寄り付かないという事か・・・・・。



そう考えたが、彼は頭の中を切り替えて、



誰も来た事が無いのなら、きっと廃屋の中の日記も、戻っては来れない、という



噂も、きっと誰かが流した噂に過ぎないのだろう・・・・。



そう考える事にした。



建てつけの悪い玄関の引き戸を開けると中からは少しかび臭い匂いがした。



彼は土足のまま、玄関の土間から廊下へと上がった。



当然、誰もいる筈もなく、家の中は静かに静寂に支配されていた。



彼はそのまま恐る恐る廊下を進んだ。



歩く度に、板の間の廊下がギシギシと音をたてたが、とにかく早く家の中



を見て回りたかった彼は、懐中電灯の明かりを点けて、どんどんと進んでいく。



廊下の左右には和室が一つずつあり、その襖は開いたままになっていた。



懐中電灯で照らすと、そこには、つい今しがたまで誰かが生活していた様な



生活感のある空間が広がっていた。



本来なら、体が硬直する風景だったが、窓からは外の光がかなり差し込んで



きており、さほど、恐怖は感じなかったという。



廊下を進むと、階段があった。



しかも、その階段は上の階へ続く階段と、下の階へ続く階段があった。



古い建物なのに、地下があるのか?



彼はさすがに気味悪くなったという。



だから、下へ続く階段は見なかったことにして、2階へあがる階段をあがって



みる事にする。



ゆっくりと階段をあがっていく彼。



さすがに緊張したらしいが、2階へ上がった廊下は1階よりも、窓が広く



とても明るく感じ、彼はホッとする。



そして、2階の部屋の探索へとうつる。



2階の部屋はどうやら子供部屋のようだった。



それにしても、部屋数が多かった。



小さな間取りの部屋が全部で6部屋、左に向って伸びていた。



子供6人って…まあ、昔は子沢山の家も多かったみたいだしな・・・・・。



彼は一番手前の部屋から順に見ていった。



居たって、普通の子供部屋だった。



しかも、手前から奥に行くにしたがって、子供の年齢が大きくなっているように



感じたという。



最初の部屋が小学校の低学年。



それが、最後の6番目の部屋になると、どうやら高校生の部屋という感じがした。



そして、6番目の部屋は、明らかに他の部屋とは違っていた。



他の部屋には、机とおもちゃなどが乱雑に置かれている状態だったのだが、



6番目の部屋には、今でも誰かがその部屋を使っているかのような生活感



が残されていた。



壁に掛けられた女子学生の制服らしきもの・・・。



机もきちんと整頓されており、部屋の中には埃が溜まっている様な感じも無かった。



そして、その時、彼はその部屋の机の上に置かれているグレーの手帳のような



物を見つけた。



思わず、近づいて手に取ると、それは紛れもない日記なのだという事が



分かった。



グレーに見えたその日記は本来は白色の表紙なのだと分かった。



それがしっとりと濡れ、所々が腐ったようになっており、それがクレーに



見えたのだと・・・・。



日記は本当にあったんだ・・・・・



彼は恐る恐るページをめくった。



短い文章である事以外は、その日記には取り立てて変わった内容の文章は



見当たらない。



彼は息を殺して、読み進める。



そして、あるページに差し掛かった時、思わず手が止まった。



20○○年○月○○日



”きょうはおきゃくさんがきてくれた



ひさしぶりのおきゃくさんだったからたのしくあそんだ



おいしかった”



そう書かれていたという。



嫌な予感を感じた彼は、そのままその日記をパラパラと読み進む。



すると、その先にも、先ほどの内容と同じような記述が何ページにも渡って



書かれている事が分かった。



彼は急いで最後のページを見る。



すると、そこには、紛れもなく、昨日の日付で書かれたページで終わっていた。



201○年○○月○○日



”ずっと、おきゃくさんがこなくてたいくつ



もっとあそびたいのに



おなかもすいた・・・・”



そう書かれていた。



彼は必死に冷静さを保とうとした。



そして、頭を整理して何とか自分を納得させようとした。



きっと、この家には今も誰かが住んでいるに違いない。



だから、日記が毎日更新出来てるんだ、と。



しかし、彼は自分がどんどん恐怖に飲み込まれていくのをひしひしと感じていた。



何故ならその日記の内容は明らかに異常な物だったから・・・・。



彼は、そのまま日記を机の上に戻し、部屋を出ようとした。



すると、その時、突然、1階から大きな音が聞こえた。



何かが1階の廊下で大きく飛びあがってそのまま着地した様な音。



しかし、彼にはその音を確認する勇気は無かった。



しばらく息を殺してその場で聞き耳を立てていた。



きっと、何かが偶然廊下の上に落ちた音であって欲しい・・・・。



彼はそう思っていた。



すると、ギシッギシッギシッ、と何かが階段をゆっくりとのぼって来る足音が



聞こえてきた。



彼は急いでその部屋にあった押入れに身を隠した。



誰かがこの家に住んでいたのなら、普通に考えても、住居不法侵入だった。



しかし、彼はそれを恐れていたのではなかった。



あんな日記を書く者だとしたら、きっと精神に異常をきたした者が、あるいは、



人間ではない、何か?



彼は出来るだけ音をたてないように静かに押し入れの中に身を隠した。



運良く押し入れの中には何も入ってはおらず、成人男性の彼でも楽に



体を隠す事が出来た。



そして、足音が階段をのぼりきった足音が聞こえる。



そして、その足音は他の部屋には目もくれず、彼が隠れているその部屋に



向って進んでくるのが分かった。



彼は何か出来になる者は無いか?と自分の装備を確認した。



そして、ジャンパーのポケットの中に、針金などを切る為のニッパーが



入っている事に気付いた。



彼はそれを手にしっかりと持って、じっと耳を凝らした。



そして、何かが部屋の中に入って来る音が聞こえた。



とても苦しそうに息をしているのが分かった。



しかも、それは、時折、大きく息を吸い込むようにして笑った。



その度に彼は身を固くして必死で恐怖に耐えていた。



そして、突然、何も音が聞こえなくなる。



部屋から出ていくような音は聞こえなかった。



彼は必死に息を殺して物音から情報を得ようとするが、まさにその空間は完全に



静寂に包まれ何も音は聞こえてこない。



掛けは息を停めて必死に聞き耳を立てていたがさすがに苦しくなり、思いっきり



息を吸った。



その時である。



突然、彼が隠れている押入れの襖が大きく開かれ、そこには顔が激しく爛れた



女の顔が目の前にあった。



それは彼がそれまで経験した事が無い程の恐怖だったという。



大きく抜け落ちた髪の隙間から覗くその笑顔を見た時、彼はその場で意識を失った。



そして、それから彼はどれだけの時間、その場て意識を失っていたのだろうか。



ハッと意識を取り戻した彼は、慌てて押入れから飛び出した。



先ほど見た女はもう目の前にはいなかった。



彼はホッとすると同時に、先ほど見た者は自分の恐怖心から自らが作りだした



幻に違いない、と思った。



いや、そう思わなければ精神が崩壊してしまいそうだったという。



彼は急いでその部屋を出ようとして足を停めた。



机の上に置かれた日記が気になって仕方なかった。



そこで、彼はもう一度、に着きの最後のページをめくってみた。



息が止まるかと思った。



そこには、今日の日付で、



”きょうあたらしいおきゃくさんがきた



なかよくできそう



おいしいといいな”



そう書かれていたという。



彼はそれを見た途端、居ても経っても居られなくなり、一気にその場から立ち上がり



一気に階段を駆け降りた。



そして、玄関に向かい引き戸を開けようとした時、突然背後から大きな笑い声



が聞こえ、彼は思わず振り返った。



すると、そこには、髪が抜けおちガリガリに痩せた裸の女がこちらに向かって



笑いながら手を振っていた。



彼はそのまま一気に車に飛び乗って、必死に車を走らせた。



あの女が追いかけて来ている様な気がして生きた心地がしなかったという。



しかし、彼は何とか無事に家まで辿りつく事が出来た。



そして、その後、俺に電話がかかって来て、この話を聞く事になった。



そして、あの廃屋に行った後から、ずっと怪異が続いているのだと言った。



毎晩、夢の中にその女が出てきて彼を遊びに誘うのだそうだ。



そして、最近では、仕事をしていたも車を運転していても、いつもその女の姿が



視界の端に映り込むのだと・・・・。



苦しそうに話す彼を何とか助けられないか・・・・。



そう思った俺は、いつものAさんに連絡をとった。



しかし、その後、彼との連絡は完全に途絶えてしまった。



家族も友人も彼の姿を全く見た者は居なくなった。



彼はいったいどうなってしまったのか?



俺はAさんに尋ねた。



すると、Aさんは、



あの場所に行った時から彼の運命は決まっていたんだと思いますよ・・・・。



この世には絶対に近寄ってはいけない場所が確実に存在しています・・。



そして、其処に近づいてしまった彼は、そのまま連れ去られてしまって、もう



とっくに何も残っていないかもしれませんね・・・・。



体も、そして魂も・・・・。



Kさんも気を付けないと・・・・。



そう言われ俺は思わず、ゾッとしてしまった。
  


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2019年06月08日

Aさんには守護霊がいない・後

俺達3人を乗せた車は、住職の寺を出発すると順調に距離を稼いだ。



ただ、空は完全に雲に覆われ、辺りは昼間だというのにすっかりと暗く



なってしまい、今、こうして車で逃げているうちも、あの女の子のテリトリー



に居るような嫌な気分がしていた。



Aさんから、



巻き添えにはしたくありませんから、民家の在る道や大通等は絶対に通らないで



くださいね!



と言われた俺は、その言葉の通りに、山道を快調に走っていく。



Aさんの師匠から言われた10分間という限られた時間の中で、どれだけ



効率良く距離を稼ぐか・・・。



その事に集中していた。



その間、Aさんはじっと後部座席に座り腕組をして微動だにしない。



そして、姫はぼんやりと窓の外を見ている。



私ってやっばり駄目ですね・・・。



Aさんがいないと何も出来ない・・・。



そうポツリとつぶやく。



それを聞いた俺は、



いや、そんな事無いと思うよ。



だいたい、Aさんはずっと寝たままだしさ。



姫ちゃんはまだ若いんだし、これから未来が広がってるんだからさ!



そう言って姫を励まそうとした。



そして、こう続ける。



それにしても、あの女の子の姿をしたモノが悪霊たちの集合体だなんて・・・。



やっぱり、あの女の子も何かに体を乗っ取られて利用されてるのかな?と。



すると、微動だにしなかったAさんが、



何を馬鹿な事言ってるんですか・・・・。



あれは別に女の子が体を乗っ取られた姿なんかではなくて、私を油断させる為に



小さな女の子の姿に形を変化させているだけですからね。



まあ、私もまんまとそれにはまってしまいましたけど・・・・・。



それと、すみませんね。私には未来が広がってなくて・・・。



まだ若いつもりなんですけどね?



しかも、ただ寝てるみたいに言わないでくださいね・・・。



しっかりとこれからの対応策を考えていたんですから・・・・。



そう返してきた。



だから、俺は、



で、その対応策っていうのは見つかったの?



見つけられてないんなら寝てたのと一緒だからね・・・・。



そう言うと、Aさんは、珍しくそのまま黙ってしまった。



図星だった。



やはり、この状況で対応策など見つけられる筈は無かった。



だが、申し訳ないとは思ったが、俺はそのまま言葉を続けた。



あのさ…とりあえず、この車は何処に向かって走ればいいんだろうか?



あのお寺って、本来は悪霊にも見つけられないはずなんだよね?



でも、結果としてすぐに見つけられてしまった。



だとしたら、この世に安全な場所なんか存在しないんじゃないの?と。



そして、これも図星だった。



Aさんは、何も言えずに後部差席で固まってしまう。



Aさんの師匠が言った10分という時間はもう目前まで迫っている。



すると、Aさんが口を開いた。



私を此処で降ろしてくれますか?



そうすれば、少なくともKさんと姫ちゃんだけは助かりますから・・・。



それを聞いた姫は、



何を言うんですか~



駄目ですよ。やるのなら私も一緒に降りますから・・・。



と半ベソをかいている。



だから、俺も、



その選択肢は無しだね!



Aさんと姫が居なくなったら俺、困っちゃうからさ・・・・。



だから、他の解決策を探さないと・・・。



そう言うと、Aさんは、少しだけ笑いながら、



そうですね。それじゃ、残りの選択肢にしますか・・・。



Kさんを此処で降ろして、私が運転を代わって此処から姫ちゃんと逃げるっていう・・。



これで全てが丸く収まると思うんですけど?



そう言われてしまった。



しかし、いつもなら、悔しい筈なのに、その時は何故か少し嬉しく感じた。



それだけの憎まれ口が叩けるのなら少しはいつものAさんに戻って来ている



証拠だと感じたから。



そして、俺はもうひとつ大切な伝言を言い忘れているのを思い出した。



あっ、そういえば、Aさんの師匠が言ってたけど?



もう、そろそろアレに頼っても良いんじゃないか?って・・・・。



アレって、何?



とAさんに尋ねる。



すると、Aさんは、しばらく考えた後、突然何かを思い出して、急に不機嫌な顔になる。



あの師匠がそんな事を言ってましたか・・・。



おしゃべりだな・・・・本当に。



本当に要らん事ばかりペラペラと喋って・・・。



私、あいつとは絶対に馬が合わないんですよ!



まあ、あっちも同じ事を考えてると思いますけどね・・・。



だから、またあいつと顔を合わせると思うだけで気が重くなるんですよね・・・。



と浮かない顔をする。



急に機嫌が悪くなったAさんに、俺は恐る恐る尋ねてみる。



あのさ・・・・さっきからあいつとか言ってるのって一体何者なの?



もっと凄い霊能者を知ってるとか?



それとも、姫みたいに、神を使役してるとか?



そう聞くと、Aさんは、しばらくしかめっ面をして黙りこくっていたが、



そうですよね。今はそんな事を言っている場合じゃありませんよね・・・。



まあ、あまり言いたくはなかったんですけど・・・。



あいつって言うのは、私の守護霊の事なんですよ。



でも、いつも喧嘩ばっかりしてて・・・。



しかも、ただの守護霊なら、傷めつけていう事を聞かせられるんですけど、あいつの



力というのは想定外というか、規格外の強さなので・・・。



逆にこちらがやり込められてしまう・・・・。



本当に嫌な奴なんです・・・・。



そして、面倒な相手・・・。



そこまで聞いて、俺と姫は、殆ど同時に、同じ言葉を叫んだ。



え~、なんで?Aさんには守護霊はいないんじゃなかったの?と。



すると、Aさんは、



まあ、居ないのと一緒ですから・・・。



それに、前に会ったのももう数年前になりますから・・・。



まあ、天敵みたいなものですかね!



そう返してきた。



だから、俺は、



あのさ・・・その強力な守護霊って、今どこにいるの?



姫ちゃんの守護霊とはタイプが違うのかな?



もしかして、あの女の子とも対等に闘えるとか?



そう尋ねると、Aさんは、



今、どこにいるかなんて知りませんよ!



まあ、でも霊に距離は関係ありませんから・・・。



呼べば・・・いや、頼めばすぐにでも此処に現れると思いますけどね・・・。



そう嫌そうに呟いた。



だから、俺は真顔でAさんにこう言った。



あのさ・・・・今呼ばなくていつ呼ぶの?



今、俺達って生死の境目に居ると思うんだけど?



と語気を強めた。



すると、Aさんは、



はいはい。分かってますよ。



頼めばいいんですよね。



でも、あいつが現れてKさんや姫ちゃんが嫌な思いしても私は一切責任を



持ちませんからね・・・。



私とは真逆の性格なので・・・・。



それと、出来るだけ、ひと気の無い広い場所へ向かって貰えますか?



巻き沿いは作りたくないですから・・・。



そうぶっきら棒に言い放った。



その言葉を聞いて俺はすぐに山の上へ向かって走り出す。



そして、人気が無く、広い草地を見つけると、其処に車を停止させようとした。



すると、その前方に、先ほどの女の子が突然現れる。



車の進行を阻むように、車の前に立ち塞がった。



あ~あ、やっぱり呼ぶしかないみたいですね・・・。



そう言うと、Aさんは、目をつぶって小さく何かを呟いた。



すると、辺りを暗くしていた雲が突然途切れ、そこから眩いばかりの光が俺達を



乗る車を照らした。



何かに、とてつもなく強力な力で護られている・・・・。



そんな気がした。



そして、そこから光の中をゆっくりと降りてくる様にして何かがこちらに



近づいてくる。



俺にはそれが天使に見えた。



すると、Aさんは、嫌そうな声で、



ほらね・・・・あんな登場の仕方したりするでしょ?



本当なら一瞬でこの車の中に現れる事だって出来る増すし、更に言えばあいつの



力なら此処に姿を現さなくても一瞬で、あの女の子くらいなら消す事だって



出来る筈なのに・・・。



あいつって、本当に自意識過剰なんですよね!



と、本当に、その天使に見える自分の守護霊が嫌いな様だった。



そこまで聞いた俺は、



Aさんの守護霊って、それ程の力を持ってるんだ?



もしかして、Aさんよりも強いの?



と聞いた。



まあ、どっちが上かは分かりませんから。



力のタイプがまるで違いますから・・・。



でも、師匠が以前、言ってましたね・・・。



アレは全てを持ち合わせた絶対的な存在だから、と。



まあ確かに、あいつが何かに負ける姿は想像すら出来ませんけどね。



そう不服そうに呟く。



そして、目の前に立つその女の子も明らかに動揺を隠せない様だった。



明らかに、その天使を恐れている・・・・。



そんな風に見えた。



そして、その天使は地上へと降り立つ。



美しい顔立ちと素晴らしいプロポーション。



薄い絹の様な薄青色の頃もがゆらゆらと風に揺れている様に見えた。



しかし、その顔つきは何処か他人を見下している様な高貴なものに見えた。



すると、Aさんが車から降りようとする。



俺が



何処に行くの?



と聞くと、



守護霊だけにいい恰好はさせられないでしょ・・・。



それに、私がいないと、あいつも力をフルに使えませんからね。



そう言うと、Aさんは、さっさと車を降りて、その天使に近づいていく。



一瞬、Aさんと、その天使が顔を見合わせたように見えた。



どちらも、何処か生意気そうで、上から見下ろしている様な態度。



その時、初めて気付いた。



ああ・・なるほど・・・あの守護霊ってAさんにそっくりなんだ!



だから、お互いに嫌ってるのか!と。



その女の子の姿をしたモノは、何か衝撃はのようなものを体全体から



放出させて抵抗する。



その殆どが一瞬でAさん達の前から消えてしまう。



そして、そのごく一部が飛散してAさんの顔を直撃した。



Aさんは一瞬、顔をしかめる。



顔にはあざの様な跡が残されている。



あんた、私の顔に何してくれるの!



追い詰められて状況が見えなくなってるんじゃないの?



そう叫んだ。



すると、Aさんの隣に立つ守護霊が、一瞬、クスッと笑った様に見えた。



もう勝敗の行方は既に見えていた。



圧倒的な力の差・・・・。



それがひしひしと伝わってくる。



ほら・・・さっさとやるよ!



あんた、足引っ張んないでよ!



とAさんが言うと、Aさんの光とその天使の光が交錯して、まるで虹の様に



見えた。



その光の中で、その女の子は苦しそうにもがいていだか,やがて、砂の像が



崩れていく様に、どんどん形を崩していく。



そして、それらが沢山の黒い霧の様な姿に変わり、その場から逃げようとする。



逃がす訳ないでしょ!



Aさんがそう言うと、その黒い霧も、まるで水蒸気の様にその場で消えていく。



そして、その場から全てが消え去るのにさほど時間は必要としなかった。



そして、まるで時間差で巨大な竜巻でも起こったかのように辺りを凄まじい



烈風が吹き荒れた。



草は千切れ飛び、木々の葉も、一瞬で吹き飛ばされ、そこに残されたのは



まるで、超巨大竜巻が通過した後の様な光景だった。



Aさんと守護霊が一緒になると、こんなに凄いということなのか・・・。



俺は、味方であるAさんとその守護霊の力に一瞬、恐怖さえ憶えた。



そして、全てが終わると、一瞬、目を合わせたAさんと守護霊だったが、



すぐに興味が無いかの様に、視線を外し、そして、その守護霊は再び、空へと



のぼっていき、やがて雲の中に消えていった。



ふて腐れた様に車に戻って来たAさんは、



ほんと、感じ悪い奴・・・・。



態度も最悪だし・・・。



可愛げとかそういうのが欠如してるんですよね。



それを聞いていた姫は、突然、



そんな事無いですよ~、凄い美人だったしスタイルも良くて、まるでAさんと



瓜二つでしたよ~、と興奮冷めやらぬ様子だった。



まあ、確かに俺もそう思った。



そして、それと同時に、見た目だけではなく、きっと性格もそっくりなのだろうと



容易に想像できた。



感じが悪くて態度が悪く、そして可愛げがない・・・。



まさに、Aさんのそのものだった。



つまり、Aさんは、自分自身の性格が嫌いという事なのか?



あえて、俺はそれを口にせず、



でも、あれが守護霊なの?



なんか、天使にしか見えなかったけどね・・・・。



と言うと、Aさんは、



止めてくださいね・・・。



何処であいつが聞いてるか、分かったもんじゃないんですから!



天使なんて言われたら、更に図に乗りますから!



あいつは私と違って口が悪いんですから!



(どうやらAさんは自分の事がよく分かっていないようだ・・・・)



そう語気を強めて必死に否定する姿が、何処か微笑ましく思えた。



それにしても、あれほど凄い守護霊が居るのなら、一緒に行動した方が



得策だと思うのだが・・・。



ちなみに、その天使(守護霊)は、今でも一緒にいる事はないらしい。



まあ、お互いが嫌っていても守護霊を続けているという事は、まあ実は



それほど仲が悪い訳ではないのかもしれない。



そう思った。



そして、姫のお友達達も、しばらくすると元気に戻って来たらしく、住職の寺も



予想通り、何も被害は無かったらしい。



ただ、Aさんの師匠だけは、かなりの気を使い過ぎた様で、それからしばらくは



安静厳守の状態が続いた様だが・・・。



本当にAさんや姫と付き合っていると、退屈しないと言えるのは、きっと今無事で



いられるからなのだろう。



ただ、またひとつ、Aさんの秘密が分かった貴重な体験だったのは間違いない。


そして、それから家に帰った俺は妻から、


草むしりが中途半端で投げ出されてるんだけど?


と厳しいお叱りを受けたのは紛れもない事実である。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:28Comments(0)