2019年06月09日

お寺で過ごした・・・・。

これは俺がかなり前に体験した話。

俺は友人2人と一緒にとある心霊スポットにでかけた。

そこは昔、処刑場として罪人が命を断たれたという曰くつきの場所だった。

その場所は市街地の中にひっそりと隠れるようにして存在していた。

当然、近づく者は誰もおらず、またその土地を利用して何かを建てようとすれば

必ず怪異が起こり怪我人死人が出てしまう。

まさに、リアルな曰くつきの場所だった。

俺は真夜中にその場所に到着し、車から降りたところまでは記憶している。

しかし、それから後の記憶が完全に飛んでしまっていた。

俺はその場所で急に意識を失い、その後、意識を取り戻すと訳の分からない

行動をとり、女の様な声ですすり泣いていたという。

慌てた友人達は俺を急いで病院に運んだが、精神に異常をきたしていると

診断され、逃げるように病院から抜け出してきた。

俺としてはAさんに相談するのが一番なのは分かっていたが、心霊スポットになど

行ったのがバレると、それこそ頭ごなしに激怒されるのは目に見えていた。

だから、俺は友人のアドバイスに従い、とあるお寺に向かった。

そこで俺を見た住職は、今すぐに対策を講じないと命さえ危ういと言った。

どうやら、俺の腕には薄く青いあざの様な輪が描かれていたようだ。

それが目印となり、俺には逃げる術は無いのだと・・・。

そして、住職は俺に対して冷静にこう言い放った。

あなたには昔、その処刑場で命を断たれた女性の怨念が憑いています。

無実の罪で恨みの中で死んでいった女の怨霊です。

そして、あなたにもその苦しみを知って貰い、そのまま冥府に連れて行こう

としています。

その証拠があなたの腕に付けられた青い輪のの様な痣なのです。

それを断つには、あなた自身で除霊をするしかありません。

良いですか。

これからあなたは3日間、この寺でお経を唱えなくてはいけません。

私も、その間、この寺を離れます。

あなたは一人だけでその間、線香とロウソクの火が消えないようにしながら

このお堂の中で過ごさなくてはいけません。

外に出たら、二度と助かる方法は無いと思ってください。

良いですか?

私も、そしてあなたの知人もその3日間、絶対にこのお堂の外からあなたを

呼ぶことはありません。

3日目の朝、あなた自身でこのお堂から出て来てください。

その時には、きっとその女の霊も貴女から離れるしかなくなる筈ですから・・・。

そう言われた俺は、急に恐ろしくなった。

お堂に入る前には住職が俺の体を清めてくれ、そのうち、俺も事の重大さに

気付いていった。

そして、俺をお堂の中に一人残して住職が出ていく際、俺に対してこう言い残した。

良いですか?

霊は自らこのお堂の中に入る事は出来ません。

だから、何があっても、絶対にお堂の外に出てはいけない!

お堂から出たら、死ぬ・・・・。

お堂から出なければ助かる・・・・。

簡単な事です・・・。

と、言葉とは裏腹に心配そうな顔で、そう言った。

そして、一日目がスタートした。

お堂の中では、かなり自由に過ごす事が出来た。

パンやおにぎり、お菓子なども用意されており、スマホの使用も許されていた。

お経を読めとは言われたが、それは、危険を感じたり何かの気配を感じたり

した場合だけで良いと聞かされていた。

だから、俺も簡単な事だと高をくくっていた。

自分からこのお堂を出る事などあり得ない事だ、と。

しかし、丸3日間、お堂の中で過ごすという事は実際にやってみると

なかなか退屈なものだった。

それでも、何とか1日目の昼が過ぎ、そして夜になった。

夜になると、お堂の中の明かりはとても心細いものでさすがに不安になる。

お堂の中は決して広いものではなかったが、それでも時折聞こえる猫の鳴き声や

床板のきしみ音に彼は思わずビクッとしてしまう。

ロウソクの炎が消えそうになり、俺は新しいロウソクを立て、それに火を点けた。

ロウソクの明かりがこんなに暖かく、そして心強いものだとは、俺はそれまで

知らなかった。

そのロウソクの明かりをぼんやりと見ていると、俺の気持ちも落ち着いてきたのか、

すぐに眠気に襲われ、知らぬ間にその場で寝入ってしまった。

それから、どれ位の時間が経過したのか・・・・。

深夜、俺は、カタカタという音で目が覚めた。

ハッとして起き上がると、お堂の障子が音を立てて揺れている。

思わず、身構える俺。

すると、次の瞬間、お堂の障子が誰かが爪で引っ掻いたかのように全て同時に

破られていく。

そして、その破れた隙間から沢山の顔がこちらを見ていた。

明らかに恨みと憎しみのこもった冷たい眼差し。

俺は思わず、座ったまま後ずさりしてしまう。

すると、今度はお堂の入り口の戸がコンコンとノックされ、

○○、大変な事になったね!

でも、もう大丈夫だよ!

もっと安全に隠れる事が出来る場所が見つかったから、ここから出ておいで!

という声が聞こえた。

それは限りなく俺の母親の声に似ていた。

しかし、母親がこの状況を知っている訳が無かった。

だから、俺は体を固くしながら無言を貫いた。

すると、今度は入口の木製の戸が強い力で叩かれる。

ドンドン!・・・・ドンドン!・・・・。

戸を叩く音はどんどん大きくなっていき、いつ戸が壊されるのか、と不安で

いっぱいになった。

そして、俺はその時、気が付いた。

破かれた障子の隙間から無数の顔が、こちらを覗き込んでいるのを・・・。

もう生きた心地はしなかった。

それから朝まで俺は固まったまま動く事が出来なかった。

必死でうろ覚えのお経を口ずさみ、目を開ける勇気も無かった。

そうしているうちに、夜が明けたのか、お堂の中が静かになった。

ぐったりした俺は、そのままじっとしていたかったが、やはりお堂の戸が

気になってしまい、その場から立ち上がると、入口の戸へ向かって歩き出した。

見れば見る程凄まじい光景だった。

お堂の入り口の戸は、強い力で潰された様になっており、その状態を見る限り

とても3日間もの間、俺を護り抜いてくれる様には思えなかった。

朝になると、住職が様子を見に来てくれたがお堂の中には入ろうとはせず、

お堂の外から、

あ~、こりゃ凄いな・・・・。

大丈夫でしたか?

と声をかけてくれたが、俺がお堂から出ようとすると、

出てはいけません!

私も中に入らないのは、同じ理由なのですから!

このお堂の中にはとても強力な結界が張ってあります。

ただ、それは誰か人間が中に入ったり貴方がお堂の外に出たりすれば、それで

結界の効果は消えてしまうのです。

外回りは出来る限り塞いでおきますから、辛いでしょうが、自らの招いた

厄災なのですから、どうか気持ちを強く持ってください!

それにしても、貴方に眼をつけた怨霊というのはかなり強力なようですね。

それなら、尚更の事、このお堂以外に貴方が助かる場所は在りませんし、もしも

中に入られたとしたら、それは貴方が何処に隠れても結果は同じ、という事

なのですから、どうか諦めてください。

とにかく、気持ちを強く持って・・・・。

そう言われた。

住職にそう言われてしまうと俺には何も返す言葉が無かった。

それから、お堂の入り口の戸は補強され、障子も綺麗に張り替えられた。

しかし、そんな事で、あの怨霊から身を護れるのか、は甚だ疑問だった。

そうしているうちに、また夜が来た。

俺は、気持ちが動揺してしまいじっと座っている事など到底出来なかった。

用意された食べ物も喉を通らず、ただじっとお経の本をぼんやりと

眺めているだけだった。

そうして、時刻は午後10時を回った頃だろうか。

突然、お堂が大きく揺れた。

地震か?と思い固まっている俺の目の前でお堂の床がゆらゆらと揺れて見えた。

いったい何が起こるのか?と目を凝らしている俺の目の前で、何かが床を

通り抜けてお堂の中へと押し上がって来るのが視える。

呆然とする俺の前にそれは姿を現した。

その姿は、まるで昔の幽霊画から出てきたように醜悪でおぞましい姿をしていた。

俺は悲鳴を上げてお堂の中を後ずさりする。

そして、それは俺の後を追うように移動するが決して俺に近づこうとはしなかった。

俺はパニックになった頭で考えた。

もしかしたら、これは俺をお堂の外に逃げさせようとしているのかもしれない、と。

ただ、そうだとしても俺の目の前にある恐怖に変わりは無かった。

その時だった。

突然、お堂の戸が、ドンドンと叩かれた。

思わず、ビクッとなった俺だったが、何故かその音が聞こえた途端、目の前の

幽霊も消えてしまった。

どうなってるんだ?

今度はどんな手を使うつもりなんだ?

そう考えていると、お堂の障子がビリビリと音を立てて破られるのが分かった。

そして、再び、お堂の戸が大きく叩かれる。

と、すかさずまた障子がビリビリと音を立てて破られる。

その度に俺の体はビクッと反応してしまったが、そのうちに想定外のものが

俺の眼に映り込んだ。

破れた障子の隙間から、手が差し込まれ、その手はしっかりとピースサインを

している。

ちょっと、待て・・・・。

ピースサインをする怨霊って・・・・・?。

すると、突然、お堂の戸が蹴破られた。

そして、其処に立っていたのは紛れもなくAさんだった。

はぁはぁ…・まだ元気みたいですね・・・。

そう話すAさんは、肩で大きく息をしていた。

俺が、

どうしたの?凄く疲れてるんじゃないの?

と聞くと、

ああ・・・ちょっとKさんを怖がらせようとして頑張ってしまったので・・・。

と返してきたので、

あの・・もしかして、さっきからお堂の戸を叩いてたのも障子を破ってたのも、

もしかして、Aさんなの?

と聞くと、

怖がってくれるかな・・・って思ったもので・・・。

でも、良かったじゃないですか?

私が来たお蔭で、悪い霊も消えたでしょ?

そう言われて、俺はある事に気付いた。

そう、Aさんは、結界を張ってあるお堂の中へ堂々と入って来ていた・・・。

あのさ・・・どうしてくれるの?

Aさんがお堂の中に入って来たから、もう結界が効力を失っちゃったじゃん?

とAさんに嫌味を言うと、

ああ・・・こんな結界じゃ無理です。

あの悪霊は祓えませんよ・・・。

すぐにお堂の中に入られて、Kさんはあちらに連れて行かれると思いますよ!

とはっきりと言ってのける。

反省のかけらもない・・・。

俺が呆れてAさんを見ていると、

そもそも、Kさんが、そんな場所に行くからいけないんですよ!

私が偶然、Kさんが此処に居るっていうのを知ったからまだ良かったですけど

あのままだったら、間違いなくKさん、朝には遺体となって発見されてましたからね!

そう勝ち誇ったような顔で言われるとさすがにむかついてしまう。

そして、Aさんが続ける。

という事で、乗りかかった船なので私が力を貸しましょうか?

今なら私も金欠状態ですから、次の給料日まで、晩御飯を御馳走してくれるという

バーゲンプライスで協力しますけど?と。

本当ならムカついていたので、即座にその申し出を断りたかったが、Aさんの力は

十分分かっていたし、やはり死にたくもなかったので、俺はAさんの提案に

賛同するしかなかった。

だから、俺は、

分かったよ!

それじゃ、Aさんもお堂の中に早く入ってよ!

と言うとAさんは冷たい眼で

なんで、そんな面倒くさい事をしなきゃいけないんですか・・・・。

違いますよ・・・・こんな処で悪霊さん達がお出ましになるのを待っていたら、

いったい、いつになることやら・・・。

だから、こっちから悪霊の元に出向きます!

今すぐに!

さっさと案内してくださいね・・・。

そう言うと、Aさんはお堂の中に置かれていた御菓子類を可能な限りボケっトと

バッグに詰め込んで嬉しそうにお堂から出ていく。

あの・・・・それって俺がお堂の中で過ごす為のお菓子なんだけど・・・?

と言うと、Aさんは涼しい顔で、

もう必要ないから貰ってあげるんですよ!

つべこべ言ってないでさっさとその場所まで案内してくださいね・・・・。

と俺を促す。

俺はAさんの車に乗り込むと、そのいわくつきの場所へと案内した。

時刻は既に12時を回っていた。

辺りは異様な雰囲気に包まれている。

そして、目的地に到着すると、

Kさんは、このまま車に残っていてくださいね・・・。

と言うので、俺は

いや、あの・・・車に一人きりで残されるのも怖いんだけど・・・・。

と返すと、Aさんは少しだけ笑って、

私の車にちょっかい出してくるほど度胸のある霊なんていないから大丈夫!

そう言って、車から降りて1人で暗闇の中へと消えていった。

それから、暫くして、辺りが一瞬明るくなった。

すると、Aさんが戻って来て、車に乗り込むと、

まあ、ざっと、こんなもんです!

良かったですね?

私と知り合いで!

と上から目線で言われてしまった。

結局、それから怪異は全て収まったが、俺にはお寺の修繕費とAさんへの

奢りという地獄が待ち受けていたのは言うまでもない。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 20:24Comments(3)

2019年06月09日

誰か・・・・・いる・・・。

これは以前、飲み屋で偶然知り合った男性から聞かせて貰った話である。



彼はその頃、単身赴任で関西方面のとある県で働いていた。



とは言っても就職難の折り、期間工として出稼ぎ労働的な仕事に従事



していたそうなのだが・・・・。



毎日の仕事は3交代制で深夜労働も多く、決して若くはない彼にとっては



かなり辛い仕事だった。



そのせいなのか、ある時、彼は体調を崩し仮住まいとしていたアパートで



寝込んでしまった。



かなりの高熱に苦しみ、何も食べられず、まさに生死の境を彷徨う状態だった。



そして、1週間程経過した頃、ようやく何とか起き上がれる様になった彼は



体が完治していないのも承知で職場に復帰した。



しかし、そこで言い渡されたのは、解雇というつらい現実だった。



確かに彼は、人づてに体調不良で欠勤する旨を伝えていたらしいのだが、



どうも、それは職場の上司には全く伝わっていなかった。



そして、それを何度弁解しても全く取り合っては貰えなかった。



結局、彼の言い分は少しも通る事はなく、彼はそのまま解雇となった。



会社が用意したアパートからもすぐに出ていかなければならず、彼は途方に



暮れた。



結局、翌日には社宅アパートを引き払わなければいけなくなり、彼は失意



の中でアパートを出たという。



荷物だけは数日間だけそのままでも良いという許可をもらったので、それまでの



間に新しい仕事と、そして新しい部屋を確保する必要があった。



所持金もわずかであったが、何よりも遠い地元で暮らす奥さんと子供には



期間工をクビになった事はどうしても言えなかった。



だから、生活費を極力節約して、何とか一日でも早く新しい働き口を探す事に



専念する事にした。



しかし、夏ならば公園のベンチで寝泊まりする事も可能だったかもしれないが、



その頃はちょうど初冬。



そんな事をすれば下手をすれば死んでしまう。



彼は、とりあえずその夜なんとか寝る事が出来るスペースを探して街をふらつく事に



した。



駅の構内や公共施設など色々と回ってみるが、どこも警備が厳重で侵入する事は



出来なかった。



ふらふらになりながら必死に寝床となる場所を探していた彼だったが、やはり



簡単には見つかるばすも無かった。



そして、もう諦めかけた時、彼はとある廃マンションに辿り着いた。



そのマンションは明らかに誰も住んでいなかったが、まだそれなりに綺麗な



状態であり、周りの街灯もしっかりと辺りを照らしていた。



実は彼は廃墟といわれる建物を探していたのではなかった。



元々、心霊スポットというものは苦手で一度も行った事も無かったのだから。



しかし、そのマンションは入口に立ち入り禁止の立札こそ置かれているものの



それ以外は綺麗で明るいマンションに見えた。



だから、彼はかなり切迫していたこともあり、何とかその日の夜をそのマンションで



過ごす事に決めた。



玄関に入ると正面にエレベータがあったが、当然稼働しているはずもなく、



彼は階段を使って2階へとのぼった。



そして、1軒1軒、ドアの鍵が開いている部屋を探しだした。



しかし、鍵が空いている部屋などどこにも無かった。



そりゃ、そうだよな・・・・。



鍵が空いてたら不用心すぎるもんな?



そんな独り言を呟いていると、今まさに部屋へ忍び込もっとしている自分自身が



とても滑稽に感じて思わず、クスッと笑ってしまった。



2階、3階、4階と階段をのぼっていき、その階の全ての部屋を確認したが



やはり鍵が掛っていない部屋など一つもなかった。



しかし、それでも彼はよかったのだという。



マンションの中はそれなりにしっかりとした造りであり、外気があまり侵入して



こなかったから、万が一の時には、廊下の隅にでも寝れば良い。



さすがに低い階だと周囲の住民に感ずかれて警察に連絡される恐れがあったが、



高い階までのぼってしまえば、少なくともその危険だけは回避出来る。



彼はそう考えていた。



そんな事を考えながら、最上階である8階までのぼって来た時の事。



他の階と同じように1軒1軒、ドアの鍵を確認していると、なんと1軒の家で



玄関の鍵が掛っていなかった。



恐る恐るドアノブを回して部屋の中に入る。



出来るだけ音がしない様に静かにドアを閉める。



部屋の中はガランとして殺風景だったが、フローリングは綺麗であり、月の明かりで



部屋の中も暗くはなかった。



彼は用心の為に玄関の鍵を内側から掛けて部屋の中へとゆっくり入っていく。



ついそれまでの癖で玄関に靴を脱いでから部屋の中へ入ってしまったが、一時的に



部屋を使わせて貰うのだから土足で部屋の中を汚すのはマズイと思い、そのまま



靴は玄関に脱いだままにしておいた。



窓際のフローリングの上に座った彼は、スーパーで買ってきた半額のパンと



ジュースを取り出してゆっくりと食べだした。



その部屋の窓から見える夜景を見ながら、本来ならこんな部屋に住めるのは



相当なお金持ちなのかもしれないな、と思いながら明日からの不安を払拭する



ように彼はパンとジュースを味わいながら食べた。



こんな場所に侵入して、それでも少しも恐怖を感じない自分に彼自身が一番



驚いていた。



勿論、やはり警察の世話になるのだけは避けたかったから、聞こえる筈の無い



高さの部屋に居るにもかかわらず彼は出来るだけ物音をたてない様にした。



部屋の中は初冬だというのにかなり快適で寒さは少しも感じなかった。



彼は着ているジャンバーのチャックを閉めて襟首を伸ばすと、そのまま



フローリングの上で横になった。



これで何とか、今夜は無事に過ごせそうだ・・・・。



そんな安心からか、彼はそのまま睡魔に襲われて寝てしまったという。



そして、彼はふと真夜中に目を覚ました。



玄関の外の廊下から何かの音が聞こえていた。



もしかしたら、警察?



彼はハッとして息を殺し耳に全神経を集中させた。



廊下からは人の声は聞こえてはこなかった。



ただ、誰かが廊下を固い靴で歩く音とドアが開いたり閉まったりする音が



何度も聞こえていた。



はじめはその音がする度に体を固くして息を殺していた彼だったが、どうやら



その音はいつまで経っても聞こえ続けている。



だから、彼は玄関の方へゆっくりと進むとドアに耳をつけて外の様子を窺おう



とした。



しかし、ドアに耳を寄せると先ほどまで聞こえていた音が全く聞こえてこない。



しばらくは様子をうかがっていた彼も、さすがに外の様子が気になってしまい



ゆっくりとドアの鍵を開けてドアノブを回しなるべく音がしない様にドアを



半分ほど開けて廊下へと顔を出した。



そして、左右を確認したが、其処には静かな廊下が続いているだけ。



先ほどから聞こえていた音は一体何だったのだろうか?



彼は首をかしげてしまう。



その音は確かに彼がいる8階から聞こえてきていたのは間違いなかった。



もしかしたら、俺と同じようにホームレスの人達も此処を利用しているのかも?



そう思った彼は恐る恐るドアから出ると廊下を探索し始める。



しかし、明らかに彼がやって来た時と様子が変わっていない。



そこで初めて時計を見ると、時刻は午前2時半くらいだったという。



部屋に戻って寝なおそうと思った彼の眼に不思議な事が映る。



それはエレベータホールの方からぼんやりとした明りが洩れているという事。



暗闇の中の明かりというものは人を惹きつけてしまうのか、彼はその明かりの正体を



確かめる為にエレベータに向かって歩き出した。



そして、エレベータの近くまでやって来た彼は、思わず、えっ?と声を出して



しまう。



彼が来た時には動いていなかったエレベータが動いていた。



そして、そのエレベータの中から漏れる明かりが廊下を照らしていたのだと分かった。



明かりの正体は分かったが、彼の心中は穏やかではなかった。



何しろ、電気が来ていないはずの廃マンションのエレベータが稼働しているという事に



奇妙な感じがしたし、何よりこのマンションが本当に誰も人が住んでいない



廃マンションなのか?と疑問に思ってしまった。



しかし、マンションの入り口には管理会社が出しているであろう立ち入り禁止の



立札とマンションを取り囲むようにしっかりとロープも張られていた。



だから、きっと廃マンションなのは間違いないのだろう・・・・。



だとしたら、どうしてエレベータだけがしっかりと動いているのか?



そんな事を考えていると、突然、ゴーッと大きな音がしてエレベータがのぼって来る



音が聞こえた。



彼はそのエレベータが何階で停まるのかを見てやろうと思い、しばらく



柱の陰からエレベータをじっと見ていた。



しかし、どうやら、そのエレベータが彼がいる8階で停まるのが分かると、



慌てて廊下を走り、先ほどの部屋へと入ってドアの鍵をかけた。



少なからず、もしかしたら警察なのでは?という恐怖があったのか、彼はドアの



傍で息を殺して再び意識を耳に集中した。



すると、誰かが廊下をコツコツと靴音を鳴らしながら歩いてくる。



彼の心臓の鼓動はどんどん速くなっていく。



すると、その足音は彼のドアの前を通り過ぎて、どうやら隣の部屋へと入っていく。



隣の部屋のドアが開く音とそしてパタンとドアが閉まる音がはっきりと聞こえた。



そして、隣の部屋からは深夜だというのに子供の笑い声と、そして奥さんと



思われる女性の声が聞こえてきた。



やっぱり誰かが住んでいたんだ・・・・・。



もしかしたら、このマンションの最後の住民なのか・・・・。



もしも、そうだとしたら、このマンションが無人状態で手をつけられない理由も



なんとなく理解できた。



そう思うと、気分が軽くなった。



さすがにこの広いマンションに一人ぼっちというのは怖いものがあった。



不法侵入している身とはいえ、自分の他に、このマンションに家族が



住んでいるのだ、と分かるとそれはそれで心強いものがあった。



彼はそのまま安心して眠りに就いた。



そして、朝になって目覚めた彼は、隣の住人達にばれないように静かにドアを開けて



廊下へと出ると、出来るだけ音をたてないようにしてエレベータまで進む。



しかし、其処には真っ暗な状態のエレベータドアがあるだけで、とても稼働している



様には見えなかった。



おかしいな・・・・。



そう思いながら、彼は少ない荷物を抱えて、階段を静かに降りていった。



勿論、彼としても、そのマンションに泊まるのはその夜だけのつもりだった。



朝から職探しに精を出した彼は、昼になると、またスーパーで半額のおつとめ品の



食料を買って公園で食べていた。



すると、彼と同じようなホームレスらしき人が彼に話しかけてきた。



その人も必死に仕事を探しているとの事で、彼は色々な話をして盛り上がった。



故郷の話、家族の話、そして昨夜泊った廃マンションの話。



しかし、それを聞いた途端、その人は驚いた顔をしたという。



あんな恐ろしい場所で一夜を明かしたのか?



何か恐ろしい目に遭わなかったか?と。



だから、彼は笑いながらこう返したという。



あそこに住んでるのはお化けなんかじゃなくて、普通の家族だよ・・・。



きっと立ち退きを拒否してるんじゃないのかなぁ・・・と。



すると、その人は、



そんな事は絶対にない筈だ!



あそこは心霊スポットになっていて誰も近づかない場所なんだ・・・。



それに、電気も来ていないマンションでどうやって家族が生活出来るんだ?



と、真剣に言ってくる。



それなら、今夜、一緒にもう一晩だけあのマンションに泊まらないか?



と彼は提案したが、彼はすぐに首を横に振って、



あんな所には絶対に近づきたくないよ!



君もあそこにはもう近付かない方がいい!



そう言って、去っていったという。



勿論、彼はもうあのマンションに泊るつもりはなかったから、すぐに忘れて



午後からの仕事探しに精を出した。



しかし、やはりその日も仕事は見つからず、その夜はネットカフェに泊まろうと



したらしいが、やはり金銭的に辛く断念した。



そして、その時、彼の頭の中には、あのマンションの事が浮かんでいたという。



もう一晩くらいならばれないだろう・・・・。



そう思った彼は、夕方の早いうちに、食料を買い込んでその廃マンションへと



向かった。



もう一度、入口を確認したが、やはり「立ち入り禁止」の文字がはっきりと



読み取れた。



あの家族はどうして立ち退きを拒否し続けているんだろうか?



そんな事を考えながら彼は、また階段で8階を目指す。



体力だけには自信があったから、8階までの階段も苦ではなかった。



8階までのぼり、エレベータを確認すると、やはり稼働はしていない様子だった。



彼は出来るだけ足音をたてないように静かに歩き、昨夜泊った部屋の前へと



やってきた。



昨夜は気が付かなかったがドアにはまるで鋭利な刃物でつけられたような



傷跡が無数に残されていた。



しかし、そんな事を気にしている余裕も無かった彼はそのまま静かにドアを開けて



部屋の中へと入った。



部屋の中へ入ると、彼は誰に言うでもなく、



今晩もう一晩だけ泊めてください・・・・。



と呟くと、昨夜の同じ場所に静かに座った。



そして、昨夜と同じように的から見える景色を眺めながら食事をし、



それからゆっくりと横になった。



昼間、精力的に就職活動をしたせいか、彼はすぐに睡魔に襲われて、すぐに



眠りに落ちた。



そして、その晩もな夜中に目が覚めた。



やはり廊下を歩いてくる靴音が聞こえていた。



時計を見ると、やはり午前2時半を少し回っていた。



またこんな遅くに帰宅なのか?



一体どんな仕事をしているんだろう?



そんな事を考えながら、彼は再び眠りに就こうと横になった。



すると、突然、部屋の壁が、ドンドンドンと大きく3階叩かれた。



ビクッとして起き上がる彼。



まさか、俺がこの部屋に居るのがバレてるのか?



いや、極力、静かにしていたのだからそんな筈はない・・・。



それにしても、こんな真夜中に部屋の壁を叩くなんて何か喧嘩でもしてるのか?



そう思って彼はゆっくりと、そして静かにフローリングから立ち上がった。



とりあえず、何かあったらすぐに逃げ出せる準備だけはしておこう・・・。



そう思って、彼は持ってきた荷物をひとまとめにして持つと、玄関へ行って



靴を履いて来ようと思った。



すると、その時、再び、部屋の壁が、ドンドンドンドンと今度は4回



大きく叩かれる音がした。



彼がいる部屋の中にも振動として伝わってくる程に・・・。



その時、彼は異様な違和感を感じたという。



どんなマンションでも隣家の壁との間にはそれなりの消音材が使われている。



それなのに、先ほどから聞こえてくる音は、まるで、彼が居る部屋の壁を叩いている



様に大きく振動を伴って聞こえてきていた。



その時、彼は背中に悪寒が走った。



もしかして、叩かれているのは隣の部屋の壁ではなくて、この部屋の壁



なんじゃないのか?



そう思って、ゆっくりと暗いリビングを振り返った。



声が出なかった。



それと同時に耳のすぐ傍で心臓の鼓動が早鐘の様に脈打つのが分かったという。



彼の部屋のリビングには、大人の男女と、そして小さな男の子が正座して



彼の方を見ていた。



彼は固まったように全く動けなかった。



どれ位の時間、そうして固まっていたのか、覚えてはいない。



ただ、その時は何も考えられず呼吸をするだけで精いっぱいだった。



こ・ろ・さ・れ・る・・・・・・・。



死の恐怖を彼はその時初めて感じていた。



そして、その時、正座した家族は同時に薄気味悪い笑みを浮かべた。



その笑みを見た瞬間、その不気味さに彼は弾かれたように玄関へと走りドアの鍵を



開けようとする。



しかし、先ほどまで簡単に回っていた鍵は、とてつもなく固く、びくともしない。



彼は完全にパニックになっていた。



リビングの方から何かが動く音がした。



彼は自分自身に落ち着きように言い聞かせると、もう一度ゆっくりとドアの鍵



を回す。



すると、カチャッという音がして鍵が開いた。



彼は恐怖で後ろを振り返る事も出来ず、そのまま転がるように廊下へと飛び出した。



逃げなくては!



そう思った彼はいつもの階段へと走った。



どうしてそれまで気付かなかったのか、マンションの廊下はとても寒く、そして



完全なる漆黒の闇を作りだしていた。



ただ、彼の頭の中には階段までの経路はしっかりと記憶出来ていた。



彼はがむしゃらに走った。



もう、近隣住民に聞こえようが、どうでも良かった。



いっそ、大声で助けを呼びたいくらいだったが、それはしなかった。



何故なら、その状況はまるで異世界にでも迷い込んで様に感じていたのだから、



きっとどれだけ大声を出してもきっと誰にも聞こえはしない気がしたという。



階段まで走った彼は急いで階段を駆け下りようとしたが、何故かその時、



エレベーターがその階で停止し、まるで彼が乗るのを待っていてくれている



様に感じたという。



彼はその時、初めて後ろを振り返った。



すると、彼が先ほどまで居た部屋のドアがゆっくりと静かに開くのが見えた。



彼にもう迷いは無かったという。



急いでエレベーターに飛び乗ると、息つく暇もなく1階のボタンを押した。



ゆっくりとエレベーターのドアが閉まっていく。



そして、ゴーンという機械音とともに彼が乗ったエレベーターは静かに



降下し始める。



生きた心地がしなかった。



彼は恐怖のあまり目を閉じてエレベターの中にうずくまっていた。



エレベーターは何事もなく降下し続け、1階に到着したのか、静かにドアが



開く音がしたという。



彼はマンションから一刻も早く逃げようと目を開けて立ち上がろうとした。



そして、そこで固まった。



エレベーターの階数表示は8階を示していた。



どうして?



間違いなく下へ降りた筈なのに・・・・。



彼は何が何だか分からなかったがすぐに先ほどの親子の事を思い出し、慌てて



エレベターたから出ようとしたらしいが体が固まって動かなかった。



その時、彼は見てしまった。



飽いたままのエレベーターのドアの間から地べたを這うように何かが近づいてくるのを。



ズズズッ・・・・ズルズル・・・・ズズズッ・・・・ズルズル・・・・。



彼にはその黒い3つの塊が、先ほどの親子である事は容易に想像できたという。



体は身動きひとつ出来ず、エレベーターの開閉ボタンも押す事が出来なかった。



彼は息苦しさと共に背中を冷たい汗が流れ落ちるのを感じていた。



彼の視線は完全に、這って近づいてくるその親子に釘づけになっていた。



どうすればいい?



俺はこんな所で死ななければいけないのか・・・・。



そう考えると、大粒の涙が溢れてきた。



そして、彼は恐怖の中で、まるで死を覚悟した様に、奥さんと子供の名前を



呼んで謝り続けたという。



命乞いという気持ちはなく、不甲斐ない自分を必死で詫びたという。



何もしてあげられていないのに、こんな所で死んでごめん!



そんな事を考えていた時、突然エレベーターのドアが閉まった。



そして、何も押してはいないのに、エレベーターはゆっくりと降下し始める。



彼は突然の出来事に唖然としていたが、もしかしたら助かるのではないか?



という希望が一旦芽生えると、その気持ちはどんどん大きくなり、やがて、



こんな所で死んでたまるか!



という気持ちになってきたという。



その時だった。



どうやって移動しているのかは分からないが、彼が乗ったエレベーターが



別の階に停止しようとする。



彼にはあの親子が先回りしてエレベーターのボタンを押したとしか考えられなかった。



そして、エレベーターのドアの窓に突然貼りつくようにして、その不気味な顔が



現われる。



彼は恐怖した。



心臓が止まるかと思った。



しかし、エレベーターのドアは開く事はなく、また静かに動き出した。



ホッとしたのも束の間、また別の階へエレベーターが停止すると、先ほどの親子が



ドアの窓に貼り付いてくる。



それでも、何故かエレベーターは彼をその家族から護るかのように決してドアを



開く事はなく、再び静かに動き出す。



そんな事を繰り返しているうち、彼は無意識のうちにポケットから携帯を取り出し、



110番で助けを求めると、そのまま意識を失ったという。



そして、次に彼が目覚めたのは、心配そうに見つめる警察官に揺り起こされた



時だった。



警察官からは厳しく叱責されたが、彼は助かった喜びで、再び大粒の涙を



流した。



そして、警察に行き、簡単な事情聴取を受けた時、彼はその時体験した話を



詳しく話した。



とても信じて貰えるとは思わなかったが、警察官は真剣な顔で、そして辛そうに



その話を聞いてくれた。



そして、今回だけは特別、という言葉とともに解放されることになった彼に、



警察官はこう言ってくれたという。



あのね…少なくとも私は貴方の話を信じていますよ・・・・。



だって、貴方は電源が無く稼働もしていないエレベーターの中で意識を



失っていたんですから・・・・。



それにね・・・・実は私も見たんですよ。



あのエレベターターの窓に無数に付着した人の顔の跡と気味の悪い笑い声を。



だけど、もう決してあんな所には近づかないでくださいね。



曰くつきの場所にはそれなりの理由があるんです。



そして、今回みたいに私達が助けられたのもある意味、奇跡かもしれませんから。



そう言って悲しそうな顔をする警察官に彼はそれ以上、何も聞き返す事は



出来なかった。



ちなみに、それ以後、そのマンションの近くを通るたびに、8階の廊下から



彼に手を振っている3人の姿を何度も見る様になった彼は、それからすぐに



家族が待つ故郷へ帰ったという事だ。
  


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2019年06月09日

高校生の時、事故に遭った

これは俺が体験した話である。



高校時代は自転車通学をしていた。



実はかなりの距離があった為、最初は何度かバス通学を試みた。



しかし、バス通学の場合、渋滞に巻き込まれることが多く、かなり早めに



自宅を出る必要があった。



そして、一番耐えられなかったのは、バスの中の異様な混み具合だった。



乗継ぎ地点までのバスはそうでもなかったが、乗り継いでからのバスの中は



複数の高校生が入り乱れ、それこそ体が全く動かせなかった。



しかも、バスの中では頻繁に高校生同士の喧嘩まで起こっていたから、俺は



早々にバス通学を諦めて自転車での通学を選んだ。



自転車で通学するようになると、帰り道に色んな遊び場にも寄る事が出来たし、



いつもは行かないような場所にも友達と行くようになった。



だから、自転車通学に切り替えた事を俺は心から良かったと思えた。



ただ、雨の日だけは別だった。



本来なら雨の日はバス通学をするのが当然なのかもしれないが一度自転車通学の



楽さを知ってしまった俺には、もうバスで通学する気など微塵も無かった。



だから、雨の日は片手で傘をさしながら自転車を漕いだ。



その頃は普通に考えれば分かる様な事に無頓着だった。



傘をさした状態で自転車に乗るなど言語道断なのは今の日本ならば当り前。



しかも、黒い傘を持ったまま自転車に乗るなど自殺行為としか思えないのだが、



その頃には、そんな事にまで気が回らなかった。



透明な傘という選択も無かった訳ではないのだが、その頃には何故か透明の傘が



格好悪く見えていた俺は、迷うことなく黒い傘をさして自転車に乗っていた。



それでも、事故を起こして加害者にも被害者にもなっていなかったのは、



ある意味、奇跡と言えるのかもしれないが・・・・。



そんなある日の朝、俺はいつものように高校へと自転車で向かった。



朝からポツポツと雨が降っていたが、風は強くなったので俺に気にせず、



そのまま傘をさしていつものように自転車を漕いだ。



いつもの道をいつものように自転車で走った。



時折、雨が強くなったが、しばらく雨宿りをしているとすぐに雨は弱くなったから



また、俺はせっせと自転車のペダルを漕ぎ続ける。



そして、俺はいつもの坂道の上へとやって来た。



その坂道は帰りには酷いのぼりになるが、行きは長い下り坂になり、自転車を



漕いでいなくてもかなりのスピードが出せる坂道だった。



そこを颯爽と自転車で下る時の爽快さは言葉では説明できない程気持のよい



ものだった。



勿論、雨の日にその坂道を下るのは初めてではなかった。



だから俺は特に身構える事もなく、そのまま自転車で坂道を下り始めた。



傘をさしながらギリギリの角度で視界を確保する。



それは、ある意味、俺にとってはいつも通りの行動だった。



自転車はどんどんと速度をあげていく。



と、その時、突然、雨が一気に強くなった。



まるで横殴りの雨といった表現がピッタリくる様な強い雨だった。



俺は学生服を濡らさないように、傘を前方へと降ろす。



正直、前方の視界は皆無だったが、さほど怖さは感じなかった。



というよりも、せっかくの坂道でブレーキをかけるのが勿体なかったというのが



本音だったかもしれない。



俺が乗る自転車はどんどんとスピードを上げていき坂道が終わる頃には相当な



スピードになっていたのだと思う。



グシャッ・・・・・。



突然、嫌な音が耳に飛び込んできた。



そして、次に俺の体に鈍い衝撃が走る。



うっ・・・・痛っ・・・・・。



そう感じた次の瞬間、俺の体は宙を舞っていた。



何かにぶつかった・・・・。



それは理解できたが、それ以上、何も考える余裕は無かった。



かなりの滞空時間だったのだと思う。



俺はそのまま地面に叩きつけられた。



咄嗟に受け身を取ったつもりだったが、その時俺は自分の骨が折れる音を



初めて聞いた。



痛いというよりも全身が痺れて麻痺している感覚だった。



地面に顔と胸を酷く打ちつけた俺は、自分の周りに血が流れていないか、と



焦って確認する。



しかし、雨で所々に水溜りが出来ているだけで、血の様な赤いものは一切



確認できなかった。



死ぬ事はないのかも・・・・・。



そう思うと今度は自分がいったい何にぶつかったのかが妙に気になった。



感触からすれば車、しかも、停止している車にぶつかったと考えるのが



理にかなっていた。



走っている車に追いつける程のスピードでは無かったし、もしもそうなら、



宙に舞うほどの衝撃はないのだろう。



そして、逆に対向車とぶつかったとすれば、こんな程度では済まない。



そして、前方から突っ込んでくる自転車を見れば、クラクションを



鳴らすのが普通だろう。



だとしたら、停止している車にぶつかってしまった俺は、車の修理代を



請求されるのかもしれない。



そう考えると、やはりぶつかったのが、高級車なのか、それとも普通の



乗用車なのか、がとても気になってしまう。



俺は痺れる体をなんとか曲げる様にして後方を確認した。



すると、其処には見た事もない程古い車が停止していた。



黒塗りの古いセダン。



車には興味があったから大体の車なら一目見るだけで車種を言い当てる自信が



あった。



しかし、その時、俺が見た車は、明らかに俺の知っている類の車ではなかった。



まるで昭和初期を思わせるような古い外観。



バンパーなど付いていない、いかにも鉄の塊といった造形。



あんな車にぶつかったのか・・・・。



よく、まあ、これくらいの怪我で済んだな・・・・。



そう思ったのをはっきりと覚えている。



そして、次に俺が考えたのは、自転車で事故を起こしたのだから、間違いなく



親に怒られる、という恐怖だった。



だから、その現実から逃避しようとしたのかもしれない。



俺は雨が降りしきる中、痺れた手足で地面を少しずつ這いながら、その車から



遠ざかろうとしていた。



幸か不幸か、その車のドライバーはまだ車の外へは出てきてはいなかったから。



必死になって俺はアスファルトの地面をまるでほふく前進でもするかの様に



少しずつだが進んだ。



何とか、車から逃げられれば、自転車の単独事故として、両親からの厳しい



叱責は免れる事が出来るかもしれない。



その思いだけで・・・・。



しかし、やはり怪我の程度は俺が考える程軽いものではなかったらしい。



俺は必死に手だけでアスファルトを掴んでいたが、そのうちに突然意識を



失った。



気が付いた時、俺は病院のベッドに寝かされていた。



意識が戻った俺を見て、看護師が慌てて医師を呼びに行ったのが分かった。



結局、俺の体は両足の骨折と肋骨が数本折れているという状態だった。



ただ、それ以外は内臓の損傷も無く、重篤な状態ではなかった。



それなのに、俺が目覚めたのは、あの日から10日以上経過した日曜日だった。



しかし、驚いたのはそれだけではなかった。



俺が見つかったのは、川の縁だったという。



その川の水に、顔が半分浸かった状態で見つかったのだと教えられた。



ただ、俺の自転車は、俺の記憶通りにあの坂道の下で、何かに押しつぶされた



状態で見つかったが、最初はそれが自転車だとは誰も気付かない程の酷い


潰れ方だったという。



そして、俺の話を聞いた両親が警察に事故の届けを出し、警察がその事故現場



を調べたらしいが、其処には事故の痕跡を証明する様な物は何一つ



見つからなかったし、ちょうどその時間帯にすぐ近くで農作業をしていた


数人の男女も、そんな事故のような音は一切聞いていないと


証言した。


もしも、それが本当だとしたら、俺はいったい何処で何とぶつかったというのか?



そして、もうひとつ俺がその後知った事がある。



それは、俺がその車と事故を起こした、ちょうどその日に、遠い親戚で俺が



幼い頃、俺を養子として貰いたがっていた男性が亡くなったという事。



亡くなった時にはかなりの高齢だったその男性は、若い時にはまだ日本には珍しかった



車という乗り物に、大金をはたいて無理をして乗っていたらしい。



全ての話を俺から聞いた父がこう言った。



もしかしたら、お前の事を一緒に連れて行こうとしていたのかもしれないな、と。



それを聞いて俺は思わず背筋が寒くなったのをよく覚えている。  


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2019年06月09日

子供にしか視えないモノ

これは行きつけのスナックの女性スタッフから聞いた話。



彼女が小学校4年生の時、クラスの男の子が交通事故で亡くなった。



特に目立つ生徒でもなかったらしいが、どうやらそのクラスの全員が



皆、分け隔てなく仲良くしていたそうだ。



その事故の事は新聞にも小さく載ったという。



ただ夏休み終了間際の事故だったので、特に保護者間での連絡が行われた訳でもなく



クラスの級友たちは彼女を含めて、その男の子が事故で亡くなった事を



誰も知らずに過ごしていたらしい。



知っていたのは教師とその男の子の家族だけだったという訳である。



実際、不思議な話なのだが、いつものように遊び場に行くと、いつものように



その男の子もその場所に遊びに来ていた。



勿論、その男の子が死んだという事実も知らなかったし、居間にして思えば



少し元気が無いように感じたが、それでも、本当にいつもと変わらない楽しい



時間を其処に集まった仲間達は過ごした。



野球をしたりかくれんぼをしたり、と。



勿論、亡くなった男の子も初めは元気が無いように感じはしたが、すぐに



元気を取り戻して他の友達以上に楽しそうに走り回っていたという。



いつものようにいつもの場所に集まって、楽しい時間を過ごし、その場で



お別れする。



ただ、今にして思えば、その男の子は友達がどんどん家に帰っていくのにも



拘わらず、ずっとその場所に立ったまま帰っていく友人達に笑顔で手を振っていた。



まるで、帰る家が無いかのように・・・・・。



そんな日が何日も続いたという。



そして、夏休みが終わり2学期が始まると、担任教師から意外な報告があった。



それは夏休みの間に、クラスの仲間である男の子が事故で亡くなった、という



知らせだった。



しかし、クラスメイトの誰も、その教師の言う事を半ば笑って聞いていた。



きっと担任教師のいたずらなのだと思っていたという。



何故なら、その男の事は夏休みの間、ずっと一緒に遊んでいたし、



なによりも、その男の子は夏休み明けのこの教室にちゃんとやって来て、いつものように



自分の机に座って今、先生が話した知らせを顔色一つ変えずに聞いていたのだから。



だから、先生にしてはなかなか手の込んだ悪戯だと思ったという。



しかし、良く見るとその男の子が座っている机の上には白い花が生けられた



花瓶が置かれていたのが気になったという。



そして、全体朝礼の際に校長先生から、その男の子が事故で死亡した事実。



それから、その男の子はひき逃げに遭い現在も犯人が捕まっていないのだという



事実。



そして、此処にいる生徒は今後、より一層事故には気を付けるようにというお話があり、



さすがの彼女達も、その男の子が本当に死んだのかも?と思い始めたそうだ。



しかし、初めて見る幽霊だというのに全く恐怖は感じなかったという。



それどころか、その男の子は何も喋る事はなかったが、教室で座っている事が



嬉しくてしょうがない、といった様子でニコニコと笑っていた。



だからなのかもしれない・・・・。



彼女達は思い切った行動に出てしまう。



先生がいない休み時間に、彼女達はその男の子に近寄ってこう尋ねたという。



あのさ・・・・○○君って本当に死んじゃったの?



もしも、そうだとしたら、どうして此処に座ってるの?と。



その言葉を聞いた時、それまでニコニコと笑っていた男の子は急に



何かを思い出したような顔をして暗い顔になって俯いてしまった。



そして、何も言えずただ俯いて震えている男の子を見て、その場に居た



全員は男の子の死が事実なのだと悟ったという。



そして、誰ともなく、男の子にこんな言葉をかけた。



生きてても死んでいても関係無いよ!



これからもずっと友達だから!と。



すると、男の子は顔をあげてまるでお辞儀でもするかのように周りの友人達



を見ながら笑ってくれたという。



それからはクラスの全員がそれまで通りに男の子と接した。



どうやら担任などの大人には男の子の姿は見えていなかったらしいが、



そんな事はどうでも良かったという。



そして、学校が終わると彼女達クラスの全員が一斉に帰るようになった。



帰り際、1人教室に残って窓から彼女達を寂しそうに見送る姿を見ると



心が痛んだが、それでもどうやら彼女達にはやるべき事があったのだという。



それは、その男の子は事故で死んだ訳だが未だにその犯人は見つかって



おらず、彼女達はどうしても自分達の力でその犯人を見つけ出したかった



のだという。



下校時に男の子が事故死した場所の近辺にクラスの全員が散らばって刑事



さながらの聞き込みをしたり、目撃者探しのビラを自作して配ったりもした。



来る日も来る日も夕方暗くなるまで、それは続けられた。



そして、その事が学校にも知られてしまい、学校からは注意と禁止を言い渡されたが



彼女達クラスの仲間は決してそれを止めなかったという。



やがて子供たちの行動はいつしか両親までも巻き込み、そうなると学校側も簡単に



それを止める事が出来なくなった。



そして、その行動はどんどんと大きくなっていき、やがて学校側も全面的に



協力してくれるようになった。



無駄なこと・・・・。



そう言ってしまうのは簡単だが、何もしなければ奇跡は起こらなかったのかもしれない。



そして、何と男の子が事故死してから14日目。



ひき逃げ犯は警察に出頭したという。



偶然、近くを通りかかった犯人は、街ぐるみの犯人探しを見て、もう逃げ切れないと



覚悟して、警察に自首してきたのだと聞かされたそうだ。



そして、翌日、彼女達は早く学校に行って男の子に犯人が捕まった事を報告



してあげようと急いで登校した。



しかし、いつも男の子が座っている席に、その姿はなかったという。



その代わりにクラス全員の机の上には、四葉のクローバーが一つずつ置かれていた。



男の子を探していると先生が来て、クラス朝礼が始まった。



彼女達は男の子の事が気になって朝礼どころではなかったが、そんな彼女達の



目の前に立つ担任教師の隣に男の子の姿がはっきりと見えたという。



そして、嬉しそうに笑った後、彼女たちを見回すようにしながら何度も何度も



お辞儀をした。



そして、笑っている顔からは大粒の涙がこぼれ落ちているのも見えたという。



彼女達も気が付くと涙を流していた。



すると、男の子の姿はゆっくりと薄くなっていき最後には完全に視えなくなった。



クラスの全員が男の子に駆け寄ろうとした為、担任教師は驚いて注意したらしいが



それでも彼女達の気持ちを抑える事は出来なかった。



男の子が今しがたまで立っていた場所にすがりつくようにしながらクラス全員は



大声で泣いたそうだ。



結局、その後、男の子の姿を視る事は一切無くなったそうだ。



そして、彼女はこう言っていた。



もしかしたら、あの子は犯人が見つかったら、あっちの世界に行かなければいけなかった



のかもしれませんね・・・・。



だとしたら、もっと時間をかけて犯人を見つけたかったって後悔する事もあります。



でも、犯人が見つかって本当に良かった。



あれは私たちクラス全員の友情の証なんですから・・・・。



あの子も今頃はきっと幸せに過ごせてると良いんだけど・・・・と。



どうやら、そのクラスでは今でもたまに同窓会が開かれており、参加者のリスト



には、しっかりとその男の子の名前が書かれており、そしてその男の子の席も



ひとつだけ空けられているそうだ。



そして、クラス全員はその男の子が残していってくれた四葉のクローバーを



今でも大切に保管している。



その男の子を忘れないために・・・・・。
  


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2019年06月09日

誰も乗っていない・・・・。

これは警察関係に勤務している知人男性から聞いた話である。



彼が勤務しているのは警察の中でも交通関係の部署になる。



友人達で飲み会があったりすると、いつも友人達から攻撃の的にされている。



車を運転している者なら、殆どの人が最低でも1度や2度は警察に捕まって



高い違反金と罰則点数を科せられているのではないかと思う。



だから、そんな時には皆のそんな不満が彼に集中砲火となって注がれる。



もっとも彼が悪いのではなく悪いのはあくまで交通ルールを守らなかった



本人だとは分かっているのだが、やはり友人という事もあり、日頃、警察官に



面と向って言えない愚痴や不満が一気に爆発してしまう。



中には、今度からお前に連絡するから、違反点数だけでもなんとかしてくれ!



と頼み込む奴もいるが、実際、過去にはそんな事がまかり通っていた時代も



あったらしいのだが、今では全てがしっかりと管理されておりそんな不正行為は



例え、警察署長本人であっても無理なのだと断言していた。



そして、俺は以前、オービスという速度自動監視カメラによって2度捕まっており



それに関する不平不満を言った事がある。



そして、彼は俺をなだめる様に諭しながら話してくれたのがこんな話だ。



オービスは完璧で絶対なのか?と聞く俺に対して彼は、



まあ、機械だから人間の感情が入らないだけ正確だとは思うけど・・・・。



でもな・・・・オービスに写った画像の中にはごく稀に使用できない画像が



あるのも事実だな・・・・。



そう言ってから、彼は不思議な話を始めたのだ。



まず、オービスに映るのは人間だけではないという事。



勿論、ハンドルを握るドライバーが写っている訳だが、その助手席には



ありえない程の大きな女がドライバーの顔を覗き込んでいる。



また、車の屋根に張り付くようにして男が車内を覗き込むのが写っていたり、



ドライバーの背後に写る不気味な顔と、そして後部座席からドライバーへと



伸びる無数の長い腕が写り込むこともあるらしい。



更に、スピード違反をしてオービスのカメラが作動した際、そこには真っ黒な



影が写り込む場合もあるらしい。



そして、どうやら、その影というのは高所にあるカメラを覗き込む人の顔らしく、



その不気味な



顔は一度見てしまったら忘れる事は出来ないそうだ。



そして、最も多いのが、オービスに写された車の運転席に誰も座っていない事が



あるそうだ。



勿論、無人の車であり、そんな車がヘッドライトも点けず、夜の国道や高速道路



を走っている。



当然、そんな場合でも車のナンバープレートはしっかりと撮影されているから、



車のナンバーからドライバーを特定しようとすると、必ずと言って良いほど、



車は既に廃車手続きがされており、そしてドライバーも事故で亡くなっている



のだという。



また、山間部を走る高速道路などでは、車以外のモノが写り込む事が



あるのだという。



それは、白い着物を着た人間の列。



速度超過の車が撮影された際、偶然にそんなモノが一緒に写る事があるのだという。



そして、その人の列は、車が走っているのもお構いなしといった感じで、



高速道路を横切っているらしい。



そして、そんなものが写り込んだ場合にはしっかりと、そして迅速にそのデータは



削除されるそうだ。



そして、そんな不思議なモノが写り込む中でも最も厄介なのは、ハンドルをしっかりと



握り高速で車を走らせているドライバーの横で、ニタ~ッと笑いながら



オービスのカメラへ顔を向けて笑っているモノ達だという。



オービスがフィルム式のカメラを使用していた頃は、そんなモノが写ると、



そのネガはすぐにお祓いを受けて然るべき場所へと保管される。



そして、現在のようにデジタル式となった場合でも、そんなモノが写った場合、



すぐにデータは消去される。



しかし、データが消えない場合が殆どであり、更に、その画像を見てしまった者



全てに怪異が発生するらしい。



在りえないモノを見てしまったり,事故に巻き込まれたり・・・・。



中には命を落とす者までいるというのだから、厄介な話だ。



そして、最も厄介なのは、その車はカメラに写った後、間違いなく、その先の道で



大きな事故を起こし、そしてドライバーが死亡しているのだという。



ここまで話し終えて、彼は、



ほらな・・・警察も大変なんだよ・・・・。



とふざけて見せる彼だったが、その眼は笑っているのではなく、明らかに



何かを恐れている眼をしていた。



そして、そんな話を聞かされた時、俺はある記憶を思い出した。



その時、俺は家の用事で、北陸自動車道(高速道路)を大阪に向けて車を走らせていた。



時刻は午後11時を回っていたと思う。



そんな真夜中の北陸自動車道になると、通行する車は少なく、たまに見かけるのは



長距離トラックのドライバーくらいのものだった。



そして、福井県の敦賀トンネルに差し掛かった際、突然、カーオーディオの音が



小さくなった。



気のせいか?とも思ったが、しばらくすると音楽は聞こえなくなり、その代りに



読経のような声が聞こえてきた。



どうしてカーオーディオからそんな声が聞こえてくるのか理解出来なかったが、



次第にその声はスピーカーというよりも車内全体から聞こえる様になった。



俺は思わず、カーオーディオの電源を切った。



一瞬、訪れる静寂・・・・。



だが、次の瞬間、俺は確かに聞いた。



何処まで行くの・・・・・・?



もっと速く・・・・・もっと早く・・・・・。



という声を。



その声は確かに後部座席から聞こえてきた。



過去にも似たような経験があった俺は決して後ろを見ない様に、前だけをしっかり



見て運転を続ける。



その時の俺は冷静を装ってはいたが、かなり焦っていたのかもしれない。



後部座席から聞こえてくる声はどうやら子供の声の様であり、そしてその声は



少しずつだが確実に運転する俺に近づいて来ているのが分かった。



トンネルの中を走る俺はスピード感が全く掴めなかった。



そして、ふと、スピードメーターを見ると、時速150キロを超えていた。



ヤバい!



そう思った俺は、アクセルから足を離すと同時に軽くブレーキを当てた。



その瞬間だった。



突然、ハンドルが大きく左に切られた。



バランスを崩す車を必死に立て直そうとするが、車はトンネルの中を右に左にと



大きく蛇行して進む。



そうしているうちに、次第に速度が落ちてきたのが分かった俺は一気にブレーキ



ペダルを踏み込んだ。



車はトンネルの蔭すれすれのところで斜めになりながらも停止した。



心臓が早鐘の様に鳴り続けていた。



そして、俺は確かにその声を聞いた。



ちぇっ・・・・つまんないの・・・・。



という声を。



車を何処にもぶつからせずに停止出来たのは奇跡に近かったし運が良かったとしか



言えなかった。



いや、一つ間違えば間違いなく壁に激突して死んでいたのだと思った。



後方から車が来ていないのを確認した俺は再び車をゆっくりと発進させた。



すると、目の前に在りえないものが視えて、俺はまた急ブレーキを踏んで



停止した。



俺の車の5メートル位前には、白い囚人服のようなものを着た無数の男女が



トンネル内を横断していた。



全員がこちらを見ながら、ゆっくりと進んでいた。



しかも、それは歩いているというよりも、立ったまま前方に滑っているような



不思議な動き方だった。



そんな無表情な男女の中に僅かだが子供の姿も視えた。



そして、子供だけは何故かうすら笑いを浮かべている。



固まったように俺は動けなくなっていた。



早く目の前の人の列が通り過ぎて欲しかったが、なかなか前へと進まない。



俺はその時、思った。



もしかしたら、俺は生きてこのトンネルから出られないのではないか?と。



その時だった。



後方から大きなトラックが近づいて来てトンネル内で停止していた俺に



けたたましくクラクションを鳴らした。



一瞬、ビクッとして俺はその人の列から視線を外した。



そして、トラックが近づいて来た時、俺の目の前に居た人の列はまるで何かに



吸い寄せられるかの様に、横を通り過ぎていくトラックの車体へと



貼りつくのが視えた。



そして、俺の前からトラックも人の列も一瞬で消えていった。



大きく深呼吸した俺は、そのままゆっくりと走り、次のサービスエリアに



入って朝が来るのを待った。



朝になり、出発しようとした時、サービスエリアの掲示板に事故渋滞という文字が



表示されていた。



大型トラックの単独事故で死者が出た事も伝えていた。



もしかしたら、あの時のトラックが・・・・。



そう思った俺は、次のインターチェンジで高速から降りるとそのまま国道を



は知って目的地へと無事に着く事が出来た。



あの時、もしかしたら、自分が死ぬ運命だったのか、と思うと今でも



恐ろしくなる記憶の一つだ。
  


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2019年06月09日

古いアパート

それは知人女性からの突然の依頼だった。



相談に乗って欲しいと頼まれた俺は、次の日曜日に彼女に会う事にした。



待ち合わせの喫茶店に少し早く着いてしまった俺だったが、驚いた事に既に



彼女がその店に座ってぼんやりと窓の外を見つめているのを見つけた。



声をかけると、彼女は少しだけ微笑むと小さくお辞儀をした。



疲れているからなのか、まだ30代の彼女はやけに老けて見えた。



どうしたの?・・・・突然・・・。



そう切り出すと彼女は深いため息をついてから、こう話し出した。



実は、半年ほど前に祖父が亡くなったんです。



それなりの資産家で、遺産の整理の際には、とても荒れてしまって・・・。



でも、何故か祖父の遺言で私が祖父が所有していたアパートを相続する事に



なったんです。



そのアパート自体は、古い建物で、資産価値も残っていない様な物なんですけど、



一応、部屋は満室で・・・・。



でも、家賃も安いから、アパートの修繕なんかを計算に入れると、利益なんて



殆ど出ないんです。



だから、最初の頃は、なんか凄いお荷物を相続しちゃったな、って感じで。



でも、違ったんです。



なんか、そのアパートの十院の方達はとても素敵な人ばかりで、毎日顔を



会わせているうちに、凄く仲良くなってしまって・・・。



その時、初めて気付いたんですよね。



祖父が私に何を託したかったのか?



だから、そのアパートは今ではもう私の生き甲斐にさえなってしまって。、



そこまで聞いた俺は、



それなら、全然問題無いんじゃないの?



なのに、どうして、そんなに暗い顔をしてるの?



と聞き返した。



すると、彼女は、更に深いため息をついて、俺の顔をまじまじと見つめながら



こう続けた。



実は・・・・出るようになってしまったんです・・・・幽霊が・・・。



ちょうど近くに在った廃ビルが取り壊された時から始まったんですけど。



最初は声が聞こえたり、物音が聞こえる程度だったんです。



でも、段々とエスカレートしてきて・・・・。



夜になると、住人の方達が幽霊を見るようになってしまって。



階段に男の人が立っていてスーッと消えたり、廊下にも女の人が立って



手招きした後に消えたり・・・・。



でも、住人の方達も、やっぱりそのアパートが大好きなので、怖いけど



何とか我慢していたんです。



でも、それからもどんどん酷くなっていって・・・。



寝ている時に首を絞められたり、階段から突き落とされたり・・・・。



そんな感じで実害が伴ってしまうと、さすがに住人さん達も堪らなくなって・・・。



1人、また一人という感じでアパートから出ていってしまって・・。



残ってるのはもう数人だけ・・・。



アパートに住んでいらっしゃった方達は、皆さん経済的に余裕がなくて、そして



何処にも身の拠り所が無い方達ばかりなのに・・・・。



だから、私は一刻も早く、あのアパートを以前と同じように明るくて平和な



アパートに戻して、そして出ていった住人さん達を呼び戻してあげないと・・・。



そこで、以前、霊的な事を相談した事があったKさんを思い出して・・・。



Kさんなら何とかしてくれるんじゃないかな・・・・って。



やっぱり無理ですか?



そこまで、聞いて俺は、



まあ、俺一人じゃ無理だけどね・・・。



で、その幽霊っていうのは、貴女も視たの?



首絞められたり階段から突き落とされたり、もした?



と尋ねた。



すると、彼女は首を横に振って、



私に実害はありませんでした。



でも、私もはっきりと視たんです。



1人とか2人という感じではなくてもっと沢山の霊があのアパートに何故か



集まって来てるみたいで・・・・。



そこまで、聞いた俺は、



あのさ・・・・解決する為にある程度のお金って用意出来る?



と聞くと、彼女は、



相場っていうのが分からないんですけど30万・・いえ50万位なら・・・・。



と返してきた。



そして、



あの・・・・前金の方が良いんですかね?



と聞いてくるので、俺は、



いや、そんな大金必要無いし、現金も必要無いから・・・・。



現物支給が良いみたいだよ・・・・。



あっ、それといつもなら高価でちょっと手が出ないくらいの美味しいスイーツの店



って知ってたりする?



と返した。



彼女は意味が分からないという顔をしていたので、俺はすぐに携帯を取り出して



Aさんに電話をかけた。



はい?もしもし・・・・。



相変わらずの面倒くさそうな返答。



だから、俺はいつものように手際良く用件を伝えた。



すると、Aさんは、



まあ、分かりましたけど・・・。



でも、今、本当に忙しくて手が離せないんですよね!



Kさんみたいに暇なら良かったんですけど・・・。



それに話を聞いた感じだと、そんなに悪質なモノではない気がします。



急がないと誰かが死ぬ・・・・とか。



だから、今回はKさんが1人で対応してください。



そう言われた俺は、



俺が1人でやれる訳ないでしょ?



と返すと、



ちゃんと方法は教えますから、大丈夫ですよ!



それに基本的にKさんは何も危険な目に遭わなくても良いんですから。



いいですか。



良く聞いてくださいね。



まず、そのアパートの住人には、一時的に部屋を出てもらいます。



それから、ここが重要なんですけど・・・。



霊感がゼロの知り合いを集めてください。



そのアパートの部屋の数だけ・・・。



出来れば、Kさんみたいに、ぼーっとしている人が、よりベターです!



そして、その人達にバイト代を支払ってアパートのそれぞれの部屋に一時的に



住んでもらいます。



それだけで、大丈夫ですよ!



そう言われた。



だから、俺は、



あのさ・・・もつと霊感の強い奴とか守護霊が強い人とか、そういう人が居た方が



良いんじゃないの?



それに、Aさんが忙しいんなら、代わりに保険として姫にもその部屋に住んでもらう



とかした方が良いんじゃないの?



と返した。



するとAさんは、深くため息をついて、



本当に予想を裏切らないボケっぷりですよね?



ちゃんと、起きてますか?



あのですね。



私の意図する真意というものを全く理解していないみたいですけど・・・。



今回のやり方だと、霊感がある人間が居てはいけないんです!



しかも、姫ちゃんも忙しいだろうし、それに姫ちゃんに協力させたりしたら



霊も綺麗に浄化出来る代わりに、そのアパートも木っ端みじんになるかもしれません。



あの娘、まだ力のセーブが上手くないですから・・・・。



大丈夫てすよ。



きっとうまくいきますから・・・・。



そう言って電話は切れた。



だから、俺は仕方なくAさんの言われたとおりに、出来るだけ霊感がゼロの知人を



集めてそのアパートに送り込んだ。



事情を話すと、それぞれが格安のバイト料で協力してくれた。



そして、結論として、1週間も経たずに、そのアパートで怪異が起こる事が



無くなった。



彼女はすぐに元の住人達を呼び戻し、今では以前と変わらない穏やかな生活を



送っているそうだ。



そして、後日、Aさんと会う機会があり、その時の事を聞いてみた。



すると、Aさんは面倒臭そうに説明してくれた。



あのですね・・・・あの時電話で事情を聞いた時、思ったんですよ。



なんか人間の地上げ屋と似てるな・・・って。



そんな霊障の事例って良くあるんですけど、要はそれまで住処にしていた



場所が無くなった事で霊達が新しい住処を探していたんだと思います。



そして、その古いアパートが目に止まった。



なんか、住みやすそうだな・・・って。



そうなったら、霊達も死活問題ですから、何としてでも其処に居る人間を



追い出そうとしますから・・・。



大怪我させたり殺したりするつもりはないけど、少し痛い目に合わせて、そして



怖がらせて・・・。



確かに普通の人間だとキツイかもしれませんけど、霊感が限りなくゼロに近い人間



にとっては、全く何も感じないんですよ。



どんなに嫌がらせをしても全く気付いてさえもらえないとしたら、霊達だって根負けして



そのアパートを諦めるのが普通ですからね。



だから、あの時は霊感がある人はNGだって言ったんです!



理解できましたか?と。



確かに、Aさんが言ったとおり、そのやり方であのアパートから霊達を



排除する事は出来た。



だから、俺はこう言った。



それじゃ、これからはもっと霊感がゼロの人間といっぱい知り合うようにしなきゃ、と。



すると、Aさんは、冷たい眼で俺を見ながら、



本当にいつもおめでたい人ですよね・・・・。



そういうパターンはごく稀なケースですから・・・。



その殆どが、その土地とか其処に住んでいる誰かに恨みがあって霊障を起こします。



霊感ゼロの強みが活かされるのはせいぜい低級霊です。



悪霊とか怨霊になったら、もうそういうのは関係ありませんからね!



って、こう言う話、以前にもしませんでしたか?



一度聞いた事はしっかりと頭に叩き込んでくださいね!



そんな事だから、いつまで経っても雑用係りのままなんですよ!



と、怒られてしまった。



その後、彼女からそれなりの金額の謝礼が届けられたが、スイーツ代だけを



差し引いて、そのまま返却したのは言うまでもない。

  


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2019年06月09日

バケモノ

バケモノという言葉の定義は色々あるのだと思う。



容姿が人間離れしている状態のモノ・・・・。



その能力が常識を逸脱しているモノ・・・・・。



今回は、そんなバケモノについての俺の体験談を書いていこうと思う。



その時、俺は困り果てていた。



以前、付き合いのあった心霊スポットマニアの仲間から、無理難題を押し付けられ



そして、それを拒みきれずに、承諾してしまった。



その無理難題というのがとても厄介なものだった。



それはもうかなり昔の話になる。



以前、その仲間たちと頻繁に心霊スポットに出向いていた俺は、とある心霊スポット



を探索した際、仲間の大切なバッグをその場に置いて逃げてきてしまった。



勿論、そのバッグを取りに戻っていたとしたら今の俺はここには居ないのだと思う。



それくらい危険な場所だった。



その当時は、その場に居た全員が命が助かった事だけを喜び合ったのだが、時間が



経つにつれて、やはりそのバッグを失った事が惜しくなったのかもしれない。



バッグの中には高価なカメラやライトが入っていたそうで、勿論、そんな物を



俺が弁償する余裕など無かった。



それに、その場所というのは今では完全にいわくつきの場所になってしまっており、



その場所に行くだけで呪い殺されると言われるほどの禁忌の場所として



心霊スポットマニアの間でも認識され、そして敬遠されてきた。



だから、俺が1人でそんな場所に行ける筈もなければ、Aさんや姫をそんな



危険すぎる場所に同行させる訳にもいかなかった。



勿論、唯一、相談できる相手である、富山の住職には、その悩みを打ち明けてみた。



すると、帰って来た返事は、



ああ・・・あそこはどう考えても無理だろ?



だから、俺が一緒に行ってもどうしようもないぞ・・・。



悪い事は言わないから諦めるんだな・・・・。



そんな言葉だった。



だから、俺自身、気付かないうちにかなり暗い顔をしていたのかもしれない。



ある日、Aさんから電話がかかって来た。



俺が電話に出ると、



相変わらず暗い声ですよね・・・・。



そんなんじゃ、不幸ばかりが寄ってきますよ?



それに、こんなに綺麗な女の子が電話かけてきたんですから、もう少し位



嬉しそうな声でしゃべったらどうてすか?



と言われた。



俺は、



え?何の用?



それに、綺麗な女の子って誰なの?



Aさんの横に綺麗な女の子でも待機させてくれてるの?



そう返した。



すると、しばらくの沈黙の後、



まあ・・・・今日は勘弁しておきますけどね・・・・・。



ところで、今度の日曜日は私も姫ちゃんも空いてますから!



何か私達に頼みたい事があるんなら、今回だけは無条件で力を貸しますけど?



そう言われた。



ただ、俺としてはこんな事にAさん達を巻き込みたくはなかったから、



いや、別にAさん達に、頼む様な事は無いけど・・・・。



と返すと、



まあ、Kさんの顔を見てれば分かりますから・・・。



それじゃ、今度の日曜日に迎えに来てくださいね!



そう言われて電話は切れた。



俺はそれからかなり悩んでしまったのだが結局、他の解決策が見つからず、



Aさんの好意に甘える事に決めた。



前日の夜から眠れなかった俺は、そのまま殆ど寝ない状態のまま、Aさん



を車で迎えに行った。



Aさんは珍しくマンションの前で待っていたくれた。



そして、俺に難題を持ち込んできた昔の仲間と合流して現地へと向かう。



車の中で、俺はAさんに事情を説明しようとしたが、俺が話しだす前に、



大丈夫ですよ!・・・・わかってますから・・・・・。



それだけ言うと、持参したお菓子を口いっぱいに頬張って楽しそうにしている。



しかし、これだけAさんとの付き合いも長くなると、色んな事が分かってくる。



それは、厄介な時ほど、Aさんが食べるお菓子の量が増えるという事。



そして、今回もAさんは大量のお菓子を食べまくっている。



そうやって少しでも気持ちを落ち着かせているか?と思うと余計に申し訳ない



気持ちでいっぱいになる。



そして、俺はある事に気付いてAさんに聞いてみた。



あのさ・・・・姫は今日は来ないの?と。



すると、Aさんは、



ああ・・・あの娘は今日は別行動です・・・・。



そう言われてしまった。



そして、いよいよい現地に到着した。



目の前に広がっている森は相変わらず不気味な雰囲気で、当時の恐怖が



ふつふつと蘇ってくる。



俺はAさんの後に続いて歩き、一緒に来たかつての仲間は車の中で待機する



事になった。



暗い森を歩いてく。



音が消えて様な空気の中、俺とAさんの足音だけが響く。



そして、Aさんがお菓子を食べている音も・・・・。



だから、俺はAさんに聞いてみた。



あのさ・・・やっぱりAさんでも怖いの?と。



すると、Aさんは前を向いたままで、



私、新発売のお菓子には目が無いんです!



それに今食べているのは、大当たりのお菓子で!



完全に噛み合わない会話に、背中が寒くなる。



森を抜けると、小さな洞窟が口を開けていた。



あの時の悪夢が蘇る・・・・。



あの時、奇跡的に助かった俺達だったが、その時の恐怖はいまだに鮮明に



覚えていた。



だから、俺はAさんにこう言った。



あのさ・・・引き返すなら今のうちなんだけど?と。



すると、Aさんは、



こんな辺鄙な所まで来たのに引き返す訳ないじゃないですか・・・・。



それに、Kさんは、此処でコテンパンにやられたんでしょ?



それなら、今度はやり返さないと!



そう言ってどんどんと前へと進んでいく。



洞窟の中に入ると、そこには朽ち果てた木材で作られた小さな手摺が前方へ



と続いていた。



やはり、この場所はあの時のままだった。



いや、きっと以前来た時よりも空気が重くそして、冷たく感じた。



やはり、此処は人間が決して近付いてはいけない場所なのだと背筋が凍りつく。



そして、その緊張感とは対照的に、Aさんはマイペースでお菓子を口へと



運び続けている。



このまま100メートル程行くと、行き止まりになっていて、其処には大きな



祠が在ったはずだった。



そして、当時、それを見た途端、俺達は異形のモノ達に追われる羽目になった。



あれらの異形のモノ達にAさんは対応出来るのだろうか?



このままAさんまで巻き込むのだけはどうしても避けなければいけない。



そう思った時、目の前に女の下半身だけが洞窟の天井からぶら下がっているのが



見えた。



俺は咄嗟に、



Aさん、ヤバい!逃げよう!



そう叫んだ。



すると、Aさんは、無言のまま前へと進んでいき、天井からぶら下がっている



下半身を掴み、それを一気に引きずり落とす。



あ~、ウザい!



邪魔なのよ、あんた達!



呆気に取られている俺を無視したまま、Aさんはどんどんと前へ進む。



その様はまさに無人の野を行くかのように無敵だった。



目の前に立つ異形のモノ達を突き飛ばし、蹴り飛ばし、罵声を浴びせ、



罵る・・・・。



霊体は触れない・・・という一般常識を完全に覆した様な無法状態。



俺はその時、自分自身、意外な感覚に襲われていた。



あれほど恐れていた異形のモノ達が、今では可哀想に思えてしまう。



そして、本当に恐ろしいバケモノはこちら側に居たのだ、という事に



改めて気付かされた。



すると、後ろから、誰かが駆け足で近付いてくるのが分かった。



新手の偉業なのか?



そえ思った俺はAさんにこう叫んだ。



何かが後ろから近づいてくる!



どうする?と。



すると、Aさんは冷めた声で、



え?ああ・・・たぶん、姫ちゃんですよ・・・・。



とぼそりと言った。



そして、俺が振り返ると、確かに姫がこちらへと走ってくるのが見えた。



そして、姫は俺の前で立ち止まると、



あっ・・Kさん、お久しぶりです・・・・。



少し怖かったですけど私もKさんの為に頑張りましたから~



そう確かに言った。



だから、俺は



え?何を頑張ったの?



と聞くと、今度はAさんが、



この辺り一帯の浄化と、そして此処に居るモノ達が此処から逃げられない様に



強い結界を張ってもらったんですよ!



と、ぶっきらぼうに答えた。



そして、Aさんと姫は、二人並んで洞窟の奥へと突き進んでいく。



その頃には洞窟の中には、何かのうめき声のようなものが鳴り響いていたが、



俺の視線は今、目の前に居る二人に釘づけになっていた。



暴言を吐きながら、どんどんと異形の霊達を消していくAさん。



そして、



すみませ~ん・・・・。



ごめんなさ~い・・・・。



と言いながら、一瞬で霊達を消し去っていく姫。



まさにバケモノと呼ぶにふさわしい2人の姿だった。



そして、あっさりと突き当りまで進んだ二人は、さっさと其処に置いてあった



バッグを手に取ると、何事も無かったかのように世間話をしながら戻ってくる。



洞窟の中にはもう怪しい気配も重たい空気も、そして冷たさも全てが



消え去っていた。



そして、バッグを仲間に渡した時、彼の態度も完全に豹変していた。



まるでバケモノでも見るかのような畏怖の眼でAさんと姫を見ているその瞳は



完全に怯えきったものだった。



そして、そこから車で帰る際に、俺はAさんにこう言われた。



まあ、今回の事はしょうがないですけどね・・・・。



でも、普通ならKさんほど強い守護霊を持っている人なら、あんな場所なんて



どうって事無いはずななんですけどね?



だいたい、その当時、Kさんが助かったのも奇跡でも偶然でもなく、その強い



守護霊のお蔭なんですから・・・・。



そんだけ強い守護霊が付いていたら、ほとんどの霊は何も手出し出来ませんから。



まあ、宝の持ち腐れ状態ですよね!(笑)



そう言って笑われた。



それから、俺は車を運転しながら、Aさんから馬鹿にされ、そして姫から



慰められながら、の時間を過ごす事になった。



まあ、でも、こんなバケモノ達となら、一緒に過ごすのも悪くない・・・。



そして、このバケモノ達が、いつまでも俺の側に居てくれる時間が続けば



良いのにな・・・・。



そう思わせてくれた体験だった。
  


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2019年06月09日

見舞客

これは知人が体験した話。



彼女は今でこそスポーツジムに通い、運動をして汗をかくのが何より



楽しいと言っているが、以前はかなり深刻な病でずっと病院に入っていた



のだという。



今の彼女からは全く想像がつかないが・・・・。



それは、彼女の子供が小学校にあがる頃までさかのぼる。



最初は風邪をこじらせただけ・・・・。



そんな感じだった。



しかし、病状は日を追うごとに悪化していく。



連日、沢山の見舞客がやって来て、彼女を励ました。



その度に彼女の両親や夫は、丁寧に対応し心から感謝の気持ちを伝えた。



しかし、沢山の見舞客の励ましも届かず、彼女の病状は悪化の一途をたどる。



医者にも原因は分からなかったという。



しかし、原因が分からないまま悪化していく病気というのはこの世の中にまだ



沢山存在しているらしく、医者は対処療法で治療するのが精いっぱい



だったという。



彼女は、やがて、ベットから起き上がれなくなり、寝たきりの状態に



なった。



食事も摂取する事は出来なくなり、栄養は全て点滴で賄われるようになる。



そして、そこまで病状が悪化していくと、それまで沢山来てくれていた



お見舞客もどんどんとその数を減らしていく。



やはり、親しい人がどんどんと弱っていくのを見るのは辛く悲しいものであり、



出来る事なら、そんな姿は見たくはない。



だから、見舞客が減ってしまったのも、ある意味理解出来る。



しかし、そんな状態になっても、毎日、それこそ、一日に何度も、相変わらず



見舞いに来てくれる夫婦がいた。



家族は何度もその夫婦に、彼女とはどういう関係なのか?と尋ねたらしいが、



ちょっとした知り合いです、というだけでそれ以上は一切語る事は無かった。



家族は、そんな夫婦に対して、感謝こそすれ、疑う事など出来る筈もなかった。



しかし、見舞客がいなくなり、そして、その夫婦だけが毎日、何度も見舞いに



来るようになると、彼女の病状は更に悪化していった。



手足も動かせなくなり、意識が無くなる事が多くなった。



そうなると、その夫婦は毎日、それこそ一日中、病室に詰めて彼女に付き添う



様になっていく。



そして、それは彼女が集中治療室に移されてからも続いたという。



普通、ただの見舞客が簡単に集中治療室に詰める事など出来ないと思うのだが、



どうやら、その夫婦は、看護師たちには彼女の親戚だと嘘をついて、



彼女の傍に付き添う事を許可されていたようだった。



ただ、その夫婦はいつも悲しそうな顔ではなく、どこかワクワクした様な顔



で彼女の生命維持装置の動きを見守っていたそうであり、看護師の中にも



そんな夫婦に対して、懐疑心を抱く者もいたらしいが、その頃は彼女は



いつ亡くなってもおかしくない程の状態だったので、その親戚だという



夫婦に対して、咎めるような事を言えるはずもなく、それは自然と



黙殺されるようになっていく。



そして、その頃、実は彼女にはその夫婦の姿が見えていたのだという。



彼女にとって、見た事も無い夫婦だったし、どうしてそんな見知らぬ夫婦が



自分に付き添っているのか、全く理解出来なかったらしいが、その頃には



彼女は身動きも出来ず、喋る事も出来ない状態になっていたから、それを



誰にも伝える事は叶わなかった。



そして、どうやら、その夫婦は彼女の夢の中にも現われては、



早く楽になれ!



と繰り返し囁いてきたのだという。



そして、その頃から、彼女はこう思い始める。



もしかしたら、私の病気がこれほど悪化したのも、この夫婦のせいなのでは



ないのか?と。



この夫婦は私に早く死んでほしいと思っている。



そして、その為に、私の傍から離れずにいる。



そんな風に確信していた。



しかし、それが分かったとしても既に手遅れだった。



それを周りの家族に伝える術はもう残されてはいなかった。



周りにいる家族達は、皆、その夫婦に感謝している。



その正体も知らないままに・・・・。



それは、まさに彼女にとっては絶望的な現実だった。



しかし、彼女にとってある意味、最後のチャンスが訪れる。



電球が切れる前に、一時的に明るくなるように、彼女にとっては死ぬ直前に



家族に別れを告げる為の奇跡的な一時回復だったのかもしれない。



意識を取り戻した彼女は、全く動かない手足に必死に力を入れたり、家族に



目で訴えたりしながら、その夫婦の事を何とか伝えようとした。



今、目の前にいるこの夫婦が、私の寿命を奪っているのだ、と。



しかし、残念ながら、家族は彼女が送った信号を理解する事は出来なかった。



その時の、満足そうな、そして勝ち誇ったような夫婦の顔を彼女は今でも



決して忘れられないという。



ただ、その夫婦にも、一点の誤算があった。



突然、おとなしい彼女の子供が、その夫婦に向かって、



悪いのはお前たちだ!



お母さんはお前達が大嫌いなんたから早く此処から出て行け!



そう言って、子供はその夫婦に飛びかかった。



こら、やめなさい・・・。



失礼でしょ?



そう父親や祖母に言われても、子供は必死でその夫婦につかみかかった。



何度何度も・・・・。



そのうち、その夫婦は舌打ちをするような顔をして、そのまま、彼女の前から



いなくなったという。



言葉を話せない彼女だったが、自分の子供の行動に涙が止まらなかったという。



そして、その事があってから、その夫婦は二度と彼女のそばに現れる事は



無くなった。



更に、やはり、その夫婦が原因だったのか、彼女はそれから奇跡的な回復



をして、なんと半年後には、退院し、普通の生活を送れるようになった。



だから、私にはあの子は、大切な宝物なのよ・・・・・。



だって、大切な命の恩人なんだから・・・。



そう嬉しそうに笑った。
  


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2019年06月09日

トンネルの奥には・・・・。

これは俺の友人が体験した話。



その日、彼は友人2人と、とあるトンネルを訪れていた。



目的は勿論、トンネルの探索。



噂ではそのトンネルは奥で行き止まりになっており、そこには幽霊がでるという。



そして、そこで幽霊を見た時だけ、トンネルの奥に横へ続く道が現れる



のだという。



だから、その噂を聞いてからというもの、どうしても自分で確かめなくては



気が済まなくなっていた。



そして、彼にはそういう噂に目が無いという変わった友人が2人いた。



だから、彼らがその日、そのトンネルを訪れたのも必然だったのかもしれない。



トンネルには車でやってきた。



しかし、どうやらトンネルは車で通過するほどの幅は無かった。



だから、彼らは車をトンネルの入り口に停めると、徒歩でトンネル内に



入っていった。



行き止まりになっているトンネルだから当然、利用する者などいる筈もなく、



トンネル内は完全に漆黒の闇。



それでも、彼らが持ってきた業務用のライトはトンネル内を明るく照らしてくれた。



トンネルの中は、狭く、そして湿気に満ちており、そして、どこまでも続く



かのように奥深かった。



途中、彼らと同じように、そのトンネルを探索にきたであろう者が忘れて



いったと思えるタバコや使い捨てカメラを見つけて何故かホッとしたという。



自分達の他にも、此処に探索に来た者がいる・・・。



それだけでも、かなり心強かった。



それほど、心細いトンネルだったということなのだが。



トンネルは、人が4人も並ぶと道幅を塞いでしまうほど狭く、そして剥き出しの



岩肌のトンネル内はいたるところに水溜まりが出来ており、そしてそれは天井からの



雨水が溜まったものである事を証明する様に、ずっと水滴が天井から滴り



落ちていた。



彼は友人達の先頭を切ってトンネル内を進んでいた。



それは彼が一番強力なライトを持っていた事もあるのだが、やはり、その中で



一番肝が据わっていたのがきっと彼だったのだろう。



彼は前方を見ながらも後方から追居てきている友人2人に話しかけながら



トンネル内を進んでいた。



もう既にトンネルに入ってから5分ほどは歩いているのにも拘わらず、まだ



トンネルの奥には到達出来てはいなかった。



それしても、深いトンネルだよな・・・。



こんなに深いトンネルなのに、車が通れないなんて、いったい何の為に



このトンネルは作られたんだろうな・・・・。



そんな事を話しながら進んでいると、突然、背後から友人達の返答が無くなった。



あれ?



彼は異変に気づき、もう一度、後方に声をかける。



しかし、やはり何の反応も無かった。



まさか・・・・。



そう思った彼は思わず後ろを振り返ろうとした。



すると、突然、友人達の声が聞こえた。



ごめん・・・・考え事をしてた・・・。



そんな声が返ってきた。



だから、彼はそのままトンネルの奥だけを見て進み続けた。



しかし、そうやってトンネルの中を進んでいると彼は不可思議な事に気付いた。



それは、後方からは友人達らしき声が勝聞こえるものの、彼らの足音というものは



全く聞こえてこなかったのだ。



それに、先ほどの友人の声は、限りなく似てはいたが、どこか友人の声とは



異質なものに感じられてきた。



だから、彼は突然、前へ進むのを止めてその場に停止した。



突然、止まったにも拘わらず、トンネル内には友人の足音など全く聞こえず



完全な無音状態になり、トンネル内はシーンと静まり返っていた。



そして、友人達の声がまた聞こえた。



それにしても、このトンネルは何処まで続くのかねぇ・・・。



それはもう友人の声ではなかった。



彼は一気にその場からダッシュすると、少し離れた場所で一瞬、後方を



振り返った。



そこには友人達の姿は無く、その代りに白いモヤの様な塊が空中に浮いていた。



それを見た彼は、思わず”うわぁ~”と叫びながら更にスピードを上げて



走った。



持っているライトが大きく揺れて岩肌がまるで人の顔のように見えた。



彼は必死で逃げた。



そして、先ほどの白いモヤが追ってこないように、と願った。



しかし、それはすぐに絶望へと変わった。



彼の後方からはまるで友人達の声色を真似た様な声で、



どうしたんだよ~



待ってくれよ~



と声が近づいて来ていた。



その時、彼の前方にはそのトンネルの最奥部である行き止まりの壁が



姿を現した。



彼は必死に、そこに在る筈の横道を探した。



そして、それは案外簡単に見つかった。



彼は、必死にその横道に入ると、何故か平坦になっているその道をひた走った。



彼は必死に噂話を思い出していたが、焦っているのか、なかなか詳細が



思い出せなかった。



横道に入ってから、どうすれば助かるのか・・・。



その最も大切な部分がどうしても思い出せない。



だから、彼はとにかく全力でその道を走るしかなかった。



道は平坦ではあったが、右に左に、と忙しく曲がっていた。



すると、突然、何かが背後から近づいてくる様な足音が聞こえてくる。



彼は顔面蒼白になりながらも、渾身の力で走り続けたという。



そして、大きく左に曲がり、そして突然、視界が開けたと思った時、突然、



止まれ!



という大きな声が聞こえたという。



彼は、その時、思い出した。



そう、横道に入ってから、止まれという声が聞こえた時、すぐに止まらなければ



いけないのだという事を・・・。



だから、彼は背後から近づく足音にも拘わらず、その場に急停止した。



そして、足元をライトで照らすと、其処には何処までも続いている様な



深く暗い穴が大きな口を開けていた。



助かった・・・・。



彼はそう思ったという。



その時、突然、彼の耳ともとで、



本当に止まるなよ・・・。



面白くねえな・・・・。



という声が聞こえたという。



そして、その声が聞こえた途端に彼は半ば強制的に意識を失った。



奈落の底に突き落とされたような感覚だったという。



そして、次に彼が目覚めた時、彼は友人達と一緒に車の中で眠っていたのだという。



もしかして、夢だったのか・・・。



そう思ったが、彼らの靴はトンネル内の水溜まりでびっしょりと濡れていた。



そして、友人達もトンネルの中に入って歩いていた時、突然、意識を失ったのだと



説明してくれた。



そのトンネルは今でも白山市の山中に存在している。
  


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2019年06月09日

祟られる神社

日本全国には沢山の神社がある。



毎年、初詣で大賑わいになる神社もあれば、山の中にひっそりと建てられた



小さな神社もある。



そして、これは以前書いた事なのだが、神社というものの中には、由緒正しき



日本の神様を祀っているばかりではなく、神様を祀るという名目で、実は



太古からの危険な魔物を封印している場所も少なくない。



そして、これから書く話は、そんな魔物を封印している神社よりも、更に



危険な、お参りするだけで祟られてしまうという神社の話。



例えば、東京のお岩稲荷(正式には、於岩稲荷田宮神社)は、四谷怪談という



創作怪談があまりにも有名であり、何度も映画化されたり、舞台で題材として



取り上げられたりしているそうだが、やはり映画や舞台制作に関わる人たちが



こぞってお参りに来るようだが、これは、お参りせずに舞台や映画を製作した



ところ、関係者に不幸が訪れたという過去があるらしく、その不幸を避ける



為の苦肉の策なのだろう。



もっとも、そうする事で不安なく映画や舞台に没頭出来るのであれば、それはそれで



十分に意味がある訳だが・・・・。



ただ、今回登場する神社の場合、ただ参拝するだけで確実に祟られてしまう、



という最悪な場所。



確かに、誰も管理していない様なうす汚れた神社や直感的に入るべきではない、と



感じる様な神社の場合、ある意味、自分で危険を回避する事も可能なのかも



しれないが、どうやら、そういう類の神社ではないのだという。



そして、これは俺の知人が体験した話になる。



その日、彼は友人数名と林道ツーリングを楽しんでいた。



総勢6台ほどのオフロードバイクで林道を走り、途中、岩場でトライアルの



真似ごとをしたり、急に斜面を利用して、登坂ゲームをして楽しんでいた。



朝から走り始め、昼前には全員で帰路に着く事になっていた。



そんな彼らの前に、突然小さな建物が現れた。



それは民家など全く存在しない山の奥深く。



興味を魅かれた彼らは、バイクを停めてその建物を詳しく見てみる事にした。



しかし、彼らにはその建物が何であるのか、すぐに理解できた。



小さいがしっかりとした鳥居があり、その奥には本殿があり、その前には



しっかりとさい銭箱まで置かれていた。



此処って間違いなく神社だよな?



それしても、こんな山奥まで誰かが参拝に来たりするのか?



彼らは口々にそう言いながら、その神社の鳥居をくぐった。



そして、近づいてみた彼らは更に驚かされることになった。



その小さな神社は、しっかりと手入れが行き届いており、どこにも朽ち果てた



感じは無かったのだから・・・。



まるで、毎日、誰かがこの神社にやって来ては掃除をし、神様への祈祷を



欠かしていないかのように。



こんな辺鄙な場所にある神社まで誰かが毎日やって来ては手入れをしているのかな?



そう思っていた時、誰かがこう言った。



せっかくだからお参りだけでもしていこうか・・・・と。



確かにその神社は怪しい雰囲気も無く、とても明るく清潔な雰囲気に満たされていた



から、その言葉に異論を唱える者など1人もいなかった。



彼らはぞろぞろと本殿の方へと向かい、木製の階段をのぼってさい銭箱に小銭



を投げ入れて、それぞれが手を合せお参りを済ませた。



そして、一礼してから、振り返り階段を降りようとした時、突然、空が



曇りだし、辺りは一瞬のうちに真っ暗になった。



時刻はまだ正午にもなっていないというのに・・・。



今にも雨が降り出しそうな天候になった為、彼らは慌てて各々のバイクに乗り



エンジンを掛けた。



次々にその場から走り去る6台のバイク。



その最後尾でスタートしたバイクの友人が、走り去る直前、何かが神社の



鳥居の下に立っているのを目撃したという。



まさに、何かの儀式でもやっていたかのような正装で身を固めていたが、



その顔はまるで腐乱死体の様にふくれていたという。



そして、結局、その場から無事に帰宅できたのは6台のうち、4台のみ。



他の2台は帰宅途中に車との衝突事故でそのまま病院に担ぎ込まれ生死の



境をさまよう事になった。



また、無事に帰宅した4人も、その夜、寝ていると、突然、不気味な神主の



様なモノが現れ、



祟ってやる・・・・・祟ってやるぞ・・・・・。



と言って、体の上に馬乗りになっていた。



それが夢なのか、それとも現実なのか、は分からなかったが、それでも4人



が同じ体験をした事が分かると、彼らは恐怖した。



そして、祟ってやる、という意味を考えてみるが、4人が同じ事をしたのは、



前日の林道ツーリングしか思い浮かばなかった。



それと同時に、二人の友人が帰宅途中に事故に遭い入院している事を知った



彼らは誰ともなく、もう一度あの神社に行って謝って来よう、という結論



に達した。



別に何か悪い事をした記憶は無かったが、思い当たるのはあの神社だけだった。



だから、彼らはその日、全員が仕事を半日で早退し、再びバイクで



あの神社を見つけた林道に向かった。



しかし、いくら探しても神社は見つからない。



彼らは途方に暮れて、とぼとぼとバイクで家路についた。



そして、その帰り道、また一人が事故で入院。



それから、その夜には、1人がベランダから転落して大怪我を負い病院に



担ぎ込まれた。



残された二人はもう気が気でなかったらしいが、それでも入院した友人の所に



見舞いに行くと、どうやら入院している友人も悪夢で苦しんでいる



事が判明した。



しかも、彼らが見たものと全く同じ夢を・・・。



更に、入院している彼らの元に、神主の姿をした男が姿を見せるようになった。



そして、簡単なはずの手術が失敗して、危篤状態になる者まで出る始末。



残された二人は戦々恐々として日々を過ごす事になった。



そして、それから数日後、二人のうちの1人が仕事で車を運転中、突然



車のブレーギカ効かなくなり、その前を走るトラックに激突し、



即死してしまう。



そして、最後に残された1人は完全に気が変になってしまい、何度も



自殺を試みるようになった。



そして、事故で入院していた彼は、初めて事の重大さに気づき、俺に相談してきた。



その時ばかりはさすがのAさんも、嫌な顔一つせずに迅速に対応してくれた。



そして、Aさんは姫にも協力してもらい、何やら対策を講じていた。



すると、それまで続いていた不幸の連鎖はピタッと止まった。



俺が、何をどうやったの?



と聞くとAさんは、



大体の山の場所と林道が分かりましたから、その山からこちらに続く道に付けられて



いた呪いを断ち切っておきました。



今回ばかりは災難としか言えないんですけどね。



でも、実際にその神社を見つけたり、入ったりするだけで祟られる神社というのが



実際に存在するんですよ。



しかも、今回はご丁寧に参拝までしてしまってますから・・・。



私と姫ちゃんの念で呪いを断ち切りましたから滅多な事は無いと思いますけど、



もう、その友人さん達は、その山には絶対に近づいてはいけません。



これだけは、言っておいてください。



もしも、また、同じように祟られたとしたら、その時には私でも手の出しようが



ありませんから・・・・。



そう言われて、俺は思わずぞっとしてしまつた。
  


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2019年06月09日

高倍率ズーム

彼は趣味で写真撮影をしている。



元々は、フィルム式の一眼レフカメラを愛用していた彼は、その後、



デジタル一眼レフに移行し、ミラーレス一眼レフに移行した。



元々、彼は野鳥や星座を撮影するのが好きだった。



だから、カメラに対しての要求は画質も勿論なのだが、そのズームの



性能も重要なファクターになっていた。



しかし、一眼レフの場合、遠くの物をズームして撮影しようとすれば、



かなり大型のズームレンズを買わなければいけない。



しかも、画像にもこだわるとなれば、ズームレンズだけで数十万に



なってしまう。



しかも、ブームの倍率があがれば、その分、レンズも大きく、そして



重くなってしまう。



そんな彼が、最近目をつけたのが、コンパクトデジカメ。



1キロにも満たない重さのボディの中に、かなりの高性能なズーム機能



が内臓されており、中には80倍を超える物まで在るらしい。



80倍といえば、普通の状態で撮った画像が、80倍の大きさに



なるという事。



80メートル先にあるものが、1メートルの距離から撮影した様に



写ってしまうのだから、想像を絶してしまう。



そして、最近は重たい機材が辛くなってきた彼にとって、高倍率ズーム



を搭載したコンパクトデジカメは、まさに救いの神だった。



実際、野鳥を撮影してもかなりのクオリティで撮影できるらしく、彼は



俺にも購入を勧めてくるほどだ。



そんな彼が、初めてそのカメラが届いた時に体験した話を聞かせてくれた。



その時初めて、届いた新しいカメラに彼は興奮していた。



値段にすれば、それほど高価なものではない。



そんなカメラにそれ程の高性能ズームが本当に搭載されているのか?



彼は、その点に関しては疑心暗鬼だったようだ。



だから、そのカメラの性能を早く確認したくて仕方なくなった。



そこで、彼は、自宅マンションのリビングからそのカメラで外の景色を



覗いてみる事にした。



そして、結論から言うと、そのカメラのズームは、素晴らしかった。



それまで苦労して重たい機材をせっせと運んで野鳥を撮影していた事が



なんだか馬鹿らしくなってしまう程に・・・。



そして、ズームを遠くから近く、近くから遠くと、色々と変えては



色んな景色を見て遊んでいたそうだ。



すると、かなり向こうにあるマンションのベランダに人がいるのが



見えた。



彼はカメラを構えてその人に照準を合わせた。



そして、ズーム。



彼のカメラは80倍以上の光学ズームを搭載しているようで、みるみるうちに



その人物が近くなっていく。



まるで、目の前に居るかのように・・・・。



そして、偶然とはいえ、彼は思わず息をのんでしまう。



そこには、見た事も無いほどの綺麗な女性が立っていたという。



年齢は30代。



髪は肩くらいまででスタイルも素晴らしい。



そして、何より、その顔はまるで彼の理想をそのまま形にしてかの様に



美しい顔をしていたという。



だから、彼は思わず見とれてしまったという。



そして、それまで人物など撮った事が無かった彼なのだが、今後は人物



を被写体にするのも悪くないかもな、と思っていた。



だから、彼は、気付かないうちに思わずシャッターを押していた。



何枚も何枚も・・・・。



そして、その女性はまるで彼が撮影しているのを知っているかの



ように、彼がシャッターを押すたびに色々と体の向きを変えてくれた。



そんな時、彼は不思議な事に気付いた。



その女性が、こちらに向かって笑っていた。



まさか、とは思ったが、今度はこちらに向かって手を振っている。



ただ、実際には、そのマンションまでの距離はかなり遠く、その女性が



彼が撮影している事など分かる筈も無かった。



だから、きっと、他の誰かに向って手を振っているのだろう・・・。



そう思ったという。



だから、彼は、試しに、自分から手を振ってみたという。



すると、その女性はそれが見えているかのように嬉しそうに、更に



大きく手を振った。



その時、彼は嬉しいというよりも、何かがおかしい・・・。



そう思った。



もしかして、自分は見てはいけないものをファインダーを通して見て



いるのではないか、と。



すると、今度はその女性は、こちらに向かって手招きをしだす。



彼はさすがにヤバいと思い、ズームを弱めていく。



そして、彼が内心感じていた違和感は確信に変わる。



その女性だけをファインダーに収めているときから、感じていた事だが、



どうやら、その女性は周囲の手摺や人物と比べて明らかに大きかった。



在り得ないほどに・・・・。



それを確信した時、彼はすぐにカメラを降ろして、その場所から



離れた。



何か説明のつかない不安感でいっぱいになっていた。



彼は落ち着こうと思い、ソファーに座った。



その時、突然、玄関のチャイムが鳴った。



誰も訪ねてくる予定は無かったし、荷物が届く予定も無かった。



その時、彼は不思議と、こう思ったという。



あの女が来たのだ・・・・と。



その女が来る筈など無かったのに、その時は何故か、訪ねてきたのは



間違いなくその女だという確信があった。



心臓の鼓動がどんどん速くなり、背中には嫌な汗が流れた。



絶対に、玄関に出てはいけない・・・。



そう思ったという。



相変わらず、玄関のチャイムは鳴り続けていた。



彼は、必死に知っているお経を唱えながらソファーの上で震えていた。



もう、あの女が綺麗だという感覚は無かった。



化け物が、人間ではないモノが、自分の家に来てしまった。



そんな恐怖心しかなかったという。



そして、彼がお経を唱えていると、そのうちに、玄関のチャイムの音が



突然、消えた。



彼はホッと胸を撫で下ろして、何気に窓の方を見た。



すると、そこには、間違いなく先ほどの女が、窓に張り付くようにして



笑っていた。



それは、可愛い笑顔というものではなく、獲物を見つけたという捕食者



の嫌な笑顔に見えたという。



彼は、思わず、ソファーから立ち上がると、玄関めがけて走りだした。



そして、玄関の鍵を開けようとした時、彼は一瞬、嫌な予感がしたという。



もしかして、窓に張り付いていたのは、自分に玄関を開けさせる為なのでは



ないか?と。



だから、彼は玄関の鍵を開けるのを止めて、そのままその場所にしゃがみ込み



両手で耳を塞ぎ、しっかりと目も閉じて、心の中で必死にお経を読み上げた。



それから、どれくらいの時間が経過しただろうか。



彼は、帰宅してきた奥さんに揺り起こされた。



知らないうちに、彼は気を失っていたようだった。



しかし、彼は奥さんには、その時起こった事は話さなかった。



どうせ信じて貰えないと思ったし、何より、そのカメラで女性を撮影



していた事を知られたくなかったから。



そして、それ以後、その女が再び、彼の家に訪ねてくることはなかったが、



彼は写真仲間と、会合で会った際に、その時体験した事を話したという。



勿論、誰も信じてはくれなかったが・・・・。



そして、仲間の一人がこう言ったという。



その話が本当なら、撮影した女が、記録メディアの中に残っている筈だろ?



それを見せてよ!と。



確かに、彼はその時以来、そのカメラを使用した事も、記録メディアの中身を



確認した事も無かった。



だから、彼は自分のバッグからカメラを取り出すと、再生ボタンを押した。



しかし、画面が小さくて良く分からない。



そこで、誰かが持って来ていたノートパソコンで表示させたらしいのだが、



そこに写っていたのは、女性の姿ではなく、白骨化した骸骨だったらしい。



俺もその画像を見せて貰ったのだが、どう見ても合成写真には見えなかった。



やはり、世の中には不思議な事が多いものである。
  


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2019年06月09日

別の意味で怖い話

これは俺が体験した話である。



今はさすがに、ツーリングに行くと、それなりの宿泊施設に泊まり、



疲れを癒すのが当たり前なのだが、20代の頃は、それこそ、どれだけ



お金をかけずに、旅行するかという事に、拘っていた。



ある時、北海道をバイクで一人旅していた。



バイクなので、普通、車が行かないような場所も満喫できる。



実は、この頃は、毎年のように北海道に有給休暇を取って約1週間位



の旅に来ていた。



その年は、ヒグマが多いと聞いていたし、実際、知床五胡や色んな場所で



野生のヒグマと遭遇する事ができた。



で、ある晩は、駅名は忘れたが、駅の中で野宿をすることにした。



今は知らないが、昔は、貧乏ライダー達にJRが駅を開放してくれていた。



そして、色んなライダーが全国から集まると、完全なバーベキュー大会になってしまう。



その時は、10人位だったろうか。



大騒ぎして、飲んで食って、そして駅の中で皆で寝袋に包まって寝た。



夜も更けた頃、誰かの声で起こされた。



何かいる。



音がするし。



もしかしたら。



そして、全員を静かに起こしてから外の様子を窺った。



もしかしなくても、ヒグマだった。



しかも、かなり大きい。



俺達が食べ残した残飯を漁っているようだ。



しかし、各々のバイクも停車してあるのも心配だが、それ以上にあんな



大きなヒグマその気になったら、こんな木とプラスチックで出来た駅の扉など



簡単に壊されてしまう。



全員が、声が震えていた。



それほど、大きかったし、距離も近かった。



そして、あることに気が付いた。



あそこにある残飯を食べ終わったら、嗅覚の優れたヒグマなら、



今、自分達が駅舎の中に持ってきている食べ物の匂いに気が付き、



中へ入ろうとするのではないか?



そして、案の定、外の残飯を食べきってしまうと今度は、駅舎の中に



持ち込んだ食べ物が気になっているようだ。



しかし、中に当然、人の気配がすることもわかっているようで、



簡単には近づいてこない。



それでも、少しずつ、近づいては、駅舎の壁が、壊せるものかどうか



確かめるように爪を立てた。



その時である。



1人の女性ライダーさんが、俺に言った。



たぶん、貴方のバイクが一番大きくてうるさい?音を出せると思うから、



キー貸して貰えますか?



全員が???となった。



いいよ、と言いバイクのカギを渡すと



ヒグマがいる反対側のまどから外に出た。



そして、俺のバイクのところに行くと、エンジン始動。



思いっきり、アクセルを吹かした。



ヒグマは一瞬、びくっとなり、そのまま後ずさりして、暗闇の中に消えていった。



その後、全員のバイクを駅舎の中にいれ、朝まで、一睡も出来なかった。



しかし、女性は、いざとなると強いと改めて思い知らされた。



そして、翌日の新聞に、ヒグマがJRの電車にはねられて死亡したという記事を



新聞に見つけた。



そのヒグマと同じ熊かはわからないか、その時に思ったこと。



北海道の人は、例えば、夜、歩いてジュースの自販機に歩いていてヒグマと



出会ってしまうこともあるのもしれない。



俺は絶対に無理。


そして、いざとなったら女の方が強い!



そう思った。
  


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2019年06月09日

お化け屋敷

これは知人女性が体験した話。



彼女は男兄弟の中で育ったせいか、とても男勝りな性格。



この世の中に怖い物など無いのではないか、と思えてしまうほどだ。



しかし、予想に反して、絶対に近寄らない場所がるあのだという。



それは、お化け屋敷。



特に有名なお化け屋敷というのではなく、基本的にどんな遊園地にも在る



様なお化け屋敷でも絶対に入れないのだという。



勿論、元々、彼女はそこまでお化け屋敷を怖がっていた訳ではない。



実はある出来事があってから、全く近寄れなくなったのだという。



そして、これから書くのがその理由というものになる。



その時、彼女は地元に在る遊園地へと友人達と出掛けた。



元々、それ程大きな遊園地ではなく、2~3時間も遊ぶと、時間を持て余して



しまった。



ベンチに座り、ぼんやりしていると、友人の1人が、



あっ、あそこにお化け屋敷があるみたい・・・・入ってみようよ!



そう声をかけたという。



元々、お化け屋敷というものが苦手だった彼女は露骨に嫌な顔をしたらしいが、



その場での多数決によって、すぐにお化け屋敷へ入る事が決まってしまった。



しかし、やはり気が進まない彼女は、お化け屋敷の入り口で立ち尽くしていた。



しかし、友人達はそんな彼女には目もくれず、1人、また一人とお化け屋敷の中へと



入っていった。



一人ぼっちにされてはたまらない・・・・・。



そう思った彼女は急いでお化け屋敷へと駆け込んだという。



彼女が思っていたよりもお化け屋敷の中は暗く感じなかった。



しかし、先に入った友人達の姿はもう其処には見えなかった。



彼女は慌てて、先に行った友人達に追いつこうとその場から駈け出した。



しかし、すぐに機械仕掛けのお化け達が動き出してしまい、なかなか前に



進めなかった。



やはり機械仕掛けとしはいえ、おばけの姿や声を聞くだけで彼女にはとてつもない



恐怖であり、すぐにその場に固まってしまう。



そこで、後から誰かが入ってくるのを待って一緒に連れて行って貰おう、と



思ったらしいのだが、どれだけ待っても誰もお化け屋敷には入って来なかった。



だから、こんな所に入るのは嫌だって言ったのに・・・・・。



そう思ったが、いつまでもその場所に立ち止まっていても埒が明かないのは



分かっていたから何とか1人で少しずつ前へと進む事にした。



しかし、安っぽいお化け屋敷とはいえ、彼女には敷居が高過ぎた。



光で照らされ浮かび上がる様々な妖怪やおばけの数々に彼女は、恐怖で



固まってしまう。



恐怖で涙が止まらない彼女が考えたのは、このまま目をつぶって少しずつ



前へと進む、という作戦だったようだ。



手探り状態で少しずつ前へと進む。



耳からの音とうっすらと見える床の様子だけを頼りに彼女は進み続けた。



しかし、1歩進んでは止まり、そしてまたゆっくりと1歩を踏み出す。



そんな事をしていても、いっこうに出口らしき場所には、いつになったら



辿りつけるのか?と彼女は途方に暮れていた。



そんな時、彼女の手がある物を掴んだ。



それは明らかに誰かの衣服であり、それは女性のものだとすぐに分かったという。



彼女は一瞬、手を放そうかとも思ったが、これは救いの手に違いない、と



感じた彼女は、前に立つ女性に、



すみません…私、こういう所が苦手で・・・・。



だから・・・あの・・・・申し訳ありませんけど出口まで連れて行って



頂けませんか?



そうお願いしたという。



その声を聞くと、前に立っていた女性も、前へと動き出した。



その女性は何も言わなかったが、それでも彼女は、



何も言わないけど、きっとOKしてくれたんだ・・・・。



そう思って、その女性の後を追いていった。



その女性はどうやら1人で来ていたらしく、それでもどんどんと前へと



歩いていった。



思ってもいなかったペースで前へと進む女性に彼女は歓喜した。



これなら、すぐに此処から出られる・・・・と。



しかし、そうやって歩き続けてからかなりの時間が経過した。



外から見た限りではとてもそんなに大きなお化け屋敷には見えなかった。



彼女はだんだんと不安に駆られていく。



不安はどんどんと増していき自分でも制御できなくなった。



だから、彼女は顔をあげて前の女の人を確認したのだという。



そこには、体が前を向いたまま、顔だけが真後ろに居る彼女を見つめている



女の姿があった。



その顔はまるでマネキンの様な無機質な顔だったという。



そうして固まった彼女に、その女は手を伸ばして来て彼女の腕を掴んだ。



例えようもない程、冷たくベトベトした手だった。



彼女はそれから気が狂ったように暴れて手を振りほどき、その女とは逆の方向へと



走り出した。



もう、お化け屋敷の中だという感覚は無かった。



とにかく、あの女から逃げなければ・・・・・。



その一心で彼女は当てもなく走り続けた。



何処をどう走ったのかは全く覚えてはいないという。



ただ、走り回った末に、一筋の光が見てたので、彼女はその光に向かって



飛び込んだという。



すると、そこには、友人達が彼女が出てくるのを首を長くして待っている



ところだった。



助かった・・・・。



そう思うと同時に彼女は涙が溢れてきた。



しかし、次の瞬間、聞こえてきたのは、友人達の悲鳴だったという。



彼女の背後を指さしながら悲鳴を上げる友人達。



彼女は反射的に後ろを振り返った。



すると、そこには、マネキンのような女が、まさにマネキンの様にして



背後に立っていた。



そして、薄気味悪い笑みを浮かべると、そのままスーッと消えてしまったという。



そして、どうやら、その女の姿を見たのは友人達だけではなかったようで、



一時、遊園地は、パニック状態になったという。



それから彼女の身に怪異は起こっていないが、それ以後、彼女は誰が誘って来ようと



決してお化け屋敷だけには入らない、と心に決めている。
  


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2019年06月09日

霊安室

これは病院勤めをしている姪から聞いた話である。



病院という場所には、その殆どに霊安室という部屋が設けられている。



そして、彼女が勤務する病院では、真白な壁の部屋の中に真白な



ベッドが置かれているのだという。



霊安室といえば、よくドラマなどにも登場しているが、基本的に



看護師が、何かをするという事は無く、そこから先は、葬儀会社の



仕事になるのだという。



病院という性質上、1日に一人ではなく複数の患者さんが亡くなられる



場合もある。



そんな時には、霊安室に、複数のベッドが置かれ、そこに複数のご遺体が



並べられる事もあるのだという。



彼女自身は、霊安室という部屋には数回しか入った事はないらしいが、



その時、感じた事は、霊安室という所は、部屋に入っただけで、かなり



ひんやりした空気を感じるという事らしい。



まるで、真夏の昼間に、洞窟にでも入った様な感じ。



彼女はそう言っていた。



そして、霊安室に入れられたご遺体は、以前は看護婦といわれた方達が



綺麗にするお世話をしていた時期もあったらしいが、現在では、その部屋に



ご遺体を運び込むまでが病院側の仕事になるらしい。



そして、そこで、ご遺体は自宅などへ帰還するのを待つ事になる。



そして、ここからは彼女が先輩看護師から聞いた話になる。



ご遺体を霊安室に運ぶ作業の際、ご遺体の口から、うめき声の様なものが



聞こえる事があるのだという。



勿論、それはご遺体の体の中に溜まっていた空気が口から出る際に



うめき声の様に聞こえるのだと医学的には言われている。



しかし、どう聞いても、言葉のようにしか聞こえないうめき声も



実際、あるのだという。



どこだ~



かえせ~



などその言葉の意味は分からないのだが、確かにそれは意志をもって口から



発せられた言葉にしか聞こえないらしい。



また、以前は、連絡の為に、霊安室の中に電話が備え付けられていたらしいのだが、



どうやら、その電話から誰かが電話してくるのだという。



勿論、霊安室には、ご遺体以外は誰もいないのだから、誰が掛けてきた



のかは、暗黙の了解として分かっているらしい。



そして、それはナースセンターに掛って来る事が多いのだという。



そして、



みずがほしい・・・・とか



さみしい・・・・とか、



いえにかえしてくれ・・・・・という言葉を伝えるとあっさりと



切れてしまう。



勿論、電話をかけるには内線番号を押さなければいけないのだが・・・。



そして、そんな事が続いたために、電話は霊安室の中ではなく、外に



設置されるようになった。



しかし、それでも相変わらず、内線電話が掛って来る事が後を絶たない。



しかたなく、今では、電話線を切ってしまっているらしいのだが、それでも



しっかりと電話はかかってくるらしい。



そして、中には、線の切れた電話から誰かが電話をかけているのを見た、



という看護師もいるらしい。



いったい、それほどまでに、何を伝えたがっているのだろうか・・・・。



そして、これも不思議な話なのたが、看護師さんが霊安室の前の



廊下を歩いていると、霊安室の中から誰かが看護師を呼びとめる。



そして、中を覗くが、そこにはご遺体が横たわっているだけ。



それで、不思議そうに部屋を出ると、今度はドンドンと中から



ドアを叩く音が聞こえ、その看護師はその場から思わず逃げ出して



しまったらしい。



そして、霊安室に、家族や葬儀社が迎えに来るまでしばらく時間がかかる



事があるらしい。



そんな時は、霊安室に備えた花の水を替えに来たり、するらしいのだが、



その時は、常に二人で作業に当たるらしい。



それは、以前、1人で作業をしていて、間違いなく誰かが看護師さんの後ろに



立っているという感覚がヒシヒシと伝わって来たからなのだという。



それでも、我慢してそのまま自然に作業を続けていれば良いのだが、



以前、一人の看護師が思わず振り返ってしまったらしい。



すると、そこには、ご遺体がぼうっした目で、看護師さんの後ろに



立っていた事があったらしい。



また、中には、あまりに戻ってくるのが遅いという事で、他の看護師が



霊暗室まで見に行くと、そこには、ご遺体の横に寄り添うように、



同じベッドに寝ている看護師の姿があったという。



また、彼女の勤務する病院は、かなり有名な心霊スポットのすぐ近く



に位置している。



また、病院のすぐ近くの水路に、殺された女性が埋められていた、という



事件も近年発生している。



そのせいなのかは、分からないが、夜、霊安室の前を通ると、



誰かと話している声が聞こえたり、廊下を誰かがうろうろと彷徨っている



姿が目撃されたりしている。



だから、霊安室の前の廊下は24時間、明るい照明が点いている。



しかし、夜にその場所に行くと、誰も消していない筈なのに、明かりは



消え、漆黒の闇が広がっているそうだ。



そして、その辺りは何度点けてもすぐに消されてしまうのだという。



そして、その暗闇の中には、間違いなく誰かが立っている姿が



ぼんやりと見える。



だから、医者も看護師たちも決して夜には、その場所に近づく事だけは



しない。



霊暗室。



もしかしたら、この世とあの世が一番近くに存在している場所



なのかもしれない。
  


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2019年06月09日

誤作動

これは知人から聞いた話。



知人は趣味が車のドライブである。



しかも、気が向いたときにふらっとかなり遠方までドライブに



出掛けてしまう。



だから、彼の車には、カーナビが必需品になっている。



そんなある日、彼の車のカーナビが突然、壊れてしまった。



彼は仕方なく、カーショップに行き、カーナビを選びに行ったのだが、



彼の希望に沿った物は、どれも高価で手が出なかった。



そこで、彼は、近所の中古パーツの店を見に行くと、最新型のカーナビが



かなり手ごろな値段で店頭に並んでいた。



テレビ画面としても利用でき、DVDの再生にも対応している。



まさに、彼の理想どおりのカーナビだった。



彼は、即決し、その場ですぐに彼の車へと取り付けてもらった。



そして、その店からの帰り道、さっそくカーナビをテストしてみると、



最近、開通したトンネルも、しっかりと表示されており、彼は大満足の中



自宅まで車を走らせた。



それからは、そのカーナビは、ドライブの度に大活躍してくれた。



彼は、本当に良い買い物をした、とそれからは以前にも増して、遠くへ



ドライブに行く機会が増えてしまった。



そんなある日、その日は平日であり仕事が終わり家路に着いていたとき



不思議な事が起こった。



カーナビは明らかに自宅とは別の場所へと誘導してくるのである。



最初は、誤作動かな、と思い、そのまま運転を続けていればきっと



直るだろうと思っていたらしいが、どれだけ車を自宅へと走らせても、



ルートから外れました・・・・ルート検索しています・・・・。



そうしたアナウンスの後、明らかに違う場所へと導こうとする。



やはり、安物買いは駄目なのかな・・・。



そう思って、翌日、車を走らせていると、どこにも異常が無くなっており



正常に動作している。



そこで、彼は、そのカーナビを買い換えようという気持ちが無くなり、



そのまま使い続ける事にした。



しかし、それから、何事も無い日が続いたか、と思うと、また、突然



誤作動してしまう。



そして、翌日にはまた正常に戻っている。



そんな事を繰り返しているうちに、彼はあることに気付いた。



それは、そのカーナビが誤作動するのは、決まって毎月17日だという事。



しかし、それに気付いたからといって、何か対処出来るわけでは無い。



彼は仕方なく、そのカーナビを使い続ける。



しかし、ちょうど17日が彼の仕事の休日と重なった月に、彼は思い切った



行動に出る。



そのカーナビに従って走ってみようと思ったのだ。



彼は朝早くから出掛ける用意をして、目的地の分からないドライブに



出掛ける事にした。



どうして、毎月17日に誤作動するのか、は分からなかったが、元々



宛ての無いドライブが好きな彼にとっては、休日の暇つぶしに



ちょうど良かった。



車をスタートさせしばらくすると、案の定、カーナビは勝手に道案内



を始めた。



彼はワクワクしながら車を運転していた。



街中を抜けて、車はどんどん東に向けて走らされた。



勿論、目的地を設定した記憶は無かったし、前の持ち主が設定した



目的地も何一つ残されていない事は確認済みだった。



カーナビは、そのまま東へ向かうように道案内を続ける。



車は海沿いの道に出た。



最新式のカーナビは新しい道も全て登録済みのはずだったが、何故か



その時は、古い道ばかりを選んで指示してくる。



そうして車を走らせていると、車は海沿いの丘を上って行く。



その道は彼も以前一度だけ訪れた事があった道であり、そのまま走り続けると



見晴らしの良い岬で行き止まりになるのは、分かっていた。



彼は思った。



どうして、こんな所に俺を連れてこようとしてたんだろう?と。



そして、



まあ、理由は分からないが、あの場所に誘導してくれるなんて、なかなか



趣味が良いじゃないか・・・・。



そんな事を考えながら、カーナビの指示に従って彼は車を走らせ続ける。



そして、彼が予想していた通り、車は岬の駐車場へと近づいてきた。



そろそろかな・・・・。



彼はそう思った。



確かに、目的地が、その岬だとしたら、そろそろ、



間もなく目的地です・・・。



そうアナウンスされるはずだった。



しかし、そのアナウンスは、いっこうに聞こえてこなかった。



それどころか、カーナビは岬の駐車場を避けて、そのまま岬の



先端へと続く砂利道へと誘導を続けた。



彼の頭の中は混乱していた。



何処に連れて行くつもりなんだ?



それでも、彼はそのままカーナビの指示に従って車を走らせ続ける



事にした。



このカーナビが本当に自分を何処へ連れて行こうとしているのか、



見極めたかったのだという。



しかし、初めて走るその砂利道の先が見通せなかったので、彼はかなり



速度を落として車を走らせた。



そして、砂利道も終わりに近づこうとしたとき、カーナビがこう告げた。



"このまま前方まっすぐです・・・・・・・"



しかし、前方には岬の先端しか存在していなかった。



勿論、そのまま車を走らせれば、岬の先端から海へと落ちてしまう。



彼は背中に冷たい汗を感じながら、ブレーキを踏んだ。



そして、彼は固まってしまう。



ブレーキが利かなかった。



車は彼の意思とは反対に、どんどんと岬の崖へと近づいていく。



だから、彼は思った。



速度を落としておいて良かった・・・。



万が一の時は、直前で車から飛び降りようと・・・・。



しかし、どうやら、それも叶わないことだった。



運転席のドアを開けようとしたとき、彼は車のドアが全く開こうとしない



事に気付く。



ドアがロックされていないか、と確認したが、そうではなかった。



何か得体の知れない力で、この車は、いや、このカーナビは俺を



殺そうとしている・・・・。



そう感じたとき、彼は咄嗟に、サイドブレーキを思いっきり引いた。



すると、車は斜めに滑るようにして、斜めになりながら崖の手前で



何とか止まった。



彼は、急いでエンジンを切り、ドアノブを引くと、先ほどとは違い、



いとも簡単に車のドアは開いた。



そして、崖から下を見下ろした時、彼は、こう感じた。



あのまま、海に落ちていたら間違いなく死んでいた、と。



それから、彼は、そのカーナビをさっさと売ってしまおうと決心して



帰路に着いた。



相変わらず、カーナビからは、岬の先端へと戻るように指示が



出され続けていた。



あまりに、しつこいので、彼がカーナビの電源を切ろうとした時、彼は



間違いなく、その声を聞いた。



死んでよ・・・・・という男の声を。



それから、彼は無事に自宅まで戻ると、急いで車からカーナビを外した。



そして、売ろうと思っていたカーナビではあるが、思い切って



叩き壊したという。



そして、その後、彼はその岬で自殺した者や、事故で崖から落ちた者が



いないか、と調べたそうだが、そんな記事は何処にも載っていなかった。



だとしたら、どうしてあのカーナビは自分を殺そうとしたのか?



そう考えてしまうと、更に恐ろしくなってしまい、彼はその後、



車にはカーナビは付けないようにしているという。



ちなみに、カーナビを外してからは彼の身に怪異は発生していないそうだ。





  


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2019年06月09日

母の帰宅

これは俺の幼馴染が体験した話。



その頃の彼は小学校の高学年くらいだったという。



彼の両親は、別居していた様で、彼は母親一人に育てられていた。



兄弟もおらず、家では母親との二人暮らし。



それていて、かなりの大きな家に住んでいたのだから、母親はかなりの



高収入だったのかもしれない。



彼の母親の顔というのを俺は1~2回しか見たことが無かった。



というのも、彼の母親というのは、仕事の内容は分からないが、毎日、



夜遅くにならないと帰宅しなかったからだ。



だから、俺達は彼の家を恰好の溜まり場として利用させて貰っていたが、



彼にしてみれば、休みの日以外は、全て1人で食事を済ます、という



のは、やはり辛かったのだろうと思う。



俺達と一緒に遊んでいる時は、うるさ過ぎる位に陽気な奴だったが、



ふと見せる寂しそうな顔は、子供の俺達にとっては、とても大人びて見えていた。



そして、その日も彼は、学校から帰ると、母親が用意してあった食事を



温めて1人で食べていたそうだ。



テレビを見ながら、いつものように1人で食べる夕飯は、美味しいとか



楽しいという感情は一切ないとても無機質なものだった。



そして、食べて食器を洗っていると、玄関のチャイムが鳴った。



彼は、急いで玄関に行くと、



はい?どちら様ですか?



と声をかけた。



すると、玄関の向こうから、



お母さんよ・・・・早く開けてちょうだい・・・・。



そんな声が聞こえてきた。



確かに、その声は母親のものだったが、彼にしてみれば、どうして自分で



玄関の鍵を開けて入って来ないのだろう?



と不思議に感じたという。



しかし、不思議に感じはしたが、少しでも早く母親の顔を見たかった彼は



何も疑うことなく、玄関の鍵を開けた。



すると、玄関の引き戸が開いて、そこには母親が立っていた。



朝出かける時に見た、服装のままの母親が・・・。



母親が、そんなに早く帰ってくるのは珍しかった。



いつもなら午後9時頃までは帰って来ないのに、その時の時刻はまだ



午後7時にもなっていなかったから。



だから、彼は内心とても嬉しかった。



だが、なんとなく、そんな気持ちを悟られるのが照れくさかった。



彼は、ぶっきらぼうに、おかえりなさい、と声を掛けて、再び



台所で食器を洗い始める。



いつも母親は、帰宅するとすぐに着替えをするのは分かっていた。



だから、彼もさっさと食器を洗い終えて、母親の所に行こうと思った。



もう、自分で調理するのも、食器を洗うのも、いつもの手慣れた



作業だったから、彼はさっさと洗い物を済ませると、居間に行こうと



振り返った。



心臓が止まりそうだった。



そこには、母親が着替えもせずに、ぼーっと突っ立って彼を見ていた。



彼は、



どうしたの?



着替えないの?



と声をかけた。



すると、母親は、その問いには答えず、ただ黙ってじーっと彼を見つめている。



彼は母親の様子がいつもとは違うと感じたという。



だから、彼は、



どうしたの?



何かあったの?



と聞いたという。



すると、母親は、暗い顔をして、



今から出掛けるから・・・・。



一緒に来てくれるよね?・・・・。



そう言われた。



しかし、その時、彼は何か違和感を感じたという。



いつも、彼の母親は、そんな言い方はしなかった。



今から出掛けるから、すぐに支度しなさい!



そんな風に命令口調で話すのが常だった。



それに、一日働いてきて、母親がそれから外出などした事は無かった。



いつも、疲れた・・・・疲れた・・・



という言葉を繰り返して、居間でゴロゴロするのがいつものパターン



だった。



だから、彼は聞いてみた。



出掛けるって、何処へ?



疲れてるんじゃないの?と。



すると、母親は、黙って彼の腕を掴んだという。



彼は固まった。



彼の腕を掴んだ母親の手は、夏だというのに、凍った様に冷たかったから。



そして、いつもは柔らかい母親の手が、その時は、固くゴツゴツしたものに



感じられたという。



彼は無意識に、母親の手を振りほどいた。



もう恐怖しかなかった。



そのまま茫然と立ち尽くす彼の腕を、再び母親の手が掴んだ。



ゴツゴツした冷たい手が彼の腕に食い込む。



それは恐ろしいほどの凄い力だった。



彼は、思わず、



痛いよ!痛いって!・・・・・離なしてよ!お母さん!



そう叫んだという。



しかし、母親は、少しも動揺せず、そのまま彼の体ごと引きずり始める。



彼は腕が、まるで何かに噛まれたかのように激痛が走っていた。



しかし、いっこうに彼の腕を引っ張る事を止めない母親に、明らかに



恐怖を感じていた。



これは母親ではない・・・・。



そんな確信があったという。



そして、玄関まで引きずられた彼は、必死に下駄箱に掴まって抵抗した。



このまま連れて行かれたら、もう戻っては来れない・・・・。



そんな気がしたという。



しかし、母親の力は信じられないほど強く、彼はあっさりと下駄箱から



引きはがされてしまう。



彼にはもう、掴まって抵抗する者は何も見つからなかった。



そのままズルズルと引きずられる様にして玄関の引き戸まで来ると、



彼は、その場で大声を出して誰かに助けを求めようとした。



しかし、何故か声は全く出なかった。



そして、声の代わりに彼の目からは大粒の涙がこぼれた。



もう、この家には戻れない・・・。



母親にももう会えない・・・・。



それが、悲しみとなって彼に押し寄せていた。



彼は、心の中で、必死に叫び続ける。



お母さん・・・助けて!



それが、彼に出来る精一杯の抵抗だった。



すると、その時、誰かが外を走ってくる音が聞こえた。



そして、その靴音はどんどんと近づいてくるのが分かった。



そして、その足音は彼の家の玄関前まで来ると、いっきに玄関の引き戸を



引き開けた。



○○!



大丈夫!



それは紛れも無く彼の母親の姿だった。



彼は、母親の姿を見て、思わず体の力が抜けたのか、その場でへたり込んで



しまった。



そして、つい、今まで、彼の腕を掴んでいたもう一人の母親の姿は既に



無く、階段を、誰かが上がっていく音が聞こえた。



彼は、すぐに母親に、その時、起こった事を話すと、母親はすぐに



警察に電話をかけた。



すぐに警察がやって来てくれて、その女がのぼっていったであろう2階を



くまなく探したが、そこに誰の姿も見つける事は出来なかった。



そんな事があってから、彼は、母親が帰宅するまで、近所の家で預かって



もらう事になった。



そして、それから、その、もう一人の母親の姿を見る事は無かったという。



そんな彼が、成人してから、母親にこんな事を聞いてみたという。



あの時、ガキだった俺の言う事をよく信じてくれたよね?と。



すると、母親は、少しだけため息をついて、



今まで言わなかったけどね。



あの時、私も見たんだよ。



自分とそっくりな女の姿を・・・。



だから、子供のウソだとは思わなかったんだよ。



そう言われたという。



彼にしても、それは子供時代の幻の様に感じていたらしいが、母親も見た、



という話を聞いて、改めて背筋が凍る思いをしたという事だ。
  


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2019年06月09日

ボイスレコーダー

彼は取引先の営業マン。



ある案件で何度か打ち合わせをしているうちに、仲良くなり今では



数か月に一度は一緒に飲みに行く仲になった。



そんな彼がいつも持ち歩いているのはボイスレコーダー。



今ではスマホにも付いている機能だが、彼はスマホではなく単体の



ボイスレコーダーを使っている。



やはり、音の明瞭さやノイズキャンセル機能など、便利な部分が多いから



だという。



そして、お客さんとの打ち合わせなどは、そのボイスレコーダーを利用して



しっかり録音し、後でそれをノートにまとめる。



打ち合わせ中にメモを取っていると非効率的だし、何より聞き洩らしや聞き間違い



なども解消でき、何かと便利なのだという。



そんな彼がある時以来、一切ボイスレコーダーを使わなくなった。



理由を聞いてみると、どうやら会議中に録音した音源に不可解な音が



混ざり込んでいたのだという。



その声は会議には一人も参加していない筈の女性の声であり、20~30代くらいの



かすれた声の女性に聞こえたという。



その時には、きっと誰かの声が偶然録音されてしまったのだろう・・・。



そんな程度に思っていた。



しかし、それからというもの、ボイスレコーダーを使用すると、必ず



その女の声が打ち合わせの音声と一緒に録音されるようになった。



さすがに気持ち悪くなった彼は、そのボイスレコーダーをオークションで



売ってしまい、彼自身は新しいボイスレコーダーを買ってそれを



使う様にしたのだという。



しかし、新しいボイスレコーダーにも、すぐにその女の声が録音されるように



なってしまう。



ある時には、彼が現場で打ち合わせをしていると、頭上から大きな鉄の塊が



落ちてきて、彼は危うく死にかけたらしい。



勿論、その時にはボイスレコーダーなど使用している筈もなかったが、少し



気になった彼は、何気なく、ボイスレコーダーを再生してみた。



すると、そこには、悔しそうな声の女が、



死ねばよかったのに・・・・・。



そうはっきりと喋っている言葉が録音されていた。



上司に相談すると、その上司も何故かすぐに対応を考えてくれ、次の社内での



打ち合わせの際に、部屋の中をビデオカメラで撮影する事に決まった。



かくして、その打ち合わせが終わってから、その部署の人間全体でその映像を



確認する事になった。



そして、その場に居た全員が凍りついた。



その映像には、彼の横に立ち彼の顔を覗き込むようにしている女の姿が



はっきりと映し出されていた。



勿論、打ち合わせの最中には、そんな女など何処にもいなかった。



部署の皆は、その映像を見て、



今すぐに除霊をして貰った方が良い・・・・。



と口々に言ったらしいが、その映像を見た彼は、何故か納得した顔でその言葉を



聞き流した。



そして、翌日の休みの日に、以前付き合っていた女性へ連絡して、久しぶりに



会って、色々と話をした。



その大半は彼の謝罪だったらしいが・・・・・。



それから、彼のボイスレコーダーには不可解な女の声が混入するという事は



一切無くなったそうである。
  


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2019年06月09日

これから始まる呪い

これは友人の親戚に起こった話である。



彼女とは趣味の音楽関係で色々と世話になっていた。



元々は彼女の家系はその土地の大地主だったらしく、彼女の家族も



本家筋ではなかったが、自宅の周りにたくさんの土地を持っていた。



そして、その一角にある倉庫は、俺達が無料で利用できるバンドの練習場所



として提供してくれていたのだ。



本当に土地を沢山持ち、お金にも恵まれている彼女の事をいつも羨ましく



思っているのだが実際には色々と大変な事も多いそうだ。



彼女は若い頃に結婚した。



夫は婿養子として彼女の実家で彼女の両親と同居する事になったそうだ。



彼女は1人娘であり、いずれは実家を継がなければいけなかったのだから、



当然の事なのだろう。



彼女の夫になったのは、俗に言うイケメンというやつであり、出会いは



彼女の方から声を掛けたのだという。



夫は地元の団体職員をしており、その団体へも彼女の両親の力はかなりの



影響力を持っていたから、付き合い始めてから、とんとん拍子に結婚へと



漕ぎ着けたようだった。



まあ、確かに彼女と結婚すれば、彼の将来は約束されたも同然なのだから、



彼としても逆玉の輿の気分だったのだろう。



勿論、彼女自身もかなり綺麗な顔立ちではあったから、まあ似合いの二人と



いったところか。



結婚してからも彼女の人生は順調そのものだった。



すぐに彼女には子供が出来て、両親も喜んでくれた。



最初の子は女の子だったが、数年後には、二人の男の子も生まれた。



夫は会社ではそれなりの地位に就いていたし、それにも増して彼女には



自己所有のマンションやアパート、そして駐車場がそこそこあり、そこからの



収入だけでも毎月驚くほどの収入が入って来ていた。



そんな人も羨むような生活がずっと続くと思っていた。



しかし、上の子供が小学4年になろうかという頃、亀裂が入り始める。



夫が家に帰って来なくなった・・・。



それだけではなかった。



彼女の周りで不幸が起こり始める。



父親が持病で急死し、母親は事故で病院に入院する事になってしまう。



更に、彼女が所有している不動産の幾つかが、知らない間に名義変更



さてれいた。



夫の仕業だった。



そして、追い打ちをかけるように彼女自身も事故で病人に担ぎ込まれた。



車を運転していた彼女に向って、対向車線から大型トラックが車線を



超えて突っ込んできた。



トラックの運転手は突然、ハンドルが効かなくなったと証言した。



彼女自身は、頑丈な高級外車に乗っていた事もあり、すぐに病院を



退院する事が出来た。



何故、こんな不幸が続くのか・・・・。



彼女は神社に頼んでお祓いをしてもらうとともに、夫が家に帰って来なくなった



理由を探る為に、探偵事務所に調査を依頼した。



しかし、そんな事では不幸の連鎖はいっこうに収まらなかった。



そして、ついに、最悪の事が起こってしまう。



彼女の子供が3人で歩道を歩いて学校に向かっている時、突然、ガードレール



を超えて大型のダンプカーが突っ込んできた。



3人の子供は即死だったという。



子どもの葬儀の時には、さすがに夫も帰ってきたらしいが、無事に葬儀が



終わると、また、家に帰って来なくなった。



そんな時、彼女が俺に相談してきた。



こんなに不幸が続くなんて何かの呪いとしか思えないの・・・・。



そう言って、何とか助けて欲しいと頼まれた。



彼女への恩義もあった俺は、すぐにAさんに相談した。



相変らず、面倒くさそうにしていたAさんも、呪いという言葉を聞いてその時は



すぐに対応してくれた。



彼女の家に着くと、Aさんは仏壇にお参りしてから、彼女に夫の持ち物を



何か持って来て欲しいと頼んだ。



そして、彼女が持ってきた、以前夫が愛用していたスーツを見ると、今度は



彼女が愛用しているものを持って来て欲しいと言った。



そして、彼女が愛用しているブランド品のバッグを差し出すと、そのバッグ



に向かって指で文字を書きながら何やらブツブツとつぶやいている。



そして、それが終わると、



確かに呪いですね・・・。



それも、この呪いは間違いなく貴女1人を狙っている呪い・・・。



子供さんが亡くなったのも、貴女の巻き添えになっただけ・・・。



だから、今、その呪いを相手に返してみました。



呪いをかけた相手は、間違いなく恐ろしい思いをする筈です。



貴女に謝って許しを請いたくなるほどの・・・。



貴女にこれ以上、実害が及ぶことが無いようにしておきましたから、後は



相手の出方を待つだけですね・・・。



そう言って、さっさと帰ってしまった。



そして、それから数日後、彼女から電話がかかってきた。



呪いをかけた犯人が判ったから、Aさんと一緒に立ち会って欲しい、という



電話だった。



それにしても、呪いをかけた相手が判ったというのに、以前にも増して



暗い声だったのがとても気になった。



そして、俺とAさんは、指定された日時に彼女の家に向かった。



すると、もうその相手は彼女の家に来ており、今は客間で待たせている、



との事だった。



そして、3人で客間に行き、襖を開けると俺は唖然としてしまった。



そこには見知らぬ女性と、そして彼女の夫が座っていた。



訳が分からない俺に対して、Aさんは、



ああ・・・やっぱりね・・・。



と予想通りの展開のようだった。



そして、話を聞いて俺は更に驚いてしまった。



彼女の夫が家に帰らなくなったのは、好きな女性が別に出来たからだった。



それが、夫と一緒に客間に座っている女性。



それなのに、彼女はその女性に足して馬頭するどころか、敬語まで



使って話していた。



そして、最後まで話を聞いた俺はようやく話の内容を理解した。



どうやら、彼女の従姉妹に当たる、その女性が彼女の夫の事を好きになった。



そして、夫自身も、彼女との生活に嫌気がさしていた。



そうして、二人は相思相愛の関係になった。



その女性は、どうしても彼女の夫と結婚したかったらしく、彼女さえ



居なくなれば全てが上手くいく、と思い、彼女に呪いをかけた。



そして、その呪いは凄まじい効力を発揮して彼女を不幸の渦の中に巻き込んだ。



しかし、彼女ではなく、子供たちが死んでしまった事、そしてAさんによる



呪い返しで、先ずからも恐ろしい体験をする様になった事から、もう



逃げられないと思い、彼女に謝罪をしに来たのだという。



あれは、つい出来心だった、と。



魔が差したのだ、と。



だから、もう許してほしいと懇願した。



普通なら、彼女から全てを奪ったその女を許せる筈などない。



しかし、相手が悪かった。



相手の女性は、本家の1人娘であり、幼い頃から従姉妹同士とはいえ、彼女とは



全く身分が違うのだと言い聞かされてきた相手。



その女性を敵に回す事は、親戚から排除される事に直結していた。



だから、なのか、彼女は終始、穏やかな顔で対応し、挙句の果てには



自分の夫を彼女に差し出すとさえ言った。



その女性は喜んで、夫が勝手に名義変更した不動産を返すとともに、更に



多くの不動産を彼女に迷惑料として進呈すると告げた。



俺には、お金持ちの力関係というものは分からなかった。



何故、自分から全てを奪った相手に、それほど穏やかに対応出来るのか、が



全く理解出来なかった。



しかし、それは俺が口を挟むべき事ではなかった。



だから、俺は何も考えないようにその場を後にした。



帰り道の車の中で、俺はAさんに聞いてみた。



あのさ・・・Aさんの家もお金持ちじゃん?



だったら、ああいう結論って理解出来たりするの?と。



すると、Aさんは、



もしかして、Kさんは何か勘違いしてませんか?



あれはまだ全然終わってませんよ!



Kさんの友達の顔をちゃんと見てましたか?



あれは全てを許したっていう顔じゃありませんから・・・。



自分から全てを奪っていった相手をそんな簡単に許せるもんじゃないでしょ?



まあ、確かに相手の女性も絶対に幸せにはなれませんけどね。



一度でも他人を呪った者は一生、その業を背負っていかなければいけませんから。



だから、今回の件は決して解決したわけではありませんよ。



終わったんじゃなくて、これから始まるんです。



新しい呪いが、Kさんの友達によって・・・・。



今は、何起こっていませんから手の施しようもありませんけど・・・。



でも、近い将来、彼女が呪いに狂い、そして呪いに飲み込まれたら、その時は



Kさんは辛い選択をしなくてはいけませんよ・・・。



呪いの念とともに、彼女自身を消滅させるのかどうか・・・。



今は被害者である彼女が、いずれは加害者になるかもしれません。



その時には心を鬼にしてでも、彼女を止めるのか、それても見逃すのか・・・。



私はKさんの意思に従いますから・・・・。



まあ、その時までにしっかり覚悟だけはしておかなきゃいけませんね!



そう言われ、俺は背筋に冷たいものを感じてしまった。



  


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2019年06月09日

もうスマホは使えない

これは知り合いの女性が体験した話。



彼女は、いわゆるキャリアウーマンという人種である。



イベントプランナーとしての働きぶりは男性顔負けであり、



提案も的確で、仕事も速い。



そんな彼女が手放せないのが、スマートフォンとタブレット



なのだという。



会社で企画を立て、それをお客さんに分かり易いように具体的に



視覚化する。



そして、最終的な詰めは、客先へと移動途中に、タブレットを使い



スマートフォンで情報を集めて、より良く完成させる。



そうした方がより現在の顧客に合ったプランを提供出来るのだという。



そのためには、スマートフォンもタブレットもどうしても必要



であり、欠かす事の出来ないツールになっているそうだ。



そして、これから書くのはそんな彼女が体験した奇異な出来事である。



その日、彼女は、客先に向かうために電車に乗った。



あえて、特急には乗らず、普通列車で時間を掛けて移動する。



そうしていると、色々なアイデアが浮かんでくるのだという。



その時も電車に乗った彼女は、誰も座っていない座席を見つけて



そそくさと座った。



さすがに、隣に誰かが座っていると、仕事にも集中出来ない。



彼女はカバンからスマホとタブレットを取り出すと急いでその日、



プレゼンする予定の企画書に目を通した。



その日の天気が雨模様だったので、プレゼン用の背景の色を少しだけ暗くした。



そうした方が何故か顧客から受け入れられ易いそうだ。



そして、いつも通り、彼女は駅までの所要時間から少し前の時刻にスマホの



アラームをセットした。



いつも、つい仕事に熱中し過ぎる彼女は駅を乗り過ごす事の無い様に、そうして



いる。



そして、再び、タブレットの画面に視線を移す。



それから、どれくらいの時間が経過した頃だろうか・・・。



突然、彼女は電車が何かを乗り越えたような嫌な感覚に襲われた。



それは、紛れもなく、彼女自身が何度か体験した事のある、電車への飛び込み



自殺で電車が自殺者の上を乗り越えた時の様な感覚だった。



現実には、電車の様な重くて速い物体が、人間の体の上を通過したとしても、



座席のシートには体感出来る程の衝撃など伝わらないそうなのだが、そうした



体験をした人の何割かは、確かに電車が自殺者の体の上を通り過ぎている、と



感じるポイントがあるそうだから、あながち気のせいだけで片付けられる



ものではないのかもしれない。



うわぁ…電車が止まったら、どうしよう・・・・。



遅刻しちゃうよ・・・・。



そう思って思わず顔をあげた彼女だったが電車はブレーキをかける気配もなく



周りの乗客にも何ら変わった様子は無かった。



気のせい・・・・なの?



そんなはずはないんだけどなぁ・・・・。



そんな事を思っていると、ちょうど彼女と目が合うものがあった。



それは、隣の車両との接合部分に立ちながら彼女の方を見つめている女だった。



しかし、どう見てもおかしかった。



ワンピースは破れ、そして血まみれになっており、首があり得ない角度で



90度以上の角度で曲がっていた。



ただ、その女が不思議そうに彼女をただぼんやりと見ていた事、そして、



彼女よりも近くにいる乗客の一人としてその姿に驚いたり悲鳴を上げる



者がいなかった事で彼女は全く恐怖を感じなかったという。



大勢の人が周りにいる。



それが彼女に恐怖というものを感じさせない安心感を与えて



いたのかもしれない。



もしかして、何かの企画か、ホラー映画の撮影かな?



彼女はそう思って、再びタブレットの画面に目をやった。



しかし、やはりどうしても気になってしまうのか、すぐにその女の方へと視線を



戻した。



近づいていた。



明らかに、先ほどの距離が1/3ほど短くなっている。



え?どうして?



彼女は驚いた。



その女が近づいてきた音も聞こえなかったし、何よりそんなに長い時間、



タブレットを見ていたわけではなかった。



先ほどより近づいていたその女は、体の至る所から骨が露出し、右足の



足首から下が欠如していた。



あの足で動いたっていうの?



それしても、最近の特殊メイクって、凄いんだなぁ・・・。



そんな感じにしか思わなかった。



ただ、やはり、欠損した右足で、そんな短時間にその女が近づいてきたという事には



何か気持ち悪さは感じていたのだろう。



彼女は、試しにもう一度タブレットに目を戻して、瞬時に再び、



その女に視線を戻してみる事にした。



タブレットに目をやり、そして、すぐに視線を戻した。



時間にして、ほんの0.5秒ほどだった。



しかし、その女との距離は更に1/3まで短くなっていた。



その時、彼女は初めてその女が、映画の撮影をしている訳ではないのだと



確信する。



この女、私にしか見えていないの?



一瞬の間に数メートル・・・。



しかも、これだけ混み合った電車の車内で移動なんか出来るわけがない・・・。



それに、いくら特殊メイクでも、あんな姿で生きていられる筈がない・・。



彼女は恐怖で固まっていた。



それと同時に大きな悲鳴を上げようとしたが、声が全く出なかった。



彼女は完全にパニックになっていた。



その女は相変わらず、ぼんやりと彼女を見つめていたが、何故かその眼には



殺意というものが感じられた。



そして、近くで見ると、その女の体からはポタポタと真っ赤な血が滴り落ちて



いるのが分かった。



もう一度、タブレットを見たらどうなるの?



彼女は恐怖で頭が全く回らなかった。



ただ、絶対にタブレットに目をやってはいけない、という事だけは分かった、



という。



その時、突然彼女のタブレットにメールが着信し、それを告げるアナウンスが



流れた。



周りにいた乗客は、いっせいに彼女へ視線を向ける。



そして、きっといつもの癖になっていたのだろう・・・・。



彼女は思わず、一瞬、タブレットにめをやってしまった。



あっ!



しかし、もう遅かった。



ゆっくりと顔をあげると、そこには彼女の顔を覗き込むようにして、その女の



顔があった。



悲鳴を上げようとして声にならなかったのまでは覚えているという。



そして、それから数分後、彼女はいきなり誰かにぶつかられた痛みで目が覚めた。



彼女は押し倒されるように駅のホームで倒れていた。



そして、凄まじいブレーキ音と共に、彼女の頭をかすめるように電車の車体が



通り過ぎていったという。



大丈夫ですか?



あんた、何考えてるんだ?



色んな声が彼女の耳に飛び込んできた。



そこで、初めて彼女は自分が電車に飛び込もうとしていたのだと分かったという。



自分はもう少しで確実に死んでいた・・・・。



そう思うと体中の力が抜けていった。



そして、彼女はそれから駅の執務室に連れて行かれて色々と事情を聞かれた。



顧客とのアポイントの時刻はとうに過ぎていたが、そんな事は全く



気にならなかったという。



そして、彼女が体験した事を必死で説明したらしいが、駅員は誰も



信じてはくれなかった。



ただ、一人だけ、年配の駅員さんだけが帰り際に、



電車とか駅って、ある意味、そういう事が起こり得る場所だから・・・。



これからは、自分の命はご自分で守らなきゃね・・・。



そう言ってくれたという。



ちなみに、それから、彼女はスマホも、そしてタブレットも全く使わなくなった。



使うのが怖いのだという。



もしも、またタブレットやスマホを使っていて、視線をあげたら、あの女が



すぐ傍に立っている気がして・・・・・。



そう言っていた。
  


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2019年06月09日

長い行列

彼は、亡くなった人が並ぶ行列というものを視た事がある。



それは街の不特定の場所に不定期で現れる。



初めて視た時は、興味本位で近づいたが列には加わらなかった。



その時、それが死者の行列なのだと本能的にはっきりと分かったから。



だから、時折、そんな長い列を視る事はあったが、すぐにその場から逃げる



様にして立ち去る事に決めていた。



そして、そんな列が視えてしまう、という事は自分だけの秘密として、誰にも話さない



事に決めていた。



しかし、昨日、彼は妻から、



不自然な長い行列を見つけてしまい、それに加わろうと



したのだと聞かされたという。



貴女が列に並べるのは、まだ3年先だから・・・・・・。



そう言われて彼女は断念したらしいが、その言葉の意味が分かる?



と彼は尋ねられたのだという。



不思議な事に遭遇した、と笑顔で笑っている妻。



残り3年の命・・・・・。



私には、その悲しい未来を妻に伝える勇気は今のところ持ち合わせていない。



そう言って彼は静かに眼をつぶった。
  


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