2018年11月09日

通学バス

我が家の大監督(娘ともいう)はこの春、高校3年生になる。



家の中ではまるで小学生の頃と変わっていない様に見えるが



家から一歩出るとそれなりにしっかりとした行動も取るらしい。



大監督が通う高校は金沢市の外れにある。



自ら大器晩成型だと主張する大監督は、とにかく勉強がお嫌い。



確かに昔から、勉強はしなくても良いから本だけは読みなさい!と



言っていた記憶はあるが、その本の中に漫画が含まれてしまうとは



想像していなかった。



だから、暇があると必ず漫画を読んでいるか、もしくはゲームに



興じている。



まあ、女の子だから、それほど勉学に長けていなくとも良いとは思うのだが。



話を戻そう。



そんな大監督は毎朝、午前7時のバスに乗り学校へ行っている。



中学時代はギリギリまで寝ているタイプだったから、高校に行き始めた頃は



何かにつけて、熱っぽい、とかなんかお腹が痛いといって学校を休みたいという



信号を妻に送り続けていたのだが、何をしても、



あ~そうなの。大変だけど頑張って学校行ってね!



という妻の冷たい言葉が返ってくる事を悟ったようで、最近は何が何でも



学校には行っている。



ちなみに、1学年の時には、皆勤賞という賞状まで頂いたようだ。



まあ、高校にも皆勤賞というものがあるのか、とそちらに驚いた記憶がある。



再び、話を戻そう。



そんな大監督の通学風景。



バスの中は朝早い時間とはいえ、かなりの混雑らしい。



実はもう少し後の時間帯に、もう一本バスがあるらしいのだが、そのバスでは



最寄のバス停で降りてからかなりの坂道を延々と登らなければいけないらしく、



どうしても高校が終点であり、校門の前で停まってくれるバスに人気が



集中してしまうのだという。



そして、そのバスにはいつも決まった人が座る席があるらしい。



最初、何故あの席にはいつも同じ人が座っているんだろう、と



思っていたらしいのだが、それも高校生活が長くなるにしたがって分かったという。



どんなに人が少なくても、多くてもいつも同じ席に座る事など出来るのだろうか?



そんな不思議な気持ちで大監督はその女子校生を見ていたのだという。



そして、その女子高生は、いつも1人でニコニコしながらバスに乗っている。



まるで、小学生の遠足のように・・・。



たまに、周りをキョロキョロと見回しては、またニコニコと笑う。



しかし、その女子高生の着ている制服は、少なくとも大監督が



知らない制服であり、それでいて、いつもしっかりと終点である



高校まで乗っている。



一体どこの学生なんだろうか?



大監督の不思議はどんどん増幅していった。



しかし、ある時、休みの日に、どうしても学校へ行かなくてはいけなくなった



大監督は、冬の寒い朝に早起きして、午前7時のバスに乗った。



バスの中には誰もいないだろうな・・・。



そんな風に考えながらバスに乗り込むと、その女子高生がいつもの席に



座っていた。



なんで?



大監督は更に謎が深まってしまい、チラチラとその女子校生の方を



見ていたらしい。



すると、その女子高生も大監督の事を見ていたらしく、当然目が合ってしまい、



大監督は、ぎこちない笑顔で会釈をした。



すると、その女子高生は、とても嬉しそうな顔で、ニッコリと笑い返して



くれ、大きくお辞儀までしてくれたのだという。



その後、学校に着くまでの間、何度かその女子高生の方を見ると、ニコニコと



笑いながら窓の外の景色を見ていたらしい。



そして、学校にバスが着くと、大監督はそそくさとバスから降りた。



しかし、バスのドアはすぐに閉まってしまう。



ちょっ・・・・まだあの子乗ってるんじゃないの?



そう思いながら、バスの窓を見上げると、その女子高生は席に座ったまま



大監督に向かって笑いながら手を振ってくれていた。



それに釣られて、思わず大監督も手を振り返したそうだ。



それからというもの、毎朝、バスに乗り込むと、必ずその女子高生がニコニコと



笑いながら会釈してくれるようになった。



勿論、その時、大監督も薄々とは気付いていたのだと思うが、ある時、部活の



先輩とバス通学の話になり、その女子高生の話題になった。



そして、どうやら、その女子高生は、先輩達の間でもうかなり前から語り継がれている



バスの幽霊なのだという。



いつもバスに乗っていてどこにも降りない。



いつもニコニコ笑ってバスに乗っているだけ・・・・。



きっと、もう10年以上前からずっとそのバスに乗り続けているのではないか、



ということだった。



そして、そのバスに乗る高校生達の間では、出来るだけ気付かない様に自然に



振舞うのが慣例になっているという。



それでも、その女子高生の姿が見えない人も稀にいるらしく、その人が



席に座ろうとすると、その場にいる学生全員でそれを阻止するのだという。



そして、どうやらそれはバスの運転手さんも同じ気持ちらしく、学生に



上手に協力してくるのだという。



だって、あの席はあの子だけのものだからね・・・。



先輩は笑ってそう言った。



それからは、大監督も毎朝、その女子高生に会うのが楽しみになっているという。



だって、朝からあんなにニコニコした顔を見ていたら、こっちまで幸せな



気持ちになっちゃうからね!



そう言って笑う大監督の笑顔は、それ自体が十分他人を幸せな気分に



出来るんだろうな、と思わせるものだった。



その女子高生は、今日もそのバスに乗り続けているだろう。



そして、これからもずっと・・・・。


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:40│Comments(0)
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