2018年11月09日

1人では寝られない

彼女は仕事関係の知り合いである。



年齢は30歳を少し過ぎた位に見える。



仕事はデザイン関係の会社に勤めており、実家で両親と一緒に暮らしている。



実家の家族構成は、両親と兄、そして妹がいる。



兄弟それぞれが部屋を与えられているらしく、仕事から帰ると、基本的に



自分の部屋で過ごすらしい。



しかし、どうやら自分の部屋では寝ないのだという。



それじゃ、どこで寝てるの?



と聞くと、母親と同じ布団で寝ているのだという。



?????となった俺は、



もしかして、マザコンなの?



と尋ねると、話してくれたのがこれから書く話である。



彼女の部屋は陽あたりは悪いが、通りに面した大きな窓もあり、なかなか



開放的な部屋だという。



そこで、いつも仕事から帰ると、パソコンに向かってデザインの仕事を



持ち帰ってやっているそうだ。



真面目なのである。



隣の部屋には妹も居り、なかなか賑やからしいのだが、もしも彼女が



部屋に居る時に少しでも眠たくなると、すぐに家族がいるリビングに避難する。



そこで、ウトウトしていても、母親が寝る時間になると、ちゃんと起こして



部屋まで連れて行ってくれる。



どうやら、彼女の母親も彼女が自分の部屋で寝られない理由というものを



しっかり理解しているようだ。



そんな彼女も昔はずっと自分の部屋で寝ていたらしい。



彼女の部屋には、立派なベッドもあり、とても心地よく寝られるらしい。



しかし、ちょうど1年位前、何の前触れも無く、それは起こった。



彼女はその日、友達と行った京都への旅行から帰ってきたのだという。



そして、部屋で音楽を聴いていると、すぐに眠たくなってしまい、明かりを



点けたままままベッドに倒れこんだ。



旅行の疲れもあり、すぐに深い眠りに就いた。



そして、彼女は寝返りを打った。



その時、何か違和感を感じて彼女はハッと目を開けた。



心臓が止まりそうになったという。



寝返りを打った彼女の顔の前には、見知らぬ女の顔があった。



その顔は刀で切られたように深くえぐられ、片方の目は潰れていた。



ベットリとした長い髪がその女の顔にかかっており、血の気の無い青白い



顔は、一目でそれが生きている人間ではないと分かったという。



死臭かどうかは分からないが、何か不思議な匂いがしており、更に



その女は、苦しそうに途切れ途切れの息遣いをしていた。



ただ、その女は何かをする訳ではなく、ただぼんやりと彼女の顔を見つめている



だけ・・・・。



しかし、その恐怖は尋常ではなく、彼女は大きな悲鳴をあげようとした。



だが、声は全く出なかった。



口は動くのだが何故か声は全く出ない。



彼女はどうする事も出来ず、必死に目を閉じた。



すると、急に声が出るようになったらしく、彼女はゆっくりと目を開けた。



その女はもうそこには居なかった。



彼女は慌ててベッドから起き上がり周りを見渡したが、やはりその女の姿は



どこにも見つからなかった。



寝ぼけたのかな、とも一瞬思ったらしいが、それでも不思議な匂いは部屋に



残っていた。



彼女は慌てて部屋から出てリビングに行くと、そこに居た両親に、今



遭った事を話した。



しかし、両親は、



変な事言うなよ・・・寝ぼけたんじゃないのか?



と全く取り合ってはくれなかった。



しかし、どうしても怖かった彼女はその晩は母親と同じ部屋で寝させてもらった。



翌日、仕事に行くと、忙しさもあってか、昨晩の事は彼女の脳裏から薄らいでいく。



そして、仕事で残業をこなした彼女は、家に帰るとそそくさと風呂に入り、



さっさと寝てしまった。



その夜も彼女はすぐに深い眠りに就いた。



そして、異変を感じたのは、それから数時間後。



突然、何かの違和感を感じた彼女は、突然夜中に目を覚ました。



それは背中から感じる違和感だった。



何かがベッドで横向きに寝ている彼女の背中に張りついているような妙な



感覚があった。



彼女は恐る恐る寝返りを打つようにして体の向きを変えた。



やはり・・・いた。



振り返った彼女の顔を覗き込む様に、目の前に昨晩の女の顔があった。



暗闇で見るその女の顔は、昨晩にも増してとても不気味だった。



そして、彼女はまたしても悲鳴をあげようとしたが声が出ない。



だから、彼女は慌てて目をつぶると、必死にお経のようなものを唱えた。



すると、またしても違和感が消えていった。



恐る恐る彼女が目を開けると、もう女は居なくなっていた。



それから、慌ててリビングに行くが、夜中では誰もいる筈が無い。



彼女はリビングの明かりを全て点けて、ひたすら朝が来るのを待った。



朝になって、再び、両親に昨晩の話をした。



しかし、やはり信じてはもらえなかった。



それどころか、兄や妹に聞いても、そんな怪異は体験していないという。



彼女は、仕方なく仕事に出掛けたが、やはり寝不足せいか、昼ごはんを食べると



急に眠たくなった。



そこで、会社の机で仮眠をとる事にした。



昼間という事もあり、何の不安も無かったという。



しかし、机に顔をうずめて昼寝をしていたとき、彼女がふと目を開けると、



そこにはあの女の顔があった。



慌てて目を閉じて気持ちを落ち着かせ、あらためて目を開けると、やはり



その女の顔は消えていた。



それからというもの、彼女が車の中で昼寝していても、公園のベンチで



昼寝していても、必ずその女は現れ、そして彼女が目をつぶると、



何処かへ消えているという事が繰り返された。



それは一度の例外もなく、彼女が寝ると、必ず、彼女の眼前に現れては、



消えるという事は同じだった。



ただ、1つ、気になる事があった。



それは、彼女が寝て、そしてその女の顔を見る度に、その女の顔は、どんどんと



崩れていき、腐り、今では緑色の皮膚をした化け物にしか見えなくなっている、



ということだった。



このまま、あの女を見続けたら、どうなるんだろうか?



彼女はそれが一番恐ろしかった。



だからといって、すっかり大人になっている自分がいつも母親と一緒に



寝てもらうなどという事はきっと叶わないことなのだろう・・・。



だしたら、私はもう睡眠をとれない・・・ということなのか?



彼女は1人で悩んでいた。



すると、ある日、彼女の母親が意外な事を言った。



これから、あんたはずっと私と一緒に寝なさい!



それを聞いた兄や妹も驚いていたが、誰よりびっくりしたのは彼女自身だった。



どたらかといえば、現実主義者であり、厳しい性格の母親がそんな事を



言うなんて・・・・・。



だから、彼女は、母親に聞いてみたのだという。



あれほど私が何を言っても信じてくれなかったのに、どうしてなの?と。



すると、母親は少し困った顔をして、



まあ、あれを見ちゃったからね・・・・。



お前が昼寝している時に、偶然部屋のドアを開けたら、あんたの背中に



張り付く様にして・・・・・ね。



あんなの見ちゃったら私も1人で寝るのが怖くなっちゃってね。



まあ、1人で寝なければなんとも無いのならそうするしかないでしょ?



そう言われた。



そして、それからはずっと母親と一緒に寝ているそうなのだが、そうしていると



あの女は現れないのだそうだ。



ただし、それはあくまで対処療法的なものなので、いずれAさんの力を



借りなくては、と思っている。


Posted by 細田塗料株式会社 at 21:51│Comments(0)
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