2018年11月09日

日曜の昼下がり

友人は、その日が日曜日という事で仕事の疲れもあり、自宅の



自分の部屋でのんびりと読書をしていたそうだ。



妻と子供達は、映画を見てくるということで、家には居ない。



彼も映画に誘われたのだが、どう考えても家出のんびりと過ごした方が



得策と考え、留守番を決めた。



本当はエッセイのような物を読もうと本屋に行ったのだが、食指が



動くようなものが見当たらず、その時エッセイの代わりに購入してきたのは



ホラー小説だった。



元々、彼はホラーというか怖い話というのは好きだったのだが、何故か



ホラー小説というと敷居が高く感じてしまい、それまでに読んだ



経験は無かった。



しかし、読み始めてみると、どんどんとストーリーの中に引き込まれていき



ページをめくる手が止まらなくなった。



そして、ちょうど、そのホラー小説を半分くらい読んだ時だった。



椅子に腰掛けて読書を続けていた彼の耳に、誰かが帰ってきた



ような音が聞こえた。



玄関が開いた様な音は聞こえなかったが、玄関からリビングまでの



廊下を歩いている音が、間違いなく聞こえた。



おや、誰か帰ってきたのかな?



そう考えた彼は、観て来た映画の感想でも聞こうか、と椅子の背もたれから



体を起こし、立ち上がろうとした。



その時、おかしなことに気付いた。



妻と子供達は、妻が運転する車で出掛けて行ったはずだった。



しかし、彼は妻の車が家の駐車場に帰ってきた音は全く聞いていなかった。



彼は、椅子から立ち上がり、窓に近づいて、妻の車を確認しようとした。



しかし、そこには妻の車は止まってはいなかった。



どういうことだ?



彼は、混乱する頭で考えてみた。



しかし、どう考えても答えは見つからなかった。



彼は静かに耳を澄ませてみる。



すると、確かに下の階から、誰かが動き回るような音が聞こえてくる。



やっぱり誰かがいるのは間違いない様だが本当に家族なのか?



いや、もしも家族でなかったとしたら、空き巣という事も考えられる。



日曜日の昼間、家族で出掛けていると判断した空き巣泥棒が、我が家に



進入してきたのではないか・・・・。



自分でも、まさか・・・とは思ったが、妻の車が戻ってきていない以上、



その可能性は否定出来ない。



彼は護身用として使えそうな物を物色した。



すると、部屋の隅に、立てかけてあるエレキギターが目に付いた。



これでも、振り回せば十分強力な武器になるだろう・・・。



彼はそう思い、部屋の隅にあったギターを手に取った。



そし手、静かに音を立てずに部屋から出て行こうとドアに近づいた。



すると、階下から聞こえていた足音が、突然、階段をのぼり始める



音が聞こえてきた。



その時、確信したらしい。



階下に居たのは、家族ではない、と。



階段をあがってくる足音は、いつも聞きなれた家族のものではなく、



まるで重たい体を引き摺るようにしてゆっくりと一歩ずつ階段を



踏みしめていた。



階段をそんな風にのぼって来る足音を聞いたことは一度も無かった。



いよいよ、緊張して、ドアの前に立ち、エレキギターを持つ手に



力を入れる。



すると、階段をのぼって来た足音が、そこで止まった。



彼は緊張のせいか、とても息苦しかったという。



2階には、全部で4つの部屋があるが、ドアが閉まっているのは



彼の部屋だけだった。



家族が家にいるかどうかを確認しに来たのだとしたら、間違いなく



ドアが閉まっている彼の部屋を開けるのだろう。



彼は、もうかなり限界に来ていた。



泥棒と同じ空間に居る・・・・。



それだけで、耐えられない程のストレスを感じていた。



だから、彼は考えた。



ドアを開けられて相手の顔を見てしまったら、もしかしたら命さえ



危険になるかもしれない。



それよりも、この部屋に居るのが大人の男性だとわかれば、すごすごと



家から出て行くのではないか・・・。



そう考えたのだ。



彼は急に、大きな声を出して、わざとエレキギターを壁にぶつけたりして



ドアの外に居る泥棒?を威嚇した。



すると、次の瞬間、ドアがノックされる。



彼は頭がパニックになった。



どうして、この部屋に大人の男性が居ると分かってるのにノックなんて



するんだ?と。



彼はドアをノックする音に反応できず、ただ、固まってドアを



見つめていた。



すると、ドアの取っ手が下へ倒されるのがわかった。



部屋の中へ入ってくるつもりなのか?



彼は、ギターのネック部分を持ち、いつでも臨戦態勢になれる



様に身構えた。



そして、ドアが少しだけ開いた。



ほんの10センチくらいだろうか・・・。



そして、その隙間から見えたモノに、彼は悲鳴をあげていた。



その隙間からは、正座したままの形で、ドアの取っ手を握り、



こちらを窺う女の顔があった。



事故に遭ったのか、病気でそうなったのかは、分からなかったが



顔の半分は崩れ、残りの顔も爛れ、そして腐りかけていた。



唯一、それが女であることは、顔に垂れかかっている長い髪



で、なんとなく理解できた。



彼は、その女から視線を外せないまま、大声で泣き喚いていた。



自分でも訳が分からないほど意味不明の擬音だけが口から



発せられていた。



それを見た、その女は、ゆっくりとドアを開け、そして顔から



部屋に入って来ようとした。



うっすらと笑みを浮かべながら・・・。



彼はそれを見ても、ただエレキギターを握ったまま、震え叫んで



いるだけだった。



殺される・・・。



本気でそう思った。



2階の窓から飛び降りようとも考えたが、体が反応してくれなかった。



死ぬ・・・。



そう思った時だった。



突然、自宅の駐車場に車が入ってくる音が聞こえた。



妻の車に違いなかった。



すると、その女は、突然、逆再生でもするかのように、体を引っ込めて



ドアから出て行った。



彼は放心状態でそれをただ見ていたという。



そして、またゆっくりと階段を下りていく音が聞こえた。



と、それと同時に、



ただいま~!



という元気な声が聞こえてくる。



それは、映画を見終えて帰宅した子供達に違いなかった。



その時、彼はハッと我に返る。



このままでは、あの女と子供達が鉢合わせしてしまう・・・。



それまで固まっていた体が嘘のように、彼はその場から立ち上がり、



一気にドアを開けて階段を駆け下りた。



すると、そこには、元気そうな顔の子供達の姿しかなかった。



車を停めて玄関に入ってきた妻にも、念の為に聞いたらしいが、



気持ちの悪いこと、言わないでよ!



と叱られてしまった。



しかし、家族全員でリビングに戻った時、何故か突然、ドアが



閉まる音が聞こえた。



妻は、



あれ?ちゃんと、ドアの鍵は掛けてきたのに・・・。



と言いながら玄関に行くと、どうやら鍵は掛かっていたようで、



気のせいだったみたい・・・と言いながらリビングに戻ってきた。



彼も、もしかしたら寝ぼけていたのかもしれない、と思いたかった



らしいのだが、部屋に戻り、ドアの取っ手を握ると、そこには



べったりとした液体が付着していた。



それから、彼の家で怪異は起こっては居ない。




Posted by 細田塗料株式会社 at 22:04│Comments(0)
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