2018年11月09日

口減らし

これは測量をしている友人から聞いた話。



彼はその時、上司と二人で県外の現場に向かっていた。



朝から降り続く雨は弱まるどころかどんどんと激しさを増していった。



彼が向かっているのは、冬場はスキー客でそれなりに混雑するが



それ以外の季節はどれも近づく者はいないという辺鄙な山の中。



しかも、突然の業務命令でのイレギュラーな現場であり、なにか



釈然としたなまま、車を走らせていた。



季節は夏前ということで、当然すれ違う車は一台も無かった。



そして、会社を出発してから約2時間かけて現場へと到着した。



現場はスキー場から少し離れた場所であり、何故か畑も無ければ



農作業をしている人すらいない。



実は、彼らはその場所に来る前に、コンビニと言うにはいささか



古すぎる感じの日用品店に寄ってきた。



そこで、昼飯を買ったり飲み物を買ったりしたらしいのだが、



それ以上に重要な理由があった。



それは、彼らがこれから向かう現場について、地元の人に



聞いてみる、ということ。



やはり、その場所ごとに色々な事情があるらしく、なかには



地域住民によって作業の妨害をされる場合もあったからだ。



それは政治的な理由や、住民の対立など様々だったが、やはり



山の中で孤立した状態の中で、妨害に遭うと、途方に暮れてしまう。



だから、それを防ぐ為の事前の聞き取りという意味合いを持っていた。



だから、彼らはねこれから自分たちが向かう場所について何気なく話した。



しかし、その時の地元の方の反応は明らかにいつもとは違っていた。



まるで何かに脅えるように、そして何かを隠しているかのように、



決して口を開こうとはしてくれなかった。



ただ、誰もが口を揃えて、



あそこには近づかん方がいい・・・。



そう話すだけだった。



だから、そのことがずっと頭から離れなかった。



この土地には一体何にがあるのか・・・と。



ただ、測量の作業自体は、それなりに順調に進んだ。



雨の中ではあったが、何も障害になるものも無く、次々と場所を変えて



測量していく。



ただ、そんな中で、少し違和感を感じることがあった。



それは、近くに民家など全く無いにも拘わらず、何故か小さなお墓らしき



墓標がいたるところに乱立している。



しかも、土に木の板を差しただけの墓標だった。



みすばらしく朽ち果てたその墓は、一見すると、お墓には見えない程の



小さなもの。



それが、まるで測量地点を埋め尽くすように乱立していた。



だから、最初のうちはそれを墓標だと認識出来ずに測量を続けて



いたのだか、一旦、それが墓標だと分かってしまうと、まるで



自分達が、無縁仏の墓の中で測量を続けている様な気がして



落ち着かない。



そうして、約半分くらいの地点が終わった頃、彼らは昼食を



取る事にした。



もう既に雨の降りはかなり弱まっていたので、車の中ではなく、



大きな木の根元に腰をおろして、買ってきた食料を食べだした。



夏前とはいえ、雨の降る山中で食べていると、それなりに少し



寒く感じた。



それでもおなかは空いていたので、買ってきた食料はどんどんと



減っていく。



そんな時だった。



突然、雨が止んだ。



そして、何故か空はどんどんと暗くなっていった。



そして、辺りは妙な静けさに包まれた。



すると、突然、誰かがこちらを見ている視線に気づいた。



ゆっくりとそちらを向くと、そこには小さな子どもの姿が。



しかも、泥で汚れたままの着物を着ている。



その姿はどう見ても、現代の子供には見えなかった。



それでも、彼らは、物欲しそうに、こちらを見ているその子供に



買ってきたおにぎりを手にとって、



お腹空いてるのかな?



食べるか?



と明るく声をかけた。



すると、その子供は何も言わずに彼らの方へと走ってくる。



タッタッタッタッ・・・・どんどんと近づいてくる。



そして、彼らのちょうど目の前に来ると、まるで崩れるようにして



腐りながら、地面に倒れた。



声は出なかったという。



恐怖というよりも、何にが起こったのか、全く理解出来なかった。



それでも、ヤバい、と感じたのだろう。



腰が抜けた様に力は入らなかったが、二人で協力して立ち上がると、



車の方へと歩いて行った。



本当なら走り出したかったが、腰が抜けた状態ではゆっくりと歩く



だけで精一杯だった。



すると、背後から妙な音がした。



ズブッ・・・・ズブブブ・・・・・ベチャ・・・。



恐る恐る振り向く彼らの目には、土地の中から這い出すようにして



出てくる無数の子供たちの姿が映っていた。



それは、あくまでその身長から子供だと認識出来ただけであり、



その姿からは、子供の要素は何処にも無かった。



それら全てが腐乱し、肉がそぎ落とされていた。



緑色の皮膚が異様さに拍車をかけていた。



そこで、彼らは初めて悲鳴を上げた。



もう完全に言葉にはなっていなかったが、とにかく叫ばなければ



気が狂ってしまいそうだった。



彼らは必死に車に戻ろうと体を動かした。



しかし、更に恐怖で力が入らなくなっていた体では走るどころか、



歩く事さえ侭ならなかった。



そして、彼は見ていたという。



自分の上司がその得体のしれない子供たちに抱きつかれ完全に



覆われていくのを・・・。



そして、彼もその直後、何かに足を取られて地面に倒れこんだ。



その時、きっと自分も、先ほどの上司の様にされてしまうのだろう、と



覚悟したという。



そして、彼は見た。



無数の小さな塊が彼の足に纏わりついてくるのを・・。



そして、それは傍から見ているよりもずっと気持の悪いものだったという。



腐乱し爛れた顔や手が彼の顔や手足に纏わりついたとき、その冷たさと



ベットリ感、更に、異様な臭気に包まれて息も出来なかったという。



しかし、彼は何故か、それらの小さなモノ達をふり払う事が出来なかった。



そして、それはきっと先ほど目の前で倒れた上司も同じ気持ちだったのだろう、と



強く思った。



それらに纏わりつかれていると、恐怖と同時に、可哀想、とか愛しい感情が



湧き上がってきてしまい、何の抵抗も出来なかったのだから・・・。



そして、彼はそのまま意識を失っていくのを感じた。



ああ…俺はもう死ぬんだ、と思いながら。



それから、どれだけの時間が経過したのか。



彼らは気がつくと、車に寄りかかるようにして地面に座っていた。



もしかすると、夢だったのかも、と思ったが、上司と彼の記憶は一致



しており、更に、彼らの体には、酷い匂いがこびり付いていた。



そして、それから彼らは測量を中止して逃げるように会社へと



向かった。



そして、衣服だけでなく体にも付いた臭いは、どれだけ洗っても



消えることはなく、完全に臭いが消えるまでに3か月かかったという。



そして、それから彼が別の会社の友人と飲んでいた時の事。



こんな話を聞いた。



○○県のとある現場は、地元の業者に全て断られたので、どうやら



石川県の業者に依頼したのだという。



そして、その土地というのが、以前、江戸時代なのか、それよりもっと



昔なのかは、わからないが、飢饉の為に口減らしというものが



行われた場所なのだという。



いわゆる、家族が生き延びるために、働けない子供は、殺すか、



山へ捨てるか、という愚行を行ったという事である。



そして、それ以来、その土地は地元民は絶対に近付かない場所になっており、



きっと、その仕事を請け負った奴らは、既に呪われているだろう、



という話だった。



そして、それが、どこの会社が請け負って、誰が行ったのか、は



分からないが、と付け加えた友人に対して、それは自分だ、



とき口が裂けても言えなかったという。



ちなみに、それ以後、彼らの身には怪異は全く発生していない。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:11│Comments(0)
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