2018年11月09日

海中・・・・・。

これは俺が子供の頃に見聞きした話である。



このブログにも何度か書いているが、俺の母親の実家は石川県の



能登地方にある、とある漁村だ。



母の兄である叔父は、漁師をしており、夏休みに遊びに行くと、



暇を見つけては俺たちを自分の船に乗せて沖へと連れて行ってくれた。



そして、俺が子供の頃、母から聞いた話にこんなものがある。



かつて、その町の漁師が、大きなイカに船ごと巻き付かれて、そのまま



海底に沈んでいったという話だ。



最初に聞いた時、俺はその光景を思わず想像してしまって、夜、



寝られなくなった記憶がある。



もっとも、それから成長するにつれ、そんな巨大なイカなど



存在するはずが無い、という根拠の無い常識によって、その恐怖は



どんどんと薄れていったのだが・・・・。



そして、これから書く話は、俺が最初に母親からその話を聞いてから



5年くらい経った頃の話だ。



その年の夏休みも家族で母の実家に泊まりに行った。



泊まりにいくといっても、1泊とかのレベルではなく、母親が大好きな



夏祭りが終わるまで、ずっとその田舎に居なければならなかった。



当然、父親は仕事がある為、俺たちを置いて、さっさと帰っていく。



正直、もう中学生になっていたであろう俺は、暇を持て余していた。



何か面白いことは無いか、と毎日、村中を駆け回ったが、在るのは



豊かな自然と綺麗な海だけ・・・。



そんな時、いつもの様に、叔父が船に乗せてやる、と言ってくれた。



当然、暇で死にそうになっている俺たち兄弟はすぐにその話に飛びついた。



船には俺達兄弟と、従兄弟3人が乗っていたと思う。



船はかなり大きく、沖に出ると、たまに操縦の真似事もさせてくれたりして



とても楽しかったのを覚えている。



そして、沖に出て、釣りを楽しんだ。



その地方では、ボウズと呼ばれている魚を釣るわけだが、餌など必要なかった。



針の先に小さな固形物を付けて、そのまま海に投げ込む。



そして、ゆっくりと船を進ませていると勝手に魚がかかってくれた。



そして、その魚をリールでゆっくり釣り上げる。



本当に超簡単で確実な釣りであり、すぐにバケツは一杯になった。



その間、叔父はバケツに入れられていく魚の数を何故か季美して目で



見ていた気がする。



そして、2つのバケツがちょうど一杯になりそうになると、叔父は急に



そろそろ終わりにしないとな・・・・。



と言って、船の方向転換を始める。



正直、もっとその場所で釣りを楽しみたかった俺たちは、ぶーぶーと



文句を言ったが、叔父は聞く耳を持たなかった。



そこで、従兄弟と相談して、ある事を試すことにした。



それは、釣竿もリールも使わずに、手で釣り糸を持ち、海中に沈める、



という事だった。



先ほどまでの釣果を考えれば、その方法でも魚は連れる筈だった。



そして、船の縁に座った俺たちは思い思いに釣り糸を海に垂らした。



すると、すぐに釣り糸が強い力で引っ張られる。



しかし、そのまま引き上げては叔父にバレてしまうと思い、少しずつ



釣り糸を手繰り寄せながら、魚の手応えを楽しんでいた。



そんな時、従兄弟が急に大きな声を上げた。



そして、従兄弟を見た俺たちは、驚いて同じような声を上げてしまう。



そこには、手がスパッと切れ手のひらから地をポタポタと滴らせている



従兄弟の姿があった。



運よく、叔父にはばれていなかった。



俺たちは、急いで従兄弟に駆け寄り、



大丈夫か?どうした?



と聞いた。



すると、従兄弟は、



なんか凄い力で釣り糸が持っていかれて・・・。



気が付いたら釣り糸が無くなって、手か切れてた・・・。



と痛そうに呟いた。



もしかしたら、サメなんじゃないか・・・・。



俺たちは従兄弟の手を心配するフリをしながら、実は海の中にいるであろう



巨大なサメの仕業なのではないか、と勝手に盛り上がっていた。



勿論、それまでに小型のサメは見たことがあったが、大きなサメは



見たことも無く、俺たちの心は一気に躍った。



そして、どれどれ、と俺たちが船の縁から海の中を覗き込んだとき、



何かが船の下にいるのがわかった。



いや、船の下・・・という表現は当てはまらなかった。



それは白い体をしており、辺り一面の海が真っ白に見えるほどの



大きな何かだった。



それが、船のわずか下の海中にいるのだ。



俺たちは一瞬で固まってしまった。



何しろ、見たことも無い巨大な白い物体が船の下を泳いでいるのだ。



しかも、その大きさは漁船の数倍どころではない。



そして、それが海の中を船の進行方向と同じ方向に向かって泳いで



いる姿は異様だった。



そして、船と同じ進行方向に泳いでいるという事が恐ろしかった。



そいつは、俺たちが乗る船を狙っているのではないのか・・・。



そう思うと、足が勝手に震えてくる。



そして、その白い物体は、ゆっくりと船と歩調を合わせる様に



泳いでいたが、どうやら、あっちの方が速い速度で泳いでいる様で



白い巨体が少しずつすぐ真下の海中を通り過ぎようとしていた。



そして、その様子を怯えながら見守っていた俺たちは、、それが何なのかが、



判った気がした。



その白い物体の最後には、とても長く太い触手が沢山ついていたのだから。



これってサメなんかじゃない・・・・。



しかし、それ以上、誰も喋ることは出来なかった。



俺たちの頭の中には、昔、母から聞いた巨大なイカの話が鮮明に



思い出されていた。



そして、それと同時に、もしも、巨大なイカが船の下に居るのだとしたら、



この船は大丈夫なのか?



母から聞いた話の様に、まき付かれ転覆させられてしまうのでは・・・。



それほど間近で見る巨大な海中生物は俺達を恐怖の底へと突き落としていた。



と、その時、船のすぐ横の海面を何かが叩く音が聞こえた。



バシャーン!



それは、まるで大きな鯨がジャンプでもしたかのようであり、その後、



大きな波が俺たちの乗る船を大きく揺らしていた。



その時、



お前たち、何してる!



それは血相変えて駆け寄ってきた叔父の言葉だった。



そして、俺たちが持っていた釣り糸を見つけた叔父は、



まさか、お前たち、あれからも釣りを続けてたのか?



その顔はかなり険しいものに変わっていた。



俺たちは、叔父に怒られるという恐怖で更に固まってしまったが、



叔父は、そのまま操舵室へ行き、一気に方向を変えると、エンジンの音が



一気に変わった。



それまでとは、比べ物にならないような速度で船は波の上を飛ぶように



進んでいく。



叔父が何かから逃げているのだとすぐに判った。



船を操縦する叔父の顔からは、いつもの穏やかな顔は消え、明らかに



焦っているのが伝わってくる。



そして、俺たちに向かって大声でこう言った。



船の底にうつ伏せに寝て、しっかりとつかまってろ!



俺たちは、その言葉に素直に従った。



あの巨大な白い物体を見た閉まった今となっては、海のプロである



叔父の言うとおりにするしかなかった。



そして、今、どれだけやばい状態なのかは叔父の顔を見れば、容易に



想像出来た。



船はきっとフルスロットルで航行していたのだろう・・・。



俺たちの鼻にも、少し焦げ臭い様な匂いが入ってくる。



しかし、それだけスピードを上げていても、船の横からは、



バシャーン!バシャーン!



という海の上を何かで叩きつける様な音が聞こえてくる。



はっきり言って、生きている心地がしなかった。



もしも、あの触手が、この船に巻き付いてきたら・・・・。



想像するだけでも恐ろしかった。



そして、まるでそんな気持ちを見透かしているかのように、



時折、船の横っ腹から、ドンッという大きな音が聞こえてくる。



きっと、その時、俺達兄弟も、そして従兄弟たちも、皆、床に伏せて、



必死に祈っていたに違いない。



神様、助けてください、と。



しかし、その音も、船が港に入る頃にはすっかり消えていた。



俺たちは助かったという安堵感でいっぱいだったが、きっとその後、



叔父に怒鳴られるのだと覚悟していた。



だが、叔父は、すぐに港に船を着けると、急いで俺たちだけを先に船から



降ろした。



そして、それから、船を停泊させると、そのまま疲れきった顔で



実家へと俺たちを連れて行った。



何も言わず、怒りもしなかったのが逆に恐ろしかった。



そして、それからもその体験が夢だったのかと思ってしまうほど、



何も怒られる事も無かったのだが、俺たちがいよいよ



明日、金沢に帰るという夜に、こんな話をしてくれた。



昔、漁船が大きなイカに水中に引き込まれたという事故は本当に



あったことなのだ、と。



周りにいた漁船が、はっきりと長い触手を見たらしい。



そして、そいつに沈められた漁船は1隻や2隻ではないのだということ。



そして、何故か、生業としての漁ではなく、娯楽としての釣りをする場合には



決してバケツ2杯以上の魚を釣ってはいけない、という決まりがある、



ということだった。



何故そんな決まりが在るのかは、判らないが昔から決められている



決まり、というモノには、必ず何か原因となった事があるのだ、と。



だから、それはしっかりと守らなければ、今日のようなことになってしまう、



という事を。



そして、最後に言った。



きっと、お前たちも、白く大きな体と長い触手を見たんだと思うが、



漁師は皆、口には出さないが、それをいつも見ているのだ、と。



そして、海で漁をしていると説明が付かないような巨大な生物や



不気味なモノを見る事は日常茶飯事なのだと。



それを聞いて、俺は今だから思う。



確かに、最近ではダイオウイカがカメラに収められたり、網にかかったり



している。



あの時、見た体も触手もあんなに小さなものではなかった。



だから、きっと海の中には、現在まで見つかっていない巨大な



モノ達が、今もしっかりと生きているのだ、と思う。



もしかしたら、昔、クラーケンという巨大イカに多くの船が沈められた



という伝説が残っているが、それは全て実際に起こった事なのかもしれない。



あの時、アレを見た俺は、そう思えて仕方ないのだ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:26│Comments(0)
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