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2018年11月09日

見ただけで人を殺せるモノ・中

彼女はある意味、自分の運命が分かっていたのかもしれない。



だから、身の回りを整理し、いつ終わりが来ても良いように



準備していたようだ。



しかし、周りの親族達はそうではなかった。



ある朝、起きると、大きな木が倒れていたり、川に架けられた橋が



落ちていたりと、外界への道が閉ざされてしまう。



そして、次の朝には、彼女の親族全員の車が、まるで大きな岩が



ぶつかったかのように潰されていた。



彼女の親族の子供達が次々と原因不明の病に倒れた。



夜中に突然、気が狂ったように家の外へ出て踊りだす者も出た。



彼女の先祖代々の墓が、跡形もなく粉々にされた。



そして、自殺をする者が後を絶たなくなった。



姿は見えなかったが、家の中、そして外から、まるでお経を唱える



様な声が聞こえるようになった。



その土地だけ毎日のように雨が降り続き、陽は差さず、農作物も枯れ



土地もどんどん荒廃していった。



朝起きると、親族が飼っていた犬と猫が全て死んでいた。



と怪異は枚挙に暇が無くなった。



しかし、それはほんの手始めに過ぎなかった。



まるで、彼女の周りから少しずつ恐怖を与えていくように・・・。



それから、彼女は毎日、毎時、怨霊の姿を見るようになった。



食事をしていても、気が付くと気持ちの悪い女が前に座っていた。



彼女が霊力を高めるために使っている水晶も割れ、その怨霊を祈祷する為に



古くから決して絶やした事の無い祭壇の火が、突然、消えてしまった。



常に、彼女の耳には、その怨霊の声が聞こえるようになった。



いつ、何処にいても、必ず視界の片隅にはその女が立っていた。



その時、彼女は初めて気付いたと言う。



その怨霊が、「見ただけで人を殺す」のだという事は、祖母から聞いた話



だったが、彼女にもその意味が分かったのだ。



実際、彼女はその女の姿をまともには見ていなかった。



異様な気配を感じ、それが視界に入ると同時に彼女はすぐに目を閉じた。



それは、彼女の自己防衛であった。



しかし、確かにその女を少しでも見てしまうと、体中が虚脱感に襲われ、心臓が



激しく動悸した。



それは生気を吸い取られるというか、寿命を吸い取られている様な



嫌な感覚を伴って彼女を襲った。



そして、それからは、見るだけではなく、彼女に実害が及び始める。



家の階段を降りようとしたとき、突然背後から何者かに突き落とされた。



寝ていると、その怨霊が枕元に現れ、彼女の首を絞めた。



そして、彼女の足の指を1本へし折る。



そして、それは毎晩続き、彼女は歩けなくなった。



それでも、親族には彼女以外に頼れるものはなく、車椅子に乗った



状態の彼女に祈祷を続けさせる。



しかし、それでも彼女への実害は収まらない。



それこそ、毎日のようにそれは彼女の前に現れて、抵抗出来ない



彼女の体を痛めつける。



片方の耳は引きちぎられ、髪も引き摺られたあげく、引きちぎられた。



それでも、彼女は必死に毎日の祈祷を続ける。



それしか彼女には出来なかったから・・・。



しかし、それがかえって怨霊の怒りを買ったのかもしれない。



ある日、彼女が一心不乱に祈祷している時、突然、亡くなった祖母の声が



聞こえ、彼女は目を開けた。



すると、そこには、怨霊のおどろおどろしい姿があり、彼女は初めて



その姿を間近で見てしまった。



その途端、彼女は狂ったように自らの両目に指を突っ込み、眼球を



引きちぎった。



悲鳴を聞いた親族が慌てて彼女を市内の病院に連れて行こうとしたが、



既に市内へと続く道は、怨霊により通れなくなっていた。



それから、彼女と親族は震えながら、死が訪れるのを待つ事になった。



勿論、その時の俺には、そんな状況など全く伝わってこなかった。



しかし、世の中とは狭いもので、思いがけない所から、彼女の現況を



知る事になる。



それは、彼女らの一族に、もう自分達を護る力は無いと悟った大地主一族が



知り合いを通じてAさんに打診してきたのである。



その話を聞いたAさんは、かなりの大金を謝礼として積まれたらしいのだが、



ふーん、と言っただけで、あっさりとその申し出を断ったらしい。



そして、その翌日、Aさんから、その話を聞いた俺は初めて彼女の



窮地を知る事となった。



しかし、俺などではどうにもならないことは明白だった。



そして、彼女が全く歯が立たないほどの強力な怨霊退治をAさんに



頼むのはさすがに気が引けた。



だから、一応、遠まわしに聞いてみる。



あのさ・・・見ただけで人を殺せる怨霊って、やっぱり凄いのかな?と。



すると、Aさんは、



当たり前じゃないですか?



見ただけで死ぬんですよね?



冗談じゃないですね。



普通なら逃げ出しますよね。絶対!



と予想通りの答えが・・・。



俺は、さすがにAさんに頼むのは諦めて自分で何とかしようと考えた。



見ては駄目だとしたら、どうすれば良い?



目隠し?



いや、そもそも見ただけで死ぬというのは、こちらが見ただけで死ぬのか、



それとも、相手に見られたら死ぬのか・・・どっちなんだ?



しかし、ぐずぐすしている暇は無かった。



俺は、取るものも採りあえず、彼女の家に向かった。



手には経本を持ち、濃い目のサングラスをかけて・・・。



そんなものなど何の約にも立たない気がしたが、何もしないよりは



マシな気がしたから・・・・。



そして、車で彼女の家を目指した。



彼女の住む町が近くなるにしたがって、まるで大地震でもあったかのように



道が崩れていた。



それでも、何とか回り道をしながら、彼女の家に到着した。



呼び鈴を押すと、見知らぬ男女が少し驚いた顔で現れ、そして



俺を奥の間へと通してくれた。



すると、そこには変わり果てた姿の彼女が床に伏していた。



顔はもとより、体中が包帯で覆われた姿は、見ているだけでも痛々しかった。



そして、どうやら、そんな状態でも必死になって布団の中でお経を



唱えていたらしい彼女は、俺の声を聞くと、



どうして・・・どうしてこんな所に来たんですか?



どれ程危険か、分かってるんですか?



と自分の事よりも、俺の身を案じてくれる。



そんな彼女を見ていると、その怨霊というモノに、とてつもなく



怒りがこみ上げてくる。



どうして、彼女がこんな目に遭わなければいけないのか・・・。



一体彼女が何をしたというのか・・・・・。



そして、彼女をこの理不尽な呪いから解き放つにはどうすれば良い?



俺は必死に考えた。



しかし、答えなど見つかるはずも無く、俺はただ怒りだけで震えていた。



そんな時、彼女が言った。



今ならまだ間に合うかも知れない。



早く逃げてください。



もう私にはKさんを護って上げられる力はありません。



いえ、そもそも、初めから、相手になっていなかったんです。



だから、一刻も早く逃げてください!



しかし、もう既に遅すぎたようだった。



突然、雷鳴が轟くと、屋根の上に何かが落ちてくる音が聞こえた。



ドーン!・・・。



その音を聞いた彼女は更に大きな声でお経をあげ始める。



すると、玄関の戸がバターンと大きな音を立てて開いた。



家の中からは悲鳴が響き渡る。



いよいよ、見ただけで人を殺してしまうという怨霊と対峙しなくては



いけないのか・・・・



そして、廊下をペタンペタンと歩いてこちらへ近づいてくる足音が



聞こえてきた。





Posted by 細田塗料株式会社 at 22:31│Comments(0)
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