2018年11月09日

雷雨の夜

これは知人女性の体験談。



彼女はその日、仕事で帰宅が遅くなった。



1人暮らしの彼女は帰り道にコンビニに寄り、弁当を買って帰った。



自宅であるマンションに帰宅すると、取りあえずスウェットに着替え



テレビを観ながら買ってきた弁当を食べたそうだ。



そんな事をしていると、時計の針は既に午前0時を廻っていた。



明日も仕事だ!と思い、彼女は慌ててシャワーを浴びに行く。



季節はちょうど6月であり、ぬるめのシャワーが心地よかった。



すると、突然、轟音がして浴室の照明が消えた。



完全に真っ暗になった浴室で、彼女は固まってしまう。



そして、一体何が起こったのか、と必死に考えた。



確かに電気のブレーカーが落ちる事は何度かあったが、そのどれもが



過剰に電気を使っていた時だった。



しかし、今、自分は浴室でシャワーを浴びているだけ・・。



一体どうなっているのか?



彼女は真っ暗闇の中で、シャンプーを洗い流すと急いで浴室から



飛び出した。



その時、何か不思議な感じがしたのだという。



自分の部屋なのに、何処か違う所に居る様な不安感。



そんな言葉が頭に浮かんだ。



浴室から出た彼女の前に広がっているのは、真っ暗な廊下とその先にある



真っ暗なリビング・・・。



明かりが無いというだけで、まったく違う感覚を与える部屋の様子に



彼女は妙な違和感を感じていた。



と、その時、突然、部屋の中が一瞬青白く光り、その後地響きを伴って



轟音が部屋中に鳴り響く。



うわっ・・・。



彼女は思わず声を出してしまった。



やはり停電を引き起こしたのは雷だった。



これで確かに停電の原因はわかったが、そりは彼女を安堵させるもの



ではなかった。



何しろ彼女は雷が大の苦手だったのだから・・・。



彼女はしばらくの間、固まっていたが、そのままでは埒が明かず、急いで



暗闇の中でバスタオルを手探りで探すと、急いで髪の水分をふき取る。



電気が通っていないというだけで、これほど不便なものなのか、と



彼女は改めて実感した。



確かに、電力の復旧を待ってからしっかりとドライヤーで髪を乾かす



という選択肢も在ったのだろうが、彼女はその時、何かに急かされていた。



自分でもよく分からない何かが、早く髪を乾かせ、と急かしていた。



こんな気持ちは初めてだった。



それは例えるなら、以前、大地震を体験した時、次の余震が来る前に



ゆれに備えなければいけない、という切羽詰った感覚にとても似ていた。



そして、その時の異様な静けさが彼女の恐怖心に拍車をかける。



雷が鳴り停電まで起こしていながら、まるで雨は降っていないかのような



不思議な静けさだった。



こんな夜はさっさと寝てしまおう・・・・。



彼女は立ち上がりながらそう思っていた。



すると、その時、先ほどまで彼女がシャワーを浴びていた浴室のドアが



ひとりでに開いた。



ガチャっ・・・・。



それは静か過ぎる部屋の中ではかなり大きく聞こえた。



そして、彼女はまた固まった。



彼女の部屋にある浴室のドアは、かなり重たいドアであり勝手に開くなど



考えなれなかったのだから・・・。



どうして・・・・。



彼女は、どうしてドアが開いてしまったのか、を確認する為に廊下



の方を向き、歩き出そうとしていた。



その時、再び雷鳴が鳴り響いた。



すると、浴室の開いたドアの隙間から、見知らぬ女がこちらを見ていた。



どうして、真っ暗闇の中、一瞬の光の中で、それが人であり女だと



判ったのかは自分でも分からなかった。



ただ、何故か真っ暗な部屋の中で、その女の姿だけが、ぼんやりと浴室内に



浮かび上がっていたのだという。



白いガウンのような物を身にまとい、ずぶ濡れ状態の見知らぬ女。



ポタポタと水滴が落ちている事さえ、はっきりと見えたのだという。



そして、そこからが彼女の変わったところだ。



普通なら悲鳴をあげて逃げ出すのだろう・・・。



しかし、彼女は、それを見なかった事にして、そそくさと寝室へ行き、



スライド式のドアを閉めると、ベッドに潜り込んだ。



彼女はいつもこんな感じなのだという。



見てはいけないモノを見てしまったときは、速やかに目の錯覚だと言い聞かせ



布団の中へと避難する。



確かに、それまで彼女は怪異に遭遇するたびに、そうやって難を逃れてきた。



しかし、どうやら、その時ばかりはそうはいかなかったようだ。



布団の中に入ってから、彼女は気持ちを落ち着かせるように必死に



考えていた。



あれは何なのだ?・・・・・と。



彼女のマンションにはエントランスにオートロック等存在しない。



しかし、間違いなく彼女は部屋に入る時に、玄関のドアをロックした。



それは、もはや、彼女の無意識の行動パターンになっている。



そして、この部屋はマンションの5階にある。



そして、浴室の窓の下は、そのまま地面まで突起物は存在しない。



だとしたら、あれは一体何なのだ?



考えれば考えるほど、彼女は得体の知れない恐怖に押しつぶされそうになる。



と、その時、彼女の耳に何かの足音が聞こえてくる。



ペタッ・・・・ペタッ・・・・・ペタッ・・・・。



それは明らかに誰かが塗れたままの素足で廊下を歩いてくる音。



そして、それは先程浴室に立っていた女が近づいて来ているのだと



簡単に想像出来た。



来ないで!・・・・お願いだから・・・・・・。



彼女はベッドの中で必死に手を合わせた。



そして、思ったという。



今まで幽霊どころか、不思議な事すら起こった事が無かったのに、



どうして?



しかし、その間もずっとその足音は聞こえ続けていた。



静か過ぎる部屋の中に・・・・。



彼女は必死に息を殺し、ベッドの中で体を小さく丸めていた。



そうしていれば、もしかしたらあの女が何処かへ消えてくれる・・・。



そんな気がしていたそうだ。



しかし、次の瞬間、彼女の寝室のドアがスーッという静かな音と共に



開くのが分かった。



彼女はもう生きた心地がしない状態であったが、それでも必死になって



南無阿弥陀仏、など少しでも知っているものは全て心の中で唱え続けた。



もっと、しっかりとお経を勉強しておけば良かった・・・・



と後悔していた。



すると、何かが布団の中に入ってくる感覚があり、次の瞬間、何かが彼女の



両足首を掴んだ。



それは下手をすると心臓麻痺で死んでしまうのではないか、と思えるほど



冷たく硬い手だった。



手の甲の肉というものが全く感じられないようなゴツゴツとした



指の骨の感触。



そして、それを上回るほど、異常なくらいの冷たさの手だった。



そして、その手がぐいぐいと彼女の足を引っ張りだす。



まるで、彼女を布団から引きずり出そうとしている感じだった。



彼女は足をバタバタとして抵抗したが、その手は異様にガッチリと



彼女の両足首に食い込んでおり、そして、その凄まじいばかりの力で



足首からは激痛が走っていた。



下へ引っ張られ、彼女はすぐに上に上がる。



そんな事を繰り返しているうちに、彼女の膝くらいまでが布団から



完全に出てしまう。



正直、その得体の知れない女の眼前に自分の膝から下が露出していると



考えただけで卒倒しそうになった。



しかし、彼女は必死になってそれに抗い続けた。



それから、どれ位の時間、彼女は足を引っ張り続けられたのか・・・。



突然、彼女の足から、女の冷たい手の感触が消えた。



しかし、油断することなく、彼女はそのまま足を布団の中に入れ、



じっと固まったまま耳を済ませていた。



もう雷鳴は聞こえなくなっていた。



もしかして・・・。



そう思った彼女は、ほんの少しだけ布団を浮かし、その隙間から寝室の



様子を窺った。



すると、どうやら寝室の明かりはしっかりと点いていた。



それどころか、リビングの明かりもしっかりと点いているのが分かった。



彼女はホッとして布団から顔を出した。



死ぬかと思ったという。



そこには、髪の長い、やせ細った女が彼女の横に立って顔を近づけており、



布団をまくった彼女の顔のすぐ前に女の顔がアップになっていた。



言葉では表現できないほどの不安感に満ちた顔。



そして、その女は満面の笑みを浮かべていた。



やっと見つけた・・・とでも言うように・・・・。



そして、彼女は意識を失い、目が覚めるとすっかり朝になっていた。



しかし、彼女は会社には行けなかった。



彼女の両足首は、しっかりと骨折していたのだから・・・。



そして、病院へ運ばれた彼女の足を診た医師は首をひねるしかなかったという。



何故なら、彼女の足首には、しっかりと紫色のあざが残されていのただから。



そして、彼女はそのまましばらく入院する事になった。



その時、友人達に事情を話し、彼女の部屋の様子を見に行ってもらった



らしいが、部屋の中はまるで何かを探し回ったように荒らされており、



所々に、ぬれた足跡が残っていたという。



それと同時に大領の長い髪の毛も部屋中に散乱していたという。



そして、彼女は入院中に引越しを決め、業者に委託して引越しを全て



完了させた。



その部屋で過去に何があったのかは分からないが、引越し後、彼女の身に



怪異は発生していないという。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:34│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count