2018年11月09日

河童

金沢市にある坪野キャンプ場。



キャンプ場なのに、キャンプ目的での使用が禁止という不思議な場所で



あるが、よく考えると、昔から俺、そして友人が、その近くで頻繁に恐怖体験に



遭遇しているといういわくつきの場所でもある。



そして、今回書くのは、その坪野キャンプ場近くの池で友人が体験した話である。



池は幾つかあるのだが、ここでは詳しい場所は伏せておく。



ある日、俺の友人がその池に釣りに行った。



車で出かけ、一度場所を決めると、釣れようが釣れまいが、一日中その場所で



粘るというのが彼のスタイルだった。



朝暗いうちから自宅を出た彼は、金沢市の坪野方面へと車を走らせた。



そして、事前に下調べしてあった池まで来ると、愛車のワンボックスを



池の近くに停めて、釣りの準備を始める。



彼の狙いは、殆どがブラックバスなのだが、特に拘りは無く、釣れるものなら



なんでも・・・という感じだった。



ワンボックス車のバックドアを上げたまま、彼は、持ってきたクーラーバックや



折りたたみ式の椅子を用意して、釣りを開始した。



釣りを開始すると、すぐにブラックバスがヒットした。



しかも、入れ食い状態だったらしく、彼は上機嫌で釣りを続けた。



ブラックバスは釣り上げたら、持ち帰らなければいけない条例があるらしく、



彼は、釣り上げた魚をすぐにクーラーバックに入れていくのだが、すぐに



一杯になってしまった。



どうやらブラックバスは食べられるそうであり、彼も当然、家に帰ってからの



ブラックバスのフルコース?を予定していた。



ブラックバスは、よく食べても美味しくないという話を聞くが、彼曰く、



臭い部分をきちんと取り除けば、普通に美味いのだそうだ。



だが、彼が釣りをする本来の目的は気分転換ということだった。



仕事とか家庭の事などを完全に忘れて、ゆったりと過ごす。



そんな時間があるからこそ、彼は仕事を頑張ることが出来ていた。



だから、その時も、最初は釣りに没頭していたが、缶ビールを飲み始めると



彼はもう釣りなどどうでも良くなってきた。



缶ビールを飲みながら誰もいない池の辺で好きな音楽を聴く。



それは何物にも代えられない程の充実した時間だったし、日ごろのストレスも



どんどんと消えていくのが分かった。



そうしているうちに、彼はいつものように寝入ってしまった。



穏やかな気候とよそ風がとても心地よかった。



だから、彼はいつもよりも深い眠りに就いてしまったのかもしれない。



それから、どれだけの時間が経過したのだろうか・・・。



彼は突然、何か得たいの知れない違和感を感じ、目を覚ました。



いつもなら寝起きはスッキリしている筈なのだが、妙に頭が重く



感じた。



そして、辺りはかなり暗くなっていた。



天気予報ではその日は一日晴天のはずだった。



疲れていたから寝過ぎてしまったのか?



彼は手元にあったスマホで時間を確認する。



すると、時刻は午後2時を回ったところだった。



なんでこんなに暗いんだ?



彼はゆっくりと車のリアハッチから起き上がると、辺りを見渡した。



そこには晴れた朝の風景とは、全く違う気味の悪い空間が広がっていた。



日が差さないだけでこんなに雰囲気が違うものなのかな・・・。



そう考えながら視線を動かしていくと、ある地点で彼の視線は釘付けになった。



池の中に誰かいる・・・・。



彼は見間違いだと思い、何度も池の方を見たのだが、確かにそれは居た。



池の水面から鼻から上だけを出している女。



女だと思ったのは、その長い髪と大きな目がその理由だった。



確かに池なのだから、人が泳いでいないとは言い切れないのだが、



その時のそれは明らかに、人には見えなかったという。


池の中央付近で静止したまま、こちらをじっと見ていた。



何か得体のしれないもの・・・・・。



そう感じると同時に、



早く逃げなくては!



と彼の中の何かが叫んでいた。



しかし、水面から顔を出している女は明らかに彼の方を見ていた。



それは、彼を観察している、というよりも、彼の隙を狙っている



様な気がしたのだという。



だから、彼は出来るだけその女から視線を外さないようにして帰り支度を



始めた。



もう、釣りの道具も何もかも、どうでも良かった。



とにかく早くこの場所から来るまで逃げ出したい!



それしか考えていなかったという。



しかし、その女かに視線を外さないようにするのにも限界があった。



彼は、地面に置いた車のキーを取ろうとした時に、うっかりと視線を



外してしまう。



心の中で、



しまった!



と呟いた。



そして、ゆっくりと視線を池の方へと移した。



しかし、そこにはもう先ほどの女はいなかった。



やはり見間違いだったのか・・・それとも何処かへ行ってしまったのか?



そう思った彼だったが、それはどちらも違っていた。



視線を車の方に戻した時、彼は信じられないものを見た。



それは、彼の目の前に立つ、先ほどの女の姿だった。



全身がすべすべした緑色の肌で覆われ、身の丈は軽く2メートル近くあった。



細身の体だが、筋肉は感じられた。



体には藁のようなものが巻きつけられていた。



そして、肝心の顔だが、先ほどは見えなかった部分がはっきりと見えていた。



水面から出ている部分だけをみれば、それはきっと美しい部類に入るのだろう。



しかし、顔全てが露出してしまえば、口は耳元まで裂けており、鼻には



穴が開いていない。



不気味としか言えない様な容姿をしていた。


河童?という言葉が彼の頭に浮かんでいた。



彼はしばらくその女と見つめ合っていた。



視線を外せば危険だ・・・。



そんな気がしていたから・・・。



すると、突然、その女はニターッと笑うと、何かを藁の中から取り出した。



ここからはあまり書きたくないのだが、やはり書くしかないのだろう。



その女は、両手に巨大なヒキガエルを持っていたのだという。



そのヒキガエルはまだ生きているらしく、必死に暴れ逃げようとしていた。



すると、突然、その女はそのヒキガエルの1匹を口に入れ引きちぎった。



その瞬間、ヒキガエルは絶命し、足がピンと伸びたままになったらしい。



そして、その女は、とても美味そうに、そのヒキガエルをクチャクチャと



食べ、すぐに残りの下半身も口の中に放り込む。



彼は嗚咽を感じながらその様子を見守るしか出来なかった。



すると、その直後、もう1匹のヒキガエルも一気に口の中に放り込んだ。



その間、ずっと彼の方を見続けながら咀嚼していたが、どうやらそれを



のどの奥へと飲み込むと、じっと彼の顔を見て笑う。



彼はもう生きた心地はしなかったらしいが、それでも必死にその女の顔を



睨み続けた。



すると、今度はその女はクーラーボックスの中に入れてあったブラックバスに



手を伸ばす。



そして、巨大なブラックバスを一瞬で口の中に放り込むと、



バリバリ・・・クチャクチャと美味しそうに食べだした。



その時、彼は後悔していた。



彼がそれまでにクーラーボックスいっぱいの魚を釣っていた。


だが、もっと釣っておくべきだったと感じたという。



しかも、あの勢いで食べ続ければ、すぐにクーラーボックスは空に



なってしまう。



しかも、先ほどからその女が彼にその食べっぷりを見せ付けているのは、



自分がどれだけ大きいものでも食べられるのだ・・・。



つまりお前でも食べられるのだから・・・・。



そう示しているようにしか思えなかった。



彼はその時、こう思ったという。



このまま待っていても、きっと自分は食べられてしまうのだろう・・。



それなら、一か八か逃げなければ・・・・・。



それに、俺の手には既に車のキーが握られている。



それからの彼の行動はとても早かった。



ちょうどブラックバスが入ったクーラーボックスは


もう魚が見えないくらいに減っていた。


だから、ブラックバスを美味そうに咀嚼しているその女から



視線を外さないようにしながら、彼は手探りでクーラーボックスを持つと



一気に車の後方へと投げ飛ばした。



ここで、その女が怒って彼に襲い掛かってくれば、もうお終いだった。



しかし、運良く、その女は余程ブラックバスが美味しいのか、投げられた



クーラーボックスの方へとヨタヨタと歩いていく。



今しかない・・・・。



彼は急いで車に乗り込み、キーを回した。



車のリアハッチは開いたままになっていたが、そんな事はどうでも良かった。



車のエンジンはすぐにかかり、彼は一気にその場所から車を発進させた。



この時、車の向きが逆になっていたなら、きっとその女に掴まっていたのだろう。



しかし、彼はいつもの癖で、帰りのことを考えて、車の向きを出口方向に



向けていた。



彼は一気に坂道を上ると、細いアスファルトの道を全力で逃げた。



その途中、開けたままの、大きなワンボックスのリアハッチがいたるところに



ぶつかって嫌な音を出した。



彼はもう大丈夫だろう・・・と思うと、一旦車を停めてリアハッチを閉めた。



そして、再び、車に乗り込もうとした時、助手席側のドアの所に何かが



立っているのが見えた。



細かい姿ははっきりとは見えなかったが、何ともいえない魚臭さが辺りに



充満しており、彼はそれが先ほどの女だと確信する。



それから、再び、車を発進させ、彼は必死に車を走らせた。



その間、何度も車のリアに何かがぶつかる音が聞こえた。



そして、その度に車が揺すられるほどの大きな衝撃を感じた。



そんな時間が流れ、彼は生きた心地がしなかったが、それでも



市街地が見え始めた頃、リアからの音は消えた。



その後、彼はそのまま行きつけの車屋に寄って、車を見てもらった。



すると、車のリアは大きくひしゃげ、緑色のヌルヌルしたものが



付着していた。



車屋の知り合いは、



どんな事故に遭ったんだ?



と聞いてきたらしいが、彼は、



いや、事故じゃないんだ・・・。



と言うと、そのまま、その車を処分してくれるように頼んで帰宅したという。



その後、彼の身に怪異は発生していない。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:40│Comments(0)
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