2018年11月09日

見知らぬ家族

これは友人の体験した話である。



友人はこれといって決まった趣味を持っていない。



だから、休日は思いついたままに好きなことをして気ままに過ごす。



だから、その日も、新しい音楽CDを選ぼうとCDショップで



ヘッドフォンをかけては、新譜のCDを試聴していた。



音楽に関しても特に拘りが無い彼は、手当たり次第にその時の気分に合った



心地よい音楽を探していたそうだ。



その時、ふと視線を上げると、彼の目には異様な光景が飛び込んできた。



それは少し離れた試聴スペースに陣取った家族が彼の顔をまじまじと



見ながら満面の笑みを浮かべていたのだという。



40代くらいの両親と、小学生位の男の子と女の子の4人家族。



それが全員、同じように満面の笑みを浮かべていた。



その顔が何とも説明がつかないほど気持ち悪く感じた彼は、急いで



CDショップを出たそうだ。



そして、あの満面の笑みの意味は何なのか?と考えてしまい、



もしかすると、顔に何か付いているのか?と思った彼は急いで



車のミラーで自分の顔を確認したらしいが、どこもおかしな所は無い。



だとしたら、先ほどの家族の満面の笑みの意味が全く分からなかったが、



もしかしたら、からかわれたのかもしれないと思い直し、さっさと



忘れる事にした。



それから、しばらくドライブを楽しんだ彼はその後、1人でファミレスに



入った。



実は俺は1人ではファミレスには入れないのだが、彼は周りのことなど



全く気にならないらしく、1人でファミレスをよく利用する。



そして、いつものお気に入りのメニューを頼み、料理が運ばれてくると



待ってましたとばかりに食べ始めた。



いつものファミレスでいつものメニューしか頼まない。



これも、彼が俺とは違うと感じる部分だ。



お気に入りのメニューは美味しかったそうだ。



それはそうだろう。



しかし、右側のテーブルから視線の様なものを感じた彼は思わず、そちらを



向いた。



食べ物が口から飛び出しそうになった。



そのテーブルには、先ほどCDショップで出会った4人家族が座っていた。



相変わらず満面の笑みを浮かべて彼を見ていた。



注文をしたのかどうかは分からなかったが、そのテーブルの上には



料理はおろか、水さえも置かれていなかったという。



そして、不思議な事があった。



それは、先ほどのCDショップから、彼が今居るファミレスまでは優に



30キロ以上離れていた。



とても偶然だとは思えなかった。



もしも、偶然だとしたら、彼がCDショップを出てから、その家族は



すぐに車でこのファミレスに向けて走り出した事になるが、そんな事が



あり得るのか・・・。



確かに、絶対にあり得ないことでは無かったが、それにしても、



相変わらず、その家族は全員で彼の方を見て、満面の笑みを浮かべている。



さすがに気持ち悪くなった彼は、食べかけの料理を残したまますぐに



そのファミレスを出たという。



そして、今度こそは二度とその家族と出会わないようにと、再び



CDショップが在る方向へと車を走らせた。



もう頭がおかしくなりそうだった。



しかし、自分に言い聞かせた。



これは単なる偶然なのだと・・・。



そんな矢先、車は信号の為、交差点で停止した。



彼はこんな日はさっさと家に帰ろうと信号が青になるのを見つめていた。



すると、視界に何かが入ってきた。



彼は恐る恐る視線を信号機から外した。



すると、目の前の横断歩道に、あの家族が立っていた。



横断ほどの真ん中で立ち止まり、運転席の彼を見ていた。



満面の笑みを浮かべながら・・・。



その時、彼は得体の知れない恐怖を感じたという。



どうなってるんだ?



あの家族は何なんだ?



彼は思わずその家族から視線を逸らす様に俯いた。



これは夢だ・・・。



そうでなければ、俺の頭がどうかしてしまったのか?



そう思っていると、背後の車からクラクションを鳴らされた。



ハッとして彼が顔を上げると、そこにはもうあの家族の姿は無かった。



しかし、彼はもうその時点で完全に恐怖に支配されていた。



意味の分からない恐怖に・・・。



彼はすぐに車を発進させたが、すぐには家には帰らなかった。



かなり遠回りして自宅に帰ることにした。



途中、コンビニにも寄りたかったし、本屋にも寄りたかったが、



きっと其処にも、あの家族がいる様な気がしてしまい何処にも



立ち寄る勇気が沸かなかった。



そして、それから約2時間に渡って、彼は意味の無いドライブを続けた。



その理由はひとつ。



あの家族から逃れる為に・・・。



遠回りして家に帰れば、あの家族から開放される様な気がした。



そして、自宅マンションに戻った彼はまるで誰かに見つかる事を



恐れるかのように、急いで部屋に入ると玄関のドアをかけた。



もう来るはずは無い、と思っていたがそれでもドアのチェーンロック



までかけてしまった。



彼は部屋中の電気を点け、テレビの電源を入れると、お笑い番組が



放送されていた。



いつもは見ないお笑い番組だったが、それだけでも少しは気が紛れた。



そして、少し落ち着いてきた彼は、シャワーを浴びた。



熱いシャワーを頭から浴びていると、昼間の出来事が、どうでも良いことに



感じられるようになってきた。



少し元気を取り戻した彼は、テレビの音量を少し上げると、お腹が空いている



事に気付いた。



だから、彼はストックしてあったカップ麺にお湯を注いで出来上がるのを



待っていたという。



その時、玄関のチャイムが鳴った。



いつもなら、何も感じないチャイムの音だが、その時は心臓が止まるかと



思う位にびっくりしてしまった。



彼は、勇気を振りしほぼって立ち上がると、玄関に付いているモニターを



確認する事にした。



完全に固まってしまった。



そのモニターには、今日、何度も遭遇した親子が映っていた。



4人がきちんと整列でもするかのように並んだままモニターを見つめていた。



満面の笑みを浮かべて・・・。



彼は完全にパニックになってしまった。



どうして俺の家がわかったんだ?



家までやって来て、この家族はどうしようというのか?



そう考えた時、彼はある結論に達してしまう。



もしかしたら、この家族はこの世の者ではないのかもしれない・・・。



そして、理由は分からないが、彼を連れに来たのではないのか?



そう思ってしまうと更に恐怖が増幅してしまった。



どうすれば良い?



どうすれば助かる?



彼は必死に考えた。



そして、その答えが見つからないまま、彼はこう叫んでいた。



絶対に一緒になんか行かないからな!



たから、早く帰ってくれ!



そう叫んだ瞬間、玄関の鍵が開く音が聞こえた。



そして、信じられないことだが、かけた筈のチェーンロックが彼の目の前で



勝手に外れた。



もう限界だった。



彼はそのままベランダの方に走り出すと、そのままベランダから地面に



向かって飛び降りた。



激痛が前進に走った。



そして、それを見た誰かが悲鳴をあげたのだろう・・・。



何人かの人が彼の元に駆け寄ってきて、彼を助け起こそうとした。



しかし、その時、既に意識を失いかけていた。



そして、ぼんやりした頭でベランダの方を見ると、先ほどの家族が



ベランダに並んで彼を見下ろしていた。



しかし、もうその顔には満面の笑みは無かった。



どこか悲しそうなざんるんそうな顔を浮かべて彼を見つめていた。



きっと俺が死ななかったから?



そんな事を思いながら彼はそのまま意識を失った。



そして、次に彼が意識を取り戻したのは病院のベッドの上だった。



全身打撲と骨折はしていたが、命に別状は無かった。



そして、彼が退院するまでの3ヶ月間、その家族が彼の目の前に現れることは



無かったという。



だから、彼はある意味、ホッとしていた。



大怪我はしたが、これで、あの家族からは開放される・・・。



そう思っていた。



しかし、退院した後、彼は仕事中に大きな事故を起こした。



生死の境を彷徨う様な・・・。


その事故も、やはり、その家族が突然飛び出してきたのを


咄嗟に避けてしまった事に拠る事故だった。


そして、彼はそのまま病院に再び担ぎ込まれた。


今度は、命の危険もあるということで、集中治療室に入れられたが、



その間、ずっとその家族はベッドに横たわる彼の姿を覗き込む



様にして見つめていたという。



また、満面の笑みを浮かべながら・・・。



彼はその時、もうどうでも良いと思ったらしい。


きっと、この家族に俺は連れて行かれるんだ・・・と。



しかし、そんな理不尽な事で友人を亡くしたくはない。



だから、俺はいつものAさんに頼み込んだ。



相変わらず面倒くさそうなAさんだったが、彼の病室に入り、5分もすると



病室から出てきて、



もう大丈夫ですよ・・・。



でも、今回のはかなりタチが悪かったかも・・・。



運が悪かったと思うしかないですね・・・。



そう言って帰っていったが、それ以上、そのことに関して話そうとはしなかった。



しかし、それ以来、もうその家族は彼の前に現れる事は無くなった。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:42│Comments(0)
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