2018年11月09日

美容室

これは俺が体験した話である。



今でこそ、格安且つ短時間で済む様な理髪店が巷にあふれているが、



昔は高い金額を払い、かなりの時間を要する理髪店、いわゆる床屋で



髪を切るのが普通だった。



その当時で3600円くらいかかったと思う。



そして、最も問題だったのが長時間拘束されるという事。



普通でも1時間半、世間話が盛り上がってしまうと、2~3時間ほど



かかってしまう。



まあ、それでも懐かしくもあるから、きっと古き良き時代の思い出なのだが。



そして、その頃は誰にも行きつけの理髪店というのがあった。



その頃は美容室に行く男というのも少なかったから、誰にでもきっと



行きつけの理髪店があったはずだ。



かくいう俺もそういう、行きつけの店というのが確かに在った。



しかし、今回書くのは理髪店の話ではない。



美容院の話である。



大学時代、パーマというものをかけてみたくて、一度だけ美容院へ



行ったことがある。



美容院に行くのは、当時は、女性化、もしくはお洒落な男性・・。



そういうイメージを持っていた俺にとって美容院はかなり敷居の高い



場所であった。



そもそも、バイクとバイトで1年の殆どを過ごし、むさくるしい服



しか持っていなかった俺にとって美容室はまさに異世界・・・。



それでも、女の子にモテたい、という情けない理由で俺は美容室に



向かった。



しかも、当時の美容室としては神戸でもかなりの人気店だったのだから、



今考えると、迷惑な客そのものだったと思う。



しかも、バイクで店の前まで乗りつけ、ヘルメットを被ったまま



店内に入った。



まさに、今なら即通報されていたかもしれない。



店に入ると、店員さんから、お前は誰だ?という顔をされたのが



恥ずかしかった。



そして、ご予約は?



と聞かれ、そういえば理髪店と違い、美容院は予約ありき、だという事を



思い出した俺はその場で固まってしまった。



言葉も出ず、出るのは冷や汗だけ・・・・。



それでも、きっとお店の人たちが良い人達だったのだろう。



予約をせずに来店した俺を



あっ、初めてなのかな?



と言って、そのまま待合席に連れて行ってくれた。



その間、他の女性客から、かなり距離を置いて座られたまま、俺の



番が来るのをひたすら待った。



そして、待つこと1時間くらい・・・。



いよいよ俺の番が回ってきた。



どんな感じにしますか?



と聞かれた俺は、恥じらいも無く、



とにかくパーマをかけてみたくて・・・。



と答えた。



すると、きっと良い人たちだったのだろう・・・。



店の中にあった俳優さんやアイドルが載っているヘアカタログの様な雑誌



を持ってきてくれて、



この中から選んで頂けますか?



と優しく言われた。



そして、すかさず俺は当時人気絶頂だったアイドルの髪型をチョイス!



クスっと少し笑われたような気もしたし、優しく、



お客様の髪質だとパーマをかけても、ヘルメットを被ったらすぐに



パーマが取れちゃうと思いますよ?



と言われたが、そんな事はどうでも良かったのだろう。



はい。分かってます。大丈夫です!



と根拠の無い元気さで答える。



そして、いよいよヘアカットが始まった。



女性に髪を切られるのは初めてだったので、とても緊張してしまった。



そして、なんと、担当してくれた店員さんがとても綺麗だったから、



俺はずっと顔を真っ赤にしていたと思う。



照れているのを必死に隠そうとしたが、たまに話題を振られると、



口がうまく動かず、笑われてしまった。



そんな楽しい?美容室だったのだが、髪を洗う段になって俺は、初めて



美容室に来たのを後悔してしまう。



髪を洗う時の顔の向きが逆なのである。



理髪店ならば、うつ伏せ状態で髪を洗ってくれるのだが、美容室は



仰向けだった。



ということは、髪を洗ってもらっている女の人と常時、顔を近づける



事になる。



こんな綺麗なお姉さんと・・・・。



とても嬉しいが恥ずかしすぎる・・・・。



だが、気付いた時にはもう手遅れだった。



俺は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら成すがままに髪を洗われていた。



きっと、かなり、おどおどしていたのだろう・・・。



はい。大丈夫ですからね~!



と子供に言い聞かせるように言われた。



そんな時である。



耳鳴りがして空気が変わった。



耳鳴りには良い思い出が無かった俺は、すぐに目をキョロキョロさせて



辺りを見回した。



すると、視界の隅っこに誰かが立っていた。



それは女性の様に見えたのだが、どうもおかしい。



人間にしてはあまりにも顔が大き過ぎた。



そして、笑顔などまったく無く、俺を睨むように見ていた。



俺は見間違いかと思い、一度目をつぶり再び開けてみた。



すると、先ほどよりも、その女が近くなっていた。



そして、3回ほど瞬きをした後には、もうその女の顔は俺の顔のすぐ目の前に



迫っていた。



綺麗なお姉さんならともかく、そんな得体の知れないモノと顔を



近づけるのは耐えられなかった。



それでも、高価な美容室の代金を考えて必死に耐えた。



しかし、至近距離からずっと睨まれ続けた俺はもう限界に達していた。



突然、むくりと起き上がると、店員さんに、



なんか、腹痛が酷くて・・・。



だから、帰ります・・・。



そう嘘を言って、強引に起き上がると、驚いて見ている他の女性客達



の顔をよそに、支払いを済ませると、さっさと店を出てしまった。



お店の方達は、



申し訳ありません・・・。



何か不愉快なことでもありましたか?



と聞いて、引き止めてくれのが、逆に申し訳なかった。



俺にはもうその場所は怖くてたまらなかっただけなのだから。



結局、そのままマンションに帰宅した俺は、パーマもかけられず、



濡れたままの髪でバイクのフルフェイスヘルメットを被った頭は、既に



ヘルメットと同じ形に固まっていた。



自分でも思わず大爆笑してしまった。



今でも、その美容室でみたものが何なのか、は分からないが、



その時の恐怖は今も鮮明に記憶しており、俺はもう二度と



美容室という別世界には行かない事に決めた。



その後、今度は理髪店でパーマをかけてもらい、北○三郎の様な



パーマをかけられてしまい、



自分にはパーマは似合わない!



というか、もう二度とパーマはかけないぞ!



と心に誓った俺であった。



Posted by 細田塗料株式会社 at 22:55│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count