2018年11月09日

雨の日に纏わる話

これは専業主婦をしているバンド仲間の女性から聞いた話。



彼女は年齢は30過ぎで、かなり大人しい性格。



子供はおらず、大手企業に勤める夫と数年前に建てたばかりの



ほぼ新築ともいえる一戸建てに住んでいる。



彼女の夫はかなりの収入があるらしく、彼女自身は働く事も無く



専業主婦に徹している。



共働きせずに家を買えるのだから、きっと彼女の夫の収入は



凄いかもしれない。



そんな彼女はいつも午前中に家事を済ませてしまい、午後は



バンドで担当しているキーボードの練習に費やす。



その熱意は凄いものであり、頭が下がるのだが、常日頃の彼女



を知っているバンド仲間達は、俺も含めて、日頃は控えめで



どちらかといえば、暗い印象の彼女のライブでの弾けっぷりに



いつも驚かされている。



そして、その日は天気予報の通り、突然どしゃ降りになった。



午前中に2階で洗濯物を干していた彼女は、まるでバケツを



ひっくり返した様な勢いの雨に驚き、急いで家中の窓を



閉めたという。



そして、家の中が一気に暗くなった。



まるで、一気に夕暮れになってしまったかのような暗さだった。



いつもの雨とは違う・・・・。



何故か、そんな気がしたという。



窓を全て閉め終えた彼女は暗い家の中を再び2階の物干し場へと向かった。



窓を叩きつける雨の音が、とても煩かった。



そして、再び、洗濯物を干し始めた彼女だったが、何気に外を見て



え?



と固まってしまう。



そこには、土砂降りの雨の中、向かいの電柱の横に立っている



女性の姿が見えた。



顔はよく見えなかったという。



しかし、黒いワンピースで長い髪が印象に残っているという。



そして、その女性は、そのどしゃ降りの中、傘を差してはいなかった。



腰の辺りまで伸びた長い髪と、黒いワンピースからは雨が伝い



地面へと落ちていた。



そして、あろうことか、その女性は、間違いなく彼女の方を



見上げていた。



見間違いなどではなく、その雨の中、瞬きもせず、大きく開いた



瞳で、2階にいる彼女を見上げていた。



最初、彼女は、その女性を見て、



こんな所で待ち合わせなの?



しかも、傘も持たないで?



と思って、じっと眼下の女性を見つめていたらしい。



しかし、突然、背中に悪寒が走り、



これは見てはいけないやつだ・・・・。



そう思い、急いで視線を外した。



しかし、やはり気になった彼女は再び、女性の姿を目で追った。



もう、其処には女性の姿は見えなくなっていた。



え?・・・・どうして?



彼女がその女性から目を離したのは、ほんの2秒ほど・・・。



その僅かな時間の間に、忽然と消える事など出来るのだろうか?



そして、その直後から彼女は何か得体の知れない圧迫感と寒気に



襲われる。



リビングでテレビを観ていても、コーヒーを飲みながら音楽を



聴いていても、何故か背中が気になってしまい落ち着かない。



そして、ちょうどその時、電話が掛かってきた。



電話に出ると夫だった。



彼女は夫に心配をかけたくない、と思い、家の中から感じる違和感の



事は口にしなかったのだが、夫から、



友達でも来てるのか?



さっきから声が聞こえてるけど・・・。



新しい友達でも出来たの?



と言われてしまい、更に固まってしまった。



彼女は不安感を夫に悟らせないように、いつも通りに振る舞い



電話を切ったのだが、とても家の中に居られる気分ではなかった。



と、その時、突然、何かが階段を落ちてくる音が聞こえた。



彼女は、リビングに置いてあった護身用のバットを握り締め、



階段を確認しにいった。



しかし、階段を2階まであがったが、何も異常は無かった。



不思議に思いつつ、階段を降りる彼女の視界に、ある物が映った。



それは、階段の下に無造作に落ちている飲みかけのペットボトルだった。



ああ・・・さっきの音はこれが落ちた音だったんだ・・・・。



そう思った時、彼女は再び固まった。



そのペットボトルは間違いなく彼女が1階のリビングで飲んでいた物。



それが、どうして階段から落ちて来られるのか・・・・・・。



そう思った時、彼女の視界にもう1つ映り込むものがあった。



それは、階段を上がっていったと思われる濡れた足跡だった。



先ほどは全く気付かなかった。



しかし、今見てみると、明らかにベットリと階段が足型に濡れている。



彼女は急いでリビングに向かった。



すると、そこにはある筈のペットボトルが無かった。



勿論、彼女はそのペットボトルを2階に持ってあがった記憶は無かった。



もう我慢の限界だった。



彼女は急いで出掛ける用意をした。



とにかく、一刻も早く、この家から出たかった。



すると、その時、突然、玄関のインターホンが鳴った。



彼女が慌ててモニターを確認すると、どうやら郵便局員だった。



彼女は、



はーい。今、開けますね!



そう言った。



しかし、郵便局員の言動はおかしかった。



家・・・怪しい者ではありません。



書留をお持ちしましたので、ご印鑑だけ頂きたいのですが・・・。



それを聞いた彼女が、



いえ、疑ってはいませんから・・・・。



今すぐ開けますから・・・。



そう言うと、



あの・・・そこまで仰るんでしたら郵便局へ引き取りに来て貰えますか?



と不機嫌そうに返ってきた。



全く会話が成立していなかった。



それでも、彼女は急いで廊下を歩き、玄関へ来ると、



ご苦労様です!



と言ってドアを開けた。



すると、



うわぁ!



と大声を上げて、その郵便局員は後ろに飛び退いた。



そして、あろうことか、そのままバイクに乗ると逃げるように走り去った。



もう、訳がわからなかった。



彼女は、急いでリビングに戻ると、愛用のバックを手に取り、廊下へと



歩いた。



心臓が止まりそうだった。



そこには、ポタポタと水滴を滴らせた女が、俯きながらも、長い髪の



間から彼女を睨んでいた。



彼女は全身の力が抜けてしまい、その場にへたり込んだ。



恐ろしかった。



恐怖で大きな悲鳴をあげたかった。



しかし、何も出来なかった。



それどころか、恐ろしいはずなのに、その女の顔から視線が



外せなかった。



彼女はその時、声も出せないまま、大粒の涙をこぼしていた。



それが彼女に出来る最大の意思表示だったらしい。



その女はじっと彼女の顔を見つめながら、ゆっくりと近づいてきた。



ズルッ・・・ズルッ・・・・・ズルッ・・・・。



まるで、すり足でこちらに向かって来ている様だった。



彼女は廊下にへたり込んでいたから、正確にはわからないが、



その女は、とても痩せており、その身長は廊下の天井に頭が



擦れてしまう程、大きかったという。



私はこのまま殺されてしまうのだろうか?



そんな事を何故か冷静に考えていた。



と、その時、突然、また玄関のチャイムが鳴った。



すると、その女は悔しそうな顔を浮かべると、そのまま彼女を



通り抜ける様にリビングから外へと抜けていったという。



その瞬間、玄関のドアが開いた。



そして、



奥さん・・・大丈夫ですか?



という大きな声が聞こえた。



彼女がその場にへたり込んだまま動けなくなっていると、先ほどの



男性と、他に同じ郵便局員の男性、計3人が助け起こしてくれた。



少し経つと、彼女も少しずつ正気が戻ってきて、彼らに聞いたのだという。



どうして、助けに来てくれたのか?と。



すると、郵便局員の1人が、



いえ、先程、書留を持ってきて、奥さんが玄関を開けた時、奥さんの



背中にとても大きな女がニタニタと笑って立っていたんです。



とても人間には見えなかった・・・。



だから、恥ずかしながら逃げてしまったんですが、やはり、このままじゃ



いけないと、思いなおして、同僚に助けを求めました。



でも、助かって本当に良かったです・・・・。



そう言ったという。



彼女はそれを聞いて、外にあの女が立っているのを見た直後から、



きっとあの女は私の後ろにピッタリと憑いていたんだ・・・・・と。



そして、夫から電話が掛かってきた時も、郵便局員が書留を持って



来た時も、ずっと私の背後に貼り付いていたんだ・・・・。



そう思って、完全に固まってしまったという。



その後、彼女に怪異は起きていないそうだが、その1件以来、



雨の降る日には、彼女は家には居られなくなったという事である。


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:15│Comments(0)
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