2018年11月09日

お見合い

これは知人男性の体験談。



彼は現在、44歳。



未だ、独身であり、結婚する気は無いのだという。



こんな不透明で不安定な時代の中にいると自分ひとりで生きていく



だけでも大変なのに、家族の生活を護っていける自信が無いから・・・。



それが、理由らしい。



まあ、人それぞれ考えがあって良いと思うが・・・・。



ただ、彼の場合、以前体験したお見合いがその理由になっているのは



間違いない。



今日はその話をしてみたいと思う。



それは、今から3年ほど前。



ちょうど彼が厄年の頃だったと思う。



ちなみに、彼は霊感などは一切持ち合わせていない。



今では結婚する気は無いと断言する彼だが、その頃は色んな



婚活パーティに参加したり、結婚相談所的な場所にも幾度も



訪れていたという。



そして、その時は、親戚からの紹介による、お見合いだった。



相手の女性はとある会社の専務さんの長女。



もしかしたら、自分の人生も一発逆転出来るのではないか、と彼は



しっかりと下準備をして、そのお見合いに臨んだ。



場所は、市内のとある料亭。



その一室が、その日のお見合い会場だった。



彼はいつも行っている激安の理髪店ではなく、男性客が多いというそれなりに



立派な美容院へ行き、髪形を整えた。



知り合いの女性に頼んで、お見合い用の服も一緒に選んでもらった。



彼の日ごろの生活を知る俺としては、その時の彼の意気込みがとても



よく分かる。



当日は約束の時間に遅れないようにと、日曜日にも拘わらず、かなり



早い時刻に起床した。



そして、コーヒーだけの朝食を済ませると、身支度を整えて彼は愛車で



指定された料亭を目指した。



そして、その料亭まで車で5分と掛からない場所にある喫茶店に入り、



彼はまたコーヒーを飲んで時間調整をした。



それまでに何度もお見合いをこなしてきた彼だったが、その時はどうも



勝手が違ったという。



確かに相手の女性が専務の長女だという事実も少なからず影響していたのかも



しれないが、何故かその時は胸騒ぎにも似た緊張感で吐き気が



する程であり、彼はその店で計3杯のコーヒーを飲んだ。



そして、約束の時刻が近づいたので、彼は喫茶店を出て、車で



料亭へと向かった。



料亭に着いたのは、約束の時刻の10分前だった。



料亭の玄関に入り、名前を告げると、すぐに彼は一番奥にある



かなり大きな部屋へと案内された。



部屋に入ると、既に親戚である叔父が座っており、彼はその隣に



座らされた。



そして、叔父と庭を眺めながら世間話をしていると、



数人が廊下を歩いてくる足音が聞こえ、その後に襖の向こうから



失礼致します。



という声が聞こえた。



彼と叔父は緊張した声で、



どうぞ!



と声をかけた。



そして、襖が開けられる。



ニコニコと笑いながら出迎える叔父。



それとは対象的に、彼はしばらくの間、呆然としてしまう。



部屋に入ってきたのは3人だった。



お相手の女性とその母親らしき人。



そして・・・・もうひとり。



彼はとてつもない違和感を感じていた。



叔父は専務の奥さんとも親交があるらしく、にこやかに話していた。



母親も笑顔が印象的でとても良い人に見えた。



そして、肝心の相手女性も、とても清潔感があり、綺麗で着物が



とても似合っていた。



そこまでは、申し分なかった。



しかし、席についた時、その状態は明らかに異常だった。



叔父の前には、母親が座り、そして彼の前にはお相手の女性が座った。



そこまでは普通だった。



しかし、相手女性の後ろには、豪華だが古めかしい着物を着た女が



立ったまま、彼を見下ろしていた。



その表情は明らかに憎悪に満ちていた。



しかも、とても大柄なその女の目は黒く塗りつぶされていた。



その時点でかなりパニックになっていた彼を見兼ねて、相手の女性から



話しかけてくれた。



しかし、彼はうわのそらで返事をするのが精一杯だった。



彼は思った。



今、目の前にいる大柄な女は、どう見ても人間には見えない。



そして、何故か自分を睨みつけている。



勿論、その女に会った事など一度も無い。



それでは、何故、その女は自分を睨みつけているのか?



いや、そもそも、自分には霊感など無いのだ。



ソレなのに、どうして、自分は今、得体の知れないモノを見ているのか?と。



そして、考えた。



この部屋に居る者は皆、本当に、この大柄な女が見えていないのか?と。



だから、彼は出来るだけ自然な感じで、全員の顔を見回してみた。



相手の女性と、その母親には何も見えていない事がすぐに分かった。



しかし、叔父の顔を見た時、強い違和感を感じた。



叔父は確かに、相手の女性の母親と歓談している。



しかし、先ほどから、わざとその大柄な女の方から視線を逸らすように



不自然な動きをしている。



そして、季節はまだ春だというのに、ありえないほどの大量の汗が



流れており、既にハンカチがぐっしょりと濡れているのが見えた。



そして、何かに必死で耐えているかのように、体が小刻みに震えていた。



だから、彼は思った。



間違いなく叔父にも見えているのだ、と。



叔父に霊感がある事は親戚の間でも有名だった。



親戚が集まり酒が入ると必ず、自分の心霊体験を武勇伝の様に



語り、周りを震え上がられていた事も・・・。



しかし、今、叔父の目に見えているソレは、完全に叔父を恐怖で



固まらせている。



それ程のモノなのか・・・・。



目の前にいるソレは・・・。



しかし、不思議なもので、見えているのが自分だけではない、と判ると



何故か少しだけ心強くなり、彼も出来るだけその女は見ないように



相手女性と会話を交わすことが出来た。



相手上背の口元だけ見ていると、案外普通に接する事が出来た。



そして、お見合いの終盤、相手女性の母親が、



それじゃ、ここからは二人だけで・・・・。



と言いかけだが、叔父はその言葉を遮るように、



本当に申し訳ない事なんですが、急に親戚に不幸がありまして・・・。



だから、これから彼氏一緒に、そちらに向かわなくてはいけません。



ですから、今日はこれで・・・・。



と丁寧に拒絶してくれた。



勿論、親戚に不幸など起きてはいないのは彼も知っていたから、



やはり・・・そうか・・・。



と彼は妙に納得してしまったという。



そして、彼と叔父が先に退室する際、思わず、丁寧にお辞儀をし顔を



上げた際、その女を見てしまったのだが、



その女は薄気味悪い笑みを浮かべたままじっと彼を見つめていたという。



彼にはその薄笑いの意味は分からなかったが、それでも一気に体中に



冷たい汗をかいた。



そして、料亭を出た彼と叔父は、近くの喫茶店に向かった。



そして、そこで叔父はコーヒーを飲みながら、



今日は本当にすまなかったな。



ワシにも、想定外だった。



まさか、あんなのを連れてくるなんて・・・。



だから、もう忘れてくれていいよ。



いや、忘れなくてはいかん!



あれはとてつもなく邪悪なものだ。



そして、恐ろしいものだから・・・。



ワシが今まで見てきたモノとは全く別物だ。



アレは、間違いなく呪い殺す相手を見つける為にあの場に来た。



だが、わし等は運良く選ばれなかったようだ。



もし選ばれていたら、こんな風にコーヒーなんか飲んではいられないからな。



ただし、絶対にこれ以上関わってはいけない。



そうしないと、お前も連れて行かれることになるんだから・・・。



相手にはワシの方からタイミングを見計らってきちんと



お断りしておくから。



そう言われた。



彼はしばらく恐怖の中で日常を過ごさなければならなかった。



叔父が言った、



選ばれたのは俺たちではない、という言葉を本当に信用して良いのか、



半信半疑だったから・・・。



その後、彼は間もなく、お見合い相手の女性が急病で他界した事を



叔父から聞かされたという。



その死に顔はまるで生気を全て吸い取られたかのように、まるで



ミイラのようであり恐怖と苦悶が入り混じった凄まじい顔だったらしく、



通夜と葬儀の際には、親戚を含め、誰にも死に顔は見せられなかった



ということだった。



彼はその時、不謹慎ながらほっとすると同時に、



もしも、あの時、断っていなかったら・・・・。



出世という蜜に釣られて、付き合いを承諾していたら・・・。



そう思うと寒気が全身に走った。



ちなみに、彼はその後も、霊などは見る事は無く、やはり霊感は無いのだと



改めて自覚したという。



だとしたら、何故あの時、女の姿が見えたのか?



叔父が霊感体質だから?



厄年だったから?



守護霊が危険を察知して、その場だけ霊感を与えてくれた?



と色々と考えているが、今となっては確認のしようもない。



そして、どうしてお見合い相手の女性に、そんなモノが憑いていたのか、



という事に関しても、全く分からない。



ただ、一つだけ言える事は、その女性を呪い殺したソレは、



今も、大女の姿で、呪い殺す相手を探してお見合い会場を



彷徨い続けているという事である。




Posted by 細田塗料株式会社 at 23:18│Comments(0)
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