2018年11月09日

ジェットコースター

俺はこの歳になっても遊園地という場所が好きだ。



しかも、最新式の遊具が揃った人気テーマパークではなく、



昔ながらの何処にでも在る様なスタンダードな遊具が並ぶ



遊園地が大好きだ。



確かに、お化け屋敷やゴーカート、メリーゴーランドなどを



楽しむこと自体も好きなのだが、やはり昔の郷愁に浸れる空間



であり、その場所に居るだけでも、まるで子供の頃に帰った



気持ちになれる。



そんな俺だが、いつからか、絶対に乗らなくなったものがある。



それは、ジェットコースターである。



理由は簡単。



怖いのである。



よく、バイクに乗ってるくせにジェットコースターに乗れない



なんて・・・・と言われるのだが、こればかりはどう馬鹿にされても



乗る気にはなれない。



きっと、自分が運転せずに乗せられたまま、まるでコースから



飛び出す様に進む事に、馴染めないのかもしれないが。



だから、よくジェットコースターの最前列に乗ったり、両手を



上に挙げたまま乗っている人を見ると、素直に尊敬してしまう。



そして、俺の友人にもジェットコースターが大好きな女性がいる。



何処かのテーマパークに最新式のジェットコースターが導入されたと聞くと、



わざわざ高い交通費を払ってでも、他県まで出かけて行き楽しんでいる。



そんな彼女が一度だけとてつもなく怖い体験をしたのだという。



俺はそれを聞いて、



そんなに凄いジェットコースターがあったの?



と聞くと、



どうやら、怖かった理由は、そういった事ではないらしい。



そして、これから書くのがその話の内容だ。



その日、平日が休みだった彼女は、久しぶりに県外の遊園地へと遠征した。



彼氏はいたが、やはり平日に休暇を取るのは難しく、彼女は1人で



行動した。



その遊園地に着いたのはちょうどお昼頃だった。



それにしても、客が少な過ぎることに驚いたという。



休日ともなれば各アトラクションには長い列が出来るほどの



人気スポットであり、以前、平日にら来た時にもかなりの混雑だった



のを覚えていたから。



少し不思議な気持ちになったが、それでも空いていること自体は



嬉しいことだった。



彼女は早速、新設のジェットコースター乗り場へと向かった。



しかし、そこには既に長蛇の列が出来ていた。



彼女は仕方なく、他のアトラクションを回って時間を潰したらしいが、



時間を置いてから、その場所にやって来ると、列に並ぶ人の数は減る



どころか、どんどんと増えていった。



それでも、諦め切れない彼女は、それからも何度も他のアトラクションと



行き来したが、それでも状況は変わらなかった。



しかし、彼女には既に帰る時刻が近づいていた。



時刻は午後4時を回ったばかりだが、かなり夕暮れが迫ってきていた。



彼女は決断した。



どうせ、長蛇の列に並んでも、新設のジェットコースターに乗る頃には



もうかなりの時刻になっている。



それならば・・・。



そう思い、彼女は以前乗った事がある古いジェットコースターの乗り場



へと向かった。



そして、彼女が古いコースター乗り場に着くと、乗客は誰もいなかった。



彼女は係員にチケットを渡し、急いでコースターに乗り込んだ。



彼女がいつも乗るのは一番後ろの席。



そうすると、これから自分がどんな動きをするのかが判って楽しいのだという。



古めかしいブザー音が鳴って、彼女の乗ったコースターが進み始めた。



乗っているのは彼女1人だった。



彼女は1人でコースターを占有してしまった申し訳なさと、誰もいない



乗車席に自分が1人だけという優越感を同時に感じ、複雑な気持ちだった。



それしても、さっきの係員の男性、一言も喋らずに感じ悪かったな・・・・。



そんな事を思っていたとき、突然、空気が変った気がした。



うまくは言えないが、空気が急に冷たくなり、体が重くなった。



彼女はそれでも気にする事無く、折角のジェットコースターを楽しもうと



1人で歓声をあげていた。



しかし、その歓声もすぐに消えてしまう。



彼女はその時、ジェットコースターの最前列を見ていた。



そこで何かが動いたような気がしたのだ。



最初、それを見た時、



あっ、私の他にも誰か乗っていたんだ?



そう思った。



しかし、次の瞬間、それは恐怖に変わってしまう。



蜘蛛のような・・・・。



そんな表現がピッタリだった。



手足の長い平たいモノ・・・。



それでいて、顔もちゃんと在るソレは、人間である事を主張している



様だった。



彼女は固まったまま、それを見ていた。



すると、コースターの仕切られた席を少しずつこちらに移動して来るのが



判った。



ズルッ・・・・ゴトン・・・ズルッ・・・・ゴトン・・・。



それは、まるで獲物でも見つけたかのように、後方に向かって



進んでくるように見えたという。



そして、彼女は思った。



間違いなく、その獲物というのは自分なのだ・・・と。



そうしているうちに、、ソレはどんどんと近づいてきて、既に



ちょうど半分の距離まで来ていた。



いつもは早いと感じるジェットコースターが、とても遅く感じた。



それと、同時に自分が最後尾の席に乗る癖が付いていた事に



感謝したという。



半分の距離まで来ているソレは、表面がベトついており、細く長い目が



異様さを際立たせていた。



そして、彼女は気付く。



ソレに付いている手足だと思っていたものは、鋭利に尖った鎌の様に



なつており、それは体の面積から考えるとアンバランスなほど



とても長く感じた。



そして、その奇妙な手足を上手に使って、席を乗り越えてくるソレ・・・。



彼女はその速度と、残りのコースに掛かる時間を計りながら、必死に



耐えていた。



大声を出して助けを呼びたかったが、そんな事をしてソレを刺激してしまう



事が怖かったし、何より助けを求めたとしても助けが来るよりも



先に、このコースターはゴール地点に着いてしまうだろう。



逆に、助ける為に、コースターを緊急停止などされたら、尚更



厄介な事になり、助かるものも助からないと思った。



だから、必死に声を殺して耐えるしか無かったという。



その甲斐あってか、彼女が乗るコースターは、ゴールで停止する為の



減速を始める。



早く・・・・・・早く・・・・。



彼女は心の中でそう叫び続けた。



既にシトーベルトは自分で外している。



そして、ソレはもう、3列手前の席までやって来ている。



ソレの体から出ているのか、錆び臭い臭いも感じられる。



彼女はコースターが降車地点に入ると、停止する前に、さっさと



コースターから飛び降りた。



そして、後ろも見ずに、一気にその場から走り去った。



その時、何故か、係員の姿もなく、周りには他の客は誰もいなかったという。



そして、その日は無事に帰ってきた彼女は、彼氏にその日遭遇した



恐怖体験を話した。



お前さ・・・怖い話をするなら、もっと上手くやったら・・・・。



それが、その彼の反応だったという。



嘘じゃない、と怒る彼女に対して彼は優しくこう言ったという。



あのさ、あそこの新型ジェットコースターを作る時に、古いコースター



は廃棄されるって書いてあっただろ?



ただでさえ、ジェットコースターは広い場所が必要なんだから古い



コースターを残しておくはずが無いだろ?と。



確かに一理あったが、それでも彼女は納得できず、



それなら、今度の日曜日、その場所に行って確かめましょ?



と言って、その場は収まった。



そして、次の日曜日、今度は彼氏と一緒にそのテーマパークを



訪れた。



そして、自信満々に彼氏を案内した彼女だったが、結局、古い



ジェットコースターはどれだけ探しても



見つけられなかったということだ。


彼女が体験したモノは、一体何だったのだろうか?



Posted by 細田塗料株式会社 at 23:24│Comments(0)
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