2018年11月09日

特殊清掃

世の中には、やりたくない仕事が沢山ある。



そして、その理由もまたそれぞれなのだろう。



しかし、いかに高給であっても、やりたくない仕事のひとつに特殊清掃



という仕事がある。



それは自殺かもしれないし、孤独死かもしれない。



事故死の場合もあるし、殺人の場合だってあるだろう。



そんな現場に一番先に入るのが大家さんか親族、もしくは警察だろう。



そして、そのご遺体を家から運び出すのは、警察なのか消防なのか、



それとも救急なのか、は分からないが、その家や部屋に染み付いた死臭や



体液、そして異物を取り除き出来る限り現状復帰させるのが、



特殊清掃という職業なのだろう。



実際、俺の昔のバイク仲間で現在、特殊清掃という仕事をしている



男がいる。



大学を卒業してから、確か公務員をしていたはずなのだが・・・・。



そして、そんな彼は以前、会う機会があり、その時に聞かせてもらったのが



これから書く話である。



元々彼は公務員をしていた。



役所で事務方として、それなりの地位にあったのだという。



しかし、ある時、彼の奥さんが精神を病んでしまい、行方不明に



なった。



警察に捜索願は出しのだが、やはり行方は分からず、結局、それから



半年ほど後に、アパートの1室で自殺体として発見された。



首吊りだったという。



季節はちょうど夏であり、異臭に気付いたアパートの住人が大家に



電話をし、警察立会いのもとで、部屋に入るとそこには首を吊っている



妻の遺体がぶら下がっていた。



死んでから4ヶ月ほど経っていたといい、腐乱した遺体は首から上が



ロープに引っかかったまま、体はフローリングの上に既に落下しており、



体液と大量のハエとともに、正視出来ないほどだったという。



結局、遺留品から彼の妻だと分かったらしいのだが、どうして



妻が1人でそんなアパートに住んでいたのか?



そして、対面させられたモノが、本当に自分の妻なのか、判断が



付かないほどだったという。



そして、それからの彼には妻を失った悲しみに浸る余裕など



与えてはもらえなかった。



警察からも、色々と話を聞かれ、まるで犯人のような扱いを受けた。



彼の勤務先である役所でも表面上は、励ましの言葉はかけてくれたが、



明らかにそれまでとは回りの対応が変わった。



そして、アパートの大家には、酷い言葉で罵られ皮肉も言われた。



そして、多額の賠償金を請求された。



本当に、頭を下げて謝り続ける毎日だった。



そんな時、大家が手配した特殊清掃の業者に出会ったという。



夫である彼でも、とても耐えられない程の悪臭とフローリングの



色まで変えてしまう程に染みこみ、腐らせている体液。



それを目の前にして、その清掃業者は、丁寧に手を合わせ、



彼にも、心配りと配慮をしてくれ、そして誰もが拒絶する



様な汚く辛い仕事を、まるで自分の肉親の自殺の様に



接して、部屋を元通りに回復させてくれた。



彼にはそれが、どれほどありがたい事だったのかは、



想像に難くない。



そして、彼は考えたらしい。



自分こそが、こういう仕事をしなければいけないのではないか、と。



そして、彼はすぐに公務員を辞めて、特殊清掃の会社に就職した。



当然、最初は見習いとして扱われた。



やはり、すぐに辞めていく者が殆どなのだという。



実際、彼も何度も辞めようと思ったという。



現場を見ては何度も吐き、食事も食べられなくなった。



それでも、彼はいつも、あの時の清掃業者の姿を思い出して



頑張った。



そうして、何度も死の現場に対峙していると、人間という者は



どんな環境にも慣れてくるものらしい。



今では部下を持つようになり、先頭に立って、特殊清掃の業務



に従事している。



不思議な体験は無いのか?と聞くとやはりあるそうだ。



遺品を家族に見せるために整理し、箱に詰めていると、先ほどまでは



絶対にそこには無かった写真が机の上に置かれていたり、作業をしていて、



薬品などを使い、暑さと薬品の臭いで息苦しくなっていると、気が



付いたら、開けたはずのない窓が開けられていたり・・・。



ただ、それらは全て怖いものではなく、逆に好意的に感じる



のだという。



そして、作業が終わり、部屋から出ていく時には、部屋の中で



誰かが深々とお辞儀をしている姿が見えることもあるそうだ。



しかし、彼らは決してそれを見て驚いたり声を出したりはしない。



いつも通り、両手を合わせお辞儀をしてから静かに部屋を出る。



そこに誰が居ても居なくてもやる事は変わらない。



そして、誰かが見えたとしても、あえて見えないフリをするのが



礼儀だと思っているのだという。



そんな彼だが、その仕事をしていると、やはり霊感というものが



開花してしまったようだ。



ある時、伺った部屋で、かなり長い期間、死体が発見されなかった



らしく、さすがの彼らも、何処から手を付けたらよいのか、と



お手上げになった時があった。



その時、遺体の体液が染みこみ変色している畳から、何かが



浮かび上がってきて、やがてそれは人の形になったのだという。



そして、深々と彼らにお辞儀をした後、そのまま消えていった。



確かに驚いたが、決して恐怖は感じなかったという。



どちらにしても、誰にでも出来る仕事ではない。



彼がこれからも、その仕事に向き合っていく姿を誇りに思いつつ



見守っていきたい。





Posted by 細田塗料株式会社 at 23:31│Comments(0)
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