2018年11月09日

解剖というもの

今の会社で働く前はコンピュータ関係の会社で働いていた。



その時によく担当させられたのがいわゆる大学病院というやつだ。



実はその会社では病院関係の担当、その中でも大学病院の担当と



いう事になると、なかなか担当が決まらなかった。



正直、誰もやりたがらないのだ。



それは別に病院だから、曰くつきの話が多いという



理由だけではなく、



毎日、帰りが遅くなってしまうという理由もあった。



実際に、コンピュータを納入してもらおう、と思うと、



まず教授と



呼ばれる人達の元を訪れる。



そして、顔と名前を覚えてもらってから、仕事の話に



持ち込み、そして



事務的に予算を取ってもらう。



そして、運よく予算が付けば、翌年には導入という事に



なるのだが、



実際にはその道のりは遠く険しい。



当然、競合他社もあるわけであり、その中で自分を気に



入って貰うのは



至難の業である。



だから、今でも薬品関係や試験機材のメーカー営業を見かけると、



本当によくやるよな、と感心してしまう。



そして、現在ではどうなのかは分からないが、



その当時は教授に



アポイントメントを取るのは容易ではなかった。



やはり教授という職業もかなり忙しいようで、



わざわざ売り込みの



営業に会ってくれる時間を容易してくれるほど優しくもない。



では、どうするのか・・・。



それは、夜間、いや、真夜中に教授が暇になった時間を狙うか、



もしくは、



教授に僅かでも時間が空いた時を狙うしかない。



ただ、夜間に訪問という事になると、緊急用の通用口から



入ることになり、



まっくらな病院内を1人で歩いていくことになる。



しかも、その時間は下手をすると、午前0時を回って



しまうのだから、



出来ることなら避けたいのが実情だ。



そうなると、やはり、昼間に教授が僅かに手すきになった



時間を狙うしか無くなる。



そして、そういう時間も、決して楽なシチュエーション



ではないのだ。



俺が担当していた教授の場合には、時間が空いたから、



と呼ばれていくと



殆どの場合、学生相手の解剖の授業の前後が多かった。



コンプライアンスが煩く言われる現在では、きっとありえない事



だろうが、当時はそれが当たり前だった。



最初に伺って、その場が解剖室だった時は正直固まった。



しかも、打ち合わせをしているすぐ横には今解剖を終えた



献体が横たわっている。



正直、打ち合わせなど全く頭に入ってこなかったのを覚えている。



それからも、その教授は、わざとか?と思えるほど、献体の



解剖時にわざわざ



俺を読んでくれた。



正直、固まってる俺を見て面白がっているのかと、



思っていたが、



それでも人間というのは不思議なもので何度も解剖室



に呼ばれている



うちに、横に何が横たわっていようとまったく気にならなくなった。



そんな時に教授が話してくれたのが、こんな話だ。



解剖と言っても様々であり、亡くなられた方の遺族の承諾を得て、



医学生の



為に行われる解剖、身元確認の為に行われる解剖、そして、



死因の特定の



為に行われるものなどがあるらしいのだが、その中でもその教授が



生徒たちに



教えるのは、遺族の承諾を得て行う学術解剖。



だから解剖が行われる献体の死因は明らかである。



それは、ガン患者の場合もあれば、別の病気の場合もある。



決して他殺や事故でが死因ではないはずなのだが、



ごく稀に解剖し



臓器を取り出していると、死因とは全く関係のない心臓に



はっきりと



手形が残されている事があるらしい。



そして、それはとても大きな3本指の手で、心臓を



握りつぶされた



ようになっているという。



勿論、それで死因が変わることは無いのだが、これだけは



何年医学の



世界にいようとも決して説明が出来ない怪異なのだという。



そして、もうひとつ。



献体を解剖する場合、解剖を始める前と後には、しっかりと



手を合わせ



医学の進歩の為に献体してくれたことを感謝しお祈りする。



しかし、これもまた、ごく稀に献体に手を合わせなかったり、



解剖の授業で



ふざけた態度をとる医学生もいるらしいのだが、その誰もが、



その後



怪奇現象に見舞われてしまい、とても怖い思いをするそうだ。



そして、一度でもそんな怖い体験をした医学生は、



それ以後はしっかりと



手を合わせ、真摯な態度で解剖授業を受けるのだという。



それでは、一体どんな怪異に見舞われるのかと聞くと、



その教授は



黙り込んでしまった。



だから、俺は、



そんなの気のせいなんじゃないんですかね?



と聞くと、



馬鹿なことをいうもんじゃない。



死者への、医学の為に自分の体を提供してくれた人を



冒涜した時の



恐怖は、とても口では言えないものだよ・・・。



と、つぶやいた。



そして、こう続けた。



実際に、体験した私が言うんだから間違いないよ!と。



それを聞いてからは、俺も解剖室に入る時にはしっかりと



お辞儀をし、



しっかりと手を合わせるようになったのは言うまでもない。



Posted by 細田塗料株式会社 at 23:32│Comments(0)
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