2018年11月09日

オフ会での怪異

これは俺の友人から聞いた話である。



彼は仕事としては、学校で物理を教えている教師である。



基本的に根は良い奴なのだが、かなりの合理主義者であり、



科学的に実証出来ないものは一切信じてはいない。



そんな彼の裏の趣味とも言えるのが、インターネットを利用した



ブログの運営である。



しかも、その内容は、妖怪について・・・・である。



最初に彼からそのブログの話を聞かされた時、俺は大いに笑ってしまった。



勿論、良い意味で・・・・。



実に彼らしいというか、公には、科学最優先に徹しているのだが、



それでも昔見たテレビアニメの影響なのか、妖怪というものに



強く魅かれている。



それは信じるとか信じないとかではなく、もしも本当に妖怪が



居てくれたら世の中も楽しいだろうな、という想いから



湧き上がった衝動に忠実に体が反応したのだろう。



確かに毎日の更新というわけにはいかないが、それでも暇があれば



妖怪の伝説がある土地に出向き、色々と調査したり話を聞いたり



している。



そして、その熱い思いの丈をブログに書き綴る。



確かに閲覧者数はそれ程でもないらしいが、あくまで彼の自己満足



のためのブログであるから、それで良いのだという。



そんな彼だが、幽霊というものは一切信じてはいない。



理由は簡単。



本当に幽霊がいたら、怖いからだという。



妖怪なら、話も通じるかもしれないが、幽霊には、話は一切



通じないから・・・・。



そう言っていた。



俺としては、そんな事もないと思うのだが・・・・。



そんな彼がある日、オフ会というものを開催する事になった。



要は、ブログの読者さん達が、彼を囲んで妖怪話に花を咲かせようと



企画し、彼がその企画に乗っかる形で、開催に漕ぎ着けた。



しかし、やはり仕事が多忙な彼だったから、日時の調整でかなり



難航してしまう。



そして、決まったのが、とある土曜日の深夜だった。



開始時刻は午前0時。



勿論、そんな時間帯しか彼には暇な時間が作れなかったのが



一番の理由だが、どうせ妖怪の話で盛り上がるのならば、深夜の



方が良いのではないか、という安易な考えがそこには在った。



そして、どうやらそのオフ会に参加するのは、地元の男性2人と



遠い県外からはるばるやって来る女性3人という事になった。



それなら、男女がちょうど3体3になって盛り上がるのではないか、



と彼はやはり安易に考えていた。



当日、彼はそりなりにお洒落して会場として指定された個室居酒屋



に向かった。



店の前で待ち合わせになっていたが、彼が到着すると、男性2人



は既に店の前で待っていた。



初めて対面する彼らは、彼は丁寧に挨拶し、まだ来ていない女性



参加者の到着を待った。



しかし、どれだけ待っても女性達は来なかった。



彼は仕方なく、店の中に入ると、既に女性達はかなり前から部屋で



待っていたという事実を知った。



彼らは慌てて指定された個室に向かうと、店の店員が言っていた



様に、確かにテーブルには3人の女性達が座っていた。



彼らは、冗談交じりに挨拶し、そのまま席に着いた。



そして、思いつく限り、沢山の料理と酒を注文した。



やはり、妖怪の話を店員に聞かれたくは無かったし、何より、



妖怪の話で盛り上がっているところを、料理を運んできた



店員に邪魔されたくなかったのだという。



そして、料理と酒が運ばれてくるまでの間、男性人は3人の女性達



に色々と話しかけた。



その3人の女性というのは、どの女性も甲乙付けがたいほど綺麗であり



まるで、ファッション雑誌の中から抜けて出来たくらいに、



全員がスタイルが良かった。



街中ではめったにお目にかかれないくらいに・・・・。



しかし、何故か殆ど喋る事はなかった。



ただ、ニコニコと笑って相槌を打っているだけであり、無口



というレベルを超越していた。



しかし、まあ初対面という事で緊張しているのだろうと思い、



彼らは特に気にも留めなかった。



そして、料理と酒が運ばれてきて、乾杯の後、いよいよ妖怪話



がスタートした。



しかし、女性3人は乾杯といってグラスは持ったが、誰もそのグラスを



口に運ばなかった。



それでも、妖怪馬鹿なのだろう・・・。



彼らはさして気にする事も無く、自分の体験した妖怪話を



披露し始めた。



それから、男性陣は、どんどんと新しい話を披露していったが、



女性陣はといえば、相変わらず、ニコニコしながら相槌を



打っているだけ・・・。



だから、彼は女性3人に話を振った。



貴女達は、どんな妖怪の体験話を持っていますか?と。



すると、女性の中の1人が初めて口を開いた。



先生は、妖怪は信じていらっしゃるのに、幽霊は否定されるのですか?



彼は思わず、酒をこぼしそうになったという。



彼はブログでは一切自分の身の上に付いて触れてはいなかった。



勿論、彼が物理の教師だということも・・・。



それなのに、目の前に座っている女性が、何故自分が教師だと



知っているのか?



彼は思わず、目の前の女性に不気味な何かを感じたという。



ただ、その時は、同席した男性達も、彼の事を先生と呼び出したので、



ああ、もしかしたら、ブログのオーナーである自分の事を思わず



きっとブログの主ということで、自分の事を先生と



言ってしまったのかな?



と思い、彼はふと彼女達の顔を見た。



その時、女性達は3人が全て俯いたまま薄ら笑いを浮かべて



いるように見えた。



しかし、他の男性達は、何も感じていないのか、3人の女性に妖怪の



話を振ったのだが、その時、



返ってきた話はやはり異常だった。



幽霊は、そんなに怖いですか?



幽霊は実在していると思いますか?



幽霊と妖怪の違いは何だと思いますか?



全てが、妖怪ではなく幽霊に付いての質問だった。



そして、3人の中の1人が、



先生は物理を教えていらっしゃるから、その目で見たモノ以外は



信じられませんか?



そう聞いてきた。



その言葉を聞いたとき、彼は思わず固まった。



勘違いなどではなく、目の前の女性達は間違いなく、彼が物理の



教師だということを知っている。



知り得るはずの無い事実を・・・。



そして、彼は目の前の女性達をまじまじと見た。



そして、彼はまた固まった。



正座した咳に座っている女性3人。



その顔の位置が明らかに、30センチ以上、高くなっていた。



それは首だけが伸びたというものではなく、全体的に縦に



引き伸ばした様に、いびつに上へと伸びていた。



そして、それは同席したほかの二人の男性達も気付いているようで、



先ほどから一言も喋らず、その場で固まっている。



沈黙が続いた。



そして、彼は考えていた。



これはどういうことなんだ?と。



自分の目がおかしいのか、それとも・・・・。



その時、店の店員が、ラストオーダーの注文を聞きに個室



へと入ってきた。



すると、3人の女性達は、



見たモノ以外は信じられないんじゃ、しょうがないです・・・・。



これで信じて貰えますか?・・・・・。



そう3人が口を揃えるように言った。



それがあまりにも、まったくのずれも無く、発声されたものだから、



思わず、店員も呆気に取られていた。



そして、次の瞬間、彼は思わず



うわぁ~、と大声を上げてしまった。



彼ら3人の男性と、そして店員の目の前で、3人の女性達が、



どんどんと大きくなっていき、とうとう天井に頭が届いていた。



そして、彼を見下すような目で笑うと、



そのまま消えてしまった。



男性陣と店員はしばらく放心状態でその場に固まっていたが、



店員が逃げるように部屋から出て行ったのを見て、彼らは



我に返ったという。



そして、それから、そのオフ会はすぐにお開きとなった。



彼らは、まだすぐ側に先ほどの女達がいるのではないかと



ひとかたまりになって、別の店に行き、朝が来るまで時間を



潰した。



恐ろしくて、とてもじゃないが、1人にはなれなかった。



結局、彼がその女性達の姿を見たのは、そのオフ会の席だけだった



らしく、それ以後は全く見ていないという。



そして、今でも彼は幽霊は信じてはいない。



自分の目で確かに見ているのに・・・・。



だから、俺が、



そんな体験をしても、まだ信じないの?



と聞くと、



いや、実際に見てしまうと尚更恐ろしくなってしまって・・・。



あんなのが実際に存在すると思っただけで、怖くて何も手に



付かなくなってしまうから・・・。



だから、否定するしかないだろ・・・・。



そう言って不安そうに辺りを見回していた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:35│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count