2018年11月09日

土葬と鈴

これは知人から聞いた話である。



今でこそ、亡くなった人は火葬してからお骨をお墓に納めるのが



一般的であり、それが当たり前の事だと思っている方も



多いのかもしれない。



しかし、実は現代でも土葬というもの自体は法律で



禁止されている訳ではない。



だからといって、誰でも簡単に土葬することが出来るか、と



聞かれれば、その辺はグレーゾーンという事になるのだが。



ただ、外国では未だに土葬が一般的な国も多く、鳥葬などと



いう過激なものまで存在しているのだから、土葬自体が



悪いというわけでは無いのかもしれない。



実際、自分が死んだとしたら、火葬されて骨だけになるよりも、



そのまま土の中に埋められた方が、より自然に還るという意味では



好ましいとさえ考えてしまう。



そして、実は現代でも土葬によって死んだ人をそのまま土の中に



埋葬するという形をとっている集落というのがやはり存在するらしい。



知人の出身地である中部の山間部にある集落では、昔から今に



至るまでずっと土葬が行われているのだという。



そして、その集落では、人が亡くなると数日間かけて葬儀をし、



故人と最後の渡れをした後、村人全員が見守る中で、



遺体は土の中に埋められる。



その際、故人が愛用していた品々も一緒に埋葬されるのだが、



それと同時に、紐が付いた鈴も一緒に埋葬されるのだそうだ。



それは、過去に仮死状態だった人を誤って埋葬してしまった教訓に



拠るものらしいのだが、遺族にしてみれば、万が一でも蘇って



欲しいという希望もあるのだろう・・・。



その地域では、どんな死に方をした者に対してでも、遺体と一緒に



鈴を埋葬し、そこから伸びた紐が地上に繋がっており、万が一でも



鈴が鳴らされれば、すぐに土を掘り返すというしきたりに



なっているのだという。



しかし、一度死んだ人が蘇るなどということは、そうそう起こる



ものではなく、今では単なる形式だけの、ものになっているらしい。



しかし、想定外の事というのは、いつでも起こりえるらしい・・・。



それが今夜の話である。



知人が高校生の頃は、高校の近くに下宿していたのだという。



その集落の近くには高校というものは無く、あるのは分校という名の



小さな小学校と中学校だけだった。



そして、その集落から1日2往復のバスしか出ておらず、知人は



仕方なく、市内に下宿しながら高校に通っていた。



過疎化した田舎での暮らしでは麻痺していた感覚や常識というものが、



市内での生活により、再認識させられたという。



毎日が常に新しい発見の連続だったという。



そして、ある時、その集落に住む親戚が亡くなった。



亡くなったのは知人の従姉妹だった。



知人にとっては、年上の従姉妹にあたるその女性とは小さな頃から



よく一緒に遊んでいたし、年もそれほど離れていなかったので、



亡くなったと聞いた時は、とても驚いたという。



なんで、そんなに若くして死んだのか?



そんな思いが頭の中を駆け巡った。



その亡くなった従姉妹というのは、親戚の中でもとりわけ優秀な



女性であり、常に模範となる女性だった。



それでいて、既に結婚していた故人は、少し大人びた感じで、



いつも知人には優しく接してくれていた。



だから、知人も葬儀を手伝う為に、暫くの間、高校を休む事になった。



しかし、地元に戻った知人だったが、故人の遺体は、奥の間に安置



されたまま、誰もその部屋に入る事は許されなかった。



いつもなら、普通に布団に寝かされ、誰でも死に顔に会う事が



許されるのに、変だな、と思ったという。



これでは、従姉妹にお別れも言えない・・・・。



そう思ったという。



それでも、親達の指示に従い、知人は決して、奥の間には行かなかった。



その集落では、親戚や年寄りの指示は絶対的なものだったから・・・。



そして、故人と対面出来ないまま、葬儀は進められた。



そして、知人は両親から、従姉妹は、すぐその日のうちに、土葬



されるのだと知らされた。



それまで、その集落の葬儀では、少なくとも3~5日間は、葬儀が



続けられた後、村人全員の立会いの元に遺体が土の中へと埋められるのが



常識だった。



だから、その点でも知人は強い違和感を感じていた。



そして、、いよいよ遺体を土葬する段になった。



そこでも、知人は少し不思議に思った。



通常は1メートルほどしか掘らない穴が、その時は底が見えないほど



深い穴が掘られていたのだから・・・。



しかも、その場に立ち会ったのは、村人全員どころか、親戚が



ほんの数名だけ・・・。



そして、遺体の入った重い木箱を埋める役目を担った力自慢の



男達だけだった。



そして、遺体を木の箱に入れ、それを地中にゆっくりと降ろしていく際、



泣いている者は誰もいなかった。



知人を除いた全員が、



早く土の中に埋めてしまわなければ!



という焦りと緊張が入り混じった顔をしていたという。



その時、急に故人の夫が大声で叫んだ。



どうして鈴をいれないのか、と。



遺体と一緒に鈴を埋めるのがしきたりになっていたから、確かに



それを聞いたとき、知人も不思議に思ったという。



これじゃ、妻が生き返っても分からないじゃないか!



いや、これはお前の為にしていることだから・・・。



今回ばかりは鈴は入れないほうがいい!



そんな大人たちのやり取りを知人はただ黙って聞いていたが、そのうち、



夫の言い分が通り、鈴も一緒に埋葬される事になった。



その時、回りの大人たちが、



本当にどうなっても知らんぞ!



と吐き捨てる様に言っていたのが、強く記憶に残っているという。



そして、それは埋葬した日の夜から始まった。



鈴が鳴るのだ・・・。



しかも、まるで坊さんが読経の際に木魚を叩くかのようなリズムで。



その鈴というのは、万が一、鳴らされれば村中の誰にでも聞こえる



様な仕組みになっているそうであり、すぐに遺体を掘り返す決まりに



なっていた。



そして、その鈴の音は一晩中、鳴り響いていた。



その鈴の音を聞いた知人も、両親や祖父に、



鈴が鳴ってる・・・・早く助けてあげなきゃ・・・・。



と言ったらしいが、両親も祖父も、まるで聞こえていないかのように



平然と構えていた。



そして、それは、故人の夫の場合、もっと大変だったらしく、急いで



墓を掘りかえそうとする夫を何人もの大人達で、無理やり取り押さえたという。



その鈴の音も、朝になるとすっかり消えてしまい、いつもの平穏な



村に戻っていた。



葬儀の間中、降り続いていた雨が、いまだ止まない事を除いては・・・。



しかし、その夜になると、再び、鈴の音が一晩中、村に鳴り響いた。



そして、知人もまた、昨夜と同じように両親や祖父に訴えたのだが、



良く見ると、両親も祖父も何かに怯えているように見えてしまい、



知人は口を閉ざしたという。



何か得たいの知れない事が起こっている・・・・。



そんな気がして、怖くなってしまったから・・・。



しかし、夫はそうはいかなかった。



昨夜と同じように、土を掘り返そうとした。



そして、それを止めた村人に大怪我をさせてしまう。



結局、その夜も夫は土を掘り返すことは出来なかった。



それどころか、村人に怪我を負わしたということで、大きな土蔵の中に



監禁されてしまったという。



土蔵の中からは、



早く助けないと!



大変な事になるぞ・・・・。



そんな声が響いていた。



それでも、夜が来ると、また、村中に鈴の音が鳴り響いた。



そして、それは土蔵の中から大声で叫ぶ夫の声と共鳴するかのように、



耳に痛いくらいだった。



そして、その頃になると、もう両親達は耐え切れないかのように、必死で



両耳を塞ぎ、恐怖と闘っているのが伝わってきて、



とても怖くなったという。



そんな夜が7日間連続した。



そして、8日目に、ようやく鈴の音は聞こえなくなった。



土蔵の中からは、相変わらず、夫の叫び声が聞こえていたが、その声も



何故か、



早く此処から出してくれ!



アレがやって来てしまう!



そんな声に変わっていた。



それでも、鈴の音が聞こえなくなった事が全てを解決したのか、



両親だけでなく、村中の人たちが皆、ホッとした顔をしていたのが、



凄く奇妙に感じたという。



生き返った従姉妹が、鈴の音を鳴らせなくなってしまった事がそんなに



嬉しいのか?



知人は、従姉妹を見殺しにした罪悪感を1人で感じていた。



しかし、怪異は7日間で終わったわけではなかった。



それから、真夜中になると、家の外を誰かが這いずる様に動き回る



音が聞こえるようになった。



そして、朝になると、大人達が、土葬した場所に集まって、何か



必死になって作業していた。



しかし、それでも、家の外を這いずる音は、一向に収まらなかった。



それどころか、家の中からも音が聞こえるようになった。



更に、土蔵の中に監禁されている夫の声が、まるで気が狂ったように



意味不明なことを叫ぶようになっていた。



だから、その頃になると、夜は完全に外出が禁止された。



知人も家の中で過ごしていたらしいのだが、ある夜、



寝ていると、スーッと部屋の襖が開いたという。



誰か来たのかな?



そう思って、知人は布団をめくろうとして固まった。



そこには、顔が潰されたようになり、腐りかけた女が立っていた。



それは、間違いなく、死んだ従姉妹の姿だと分かったという。



そして、その従姉妹は何も無い顔で部屋を見回して、その後、



再び、スーッと襖を閉めて出て行ったという。



知人は恐怖で震えたまま一睡も出来ずに朝を迎えたが、その朝、



土蔵に監禁されていた夫が、外から鍵が掛けられたまま、行方不明に



なっていたという。



そして、その日もやはり、土葬した場所で大人たちが必死に作業を



していたが、その日以来、怪異は収まってしまったという。



そして、大人たちはこう話していたという。



あいつが望んだことだから・・・。



あの娘も、これで本望だろうから・・・。



そして、それを聞いていた知人はとても恐ろしくなり、予定を繰り上げて



市内へ戻ったという。



そして、結局、行方不明になった夫の捜索は行われなかったという。



今となっては、従姉妹がどんな死に方をしたのか、は分からないが、



大人になってからも、両親にその話をすると、



知らないほうがいい・・・・。



とだけ言って、何も教えてはくれないのだという。



ちなみに、その地方では死人返りという邪法が伝説として



今も語り継がれているらしいのだが・・・・。



それと何か関係があるのだろうか?


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:40│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count