2018年11月09日

映画館

俺はもう長い間、映画館という所に足を運んでいない。



パソコンの画面が大型化し、ブルーレイも登場してしまうと、



わざわざ



足を運んで映画館に行って映画を見る気になれなくなった



というのが、その理由だ。



そんな事を書くと、映画好きな方に怒られてしまいそうだが、



それでも、やはりゆったりと横になって好きなお菓子と飲み物を



片手に観るブルーレイの映画は魅力的なのだ。



今の映画館は、1回の上映毎に観客が総入れ替えになるのだそうだ。



しかし、昔の映画は違った。



好きな時に入館し、好きなだけ何度でも観てから帰る事が出来た。



しかも、金沢という田舎のお陰か、都市圏ではありえない、



話題作の2本、3本同時上映というものまで存在した。



そんな古き良き時代を知る者としては、やはり今の映画館に



あまり魅力を感じられない。



ただ、俺の友人は違っていた。



とにかく映画という文化が好きなのである。



だから、話題作であれ、全く人気の無い作品であれ、そして子供向けの



アニメであれ、余程のことが無い限り、全て観るのだそうだ。



しかも、平日が休みの彼女は、平日の休みには、特に用事が



無い限り、必ず朝一番の映画の為に映画館に向かう。



そして、そういう場合はあえて難しそうな内容で、且つ、不人気な



映画から観るのだそうだ。



そうすると、ごく稀に、観客が彼女1人、という場合もあるのだという。



難しい内容の映画を見て、製作した監督の伝えたかった事などを



考えながら観る映画は、彼女にとってはかけがえの無い時間



なのだという。



しかし、そんな彼女はある時以来、1人では映画を観ないようになった。



今日はその話をしようと思う。



その日も彼女は朝早くから準備をして映画館に向かった。



平日ということもあり、映画館の前には、誰もいなかった。



もしかしたら、1人きりで優雅に映画を観られるかもしれない・・・。



彼女はそんな期待を抱きつつ、出来るだけ話題になっていない



難しそうな映画を選び、館内へと入った。



彼女の期待は、現実となった。



どうやら、その映画には彼女以外の観客は1人もいない様だった。



彼女は喜んで指定席に座り、上映開始を待った。



いよいよ、館内が暗くなり映画が始まった。



確かに難しい映画ではあったが、1人で観ていると雑念が



取り払われたかのように、すんなりと頭の中に入ってくる。



彼女は、その時、思っていた。



映画というのは1人きりで観るべきものなのだ、と。



そして、これからは、映画は平日の朝一番に来て、出来るだけ人気の無い



映画を観ることにしようと・・・。



それほど、その時観た映画は快適であり、彼女にとっては理想的な



視聴環境だったという。



そんな感じで映画に集中していると、ちょうど30分ほど経った



頃に何かの気配を感じた。



彼女は、



おかしいな・・・私1人しか映画を観ていないはずなのに・・・。



そう思って根回りを見回した。



すると、彼女を取り囲むように館内には、観客が4人増えていた。



見知らぬ女が4人も・・・。



どうして?



映画が始まった時には、私1人しかいなかったはずなのに・・・。



そして、彼女は考えた。



もしかしたら、あまりにも観客が少ないものだから、従業員の人が



勝手に観ているのかも・・・・。



でも、従業員の人ならば、マナーはしっかりしているはず・・・。



そう思うと、彼女は再び、映画の中に入っていった。



映画は、他の客の雑音に悩まされる事も無く、快適なな環境が



続いていたが、彼女はその時、ふと違和感を感じてしまう。



それは、彼女の他に、4人が映画を観ているというのに、全く



雑音が聞こえてこない事だった。



座りなおしたり、咳をしたり、少しは何か音が聞こえるのが普通



だと思っていた。



しかし、彼女の耳には、何一つ、雑音が聞こえては来なかった。



だから、彼女は、そっと画面から視線を外し、周りにいる4人に



視線を移した。



え?



彼女は思わず声を出しそうになってしまった。



彼女が回りの4人を見回したとき、その4人は映画のスクリーン



ではなく、間違いいなく彼女の方をじっと見つめていた。



彼女は慌てて視線を映画のスクリーンの方へと戻したが、



既に完全にパニックになっていた。



どうして、私の方を観てるの?



しかし、その4人が女性だったこともあり、彼女は、気を落ち着かせて



映画に集中しようとする。



すると、突然、スクリーンの映像が変わった。



彼女が見ているのは、アメリカの古い年代のストーリーだった。



しかし、彼女の目の前のスクリーンに映し出されていたのは、紛れもなく、



現代の高層ビルの屋上。



彼女は、



もしかしたら、映画の演出なのかもしれない・・・。



そう思って、スクリーンを見続けた。



完全な1人称視点で映画は進んでいく。



屋上の端に向かって視界は移動していく。



そして、1段高い場所に昇って、辺りを見回している。



そして、次の瞬間、急に視線が宙に舞った。



凄まじい速度で視界が地上のアスファルトへと近づいていく。



ちよっ・・・何これ?



彼女がそう思っている間に、視界はそのままアスファルトへと



叩きつけられ、とても嫌な音が聞こえた後、真っ暗になった。



そして、またすぐにスクリーンの映像が切り替わった。



またしても1人称視点。



今度は駅のホームに立っている。



どうして・・・アメリカの古い時代のストーリーでしょ?



そう思っている彼女に、映像はそのまま流され続ける。



視線が敵のホームの線路を見つめている。



どうやら、日本の駅・・・のようだった。



そこへ駅員の声とともに、凄まじい速度で電車がホームへと



走りこんでくる。



え?・・・・・え?・・・・。



そう思っていると、視線はそのまま前へと駆け出して、ホームの下に



向かって飛び込んだ。



凄まじい衝撃音とともに、何かが引きちぎられる音、そして、



ホームにいた人たちの悲鳴が聞こえてくる。



そして、耳が痛くなるほどのブレーキ音の後、視線は電車に



巻き込まれる音とともに、静寂が訪れた。



彼女の心臓は早鐘のように鳴り響いていた。



そして、また映像が変わった。



彼女は、もうスクリーンを正視出来なくなってしまい、そのまま



席を立とうとした。



すると、突然何かとても強い力で、席へと再び座らされた。



彼女の目には、彼女を押さえつけている8本の手が見えた。



さっきの女達だ・・・・・。



でも、どうして?



そう思った時、耳元から声が聞こえた。



最後まで観て・・・・・。



その途端、得体の知れない凄い力で彼女の体は、差席に押し付けられ、



全く身動きが取れなくなってしまう。



その後は、もう目を閉じていたから、彼女は何も見ていない。



しかし、その後も、嫌な音が聞こえた後、また静寂が訪れた。



そして、ちょうど4回目の音が聞こえた後、完全な無音状態になった。



彼女は、恐る恐る目を開けてみた。



すると、彼女の目の前には、崩れた顔や腐った顔が、合計で



4つ並んで、彼女を覗き込んでいた。



そして、耳元から、



ちゃんと、観た?



と聞こえたという。



そこで、彼女は気を失ってしまい、次に目を開けたのは、映画が終わり、



係員によって揺り起こされた時だったという。



係員に起こされ、辺りを見回すと、やはり彼女以外にはその



映画を観ている者など1人もいなかった。



彼女はそのまま逃げるように映画館から出て、家に向かった。



そして、その帰り道、彼女は人身事故を起こしてしまう。



単なる偶然の中もしれないが・・・。



ちなみに、その後、彼女に怪異は起こっていないが、それ以来、



絶対に1人では映画を見に行かなくなったという事だ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:46│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count