2018年11月10日

盛り塩

Aさんは、意地っ張りでかなりの頑固者である。



そして、これから書くのは俺が以前この目で見た嘘のような



本当の話である。



Aさんが作るものには不思議な力がある。



それは本人が知ってか知らずか、とてつもない力を有している



事が多い。



実際、我が家はAさんの護符によって護られているのは事実だし、



その他にも、何人かの知人や友人も、Aさんが作ってくれた



お守りや護符によって、救われた者も数多い。



それは一見すると、子供が作った様な雑なつくりの物ばかりであり、



何の効力も持っていないように見える。



しかし、俺が知っている中では、Aさんが作る護符以上に強力な



結界を張れるものなど、見たことは無い。



そして、これから書く話は、俺の友人の妹さんが、霊にとり憑かれた



時の話になる。



それは、今から1年くらい前の頃だった。



ある日を境にして、友人の妹さんの様子が一変してしまった。



それまでは、恥ずかしがりやで、大人しい妹さんだった。



それが、友達と東北を旅行してきてから、完全に別人になった。



昼間は、それまでと全く変わらないのであるが、夜になると



その性格はおろか、容姿までがすっかり変わってしまっていた。



夜中に自分の部屋で、突然、大声で聞いた事も無い歌を歌い始めたり、



突然、家の中を走り回ったりするようになった。



それだけなら、まだ我慢出来るのかもしれないが、妹さんの異常さは



日に日に増大していく。



そして、ある日を境にして、真夜中に突然、家族の部屋に入って行き



両手で首を絞めるようになってしまう。



それも、若い女性の力とは思えない程の力で、本気で家族の首を絞めた。



そして、その時の顔は、まるで妹さんとは別人の顔であり、首を絞めながら



嬉しそうに笑って、何か独り言を喋るその姿は、不気味としかいえない



ものだった。



そして、彼は俺に助けを求め、そして俺はいつもの様にAさんに頼み込んだ。



俺の話を聞いたAさんは、いつもの様に面倒くさそうに、



そんなの、思春期にはよくあることでしょ?



と言ったが、俺には、とても良くあることには思えなかった。



そして、Aさんは、こうも言った。



そんなの何処かのお寺にでも頼めば良いじゃないてすか・・・と。



しかし、彼は既に、知り合いのお寺に助けを求め、そして何の解決も



得られなかったので、俺に助けを求めてきたのだ。



だから、それを話すと、これまた、いつもの様に、



はいはい・・分かりましたよ。



私は、またKさんに頼まれて、1円にもならない事に力を使わなきゃ



いけないんですよね・・・。



そう言った。



しかし、お金を貰わないと決めているのはAさんであって、俺ではない。



まあ、そんな憎まれ口を叩いても、結局、協力してくれるのが



Aさんの良い所なのだが・・・。



そして、俺とAさんは、彼の家へと向かった。



昼間は妹さんは以前と変わらず、元気に学校に通っていた。



だから、その間に何か策を講じようという作戦だった。



Aさんは、妹さんの部屋、そして家の中を見て回って、



やはり、昼間は居ませんね。その霊は・・・・。



だとしたら、やる事は1つだけです。



そう言って、持参した袋から、何かを取り出して、白い紙の上に



置いた。



盛り塩だった。



綺麗に山の形を作り、部屋の四隅に置いた。



そして、



これで、もう大丈夫だと思いますよ。



何処から来たとしても、絶対に部屋の中には入れませんから!



そう自信たっぷりに言った。



その言葉に彼もホッとしていたのが思い出される。



しかし、その晩からは、妹さんは暴れたり大声で歌ったり、そして



家族の首を絞めたりはしなくなったのだが、そり代わり、寝たままの



状態で苦しそうな声を上げたり、泣き叫んだりするようになった。



そして、それはいつものように、とても妹の声とは思えない様な太く



低い声だった。



その夜は恐怖で妹の部屋には行けなかったらしいが、翌朝になり、



部屋に行くと、Aさんが部屋の四隅に配置した盛り塩が、跡形も無く



部屋中に散らばっていた。



だから、俺はその事をAさんに伝えた。



すると、慌てて、またAさんは彼の家に行き、新たに、特別な粗塩で



部屋の四隅に盛り塩を配置した。



しかし、その夜も、結果は同じであり、翌朝には部屋中に粗塩が



散乱していた。



確かに、Aさんの設置する盛り塩というものは、それまでの体験から



かなりの力が在ることは認知していた。



しかし、立て続けに2回も盛り塩を蹴散らされたということは、かなりの



悪霊である事は容易に想像出来た。



だから、俺は進言した。



盛り塩ではなく、護符を使うか、もしくは、直接対峙してはどうか?と。



しかし、Aさんは、



嫌です・・。



このままじゃ、私が負けを認めたみたいじゃないですか?



絶対に盛り塩で、防いでみせますから・・・・。



もう蹴散らされないようにしますから・・・。



そう言い張った。



そして、その日のうちに、Aさんは、またしても彼の家を訪れて



新しい盛り塩を設置した。



しかし、その日の夜には、またしても、妹さんの部屋から異様な声が



聞こえてきた。



更に、何かに対して暴れている様な物音も聞こえてきた。



そして、翌日に彼が妹さんの部屋を見に行くと、そこには、盛り塩の



天辺だけが、何かによってむしり取られた様な痕が残されていた。



だから、俺は、それをAさんに伝えた。



すると、Aさんは驚いた顔をして、



あの盛り塩の天辺がむしり取られた様に無くなっていたんですか?



ありえないことですけどね・・・。



そう言うので、俺がその理由を聞くと、



どうやら、設置した盛り塩を何かでカチカチに固めてから部屋に設置



したということだった。



そして、



相手もなかなかやるもんですね・・・。



と言っているので、俺は、



あのね・・・盛り塩が崩されない事が大切なんじゃないと思うんだけど?



盛り塩を固めて、どうするつもりなの?



あの部屋に悪霊を入れないようにして、妹さんを護る事が最優先



なんじゃないの?



と言うと、



はい・・・勿論です。



分かってますよ。



と不満げに答えた。



どうやら完全に意固地になってしまっている様だった。



しかし、どうやら、それはAさんだけではなかった様だ。



それからも、Aさんは執拗に工夫を凝らした盛り塩を設置し続け、



そして、翌朝になると、その盛り塩は、必ず、崩されていた。



きっと、相手の霊も、意固地になつていたのかもしれない。



ただ、もうその頃になると、妹さんには異変は起こらなくなっており、



完全にAさんとその悪霊との意地の張り合いになってしまっていた。



だから、俺はもう放っておいたのだか、ある日、突然、Aさんが



本気を出して除霊したらしく、その件は解決した。



しかし、俺には疑問が残っていた。



あれほど意固地になっていたAさんの気持ちを変えさせたものは



いったい何だったのか、という事だった。



しかし、どれだけ聞いても、絶対にAさんは、その答えを教えては



くれなかった。



しかし、ある飲み会の席で、気持ちよく酔っ払っていたAさんに聞いた



ところ、こういう答えが返ってきた。



ある日、いつもの様に盛り塩を設置しに行った時、盛り塩で



文字が作られていたんですよ・・・。



年○ブ○・・・・って。



だから、決断しました。



とんでもない奴だって・・・。



それまでは可愛げがある奴かな、って思ってたんですけど、とんでもない



悪霊でした・・・。



そう言っていた。



まあ、俺にはどっちもどっち、としか思えなかったのだが。


Posted by 細田塗料株式会社 at 00:00│Comments(0)
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