2018年11月10日

訪問客

これは知人が体験した話である。



彼は金沢市郊外に家族4人で一戸建てに住んでいる。



年の離れた奥さんと、中学生と高校生の息子二人での生活である。



彼は、仕事が営業ということもあり、仕事で近くまで来た際には、



自宅で昼食を食べる事もあるらしい。



そして、その日も彼は、お昼過ぎに自宅へ戻った。



奥さんは共働きの為、昼間は家にはいない。



だから、彼は、よく弁当を買い込んで自宅でのんびりと食べるのが



楽しみになっていた。



営業車を駐車場に停めて、玄関の鍵を開ける。



そして、いつも通りに玄関のドアを開けると、そこには玄関いっぱいに



溢れんばかりの靴が並べられていた。



最初、それを見た時、奥さんか息子の誰かが家に戻ってきており、



友達でも呼んだのか、と思ったらしい。



しかし、すぐにそれが間違いだという事に気付いた。



玄関に並べられている靴は、きちんと並べられ置かれていた。



しかし、そこに並べられていた靴には一貫性というものが欠如



していた。



会社員が履く様な革靴もあれば、子供の可愛い靴もあった。



更に、下駄や和服用の草履までが、整然と並べられていた。



だから、彼は思わず息を呑んだという。



もしかしたら、泥棒なのか?



そう思ったが、もしも、そうだとしたら明らかに奇妙な泥棒だった。



並んでいる靴や草履は、優に20人分以上あった。



もしも、そんな大人数で家に泥棒に入ったとしたら、目立ちすぎてしまい



すぐに見つかってしまうだろう。



だとしたら、今、目の前に並んでいる沢山の靴や草履は、どういう事なのか?



彼は、しばらく玄関で呆然と考えていたが、意を決して家の中に



あがった。



廊下を進み、リビングに向かう。



しかし、人の気配は全く無かった。



一応、音を立てない様に、静かに行動した。



そして、彼は護身用としてキッチンに置いてある包丁の中で一番



大きな物を手に取った。



それだけでも、かなり気持ちに余裕が出来た。



それから、1階の部屋を全て見て回った。



しかし、何処にも人の気配は皆無だった。



だから、彼は階段までやってきた。



あれだけの靴が置いてあって、1階には誰もいなかった。



だとしたら、2階に誰かがいるのは間違いなかった。



彼は気を引き締めて階段を静かに上って行く。



すると、階段を半分ほど上ったところで、2階から声が聞こえてきた。



賑やかに楽しそうに話す声と、それに混じって聞こえてくる笑い声。



かなりの人数がいるのは明らかだった。



彼は、息を殺して、一度階段を降りた。



そして、警察に電話した。



事情を話すと、警察はすぐに、こちらに向かってくれると言った。



そうなると、俄然、勇気が沸いてくるものらしい。



彼は、しばらくの間、玄関で警察の到着を待っていた。



しかし、2階から聞こえてくる音が、ドンドンと何川叩く様な音に



変わってきたとき、彼は、こう思った。



大切なマイホームを壊されては溜まったものじゃない、と。



だから、彼はもう一度、階段を上り始めた。



もうすぐ警察が到着してくれる。



それは、彼に無限の勇気を与えたようだ。



彼は階段を上りきる。



すると、彼が書斎として使っている部屋の中から、大きな笑い声が



聞こえてきた。



彼は、手にしっかりと包丁を握り締めながら、ドアの前に立ち、



誰だ!お前ら!



そう怒鳴りながら、一気にドアを開けた。



彼は思わず呆気に取られてしまう。



そこには、誰もおらず、いつもと変わらない無人の部屋が広がっていた。



怒鳴った自分の声が恥ずかしくなるくらいに、静かな部屋が



そこには在った。



彼は、まるで狐にでもつままれた様な気持ちになってしまった。



どうして?



今まで、間違いなく誰かがいたのに・・・・。



そう思いながら、彼はゆっくりと階段を降りていく。



そして、再び、玄関に戻ってきた彼は、そこで、また呆然と



立ち尽くしてしまう。



玄関には、先ほどまで所狭しと置かれていた靴や草履が、全て消えていた。



そして、何故か、そこには綺麗な花が一輪置かれていた。



その後、警察が到着し、一応家の中を確認してもらったが、どこにも



異常は無かったという。



そして、警察から少しだけ嫌味を言われてから、彼は再び、ひとりになった。



そして、その時は意味が分からなかったらしいのだが、その後、彼は



玄関に置かれていた一輪の綺麗な花の意味が分かったという。



それからも、彼が家に帰ると、沢山の靴や草履が置かれている事は



無かったが、何故か、綺麗な花が一輪置かれている事があるのだという。



そして、そんな時には、いつも彼の部屋は、いつもにも増して綺麗に



整理・整頓されているのだという。



きっと、彼らが、部屋を使わせて貰ったお礼に、一輪の花を置いて



いってるんだと思うんだ・・・・。



その彼らが何を指しているのかは分からないが、とにかく、彼は



少しだけ嬉しそうにそう話してくれた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 00:01│Comments(0)
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