2018年11月10日

夜勤

これは看護師をしている姪から聞いた話。



彼女は、まだ看護師になって日も浅く、毎日が本当に大変だそうだ。



勤務しているのは、石川県でもかなり大きな総合病院。



覚える事も多く、失敗も許されない。



勿論、患者の命を預かる現場で働いているのだから、それも



当然なのだろうが・・・。



最初の頃は、とにかく毎日を乗り切ることだけで精一杯だった



彼女だが、きっとそれなりに慣れてきたのかもしれない。



その病院に関する噂なども耳に入ってくるようになった。



その中でも、やはり夜勤の時などに話題になるのが、その病院で



過去に起こった怪異だそうだ。



それは既に本を1冊出せるくらいの話の数らしいのだが、その中でも



彼女自身が係わってしまった怪異について書きたいと思う。



それは彼女が看護師になってから半年くらい経った頃だった。



やはり新人看護師といえど、夜勤というものはあるらしく、



彼女自身、とても嫌だったという。



それは、怖いから、というのではなく、看護師の人数が少ない時に



何かトラブルとか失敗を起こしてしまったら・・・というものだった



らしく、彼女はいつも仲の良い先輩と一緒の夜勤になれるように



いつも願っていた。



そのお陰なのか、彼女はその先輩看護師と一緒に夜勤勤めをする



場合が多かったという。



そんな矢先、ある患者が入院してきた。



その患者とは50代の男性であり、以前から何度もその病院で



入退院を繰り返している患者だった。



しかも、入院してくるなり、その男性はベッドに縛り付けられ



まるで監禁されている様だったという。



先輩の看護師に聞いてみたが、



危険だから・・・・。



という一言だけが返ってきた。



彼女は、”危険”という単語から、その男性が精神を病んで入院



してきたのかと思ったらしいが、調べてみるとどうやら違う



らしく、その男性の病名はいわゆる内臓疾患の類だった。



それでは、何が危険なのか・・・・。



彼女は、つい気になってしまい色々と聞いてみたが、その度に、



関わらない方が良いから・・・。



と先輩看護師達は誰一人としてその理由を教えてくれなかった。



しかし、そんな好奇心も仕事の忙しさに忙殺されてていく。



そして、彼女がその男性のことすら頭から消えてしまっていた頃に



それは起こった。



その男性が突然暴れだしたのだ。



常日頃は、とても大人しく、模範的な患者だったから、彼女は驚いた。



そして、あの時言っていた、危険という意味はこういう事だったのかと、



勝手に納得した。



その男性は、ベッドに縛り付けられ、部屋のドアにもしっかりと施錠



されていた。



そんな状態で、いったいどんな暴れ方をするのだろう?



少し興味が沸いた彼女は、休憩時間に、その患者の部屋を見に行った。



すると、部屋の中から、



ウォー、ウォー、



という大きな声が聞こえており、部屋のドアも大きく震えていた。



しかし、それは部屋の中から男性がドアを叩いているのとは違い、



まるで台風のような風に、ドアが大きくしなっている様に見えた。



そして、その様子を見ていた彼女は驚いた。



なんと彼女と一番仲の良い先輩看護師がその場に呼ばれ、そして



部屋の中に入っていった。



たった一人で・・・・。



彼女は、大丈夫なの?と不安だったが、その先輩看護師が部屋の中に



入っていくと、すぐに叫び声もドアのしなりも、すっかり消えてしまった。



そして、10分ほどしてから、その先輩が部屋から出てきた。



何か思いつめた様な顔をして・・・・。



彼女は急いで、その先輩の所に走り寄ると、



大丈夫ですか?



なんで、先輩が呼ばれて中に入らなくちゃいけないんですか?



と聞いたのだが、先輩は疲れた顔で彼女を見て、



これは決められた事だから・・・・。



それに、もう終わりだから・・・・。



と訳の分からない返事をした。



当然、彼女は、更に話を聞きだしたかったが、その時の先輩の様子は



いつもの明るい感じとは違い、少し怖いくらいだったから、それ以上は



何も聞けなかった。



そして、それからの先発の様子はかなりおかしかったという。



いつも何か思い詰めたような顔で何かに怯えているような感じ。



勿論、仕事中はそれを悟られないように笑顔を見せているのだが、



いつも一緒にいた彼女にはその不自然さがよく分かったという。



まるで、何処かに行ってしまいそう・・・。



そんな気がして仕方なかったという。



だから、彼女は仕事中も、そしてプライベートでも、出来限り



先輩の側を離れないようにした。



そんな彼女を見て、先輩は少し呆れた様な顔をしていたが、それでも



心配してくれてありがと。



でも、大丈夫だよ・・・。



そう言って貰い、少しだけホッとできたという。



そんなある夜の夜勤の時、その先輩と同じ夜勤に入っていた彼女は



ナースステーションに先輩の姿がないことに気付いた。



他の看護師に聞いたが、誰も見ていないということだった。



彼女は慌てて、先輩を探して回ったが、どうしても先輩の姿は



見つからなかった。



その時、ある日の光景を思い出した。



あの日、あの男性患者の病室に入ってから、明らかに先輩の様子が



おかしくなったという事を。



だから、彼女は急いで、その男性患者の病室に向かった。



実は、その病室は、危険という事で、誰も近づかない場所になっていた



のだが、その時の彼女にはそんな事はどうでも良かった。



とにかく、一国も早く先輩の姿を探さなければ・・・。



それしか頭になかった。



男性患者の病室に到着すると、どうもいつもとは様子が違っていた。



病室は、外から鍵を掛けられているはずだった。



しかし、その時、病室のドアは開いたままだった。



彼女が慌てて病室中を覗くと、そこには男性の姿はなく、手足を



ベッドに縛り付けていたロープだけがそこに残されていた。



だから、彼女は、必死にその男性の姿を探した。



もう時刻はかなり遅く、当然静かにしなければいけなかったが、彼女は



必死で廊下を走って、その男性と先輩の姿を探した。



そして、その階にあるテラスに向かう廊下で二人の姿を見つけた。



先輩は、その男性に手を引かれる様にして、廊下を筈かに進んでいた。



その姿は、まるで、人さらいのように見えたという。



そして、テラスへと続く、いつも見慣れているはずの廊下は、まるで



別世界のようであり、真っ暗な空間に、白い廊下だけが、ぽっかりと



浮かんでいるように見えた。



彼女はそれを見て恐ろしくなったが、それでも何とか先輩を取り戻そうと



一気に先輩の所まで走り寄ると、先輩の手を掴んだ。



ヒッ・・・。



思わず声が出てしまった。



それは、彼女が知っている先輩の暖かい手ではなく、氷のように冷たい



手だった。



それでも、彼女は渾身の力で先輩の腕を引っ張り、その男性から



引き離した。



すると、その男性はゆつくりと振り向いたという。



その顔には、生気というものは欠片もなく、亡者そのものという



顔をしていたという。



彼女は、叫びだしたかったが、それでも、必死に先輩の手を



引っ張り続けた。



すると、その男性は、何かうめき声のような声を発した後、背中を



見せて、そのままとぼとぼと歩いていった。



そして、その男性が暗闇の中に吸い込まれていくと、そこにはいつもの



空間が広がっていたという。



そして、彼女は先輩をナースステーションまで連れて行くと、



まるで先輩を護るかのように、決して側を離れなかった。



そして、他の看護師に、その男性の事を告げると、慌てて、確認に



行ったらしいが、どうやら、その男性は、いつも通り、部屋の中で



ベッドに縛られた状態で眠っていたという。



それを聞いて、彼女は先輩の顔を覗き込んだが、先輩は、



もう手遅れなのに・・・。



ごめんね・・・・。



そう繰り返すだけだったという。



そして、翌朝、医師が回診に行くと、その男性患者は既に死亡していた。



死因は心不全だった。



しかし、彼女は不謹慎だが、それで少し安心したという。



もう先輩を連れて行くものはいない、と。



しかし、その夜、忽然と先輩と連絡が取れなくなった。



翌朝、出勤すると、どうやら先輩は、休みにもかかわらず病院に



顔を出して、



忘れ物を取りに来た・・・。



そう言って、病院の中に消えていったという。



そして、それから現在に至るまで、その先輩看護師の姿は見つかっていない。



ただ、それから、彼女は別の先輩からこんな話を聞いた。



その死亡した男性は、何度かこの病院に入院していたらしいのだが、



いつも夢遊病者の様にふらふらと出歩いたり、時には暴れたりも



したらしい。



だが、その先輩看護師が担当になつてからは、とてもおとなしくなったという。



あの二人の間に何かあったのかは分からないけど・・・・。



でも、その男性が入院してくるたびに、先輩の元気がどんどん



無くなっていくのが分かったという。



だから、看護師達はこう噂している。



その男性が、先輩看護師を連れて行ったのだ、と。





Posted by 細田塗料株式会社 at 00:03│Comments(0)
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