2018年11月10日

5番ゲート

これは以前、飲み屋で知り合った男性から聞いた話である。



その男性は、以前は大型商業施設の警備員をしていたのだという。



そして、警備は昼間だけでなく、その頃は夜間の泊り込みの警備



というものもあったらしい。



最初はその不規則な生活に馴染めず、かなり辛かった。



しかし、それも、その仕事を続けるうちに、体も慣れてきてしまい、



さほど苦にはならなくなったという。



それでは、今も警備員の仕事を続けているのか、と聞けば、



そうではないという。



そして、その理由を聞いた時、俺は思わず、その理由に納得してしまった。



その当時、彼が勤務地として働いていたのは、かなり巨大な



商業施設だった。



そう、誰もが知っているような・・・。



昼間はその施設内を巡回し警備に当たる。



そして、夜はといえば、お客が居なくなった店内を、たった二人で



見回るのだそうだ。



主に、火事や泥棒の防止を目的とした警備らしいのだが、それだけ



大きな施設を二人で回るという事になるのだから、その大変さは



ハンパなものではない。



しかも、二人一組で夜間警備するといっても、基本的には、誰もいない



店内を回るのは、いつも1人なのだという。



1人は、連絡要員として、警備の詰め所に残り、もう1人が施設内を



懐中電灯を持って見回る。



そして、何か異常があれば、すぐに詰め所に居る、もう1人に連絡して



対処する、ということらしい。



それを聞いただけでも、本当によくやるな、と感心してしまうのだが、



どうやら、その他にも色々と苦労はあるようだ。



その施設には、業者の搬入用に利用されるゲートというのが、1番



~8番まで存在したらしい。



実際、昼間だけでなく、夜間にも、そのゲートを通って不審者が



進入してきたケースもあるらしく、当然、そのゲートには



全てセンサーが取り付けられ管理されている。



しかし、その中にも例外はあった。



5番ゲート。



もしも、そのゲートでセンサーが作動しても、確認しなくて良い、という



暗黙のルールが存在していた。



その理由を説明される事はなかったが、彼らは当然、それに従った。



その5番ゲートというのは、全部で8箇所あるゲートのひとつに



過ぎなかったが、確かに昼間でも何か得体の知れない暗さがあった。



しかし、会社側が、確認しなくて良いというのだから、彼らにとっては



仕事が楽になる、という感覚しかなかったのだそうだ。



そして、そんなある日、彼が泊りがけの夜勤当番になった時、どうやら



新人が回されてきた。



体格も良く、性格も穏やかだった。



だから、見回り以外の時間には、とても楽しく会話を楽しむ事が出来た。



しかし、彼も会社も、彼には伝えていなかった。



5番ゲートのセンサーが作動しても、確認に行かなくても良いというルールを。



ちょうど、センサーが作動したのは、午前2時を回った頃だったという。



その新人は、手柄を立てて会社側に認めて欲しかったのかもしれない。



センサーが鳴ると同時に、



私が行きます!



そう言って元気良く詰め所を出て行った。



そして、彼がセンサーの制御盤を確認すると、5番ゲートのセンサーが



作動していた。



彼は、慌てて、その新人さんを止めようとしたが、それでも、まあ



良い経験になるだろう、と思い、その新人をそのまま行かせた。



勿論、彼も、実は5番ゲートの事が気になっていたのは事実だったし、



新人さんが確認してくれるのなら、その謎も知る事が出来る。



そして、何より、彼自身、どうして、そのゲートのセンサーが鳴っても



確認しなくて良くなったのか、という恐ろしい理由を知らなかった



のだから、仕方ないのかもしれない。



そして、そのまま、その新人さんと連絡が取れなくなった。



そして、その事を会社に連絡し、増援を要請して、彼自身も5番ゲートに



向かっていたとき、彼は恐ろしい声を聞いた。



それは、まるでマイクに乗った声のように聞こえた。



そして、その声が、ずっと低い女の声で



うふふふふ・・・・・・うふふふふ・・・・・うふふふふ・・・・うふふふふ・・・



とずっと笑っていたのだ。



彼は、恥も外聞も捨てて、その場から逃げ出したという。



そして、警備会社からの増援が到着したが、結局、彼は施設の中に



再び入る勇気が沸かず、その場で待機する事にした。



そして、中に入ったメンバーによってすぐに警察が呼ばれた。



かなりの大騒動になった。



そして、結局、新人さんは、5番ゲートの中でうずくまったまま



ヘラヘラと笑っているのが発見される。



その顔には、何本かの爪あとの様な傷が残されており、ゲートの壁には



無数の女性と思われる手形が残されていた。



そして、5番ゲート以外に、彼が居た詰め所のドアが、大きな力で殴られた



ように、ひしゃげているのが確認された。



結局、新人さんは、そのまま精神病院に入れられてしまい、更にその後の



警察の調べでは、5番ゲートに着いていた手形には、何故か指紋という



モノが、全く無かったという。



更に、ドアがひしゃげていた警備用の詰め所の中にも、幾つか、指紋の無い



手形が残されており、更に、館内放送のマイクがONの状態に



なっていたという。



勿論、彼らが、夜間、マイクの電源を入れることなど絶対に無いそうだ。



そして、彼は



そいつは、間違いなく、俺を探しに詰め所まで来てたんだ・・・。



だから、あのまま、詰め所にいたら、俺もきっと、その何かに



遭遇していたに違いない・・・。



そして、そうなっていたら、俺もあの新人と同じように、ずっと



病院から出られない人生を送らなくちゃいけなかったんだろうな・・・。



そう言って、彼は小さく震えていた。


ちなみに、その一件があってからは、会社の指示も、その5番ゲートでセンサーが


作動しても、「確認しなくて良い」から、「昼夜にかかわらず絶対に確認


してはいけない」


に変更され、更に、詰め所の扉も、分厚く重い頑丈な扉に交換されたそうだ。


そして、その商業施設は、今現在も私の家のすぐ近くで営業を続けている。


Posted by 細田塗料株式会社 at 00:21│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count