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2018年11月10日

見舞いに来る・・・・・。

彼女は、幼い頃から体が弱かったという。



風邪をひいただけで、かなりの高熱がずっと続いてしまい、



運動をしただけでも、すぐに寝込んでしまう。



だから、体育の授業にも遠足にも参加したことは無かった。



皮膚も弱く直射日光を浴びただけでみみず腫れのようになってしまうから、



夏でも長袖、長ズボンを着て顔にも大きなマスクを付けていた。



そして、そんなにしっかりと防護していても、家と病院を往復する様な



生活を強いられた。



最初に出来た友達も、当然離れていき、完全に孤立してしまう。



ただ、生まれた時はそうではなかったという。



普通に生活をし、何でも食べて元気に育っていたのだという。



それが、変わっていったのは、幼稚園に通っていた頃だという。



普通に友達のように遊ぶことが出来ない・・・。



それに気づいたとき、彼女は何が起きているのか、全く分からなかった。



そして、友達がどんどん離れていき、独りぼっちになった時、彼女は



絶望というものを知った。



病名について、親からは何も教えられなかった。



ただ、両親の顔を見ていると、きっと自分は長くは生きられないのだと



悟ったという。



それでも、彼女は両親の前では、とても元気に振る舞った。



それは、きっと彼女の優しい性格と、一人っ子なのに、親に



迷惑をかけて、これ以上悲しませたくないという思いから



だったのだろう。



最初の入院はほんの1週間程だった。



しかし、入院を繰り返すたびに、その期間はどんどんと長くなっていき



1年のうち、家で暮らせる時間の方が短くなってしまう。



それでも、彼女は両親の前では気丈に振る舞った。



それが彼女に出来る唯一の親孝行だと思っていたから・・・。



しかし、両親が見舞いに来ていない時には、一人でベッドで



泣き明かしていたという。



それでも、環境に慣れるというのは凄いもので、彼女はどうせ



入院しているのなら、他の子が体験出来ないような病院だけの



楽しみを見つけようと考えた。



だから、病院の色んなところに出没し、その度に医師や看護師に



怒られていた。



しかし、怒られるのも彼女にとっては嬉しい事だった。



幼い頃から体が弱かったせいで、家族の誰も彼女を叱ってくれた事が



無かったから・・・。



それなのに、何故か懐かしい気持ちがして、いつも嬉しくなってしまう。



そして、そんな事をしているうちに、病院中の人達に、彼女は



知られるようになった。



病院内を散歩していても、いろんな人に声をかけられる。



それは、食堂のおばさんだったり、同じ入院患者だったり、そして



医師や看護師だったりした。



そして、それは、彼女自身が見つけたかった、他の友達が決して体験



出来ない楽しみというものを見つけた事になった。



しかし、ずっと入院している彼女にとって、それはある意味、辛い



現実の始まりでもあった。



彼女が入退院を繰り返している間に、医師は転勤していき、患者も



退院したりして、どんどん居なくなっていく。



そして、同じ入院患者の中には、亡くなってしまう者も当然



存在し、それが、彼女にとって死を間近に感じさせる事に



なってしまう。



昨日まで楽しく話していた患者が突然、居なくなり、病室が綺麗に



片付けられてしまう。



それは、まるで、自分の近い将来を見ている様で、とてもつらく悲しい事だった。



だから、そのうちに、彼女は自分の病室から一歩も出なくなってしまう。



そして、その為か、彼女の入院の期間はさらに長いものになっていき



更に、入院中は、何度も生死の境を彷徨う事になっていく。



そんな事を繰り返しているうちに、彼女の体は日常生活を送れない程に



なってしまい、1年間を全て病院で過ごすようになる。



もう、その頃になると、彼女には生きる希望も、そして楽しみも



無くなってしまっていた。



いつも、窓から外を眺めては、



もうこの景色もあとどれくらい見られるのかな?



等と考えては、自分の死期ばかりを考えていた。



そんな時、彼女はふと病室のドアから誰かが覗いている事に気づく。



よく見ると、自分と同じ年頃の女の子だった。



しかし、その頃は、何もかもが嫌になっていたのだろう。



その子が、じっとこちらを見ているのを知りながら、わざと寝たふり



を続けていた。



しかし、その女の子は、気が付くと必ず、病室のドアからこちらを



見つめていた。



何か用?



それが彼女が最初に掛けた言葉だった。



敵意を剥き出しにした、冷たい言い方だった。



しかし、その女の子は、にっこりと笑って、



私も一人ぼっちだから・・・・。



だから、良かったら、友達になれたらな・・・・。



と返してきた。



そして、少し不安そうな顔をして、



駄目かな?



と言ってきた。



その時、彼女は、その女の子の不安そうな顔がおかしくて、思わず笑って



しまったという。



それは、まさに自分の姿を投影しているかのように思えたから。



だから、彼女は素っ気なく、



別に良いけど・・・。



と答えたという。



勿論、彼女は本心では、友達が欲しいと願っていたからのだから、



断る理由も無かったが・・・。



それから、彼女とその女の子は友達になった。



いつも、その女の子が彼女の病室に来て、楽しい時間を過ごさせてくれた。



自分の知らない事をその女の子は沢山知っていたし、逆に自分の



経験した事も、その女の子に話してあげた。



その女の子は、最初は真っ白なパジャマを着ていたが、そのうちに



彼女とお揃いのパジャマを着て、病室に来るようになった。



その女の子とはとても気が合った。



まるで、すっと昔から知っていた様な気さえした。



そのうち、彼女とその女の子は親友になった。



彼女にとっては生まれて初めての親友と呼べる友達が出来たことで



彼女にも少しずつ明るさが戻っていった。



しかし、彼女は、その女の子の事は何も知らなかった。



どんな病気で、どこの病室に入院しているのかさえも・・・。



そして、不思議と、誰かが病室にいる時には、絶対に来る事は



無かった。



だから、とても体調が良い日に、彼女は自分の病室を抜け出して、



その女の子の病室を探した。



しかし、何処にもその女の子の姿を見つけられなかった。



だから、次にその女の子が病室に遊びに来た時に、なんとなく聞いてみた。



今日、体調が良かったから、○○ちゃんの病室を探したんだよ、と。



そして、病室は結局見つけられなかったけど、いったいどの病室に



入院してるの?と。



すると、女の子は少し困った様な顔をして、



きっと、検査か何かで病室に居なかったんだと思うよ。



それに、そんな事、どうでもいい事だよ・・・。



と言われた。



本当は彼女はもっと追究したかったらしいが、その女の子に嫌われて



しまいそうで、止めたという。



そんな生活を続けているうちに、どうやら彼女の病状は少しずつ



回復していった。



そして、それを見て、いつもその女の子はとても嬉しそうに笑ってくれた。



そして、



もっともっと、一緒に頑張ろうね!と言いながら。



しかし、それでも病状が悪化する時もあったらしく、そんな時は



彼女はベッドの中で、苦しみ続けなければならなかった。



そんな時も、その女の子は、いつもと変わらないような笑顔で



彼女の病室にやって来てくれた。



本当はそれが嬉しくて堪らなかった彼女たったが、いつも元気に



自分の前に現れるその女の子を見て、自分の事が悲しくなって



しまったのか、酷い事を言ってしまう。



いつも元気な○○ちゃんに、私の気持なんか分からないんだよ!



○○ちゃんは、そのうち退院していくんだろうけど、私はこのまま



このベッドの上で死んで行くんだよ?



だから、このまま病気で死ぬくらいなら、いっそ、自殺でもした方が



マシなの!



死ぬ事の怖さなんて、○○ちゃんに、分かる筈ないでしょ?



そこまで言ってしまつてから、彼女は後悔した。



なんという事を口走ってしまつたのか、と。



しかし、その女の子の反応は意外なものだった。



突然、彼女の頬を、女の子の手が、叩いた。



呆気にとられている彼女に、その女の子は悲しそうに涙を流しながら



ベッドの端に座ってこう言った。



自分の命の長さなんて、自分で決めるもんじゃないよ・・・。



本当に病気と真剣に闘った事あるの?



闘いもしないうちから、勝手に自分が死ぬなんて決めつけないで!



私なら、明日死ぬって宣告されてもジタバタ足掻きまくるよ・・・。



それに、私は、病気で死ぬくらいなら自殺したい、なんて絶対に言わない。



生きたくても生きられない人がこの世の中には沢山いるし、生まれてさえ



来られなかった命も沢山あるんだよ?



その沢山の命に対して、面と向かってそんな事が言える?



私は絶対に言えないよ・・・。



どんなに格好悪くても、どんなにジタバタと足掻いても、絶対に



生き延びてやる・・・・。



そんな気持ちを持って!



そうすれば、貴女に力をくれる人達が、周りには沢山いるんだから。



人間の命ってそんなに簡単に消えるものじゃないから・・・。



だから、信じて・・・。



貴女には必ず未来があるんだって・・・。



そうすれば、きっと、いや、絶対に治るはずだから・・・。



そう言って、その女の子はベッドから立ち上がると、ドアの方へと



歩いて行く。



そして、ドアを開けて状態で、彼女にこう言った。



貴女が本当に元気になるまでは、もう会わない事にする。



勿論、私も会いたいけど、これも貴女の為だから・・・。



それと、顔ぶって、ごめんね。



でも、本当に言う事を聞いて欲しかったから・・・・。



そう言って優しく笑った。



そして、最後にこう言った。



死ぬ事って、そんなに怖い事じゃないよ。



私が保証するから・・・。



でも、生きている方が絶対に楽しいから!



そう言って、部屋から出て行った。



彼女は、それを茫然と見送るしか出来なかったが、その女の子が



言った言葉は、彼女の胸に強く響いた。



自分は今まで何でも病気のせいにして生きてきた。



だから、まだ本気で病気と闘ってはいない・・・。



それに、あの子と元気になるまでは会えないのなら意地でも元気に



ならなくちゃ!



そう決意したという。



それから、彼女は、元気になったら何をしようかといつも考えながら



入院生活を送るようになった。



そうすると、それまでは、耐えられなかった酷い痛みが伴う治療も



耐える事が出来た。



病院内ではいつも笑顔で過ごした。



そうしていると、自分の体が確実に力をつけて回復している事を



実感出来るようになった。



そんな彼女を見て、また病院内の沢山の人達が、いつも彼女に



笑顔で接し力を与えてくれた。



彼女の頭の中には、一日でも早く元気になって、あの女の子と会いたい、



という気持ちしかなかった。



そして、それは医師も驚くほどの回復に繋がっていく。



そして、ある日、彼女の退院が決まった。



医師は口を揃えて奇跡だと言った。



勿論、彼女にとって、退院という事は願っても無いほど嬉しいもの



だったが、その時の彼女は、真っ先に、その女の子に元気になった



時分の姿を見せたかった。



だから、今度は看護師さんにも手伝ってもらって必死で、その女の子を



探した。



しかし、やはり、そんな女の子が入院していた形跡すら見つからなかった。



彼女は、がっくりと力を落としたが、それでも両親が涙を流して



喜んでくれたり、病院内で知り合いになった多くの人達から退院



を祝福されると、照れ臭かったがとても幸せな気分になった。



そして、それが、彼女の最後の入院になった。



その女の子が言ったとおり、本気で病気と闘い、未来を信じて生きる事が



彼女にどんどん力をつけて行ってくれた。



そして、彼女は、普通の中学に入り、そして普通に高校を卒業した。



そして、今は、晴れて女子大生として大学生活を満喫している。



そして、これは後日談なのだが、実家で彼女が古いアルバムを見ていた時、



偶然にも、そのアルバムの中に、あの女の子の姿を発見した。



それは、彼女が幼いころに亡くなったお祖母さんだった。



いつも、幼いころの彼女を優しく、そして時には厳しく、可愛がって



くれていただと聞かされた。



そして、どんどん病弱になっていく彼女の事を心配しながら、



亡くなっていったのだと聞かされた。



その時、彼女は全ての謎が解けたような気がした。



きっと、お祖母ちゃんが自分を助ける為に、現れたのだと確信した。



そして、こうも言っていた。



本当は、あの女の子と初めて会った時に、無意識に感じていたのかも



しれない・・・。



だって、凄く懐かしい匂いがしたから・・・。



そう言って笑ってくれた。



今は彼女は、彼氏も出来て、バイトにも精を出し、普通の女子大生



よりも、余程活発で生き生きと暮らしている。



Posted by 細田塗料株式会社 at 00:29│Comments(0)
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