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2018年11月10日

・・・・への最終電車

これは知人から聞いた話。



彼は、過疎化した村で高校時代までを過ごした。



彼が、生まれた頃は、その土地にも沢山の人が住んでおり、山奥の



土地ではあったが、人で溢れていたのだという。



しかし、とある事故があってから、どんどんと人口が減り始めた。



その事故とは何だったのかは、今でも分からないらしいが、とにかく



その事故が、人口流出の原因になってしまっていた事だけは確かだった。



沢山いた友達も、そして親戚も、どんどんとその土地を離れていく。



彼はそれが悲しくて、両親に対して、



自分たちも他の土地に移り住もうよ!



と何度も言ったらしいが、彼の両親は決して首を縦には振らなかったという。



日用品が買える店も、どんどんと減っていき、日常生活にも支障をきたす。



それなのに、いっこうにその土地を離れようとしない両親に、彼は



怒りに似たものを感じていたらしい。



彼が高校生になる頃には、その土地には全部で10軒にも満たない



家族が住んでいるだけになってしまった。



だから、食料や消耗品などの日用品を買うのにも、遠く離れた町



まで行かなければならず、その不便さは想像に難くない。



そして、昔は1日に何10本とあった列車も、その本数を減らしていき、



その頃には、1日に数本の電車が通るだけの駅になってしまっていた。



しかも、電車は朝と昼と夜にそれぞれ1本ずつ。



更に終電の時間も早かったので、彼は高校時代も部活動など出来ず、毎日、



母親から頼まれた食料などを買い込んで、夜7時までには、街の駅を



発車する電車に乗らなくてはならないという生活を送っていた。



高校生とはいえ、彼も家族の生活を支える役割をしっかりと但っていた。



実際、彼の両親もそうだったが、遠くの町や市に働きに出ている者は



少なく、ある意味、自給自足の生活が形成されていたが、それでも



必ず必要な物というのは存在するものであり、そういう時には



学生とはいえ、遠くの町まで毎日出掛けている彼の存在は、それなりに



村人たちに認知され、そして便利に使われる結果になっていた。



だから、彼は本心では、それが嫌で仕方なかったという。



本当なら学校が終わってから友達と遅くまで遊んでいたかったし、



部活動にも精を出したかった。



しかし、そんな事をして最終電車に乗り遅れでもしたら、彼は翌朝、



学校が開くまでの間、一人きりで駅の待合室で時間を寝て、時間を



潰さなければいけなかった。



そして、家族たちから頼まれる買い物も彼を憂鬱にしていた。



その品物は多岐にわたり、それらを買い揃えるだけでも至難の業。



更に、その大荷物を持って電車に揺られて一人きりで帰って来なければ



いけなかった。



その荷物の重さと、両手いっぱいに荷物を持った歩き辛さは、今でも



忘れなれないという。



そんな彼だが、最も嫌だったのは、最終電車に乗るという行為そのもの



だったらしい。



だから、彼は授業が終わると、急いで買い物を済ませて、さっさと



電車に飛び乗った。



最終電車には絶対に乗りたくなかったから・・・。



それでは、何かそれほど嫌たったのか?と聞くと、彼はこんな話を



してくれた。



毎朝、彼が乗る電車には、だいたい10人くらいの乗客がいるらしい。



しかし、彼がよく利用していた最終電車には、いつも彼一人しか



乗っていなかった。



だから、彼は、



俺一人の為に、電車を走らせてしまって申し訳ないな・・・。



そんな風に思っていたそうだ。



ただ、重たい荷物を持っての乗車だったから、電車が空いている、という



事はとても助かる事だった。



ただ、ある日を境にして、彼が乗る最終電車には、1人、また一人と



乗客が増えていった。



しかも、彼が村で見た事も無い人ばかりだった。



彼の村には観光客用の宿泊施設など存在しなかった。



それに、観光客が来るような、目ぼしい観光地など在る筈も無く、彼は



その乗客たちが不思議で仕方無かったという。



勿論、彼は村人の顔は全て知っていたから、それらり人達が、村人で



ない事は間違いなかった。



それに、その乗客たちは、まるで生気の無い顔で、ぼんやりと



うつむいているだけ・・・・。



服装自体も、かなり古いものに感じられたという。



この人たちは一体何者なんだ?



そんな事を思っているうちに、乗客はどんどん増えていき、座席が



全て埋まる程になっていく。



それなのに、電車の中は、静かすぎた。



まるで、彼が1人で乗っていた時と同じように、しんと静まり返っており、



誰かが話す言葉も全く聞こえなかったという。



そして、それらの乗客たちは、彼とおなじ駅で降り、そして、全員が



行列をなして、山の方へと歩いていく。



山の中に何があるんだ?



というか、こいつらは何者なんだ?



いつしか、彼はそんな事を考え出してしまう。



だから、ある日、彼は決心した。



その乗客たちがどこに行っているのかを確認しよう、と。



彼が乗る最終電車は、街の中にある駅に停車して、そのまま終点である



彼が住む村まで行くという運行になっていた。



ただ、彼が、学校がある街の駅から電車に乗り込むと、いつも既に



電車の中は満員状態だった。



だから、彼は、その満員の乗客たちが、いったいどこの駅から乗ってくるのか、



とても興味があった。



だから、その日は、学校が終わると、そのままその電車の始発駅まで移動した。



そして、人生で初めて、その電車を始発駅から乗ってみる事にした。



しかし、どれだけ待っても、誰も乗って来ない。



そして、彼は、授業の疲れが溜まっていたのか、知らないうちに寝入ってしまう。



そして、ハッとして目を覚ました時には、既に電車の中は満員状態になっていた。



彼は、それほど長い時間眠っていたわけではなかった。



ほんの5分くらいだったという。



しかし、その5分の間に、乗客は、彼一人という状態から、いっきに満員状態



へと変わっていた。



彼はまるで狐につままれたかのような気持ちになった。



相変わらず、乗客たちは、ただうつむいて黙って席に座っているだけ。



そして、電車は彼が降りる終着駅へと到着した。



いつもは、一番最初に降りる彼だっだか、その時はあえて他の乗客が



全て降りるまで席を立たなかった。



そして、全員が降りたのを確認して、彼は急いで席を立ち、で電車を降りた。



駅の周りは、いつものように、すっかり暗くなっている。



そして、その暗い中を、その乗客たちは列をなして、山道を歩き始める。



いつもながら、とても不思議な光景だった。



そして、彼はその列から少し離れて、後をつけていった。



その列をなしている者達は、誰も一言もしゃべらず、ゆっくりと、そして



黙々と山道を歩いていく。



実は、こんな山奥に、マンションでも建っていたら面白いんだけどな!



そんな事を思いながら、彼は、静かに、その列の後をつけた。



そして、その列は、どんどんと山の奥に向かって歩いていく。



少しの乱れも無く、整列して歩いていくその乗客たちが、彼には少し



滑稽に感じたという。



しかし、彼はその乗客たちが歩いていく山道の先には何が在るのかを



知っていた。



それは、何が起こったのかは知らなかったが、間違いなく、昔、大規模な



事故が起こったという炭鉱だった。



彼は少しだけ気味が悪くなったが、それでも、ひたすら乗客たちの後を



静かに追いていく。



そして、大きく曲がった道に出た時、その乗客たちの姿が一瞬見えなくなった。



彼は見失っては大変だと思い、慌てて、その曲がり角まで走った。



そして、そこで固まってしまった。



そこには、乗客たちが全員立ち止まって、振り返る様にして彼の方を



睨んでいた。



その顔は、とても恐ろしいものに見えた。



電車に乗っている時には間違いなく人間だと思っていたものが、その時には



どう見ても人兼゛には見えないモノになっていた。



うまく言えないが、その時、彼の脳裏に浮かんだ言葉は、



”亡者”という言葉だった。



彼は、そのまま固まっていたが、その乗客たちが顔だけてなく、体の向きも



彼の方に向けた時、まるで金縛りが解けたかのように、一気に今来た道を



走って逃げだしていたという。



どれだけの時間、走って逃げたのかは覚えていないが、その間、ずっと



背後からは山道の砂利を踏みつけるように、



ジャリ・・・・ジャリ・・・・ジャリ・・・・ジャリ



という音が聞こえていた。



彼はそのまま家に辿り着くと、急いで家の中に入り玄関の鍵を閉めた。



そして、恐怖で固まっていた彼は、そのまま布団にもぐりこんだ。



起きていてはいけない!



そんな気がしたという。



なかなか眠れなかった。



家の外からは、相変わらず、砂利を踏みしめるような



ジャリ・・・・ジャリ・・・・



という音が聞こえていたが、彼にはどうする事も出来なかった。



そのまま布団の中で震えていたが、それでも、そのうちに眠りに



就く事が出来たという。



そして、朝になって、学校に行く頃になると、昨夜の事がまるで夢で



あるかのような気がしていたが、家の外に出た時、家の周りに、沢山の



足跡が付いている事に気が付いて、また、固まってしまった。



結局、それ以後、彼は2度と最終電車には乗らないようにしたのだが、



そのせいか、2度と怖い思いをする事は無かった。



それから、彼が成人してから、両親から、その村で過去にどんな事故が



発生したのかを教えて貰ったが、その事故によって沢山の民間人の命が



奪われたと聞いて、再び恐怖した。



きっと、あの夜に見たのは、その犠牲者たちだったのだと確信したから。



その村も今では完全に廃村になってしまい、そこに住む者は誰も



居なくなってしまったそうである。


Posted by 細田塗料株式会社 at 08:52│Comments(0)
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