2018年11月10日

七つまでは神のうち

『ななつまでは神のうち』という言葉をご存じだろうか。



昔は、七歳までは不安定で死亡率も高く、いつ亡くなるかも



分からなかったことから、七歳までは人間の物ではなく、



神の物であり、



その生死も神のみぞ知る



存在である、という事らしい。



実際、神隠しにあって行方不明になる子供も沢山居た様であり、今と



なっては現実味のない言葉かも知れないが・・・・。



今回の話は、そういう類の話である。



これは知人の身に起こった話。



彼女は、若くして結婚した。



いわゆる玉の輿というやつだ。



元々、彼女自身、生まれた時から、とても幸せな環境の中で育った。



家庭はそれなりに裕福だったし、両親や祖父母も彼女に優しかった。



彼女は3姉妹の末っ子として生まれたのだが、末っ子という事もあり、



彼女が一番甘やかされて育ったのかもしれない。



中学、高校と楽しい学校生活を送り、やがて、彼女は地元の大学に



進学した。



そして、そこで知り合った男性と付き合い始め、大学を卒業すると



すぐに、その彼との結婚を決めた。



彼女は彼の両親と同居する事になったが、それでも、彼の両親も



すぐに彼女の事を気に入ってくれて、楽しい新婚生活だった。



夫は一流企業に勤め、大きく立派な家に住み、夫の両親も優しい。



まさに、絵にかいたような幸せな結婚生活だった。



そして、そんな幸せな時間はそれからしばらくの間続いたのたが・・・・。



それから年月が流れ、少しずつ変化が訪れる。



それは、何故か子供が出来ないということに起因していた。



夫も彼女も病院で検査を受けるが、何処にも異常は無かった。



それでも、何をしても二人の間に子供を授かる事は無かった。



彼女に優しく接してくれていた彼の両親も、いつしか態度が冷たくなり、



彼の親戚たちも、その頃には子供の話は禁句であるかのようになってしまい



その為か、誰も彼女に会おうとはせず、ただ、陰口ばかりが聞こえてきた。



そして、彼女の実家でも、彼女の味方になってくれたは両親だけであり、



二人の姉は、かなり彼女に冷たく接した様だ。



そんな環境の中で彼女は追い詰められていく。



1人で殻に籠り、誰とも話さない時間が過ぎていく。



それは、それまで順調に生きてきた彼女が生まれて初めて体験する



孤独と疎外感だった。



そんな状態は、いつしか、彼女から正常な思考を奪っていったのかもしれない。



いつしか、そんな夫や両親、そして親戚だちを見返してやりたいという



思いだけに駆られるようになっていった。



それから、しばらくして、彼女は、思い詰めた様に家を出て、しばらくの間



全く連絡がつかなくなった。



そして、1週間程経ったある日、彼女はふらっと家に戻って来た。



その時には、すっかりと元気を取り戻し、誇らしげな顔にさえ見えたという。



その元気な顔を見て、夫もその両親もとても喜んでくれたという。



音信不通だった事を怒る事もせず・・・。



そして、それからしばらくして、彼女は妊娠した。



周りの全ての人達が驚き、とても喜んでくれたが、彼女自身はまるで



さも、当たり前の事の様に、笑顔すら見せなかった。



それから、彼女はまるで計ったように、全くのズレも無く予定日に



出産した。



可愛い女の子だった。



その時、初めて彼女は喜んだ顔ではなく、男の子ではなかったという



苦渋の表情を見せたという。



どうせなら、長男をしっかりと産んで、周りの奴らを見返してやりたかった。



それが、彼女の本意たった。



しかし、生まれてきたのが女の子だったが、夫をはじめ、両親や親戚、



そして、彼女の姉達も心からの祝福をしてくれた。



その対応を、彼女は、その時とても意外なものに感じたという。



どうして、男の子を産まないのか・・・・。



そんな目で見られると思っていた。



しかし、それからも、生まれた女の子は、周りの沢山の愛情に包まれて



すくすくと成長していった。



そして、母親になり、その子の姿を見ているうちに、彼女も何かを感じた



様で、気が付くと塞ぎこむ事が多くなっていく。



その姿を見た、夫も周りの親戚たちも、彼女を心配し優しい言葉を掛けてくれた。



その度に、彼女は、大丈夫です・・・という返事を繰り返すだけだった。



しかし、彼女の子供が5歳を迎える頃になると、彼女の身の回りで



怪異が起こり始める。



最初は彼女が毎夜夢でうなされるようになった。



しかし、どんな夢でうなされているのか、は彼女は誰にも言わなかった。



そして、彼女の住む家の中で、知らない女の姿を目撃する者が続出した。



その女は、まるで祈祷師の様な服装をしており、家の中のいたるところに



出没した。



そして、彼女の娘が部屋の中で誰かと話している声も聞こえ、部屋に入るが



娘しかいないという事が何度も続いた。



娘にそれを尋ねると、知らない女の人とお話していたと説明された。



そんな状態が続いたが、彼女の娘さんも無事、小学校に入学。



楽しい学校生活が送れれば、と願っていた彼女だったが、それに反して



彼女の娘さんは学校で孤立してしまう。



そして、その理由はこんなものだった。



明るい性格の娘さんはすぐに暮らすにも溶け込み、友達も沢山出来た。



毎日、学校に行くのが本当に楽しみだった。



しかし、友達になった者は皆、大怪我をして学校を休むことになった。



階段から落ちる、自転車とぶつかる、突然倒れてきた物の下敷きになる、



など怪我の原因は様々だったが、その誰もに共通していたのは



怪我をした時に、



あの子には近づくな・・・・・。



という声が聞こえたという事だったという。



そうなると、他の子供たちの親が、彼女の娘さんと友達になるのを禁止するのも



仕方のない事かも知れない。



そして、それを見かねて娘さんに優しく接してくれた教師も、事故に遭い



入院してしまう。



いつしか、娘さんは呪われた子、として学校内で噂になっていった。



これでは、娘さんが学校で孤立するのも無理はない事だ。



そして、その時、彼女は初めて、それまで心の中だけに隠していた秘密を



夫に打ち明けた。



それは、とある禁忌とされている場所にいった願をかけてきたということであり、



其処で願をかけるとすぐに子供が授かるが、皆、7歳の誕生日に決まって



神隠しにあって行方不明になると言われている、という内容だった。



どうしても、子供が欲しかったし、周りを見返してやりたかった・・・。



神隠しなんて本当に在るなんて思ってもみなかった。



もし、そうでも、きっと守れると思っていたの・・・。



でも、母親である私には、何故か分かるの・・・。



あの子が7歳の誕生日に、そのまま行方不明になってしまうという事が。



私が間違ってました・・・・。



今の私には、あの子がいなくなった生活なんて考えられない・・・。



そう言って泣き崩れる彼女の様子をじっと見ていた夫は、



今からでもなんとか出来るかも知れない!



皆の知恵を借りるしかないな!



そう言って、両親や親戚を集めて、その話を全て話したという。



そして、助けて欲しい、と懇願した。



彼女は、最初、そんなお願いをしても、きっと冷たく罵声を浴びるだけだと



思っていた。



しかし、親戚たちは逆に、彼女に謝ってきたという。



そんなに気持に負担をかけてしまっていたのか、と。



そして、それぞれが、人脈を使い、お金に糸目もつけず、色々なお寺や神社、



そして、霊能者にお祓いを頼んだ。



全ては彼女の娘さんを護るために・・・。



しかし、いっこうに怪異は収まらず、逆に、それが怒りを買ってしまったのか、



親戚たちが事故や大怪我で入院する事になった。



そして、家の中では以前にも増して頻繁に、見知らぬ女の姿を目撃する様に



なっていった。



娘さんの7歳の誕生日は、もうすぐそこまで迫って来ていた。



そこで、彼女は、完全な駄目もとで俺に相談してきたらしい。



誰か、有能な霊能者を知らないか?と。



その話を聞いた俺は、



まあ、知らない事もないけど・・・・。



でも、性格には難があるけど大丈夫?



引き受けてくれるかどうかは、分からないけど、少しでも可能性を



上げたいのなら、大量の高級菓子と高級スイーツの引換券でも



用意しておいてね!



そう言うと、彼女は喜んでそれを受け入れた。



そして、それらを持って俺はAさんの元を訪れた。



俺が持参した物を見て、Aさんの目が変わった。



しかし、それ以上に、彼女の周りで起こっている話を伝えると、



Aさんは、かなり深刻な顔になった。



そして、



で、今度も、また私を面倒な事に巻き込む為にやって来たんですよね?



これだけの物をKさんに持たせるなんて、相手方も相当苦しんでいるんでしょうけど。



でも、これってかなり厄介ですよ。



きっと、それって○○県の○○○○に行ったんだと思いますけど・・・・。



其処って、鬼神を祀っている所です。



鬼には、祈祷も説得も通じません。



力対力でねじ伏せるしかないんです。



そう言われて、俺はAさんにこう尋ねた。



そこの鬼神って、Aさんより凄いの?



勝てないって事?



いつも偉そうに言ってるけど、鬼ごときに勝てないんだ?



そう言うと、



鬼って言ってないじゃないですか?



鬼神です・・・・鬼神!



それに、鬼ごときって、よく言えますよね?



あいつら、本当に強いんですよ。



人を殺し貪り食う為のありとあらゆる力と手段を持っています。



そして、鬼にはお経も念仏も通じませんからね。



そう言われた俺は、



でも、神という名前が付いている程の鬼が、7歳の子供を連れ去って



何をしようというの?



と聞くと、



そんなの決まってるじゃないですか?



食べるんですよ!



柔らかい子どもの肉と骨をバリバリと・・・・。



その為に、子供を授けるんです。



自分が食べる為に・・・・ね。



だいたい、神なんて名前が付いてても、結局、鬼は鬼なんです。



それ以上でもそれ以下でもありませんから・・・・。



そう返してきた。



そして、



でも、このまま7歳になる女の子が、そいつに食べられるのを黙って



見てるっていうのも、確かにむかつきますよね?



まあ、姫ちゃんも学業で忙しいみたいだし、今回は私一人で何とか



しますかね・・・・。



あっ、それと今日持って来た物は、あくまで手付けと考えていいんですよね?



この後の成功報酬も無いと、今ひとつ燃えませんから・・・・。



そう言ってくるので、俺は即答で、それを快諾した。



そして、どうやってその鬼を探して対峙するのか?と聞いたのだが、



7歳の誕生日に向こうからやって来てくれるのに、わざわざ、こちらから



出向く事も無いでしょう?



それに、向こうに出向くという事は、鬼のナワバリの中で闘う事になりますから。



それは生じく避けたいですから・・・。



分かってますよ。



それまでに、ちゃんと準備しておきますから・・・・。



そう言ってくれた。



そして、何故か娘さんの誕生日前日の夕方、Aさんから電話がかかって来た。



あっ、Kさんですか?



それじゃ、今から向かいますから迎えに来てくれますか?



俺は意味が分からず、Aさんのマンションへと向かうと、Aさんが、とても



これから、熾烈な闘いに臨むとは思えない様なラフな格好で出迎えて



くれた。



Aさんは、さっさと車に乗り込むと、成功報酬として貰いたいものリストを



俺に渡してきた。



よく、これだけ沢山のブランド品のスイーツを知っているもんだな、と



感心してしまう位にびっしりと書かれたリストを・・・。



だから、俺は、



あのさ・・・・もしかして、やる気無いの?



成功報酬リストも結構だけど、そんなラフな格好で大丈夫なの?



まるで、これからウインドウショッピングに出かけます、と



言わんばかりの服装だけど?



と嫌味を言った。



すると、Aさんは、



やる気が有るか無いかなんて、服装で判断しないで欲しいですね!



勿論、やる気があるに決まってるじゃないですか?



その為に、苦労して成功報酬として貰いたいスイーツのリストまで



作って来たんですから・・・・。



本当にそれ作るの、大変だったんですから!



そこまで、聞いて、論点が噛み合わない事を理解した俺は、そのまま



黙って車を走らせた。



彼女には、車から事前に連絡をした。



彼女の家に着くと、家族総出で出迎えてくれた。



あの・・・こちらが有名な霊能者の先生ですか?



今日は宜しくお願い致します・・・・。



そう言われて、Aさんは、



あっ、霊能者じゃないですから・・・。



それに、有名でもないし・・・・。



それに先生というのも止めて貰えますか?



仕事以外で、そう呼ばれるのは勘弁してほしいので・・・。



と相変わらず、へ理屈をこねている。



それでも、家の周りを見ると、



あー、やっぱり、鬼の結界が既に張られてますね。



ロックオン完了って感じですね!



それと、今夜は



確実に危ない事になると思いますから、娘さん以外はこの家から離れてて



貰えますか?



と告げると、さっさと家の中に入っていく。



そして、俺は、彼女に呼び止められて、



あの・・・本当にあんな人が凄い霊能者なの?



なんか、若くて綺麗なモデルさんって感じで、とても強そうな霊能者には



見えないんだけど?



と言われてしまう。



だから、俺は、



まあ、綺麗とか若いとか、モデルさんみたいと言う言葉は本人が図に乗る



から聞かせないでね!



でも、まあ、彼女がやって駄目なら、きっと誰がやっても駄目・・・。



そういうレベルなのは間違いないから・・・。



とだけ言うと、俺も家の中へと入っていく。



家の中に入ると、Aさんが何かを壁に貼り付けている。



何してるの?と聞くと、



今回は、より強力な結界を張ります。



もう既に、鬼が結界を張ってるので、ちょっと面倒くさいんですけどね。



でも、こちらの結界の中で対峙するという事は、こちらのテリトリーで



闘えるという事なので、しっかりやっておかないと・・・。



それを聞いて俺が、



じゃあ、今回は俺が雑用しなくていいんだ?



と言うと、



こんな大事な事を雑用係りに任せられる訳ないじゃないですか・・・。



と冷たく言われてしまう。



そして、俺は思い出したかのように、こう尋ねた。



ところで、娘さんの誕生日は明日のはずだけど、どうして前日の今日、



娘さんの所に行こうと思ったの?と。



すると、Aさんは、やれやれといった感じでため息をつくと、



本当にKさんみたいに、何も考えずに生きていけたら幸せ



かもしれないですね。



あのですね。



鬼って、日の光を嫌うんです。



つまり、太陽の光が苦手なんですよね。



だとしたら、夜のうちに、娘さんの所にやってくるのは自明の理。



確かに、誕生日の夜という選択もあるんでしょうけど、ずっと食べたくて



待ち焦がれていた食べ物を、Kさんは、わざわざギリギリの時刻まで



食べませんか?



普通なら、誕生日に切り替わった直後に、やって来ると思いますけど?



そう言われて、俺は、



いや、俺は、どちらかというと、好きな食べ物は後回しにする方なんだけど?



と、答えると、それきりAさんは口を開かなくなった。



そして、娘さんと対面する。



かなり怯えているようだが、とても鬼の餌として狙われている様には



見えなかった。



というよりも、こんな可愛い子を食べにくる鬼というものの存在が



許せなく思えた。



そして、Aさんは、娘さんを見ると、いつもの生意気な態度が嘘のように



優しく接しだした。



本を読んであげたり、一緒にゲームをしたり・・・。



なんとも微笑ましい光景だった。



とても、これから鬼がやって来るとは、到底思えない程に・・・。



そんな俺の気持ちを感じたのか、Aさんは、突然冷たい口調で、



何のんびりしてるんですか?



鬼が来たら、私が闘ってKさんが、この子を護らなきゃいけないんです



からね?



自覚してます?



と言われてしまう。



そして、ちょうど日付が変わる頃、突然Aさんが、



やっぱり来ました!この子をお願いします!



そう言って、廊下へと出ていく。



俺は少し様子を見てみようと廊下を覗こうとしたが、何故か襖は重く閉ざされ



びくともしない。



きっと、Aさんが鬼が入り込めないように何かをしていったのだろう。



と、思っていると突然、家中の明かりが消えた。



娘さんは恐怖で俺にしがみついてくる。



大丈夫だから・・・・。



あのお姉さんがやられたら、今度はおじちゃんが、ちゃんと君を



護ってあげるから・・・。



おじちゃんの方があのお姉ちゃんよりずっと強いんだから安心してね!



と何の根拠もない嘘を言うと、少しだけ安心したように笑ってくれた。



廊下からはAさんの声が聞こえてくる。



鬼神なんて崇められていい気になってるんじゃないの!



あんたたちなんて、所詮、人を食らうだけの為に生きてる鬼でしょうが!



その言葉に呼応するように響く大きな唸り声と、家が震えるほどの震動に



俺は思わず固まってしまった。



それにしても、そんなモノを平然と相手にするAさんという存在が更に



分からなくなってくる。



もしかすると、俺などが気安く話しかけられない様な聖人なのではないか、と。



そして、聞こえてくるAさんの声。



ふざけんなよ!



てめぇ!



いい加減にくたばれよ!



ほんっとに、ウザいんだけど!



やったね!



ザマーミロ!



それを聞いて、俺は、



やっぱりAさんは、Aさんなんだ!



と一瞬でも聖人かと思った自分を後悔した。



そして、まばゆいばかりの光が、襖を通して部屋の中まで入り込み、



部屋の中が、白く、そして明るくなった。



そして、訪れる沈黙。



どっちが勝ったんだ?



俺と娘さんは、思わず聞き耳をたてた。



すると、突然、



えーっと、Kさん。



私が渡したリストって、ちゃんと持ってます?



という声が聞こえた。



俺と娘さんが思わずにっこりと笑ったのは言うまでもない。



そして、部屋の襖を開けたAさんは、かなり疲れて様子で、



やっぱり手強かったですね・・・。



本当は奥の手は使いたくなかったんですけど・・・・疲れるから。



でも、そう簡単にはいかなかったですね。やっぱり・・・。



そう言って面倒くさそうに、乱れた髪の毛を手でまとめている。



結局、その後、彼女の家では怪異は完全に収まり、娘さんも元気に



歳を重ねている。



そして、その後、Aさんが苦労して作成したという欲しいスイーツリスト



に書かれていた全てのスイーツを贈られたAさんは、それからしばらくの間は



とても機嫌が良かったのは言うまでもない。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:01│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count