2018年11月10日

病院から覗くもの

これは友人と俺が体験した話。



その時、彼は自動車専用道路の対面通行地帯を走行している時、



突然、センターラインを超えてきた車と正面衝突した。



その時の事故画像で、事故の凄まじさがよく分かった。



どちらの車も原型をとどめてはいなかったし、車内には大量の



血が飛び散っていた。



彼は事故の瞬間、相手の運転手の顔がまるでスローモーションのように



良く見えたという。



相手の車には女性ドライバーが運転しており、引き攣った顔と恐怖に



歪んだ顔が衝突の瞬間まで続き、ぶつかる瞬間には、ほんの一瞬だが



まるで事故相手の彼を恨むかのように、恐ろしい顔で睨んでいた



のだという。



そして、そのまま病院のICUに入れられた彼は、それから数日後、



無事に峠を越え、個室の一般病室に移った。



そこで、彼は初めて知った。



相手の女性ドライバーが即死だったという事実を。



車の損傷具合からは、彼の方が厳しいと思わざるを得なかったが、



結果として彼だけが生き残る形になった。



そして、現場で野事故の状況、そして目撃者の証言などから、彼が



罪に問われる事は無かった。



ぶつかった2台の車は、いずれも、彼が走っていた車線の中で事故を



起こしていたし、目撃者の証言も、突然、対向車線を走る女性ドライバーが



センターラインを大きく超えて彼の車にぶつかっていったというもの



だったのだから、それは当然の事なのだろう。



それでも、彼は、過失が無いとはいえ、相手の女性が自分との事故で



即死したという事実に対して、罪の意識にさいなまれた。



そして、事故で衝突する寸前までの相手女性の顔が脳裏に焼きついて



離れる事がなかった。



だから、彼自身、一刻も早く病院から退院し、相手女性のお墓にお参りに



行きたかったのだが、それは叶わなかった。



彼自身、事故の際、車に挟まれ、レスキューの必死の救出活動のお陰で



一命は取り留めたものの、右足は複雑骨折し、右手も骨折、そして



内臓器官もそれなりに損傷していたのだから・・・・。



彼は一般病棟に移されたとはいえ、体の自由は全く利かず、体の



いたるところに、管が差し込まれた状態だった。



そして、それは彼が一般病室に移されてから3日ほど経った頃だった。



彼は両手、両足が動かない状態であり、本も読むことが出来ない。



かといって、テレビを観る気にもなれない彼は、ぼんやりと



窓から見える風景を眺める事しか出来なかった。



毎日、ベッドに横になっている状態では、なかなか夜も眠りに就けない。



そして、その夜も彼は、夜になって消灯の時間になると、窓から見える



町の風景をぼんやりと眺めていた。



事故を起こしてからというもの、まるで俗世間から隔離されたような



生活が続いており、彼は窓から見える町の明かりが、とても恋しく



感じてしまうようになっていたから・・・・・。



外を走る車のヘッドライトも、ビルの広告塔の明かりも、彼にとっては



外界がとても近く感じられるものだった。



その時、ふと、小さく囁くような声が耳元で聞こえた。



やっと見つけた・・・・・。



そう聞こえたという。



彼は思わず病室の中を見回すが、其処には誰もいない。



そして、もう一度、窓の方へと視線を戻すと、そこには何かが



窓に張り付くようにして、窓の外に立っていた。



彼は一瞬にして凍りついた。



その姿は紛れもなく、彼との事故で即死したという女性の顔に



他ならなかった。



彼は状況がすぐには飲み込めなかった。



相手の女性は死んだはず・・・・。



そして、此処は4階にある病室。



それなのに、どうして彼女は其処に立っているんだ・・・・・。



そして、しばらく考えがまとまらなかった彼がひとつの結論に達した時、



彼は、急いで手元にあったナースコールのボタンを押した。



すぐに看護師が駆けつけてきて、彼に聞いた。



どうしましたか?



そして、彼は窓の外に立っている女の事を必死で看護師に訴えた。



その時には、先ほど見えていた窓の外の女の姿は跡形も無く消えており、



看護師は、彼に一言二言嫌味を言ってから、病室から出て行った。



それから、彼は、恐怖のあまり、必死に目をつぶって一夜を過ごした。



耳元からは、また女の声が聞こえるようになっていたが、彼は



眠れないまでも、何とかその姿を見ないように必死で目をつぶるしか



なかった。



朝になった。



彼は眠たい眼で、ふと窓の方を見た。



絶句した。



そこには、昨夜の女が、相変わらず窓の外に立って、彼の方を



睨んでいた。



彼はすぐにナースコールを押して看護師を呼んだ。



そして、窓を方を見ながら、そこに女が立っている、と訴えた。



しかし、看護師は、



何言ってるんですか・・・。



何処にも誰もいないじゃないですか・・・。



そう言って、彼の言葉を遮った。



その時、確かに彼の目には見えていた。



しかし、看護師の目には何も見えていないのだと悟った。



だから、彼は、看護師にこう言った。



分かったから、せめて絶対に窓だけは開けないで欲しい、と。



看護師は不思議そうな顔をしたが、彼の必死の形相に、



そうですか。



それじゃ、窓だけは゛絶対に開けない様にしますね!



と返してくれた。



それからは、彼は絶対に窓の方を向かないようにした。



相変わらず、彼の耳にはその女の声が聞こえていたが、看護師に頼んで



出来るだけ大きな音でラジオを鳴らすことで、気を紛らわせる様に



して必死で耐えた。



彼の元に、両親や友人がお見舞いに来た時も、窓の外に誰か立っていないか?



と聞いたのだが、誰も皆、不思議そうな顔で、



此処の病室って4階にあるの知ってる?



誰も窓の外に立てるはずないだろ?



と言われてしまう。



それならば、と病室のブラインドを下ろすように頼んだが、看護師が



来ると、



あらあら・・・こんなくらい部屋だと気分も滅入っちゃいますよ!



と叱られて、ブラインドを上げられてしまう。



それでも、彼が窓を方を見ると、相変わらず、その女が恐ろしい形相で



彼を睨みつけていた。



だから、彼はそれからも何度も看護師に頼んだ。



窓の外に死んだ女が立っているから、病室を変えて欲しい・・・。



誰か除霊の出来るお坊さんか霊能者を呼んで欲しい、と。



すると、看護師は、怪訝な顔をして、



そんな気持ちの悪い話、しないでくれませんか・・・・。



そんな事ばかり言ってると、精神科の治療も受ける事になりますよ?



と、いつも冷たくあしらわれた。



その頃になると、彼はかなり心が弱っていた。



女が囁く声は、いつも



悪いのはお前だ・・・・。



お前のせいで私は殺された・・・。



だから、一緒に連れて行く・・・・



そんな声に変わっていたのだから。



そして、昼間見えている女が夜には見えなくなっていた。



それは、夜、女が現れなくなったのだと最初は喜んでいたらしい。



しかし、彼はすぐにそれが、そうではない事に気付く。



病室が消灯されてから、それはすぐに始まった。



誰かが廊下を這いずる音が聞こえてくるようになった。



ズルッ・・・ベチャ・・・・ズルッ・・・・ベチャ・・・。



その音はまるで、彼の耳元で聞こえるように大きく彼の頭の中を



駆け巡る。



そして、その音は彼の病室の前まで来ると、急に動きを停止した。



そして、ドアがほんの少しだけ開き、其処から、女が顔を覗かせる。



頭は潰れ、芽は飛び出しており、窓の外の女とはまるで別人のようだった。



というよりも、男が女か、人間であるかすら、分からない様な不気味に



潰れた顔が、そこから覗いていた。



そして、それから、スライド式の病室のドアを、ガタガタと揺らした。



まるで、彼を怖がらせて楽しむかのように・・・・。



そして、その音は、朝が来るまでずっと続き、彼を苦しめ続ける。



だから、仕方ないのかもしれない。



その頃になると、彼はこう思い始めてしまう。



事故の原因はともあれ、あの女を殺してしまったのは自分だ。



そして、あの女の姿が自分にしか見えないというのは、もしかしたら、



自分の死期が近いから、なのかもしれない。



だとしたら、自分はあの女に連れて行かれるのが一番良いのかもしれない、と。



そして、そんな風に考えると少しは恐怖も薄れてくれたのだという。



そんな時に、知人から彼の事故を聞いた俺は、慌てて彼が入院する



病室にお見舞いにいった。



そして、俺が病室に入った時、真っ先に視界に入ってきたのが、彼ではなく



その女の姿だった。



だから、俺はこう言った。



大丈夫か?



なんか、凄いのが窓に張り付いてるけど?



すると、彼は驚いた様に、俺に聞き返す。



K・・・お前、あの女の姿が見えるのか?と。



だから、俺は、



見えるも何も、凄い形相で、睨んでるけど・・・。



お前、何か悪いことでもしたの?



と聞くと、



ああ・・・あれは事故で死なせてしまった相手の女だ。



俺はあの女を殺してしまったんだから・・・。



そう返すので、俺は、



でも、事故の過失は、相手の女なんだろ?



何で、お前がそんなに自分を悪く言う必要があるんだ?



と返した。



そして、俺は、彼から、これまでの経緯を聞いた。



そして、強い理不尽さを感じた俺は、彼にこう聞いた。



もしも、助けて欲しいなら頼んでみるけど?と。



すると、彼は、既に自暴自棄になつているのか、



もう遅いよ・・・。



きっと、俺はこのまま死ぬんだろうから・・・・。



それに、あんな恐ろしい女に、誰が立ち向かえるんだ?



と言ってくるので、



まあ、そういう奴もいるんだよな・・・。



霊の方が逃げ出してしまうような・・・そんな奴が。



まあ、とにかく分かったよ。



何とか頼んでみる・・・。



だから、しっかりと気持ちを持ち直してくれよ!



そう言って病室を後にした。



そして、Aさんに連絡を取ると、どうやら仕事で出張に出ているらしい。



ただ、Aさんは、こう言ってくれた。



話を聞いた限りでは、急いだ方が良いですね。



だったら、姫ちゃんに頼んでみますか・・・。



あの子も、そろそろ、こういう事にも挑戦しにいと・・・・。



そう言うので、俺は少し不安になり、



まあ、姫が凄いのは分かるけどさ・・・。



でも、除霊とか出来るのかな?



本当に大丈夫?と。



すると、Aさんは、



あの子が祓えないものがあるとしたら、それは神様くらいのものでしょ?



いや、もしかしたら、神様でもあの子なら、やってしまうかも・・・。



どちらにしても、もう姫ちゃんに頼るしかないと思います。



私から連絡しておきますから・・・。



そう言って電話が切れた。



すると、しばらくして俺に電話が掛かってきた。



姫だった。



Aさんから連絡があり、内容は分かったから迎えに来て欲しい、と



言われた。



俺は急いで姫を迎えに行くと、そのまま病人に直行した。



そして、彼の病室に入ると、姫は思わず、



キャッ!



と声を上げる。



そして、



あの女の人、凄く怒ってるみたいなんですけど、大丈夫ですかね?



そう言われ、



あのね・・・これから姫ちゃんに祓ってもらいたいのがあの女の人



なんだけど?



そう言うと、



ああ・・・そうなんですよね・・・勿論分かってます。



でも、かなり怒っていらっしゃいますよね・・・・・・。



と俺の不安を増幅させる。



だから、俺は姫にこう言った。



やっぱり、Aさんが戻ってくるまで待とうか?と。



すると、



いいえ、大丈夫です。



そんな事をしたら、きっとAさんに怒られますから・・・。



それに、Aさんが言っていたように、あまり時間の余裕は無いみたいですから。



そう言って、窓を方へと顔を向ける。



しかし、やはり怖いのか、すぐに視線を俺の方へと戻してくる。



こうして見ていると、本当に何処にでもいる普通の女子高生だな、と



妙に納得してしまう。



すると、姫が俺にこう言った。



今、窓に張り付いているのは、その女の人の実態ではないみたいです。



ということは、やはり、夜まで待つしかないですね・・・。



ですから、Kさんも、ちゃんと最後まで付き合ってくださいね。



やっぱり1人では心細いものですから・・・・。



そう言うと、お腹が空いているらしく、病院の食堂へ行って何か



食べたいと言ってきた。



俺は勿論、頷き、彼を病室に残したまま、二人で食堂へと向かう。



食堂に着くと、姫はショーケースに並んだ食べ物を、まるで子供のように



喜んで見つめ、



わぁ・・・何でもあるんですね・・・。



最近の病院って凄いですね!



と大喜びしている。



そして、結局、食堂ではカレーライスとアイスコーヒーを頼んで



美味しそうに食べている。



その間、何度か、俺に向かって話しかけるので、俺が、



え?



と答えると、



いえ、Kさんじゃなくて、守護霊さんとお話してますから・・・。



と言われてしまう。



そして、ちょうどAさんからも電話が掛かってきたらしく、何やら二人で



話し込んでいた。



そして、電話が終わった後、姫は元気に



Aさんは、私の好きなようにすればいいって仰ってくれました。



だから、私は全力でがんばってみますね!



と元気に答えてきた。



そして、夜になり、病棟の明かりが落とされた。



それまで、彼の病室で、あれと姫は椅子に座り、仮眠を取っていたのだが、



何処からか聞こえてくる、何かを引き摺るような音に、目が覚めた。



Kさん、起きてますか?



えっ・・ああ、勿論・・・・。



そうですか・・・・あの・・・私、段々怖くなってきたんですけど、



どうすれば良いですかね?



そう聞かれた俺は、咄嗟に、



取りあえず、「人」という字を書いて飲み込んでみるとか・・・。



そう言うと、姫は、笑いながら、



それって、緊張してる時の対処法じゃなかったですか?(笑)



でも、お陰で少しは、恐怖感も和らぎました。



それじゃ、一緒に頑張りましょうか!



そう言ってくるので、俺は、



え?俺も一緒に頑張らなくちゃいけないの?



と聞くと、



満面の笑みを浮かべて、



はい!勿論です!



と言われてしまい、俺はこの期に及んで、不安感に襲われてしまう。



そうしているうちに、廊下から聞こえてくる音は、ずいぶんと



大きくなっており、はっきりと



ズルッ・・・・ベチャ・・・・ズルッ・・・ベチャ・・・



と聞こえてくる。



その音だけでも、その姿を思わず想像してしまい、俺は固まってしまった。



しかし、どうやら姫は本番には強いようだ。



部屋の入り口の引き戸の側まで行き、廊下を覗く。



すると、キャッという声が聞こえて、姫はすぐに部屋の中へと



顔を戻して、こう言った。



なんか、凄いのがこちらに向かって這ってきてますけど・・・・。



その時、俺は本心では後悔していた。



やはり、Aさんが戻ってくるのを待つべきだったと・・・・。



俺と姫は二人がかりで必死に、入り口の引き戸を押さえた。



とりあえずは、部屋の引き戸を開けさせなければ大丈夫だろう、という



安易な考えのもとに・・・・。



廊下を這いずる音が、引き戸の前で止まった。



俺と姫は、引き戸を押さえる手に、更に力を込める。



しかし、次の瞬間、いとも簡単に、引き戸は開けられてしまう。



そして、そこから、ぬっと顔が現れた。



目の位置も鼻の位置も、そして、どこが頭なのかすら判別がつかないほど



潰れ歪んだ顔。



その顔を見た時、俺は完全に固まり恐怖で萎縮してしまった。



しかし、どうやら姫は違ったようだ。



突然、開き直った様に引き戸から手を離した姫は、引き戸の隙間から



覗いた顔に向かって語りかける。



本当に痛かったんですよね。



怖かったんですよね・・・。



でも、事故は貴方の過失によるものなんです。



それを理解して頂けませんか?



そして、こちらの男性を許してあげる事は出来ませんか?



そう優しく語りかけた。



俺は、その時、思った。



これが、姫のやり方なのかな?



Aさんとは違い、霊に寄り添う事で、説得を試みるというのが・・・。



しかし、次の瞬間、引き戸の隙間から覗く顔が、怒りに変わるのを感じた。



そして、引き戸を掴むと、そのまま完全に開けてしまった。



そして、姫に向かい、



お前に何が分かる・・・・。



悪いのはあいつだ・・・・。



そう言って、姫の肩を掴んできた。



その時、姫の顔も、何かが吹っ切れたように感じた。



そして、次の瞬間、姫は、何処かに向かって、



出番です・・・お願いします・・・・。



そう言った様に聞こえた。



すると、次の瞬間、窓の外で何かが蠢いているのが分かった。



それは、オロチと呼ぶにふさわしいほどの巨大な金色の蛇と、宙に



浮かぶ真っ白で大きなキツネ。



そのキツネの尻尾は完全にいくつかに分かれている。



そして、姫がこう続ける。



窓の外にいるのは、私のお友達です。



貴方の出方次第では、貴女にあの子達と闘ってもらうことになります。



どうしますか?



すると、その女は、明らかに戦意を喪失したかのように、ゆっくりと



頷き、そして、そのまま消えていった。



すると、姫が元気な声で、



はい!終わりましたよ!



と俺たちに言ってきたが、俺も彼も、その巨大な蛇とキツネを呆気に



とられたように、ただ呆然と見つめていた。



あっ、ごめんなさい・・・。



そう言うと、姫は、外に向かって、



ありがとうございます・・・・もう大丈夫ですから・・・。



そう言うと、蛇とキツネは、跡形もなく夜の闇の中に消えていった。



俺が、驚いた声で、



今のが姫ちゃんに憑いている守護霊なの?



と聞くと、



いえ、あれは守護霊ではなくて、ただのお友達ですから(笑)



今回は、説得する為に、わざと恐ろしい姿を見せましたけど、どの子も



皆、優しいんですよ。本当は!



そう言って、笑った。



ちなみに、Aさんが戻ってきてから、その時の話をすると、



そうですか・・・好きなようにすればいい、とは言いましたけど、



そんな方法を使いましたか・・・・。



やはり、自分の力にまだ自信が無いのかもしれないですね・・・。



それにしても、姫ちゃんが使役している蛇とキツネを使ったのに



病院自体が破壊されなかっただけでも奇跡かもしれませんね・・・。



と、他人事の様に言った。



さすがに、興味が沸いた俺は、姫が使役している蛇とキツネの



事について、更に質問したのだが、Aさんは、



Kさんは、知らないほうが良いですね。



知ったら、姫ちゃんが怖くなって近づけなくなるかもしれませんから・・・。



そう言われてしまった。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:05│Comments(0)
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