2018年11月10日

同級生はお花屋さん

これは花屋を営んでいる同級生から聞いた話である。



彼女とは中学時代、すっとクラスが一緒だった。



勿論、それ以上でも以下でもないのだが、高校を卒業してすぐに家業の



花屋を継いだ彼女とは、それからなんとなく付き合いが続いている。



妻と結婚する前、そして結婚した後も、記念日などに花を贈ろうと



思った時、いつも利用させて貰っているのが彼女の店である。



たいして仲が良かった訳でもないのに、同級生だったというだけで、



予算を超えた花を用意してくれたり、無理な注文を聞いてくれたり、と



俺としては本当に大助かりである。



そんな彼女が体験した話をひとつ。



それは、ちょうど一昨年の秋だったという。



その日の仕事が終わり、店じまいをしていると、ひりとの女性がふらっと



店にやってきた。



もう、閉店時間は過ぎていたが、その女性の様子が少しおかしかったらしく、



彼女はそのまま様子を見る事にした。



様子がおかしいというのは、何かぼんやりと焦点の定まらないような眼を



していたという事。



そして、その女性は店内をゆっくりと進み、バケツの中に無造作に入れられている



花をじっと見つめていたという。



彼女は、



何かお探しの花でもありますか?



と声を掛けたのだが、返事は無かったという。



そして、相変わらず、バケツの中の花をじっと見つめている。



その時、彼女は直感的に、



あっ、この女の人、もしかしてお金が無いのかな・・・・。



そう思ったという。



しかし、商売はともかくとして、花が好きな人には悪い人はいない、というのが



持論の彼女は、その女性に対して



あの・・・この花でよろしければ差し上げますよ!



そう言ったという。



そして、その花を新聞紙で包むと、その女性に差し出した。



その女性は小さくお辞儀をすると、そのままゆっくりと店を出ていったという。



そして、その日から毎日、店じまいをしていると、必ずその女性がお店に



現れるようになった。



そして、いつもバケツの入れてある廃棄するつもりの花をじっと


見つめているのだという。



勿論、彼女は、その度に、どうせ捨てるんだから、と思い、その花を女性に



手渡してあげたという。



ショートカットでOL風に見える容姿だったが、どこか寂しそうな



顔を見て彼女はいつも心配していたという。



もしかしたら、凄い悩みを抱えているのか?



もしかしたら、とても貧乏な暮らしなのか?



だから、彼女は自分の心の中でどんどんとその女性に対する興味が高まって



いくのを感じていた。



そんな日が2か月くらい続いた日、その日はいつもよりも早い初雪が



降った日だったという。



いつものように、雪が降る中、店じまいをしていると、いつものように、



その女性が現れた。



その頃には店に入る際には小さく会釈をしてくれるようになっていた。



彼女も、毎日やってくるその女性の為に、あらかじめ、あげる花を



用意する様になっていた。



雪の中なのに大変ですね?



寒くありませんか?



いつも同じ服装で現れるその女性に、彼女はそんな言葉をかけた。



そして、いつものように花を差し出すと、いつものように小さく会釈



をして、その女性は花を受け取った。



女性は、ふらふらと店の外に出ていく。



そこまではいつもの光景だった。



だが、その時、彼女は決めていた事があった。



もしも、こんな雪の中でも、花を受け取りに来たとしたら、今夜こそ、



彼女が何故毎日花を貰いにくるのかを確認しよう、と。



彼女は急いで店を出ると、その女性が歩いて行った方向へと走った。



女性にはすぐに追いつく事が出来た。



尾行しているのを気付かれないようにある程度の距離を保って歩いた。



それにして、降りしきる雪の中でも傘すら差さない。



彼女は、更にその女性の事が分からなくなった。



女性は、とぼとぼと車の通行の少ない道を選ぶ様にして歩いていく。



そして、そこから大通りに出た所にあるガードレールの前で立ち止まった。



すると、彼女の方を向いて、今度は大きくお辞儀したという。



尾行がばれていたの?



そう思っている彼女の前で、その女性はゆっくりと薄い霧のようになっていき、



降りしきる雪の中に消えていった。



彼女は唖然としてしまった。



放心状態といっても良かった。



自分の目の前で人が一人消えてしまったのだから・・・。



しかし、次の瞬間、彼女は全てを把握した。



その女性が消えたガードレールには大きな凹みと傷が出来ており、その下には



無造作に花が置かれていた。



それは紛れもなく、彼女がその女性に渡してきた花だったという。



そこで事故があったの事は知っていた。



そして、運転していた女性が亡くなったの事も知っていた。



しかし、まさか、その女性が自分の事故現場に供える為の花を自分の店に



貰いに来ていたなんて・・・・。



だが、その女性が生きている人間ではない事を裏付けるように、女性が



歩いてきた跡には、足跡はひとつも付けられてはいなかった。



不思議ではあったが、怖さは感じなかったという。



そして、翌日からは、彼女が毎朝、その場所に花を手向ける様にした。



捨てる予定の花ではなく、立派な花束を毎日・・・。



そして、生前にはあった事も無いその女性の為に、しっかりを手を合わせて



お参りした。



すると、その日から、もうその女性が店に来る事はなくなったという。



そんな彼女だが、もう一度、その女性に遭いたいと思っている。



だって、その女性って、小さく会釈した時に少し嬉しそうに笑ってくれたんだから。



とても素敵な笑顔だったんだよ・・・・。



そう言って、その女性を思い出して嬉しそうだった。


そんな彼女は、それからもずっと毎日、そのガードレールに素敵な花束を


備え続けているということだ。


これからも、ずっと・・・・。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:10│Comments(0)
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