2018年11月10日

最終電車とスマホ

これは友人の身に起こった話。



その時、彼は駅へと走っていた。



会社の飲み会が長引いてしまい、最終電車に間に合うように



必死だったのだ。



いつもは車通勤だったから、電車に乗る事に慣れていない彼は、本当は



時間に余裕をもって飲み会を退席するつもりだった。



なにしろ、彼がその日飲んでいた白山市のとある駅から、彼の家がある



小松市粟津駅までは電車の本数も限られていた。



もしも、次の電車に乗れなければ、そのまま朝まで駅で過ごすしかなかった。



しかし、なかなか言い出すタイミングが見つからず、予定の時刻をかなり



過ぎての退席になってしまった。



正直、時間的にはかなり厳しかった。



必死で走ってはいたが、日頃の運動不足もあり、なかなか体が前へと



進まない。



そんな感じで走っていると、ちょうど駅が見えだした頃には最終電車の



発車時刻になってしまった。



彼は、急いで駅に駆け込むと、券売機で切符を買い、ホームに降りた。



電車の発車が遅れてくれているのを祈るしかなかった。



しかし、彼の祈りが通じたのか、彼が乗る予定の電車がまだ



ホームに停まっていた。



彼は、一気に走りだし、そして間一髪、その電車に乗った。



彼が乗るのを待っていたかのように、電車の扉が閉まったというのだから、



本当に運が良いとしか言えない。



彼は、一気に走ったので、息切れが激しかったが、それでも、なんとか



その最終電車に乗れた事を喜んでいた。



そして、電車に乗り込む時には気にしなかったが、バタバタと大きな音で



乗り込んでしまった事が恥ずかしくなってしまい、そっと周りを



見まわした。



しかし、彼の乗り込んだ車両には誰一人乗ってはいなかった。



彼はホッとして、ポケットから携帯をスマホを取り出して、ゲームを



始めた。



そして、彼は思っていた。



それにしても、最終電車とはいえ、時刻はまだ午後11時前。



それなのに、車両に誰も乗っていないなんて、どれだけ需要が



無いんだろうか、と。



そして、スマホで、3分ほどゲームを続けていた彼は、ふと違和感を



感じて視線をあげた。



彼が視線をあげた視界の中は全ての席が乗客で埋まっていた。



彼は思わず、車両内を見回した。



すると、彼が座っている席以外は全ての席が乗客で埋まっていた。



なんで?



彼は、不思議でしょうがなかった。



というのも、彼が電車に乗ってから、どこの駅にもまだ停車しては



いなかった。



何処かの駅に停車して、一気に客がなだれ込んできたのなら理解出来るが、



いったい、この沢山の乗客は何処からやってきたのか?と。



彼は、それまで、車両に一人きりという事もあり、座席に寝転ぶ様にして



スマホでゲームをしていたが、さすがに他の乗客の前で、そんな



恰好で座るわけにもいかない。



彼は座席に、しっかりと座りなおすと、再びゲームを始める。



しかし、どうも落ち着かなかった。



まるで、誰かに監視されているかのような視線を感じていた。



だから、彼はもう一度、車両内の客をまじまじと見た。



すると、老若男女、様々な乗客が乗っているのに、その全員が



うつむいてスマホの画面を凝視している。



それも、操作をしている様子は無く、全員が、ただスマホの画面を



見つめているだけだった。



どの顔にも感情というものは感じられず、まるでロボットかマネキン



の様に見えたという。



彼は、その時、



自分も他人から見たら、あんな風に見えているのかもしれないな・・・。



そんな事を思って、少し複雑な気持ちになった。



だから、その時は、電車に乗っている間だけでもスマホを見ない様に



しようと思ったという。



それにして、不思議だった。



他の乗客たちは、皆、スマホの画面を凝視しているというのに、先ほどから



感じる視線は何なのか、と。



だから、彼はもう一度、自然な感じで辺りを見回した。



しかし、やはり他の乗客たちは全員、スマホを見たままだった。



そして、彼は少し悪戯心を出してしまう。



スマホノ自撮りモードで車内を見てみたらどうなるのか?と。



だから、彼は再び、スマホを取り出すと、カメラモードを自撮りにして



車内を見渡した。



彼は思わず固まってしまった。



そこには、先ほどまで画面から視線を外さなかった乗客全員が、



間違いなく彼の方を睨んでいた。



其処には、怒りの様な恨みの様な感情が感じられたという。



どうして?



俺が何かしたのか?



彼は思わず頭がバニックになった。



それと同時に、得体のしれない気持ち悪さを感じたという。



どうする?



どうする?



彼は必死に考えていた。



すると、その時、彼が降りる筈のひとつ前の駅に電車が到着する



旨のアナウンスが流れた。



彼は迷う事も無く、開いたドアから一気にホームへと飛び出した。



彼の他に、その電車から降りる者は誰もいなかった。



しばらくすると、その電車はそのまま静かに、そのホームから



走り去っていった。



彼はホッとしてホームのベンチにへたり込んだが、結局、そのまま



朝まで、その駅の外にあるネットカフェで過ごす羽目になったという。



そして、話はそれで終わらない。



それから、彼のスマホには、気が付くと、全く知らない番号が電話帳に



追加されている様になった。



その番号には名前が無く、番号のみが追加されているのだが、その番号は、



携帯番号でも固定電話の番号でもなく、とても奇妙な番号なのだという。



一度、その番号から彼に電話がかかって来た事があるのだが、勿論、



彼はその電話には出なかったという。



そして、彼は、その見知らぬ番号がどんどんと増えていくうちに、さすがに



気持ち悪くなってしまい、今では携帯もスマホも一切持たないように



なったという事である。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:15│Comments(0)
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