2018年11月10日

海辺のコテージ

これは友人が体験した話である。



そのコテージはとても人気があった。



海のすくそばに建ち、波の音が近くに聞こえる。



窓からは完全なオーシャンビューが広がっており、そこから見えるのは



砂浜と何処までも続く海だけ。



コテージの内部は南国をイメージした木目と白い壁で構成され、その広さ、



そして調度品の豪華さ等から、それなりに高額な利用料にも拘わらず、



いつも予約でいっぱいだった。



それが、偶然のタイミングなのか、ある日、何気なくそのコテージの予約ページ



を見ていた彼が発見したのは、『空き棟あり』の表示だった。



彼はそれを見て、すぐに予約を入れるとすぐに予約を確定する事が出来たという。



そして、ずっと前からそのコテージに泊まりたい、と言っていた彼女に慌てて



電話をかけると、ちょうどその日は家族との泊りがけの用事があり、無理だ、



という返事が返ってきた。



しかし、奇跡的に取れた予約だったので、彼は残念ではあったが、そのまま



予約をキャンセルせず、友人を誘ってそのコテージで一泊する事にした。



しかも、その友人というのは女性。



まあ、男性の友達を誘っても全て断られてしまった末の苦肉の策であり、



勿論、彼には何の下心も無かったそうなのだが・・・。



それでも、彼は彼女に断られた事で、それなら思いっきり人気コテージを



満喫してやろうと思い、当日が待ち遠しかったらしい。



そして、いよいよ当日になり彼は車に乗って1人コテージを目指した。



どうやら、女性の友人というのは、その日の午前中まで仕事だったらしく、



午後から彼と現地で合流する事になっていたそうだ。



彼は午前10時頃にコテージに到着すると、いそいそと管理事務所に立ち寄った。



そして、そこで、彼は管理事務所の男性から、以下の事を聞かされた。



午後5時以降は管理事務所には誰も居なくなるという事。



そして、何故か、その日、そのコテージに泊まるのは彼のグループだけであり、



他のコテージは全て空いているという事。



そして、最後に、



今日は、午後5時以降は絶対に1階の窓や玄関を開けないようにお願いします。



と、厳しく何度も繰り返し言われたという。



しかし、彼がその理由を聞いても、はっきりとした理由は教えて貰えなかったという。



彼は、とりあえず、管理事務所の男性に、わかりました、と言うと、そのまま



コテージの鍵をもらい、自分達が泊まる予定のコテージへと向かった。



全部で10棟ほど建っているコテージのちょうど真ん中の建物だった。



彼は事前にコテージのHPやネットで色々と調べていたのだが、実際に



観るコテージはとても豪華で、そしてお洒落な建物であり、コテージの裏は



全て海に接しているほどの状態であり、まさに夢に描いた通りのコテージ



だったという。



彼は早速、買い込んできた食材を冷蔵庫に入れて家の中を探索した。



1階には全面オーシャンビューの浴室があり、入口からまっすぐ伸びる



廊下の両脇にはトイレとゲストルーム、そしてその一番奥には広すぎる



リビングがあった。



そして、2階はといえぱ、階段を囲むように3つの寝室があり、そして



その奥には外に出られるテラスがあり、そこからは一面の海原が見渡せた。



これなら、利用料金が高いのもしょうがないな・・・。



彼はそう思ったという。



彼と一緒に泊まる予定の女性は到着が夕方になるという連絡が入っていた。



彼はやる事も無いので、冷蔵庫から買ってきたビールを取り出すと、



一気に3本ほど飲み干した。



海からの風がとても気持ち良かった。



彼は知らぬ間にウトウトしてしまい、そしてそのまま1階のリビングの



ソファーで寝入ってしまう。



夢を見たという。



彼が寝ていると、誰かが彼の名前を呼ぶ声が聞こえる。



彼はその声に応えるようにして起き上がると、その声の主を探しだす。



とても美しい女の声だった。



すると、彼が、ふと海の方を見ると、水平線の向こうから何かがこちらに



近づいてくるのが分かった。



そして、それを目を凝らして見ていると、どうやら海の上を平然と走って来る



1人の女性の姿だった。



彼はその様子を見ても特におかしいとは感じず、そのまま、その女性がこちらに



近づいてくるのを見守っていたという。



すると、最初は美しい姿に見えていた女性が、こちらに近づくに従って、



おぞましい化け物の様な姿になっていく。



彼は慌てて、開けていた窓を閉めようとするのだが、何故か窓は固くて動かない。



それでも、渾身の力で窓を閉めると、必死に窓の鍵を閉めた。



そして、再び、顔を上げた彼の視界にはもう、その化け物はいなかった。



見間違いだったのか・・・・。



そう思った時、突然、彼は肩を叩かれる。



あの女だ・・・・中に入られてしまった・・・・。



そう思った時に彼は夢から覚めた。



嫌な汗を体中にかいていた。



しかし、その汗は怖い夢を見たせいだけではなかった。



開けておいた筈の窓が全て閉まっており、そして鍵も掛けられていた。



当然、彼は窓を閉めた記憶も鍵をかけた記憶も無かった。



だから、



俺はまだ夢の中にいるのか?



そんな風に思ったという。



すると、突然、玄関のチャイムが鳴った。



彼は思わずドキッとしてしまい、ソファーから立ちあがった。



しかし、時計を見ると既に午後6時を回っていた。



やっと来たか・・・・・。



そう思い、彼は急いで玄関に向かった。



えらく遅かったんだな・・・。



そう言いながら玄関のドアを開けると、そこにはやはり彼が誘った友人が



立っていたという。



しかし、いつもは元気いっぱいという感じの女性なのだが、その時には何故か



一言も喋らず、暗い顔をしていたという。



どうした?



何かあったの?



彼がそう聞くと、その友人は、



なんでもない・・・・。



と一言だけ返してきた。



彼はそれが少し気にはなったが、せっかくのコテージなのだから中を見れば



その友人のテンションも上がるだろうと思い、中へと案内した。



中に入り、リビングに案内したが、その友人は相変わらず暗い顔をしていた。



まあ、とりあえず、ビールでも飲もうよ!



そう言って彼はビールを友人に手渡した。



しかし、テレビを見ても食事をしても友人は一度たりとも笑顔を見せなかった。



そのうちに、彼はその友人がまるで別人のように感じてしまい、何故か



怖くなってしまい、彼女を1階のリビングに残し彼は早々に2階へと



あがっていった。



2階へ上がり、自分の寝室に入ると、彼は無性に腹が立ってきた。



せっかくのコテージの楽しい時間が台無しだ、と。



これなら、いっそ1人で来た方が良かった、と後悔していた。



しかし、そんな疲れもあってか、彼はそのまま寝室で寝てしまう。



気が付いたのは真夜中の午前1時過ぎだった。



ふと、友人の事が気になった彼は、寝室を出て階段を降りていった。



1階の明かりは消えていた。



だから、彼は友人がきっと2階に上がって寝ているのだろうと思った。



そして、1階に降りてリビングに行って彼は固まった。



誰かがリビングの大きな窓から外を眺めていた。



それは友人の後姿だった。



彼は一瞬、ドキッとしたが、それでも着ている服が月明かりに照らされており



それは間違いなく友人の服装だったから、ほっと胸を撫で下ろした。



どうしたの?



こんなに真っ暗にして・・・・・



やっぱり何かあったの?



そう聞くと、背中を見せている友人の背中が小刻みに震えた。



もしかして、泣いてるのか?



そう思い、彼はもう一度、声をかけようとした。



すると、その瞬間、窓際で背中を見せたまま立っていた友人がこちらを向いた。



一瞬、何が起こったのか分からなかった。



そして、次の瞬間、めまいを伴って恐怖が襲ってきた。



振り返った友人の顔は笑っていた。



まるで、私の顔はどう?



とでも言いたげに不気味に笑っていた。



その顔は、顔が腐っている様な感じで、両目が大きく離れ、そして眼は



大きく吊り上っていた。



彼は恐怖で固まった体で必死に後ろへと後ずさりした。



本能が彼に危険を知らせていた。



そして、恐怖で顔をひきつらせている彼の顔が楽しくて仕方ないといった感じで



その女は突然、ゲラゲラゲラと笑いだした。



その声に彼は突然、我に返り、その場から一気に階段を駆け上がると、自分の



寝室に入り中から鍵をかけた。



部屋の明かりを点けようとしたが、スイッチは反応しなかった。



その女が追いかけてくる様な音は聞こえなかった。



彼は必死に携帯を取り出して友達に助けを求めようとした。



しかし、昼間は確かに繋がっていた携帯は、完全に圏外と表示されていた。



彼は何がどうなっているのか、理解出来なかった。



それでも、とにかく逃げなくては!と思い、寝室の窓から下を見た。



とても飛び降りて、ただで済む高さではなかった。



ロープがあれば何とか降りられそうだったが、そんな物など寝室に置いて



ある筈もなかった。



と、その時、突然、彼の視界に不思議なものが見えた。



それは、海の向こうから海面を白い道の様なものがコテージの裏まで続いて



いた。



あれはなんだ?



もしかして、俺はまだ夢から醒めていないのか?



そんな事も考えたが、明らかに彼はしっかりと起きており、恐ろしい現実を



思い知らされた。



それにしても、あれは本当に友人なのか?



服装は同じだが、明らかに顔は異形のモノだった。



だとしたら、やはり暗闇で俺が見間違えただけなのか?



そんな事を考えていた。



すると、突然、彼の寝室のドアがノックされた。



コンコン・・・・コンコン・・・・。



彼は息を殺して体を硬直させた。



すると、突然、声が聞こえてきた。



どうしたの?



突然、逃げだしたりして・・・。



私はもう元気になったから・・・・。



リビングで一緒に飲み直そうよ!



それは確かに友人の声だった。



しかし、彼は先ほどの恐怖ですぐには判断がつかなかった。



すると、また、



本当にごめんね・・・。



私が元気が無かったからだね・・・。



だから、私の顔が怖い顔に見えたんだね・・・。



と言ってくる。



間違いなく、それは友人の声。



彼は、やはり俺の見間違いだったのかも・・・。



そう思うと、ドアの方へ近づいて、



ごめん…今、開けるから・・・。



そう言って、ドアの鍵を一瞬だけ開けてすぐに戻した。



カチッという音がした。



その瞬間、ドアのレバーがガチャガチャと動かされるのが分かった。



そして、それと同時にまた、ゲラゲラゲラゲラという下品な笑い声が聞こえた。



やはり、俺を追いかけてきたんだ・・・・。



この部屋に入ろうとしているのか・・・・。



そう思うと、恐怖が更に押し寄せてきた。



彼は部屋の中で武器になりそうなものを必死に探した。



そして、部屋の隅に立てかけてあった金属製の天窓を開ける為の棒を手に取った。



こんな物でも、手に持っているだけで少しは勇気が出てきた。



そして。彼は思いついた。



こんな部屋に隠れてていてもいつかは部屋に入って来られるのではないか?



それならば、この棒を使って天窓から屋根に出られないか?と。



彼は椅子をベッドの上に重ねて置いた。



すると、ギリギリだが天窓に手が届きそうだった。



彼は急いで天窓を開けると、そのまま椅子を積み重ねて何とか屋根に出る事が



出来たという。



そして、上から椅子を崩し、誰も登って来られないようにした。



そして、天窓を閉じると、彼は屋根の上でようやく一息ついた。



ここにいれば助かるかもしれない・・・。



それにいざとなれば、この金属の棒で・・・・。



そう思うと少し安心したのか、彼は何故か睡魔に襲われてしまう。



彼は何とかそのまま朝まで起きていようとしたらしいが、やはり睡魔には



勝てず、そのまま眠ってしまったという。



どけだけ眠っていのだろうか・・・。



彼は顔に当たる心地よい風に、思わず目を覚ました。



其処は紛れもなくリビングだった。



そして、彼は誰かの膝枕で寝ているのが分かったという。



恐る恐る彼は視線を動かして上を見たという。



すると、そこには見た事も無い女・・・・。



いや、女というにはあまりにも恐ろしい顔をした老女が彼の頭を両手で



撫でていたという。



その恐ろしい顔は今でもはっきりと覚えているという。



そして、彼はそのまま再び意識を失った。



そして、朝になって、管理事務所の男性に発見された時には、彼はコテージの



裏の海に体半分が海に浸かった状態で寝かされていたという。



彼はそのまま病院に搬送されたが、体には異常は見られなかった。



ただ、彼が寝室として使っていた部屋は全てがズタズタに引き裂かれていた。



そして、不思議な事に、その日、約束したはずの友人の姿はその場には無く、



後日、聞いてみたところ、そんなコテージに行く約束などしていない、と



はっきりと言われたという。



だとしたら、彼は誰と約束をし、そして当日、そのコテージに現れたのは



一体誰なのだろうか?



ちなみに、彼はその後、管理事務所を訪問し管理人に問いただしたという。



どうして、あの日だけコテージが空いていたのか?



そして、自分が見たモノはいったい何なのか?と。



しかし、管理人は話をはぐらかすだけで何も答えてはくれなかったという。



そして、今でもそのコテージは1年の殆どを満室状態という人気で運営



されているが、やはり彼が泊まった日と同じ月日には、誰も予約を入れない



のだという。



そのコテージには一体何があったのか・・・・。



いつかは、調べてみたいと思った。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:16│Comments(0)
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