2018年11月10日

激流

これは友人から聞いた話。



彼は山や川などの動画を撮影するのが趣味だ。



しかも晴天だけではなく大雨や雷雨の中での撮影がとても好きなのだという。



人の力など全く及ばない程の凄まじい迫力を撮影していると、静かな時に



見せる表情とは違った自然本来の姿が見えるからだという。



自然とは本来、畏敬の存在であり、決して優しいばかりではない、というのが



彼がいつも言っている事。



そして、それはもしかしたら、以前、彼が撮影したこんな動画のせいなのかも



しれない。



その日は数日前から激しい雨が降り続いており、彼は増水し激しい流れに



なった大きな川を撮影しに行った。



良い場所を探して山の中を車で移動していた彼の前に、突然、川の中に



取り残された人が必死に流れに逆らいながら立ち続ける姿が現れた。



それは、どうやら前日からキャンプに来ていた二人組の男性であり、



既に現場には通報を受けたレスキューと警察が到着していたという。



そして、必死に救助活動を続けるレスキュー隊員達だったが、二人の男性は



なかなかその場から救い出される事が出来なかった。



様々な方法で二人を助けようと懸命に動き回るレスキュー隊員の甲斐も無く、



何度やっても、二人の男性を川から救い出す事が出来ない。



川の水面もどんどんと上昇していき、彼が見ているうちに、二人の男性の



胸元まで届きだした。



そのうち、男性2人は動くのを止めて川の流れの中にじっと立ち尽くすだけで



精一杯になった。



彼は必死にカメラのファインダーを覗きながらも、心の中で



頑張れ!・・・・頑張れ!



と、二人を応援し続けた。



彼は少し小高い丘の上から、その様子を撮影していたが、其処から見ていると



まるで二人の男性が川の中で何かを待っている様にも見えたという。



そんな筈はない、と思い、カメラをズームして二人の表情を見ていると、



諦めと、そして何かに陶酔している様な顔に見えた。



こんな状況でどうしてあんな表情が出来るんだろう?



彼はそう思いながら、ファインダーを覗いていたが、ある瞬間、二人男性が



少し笑ったような顔になったのだという。



そして、上流を見つめる二人。



彼も思わず、彼らが立ち尽くしている川の少し上流をカメラで追った。



え?



どうして?



彼はそう思ったという。



川の中を大きな着物のようなものが流れて来ていた。



それは、激流の中をまるで優雅に舞うかのように、川の中をヒラヒラと



流れてくる。



その場にいた全員の動きが止まった。



だから、彼はきっとレスキュー隊員や警察にも、その着物のようなものが



視えているのだと思った。



どうして、あんな着物が川の中を流れて来るんだ?



彼はそう思ってじっと、その着物をカメラで追っていたが、どうやらそれは



着物ではなかった。



着物を着た誰がが川の中を泳いでいる。



しかも、激流の中、ゆっくりと、そして確実にその着物を着たモノは、



彼ら2人の方へとユラユラと近づいていく。



女に見えた。



着物を着て優雅に舞っている女の姿に見えた。



少なくとも、彼の眼には・・・・。



だから、彼は、その姿を茫然とカメラの中に追った。



そして、それは彼がカメラを通して見ている前で、ゆっく撮り彼らに近づき、



次の瞬間、彼ら2人を水中に引っ張り込んだ。



嬉しそうに笑う女の顔。



そして、観念し絶望した様な2人の男性の顔。



二人は声を上げる暇も無く、一気に水中へと消えていき、そしてその着物と



一緒に下流へと流されていった。



まさに一瞬の出来事だった。



ずっとカメラで二人を追っていた彼は、カメラを通して起こった事実に



恐怖し体が固まってしまったという。



そして、すぐに下流が捜索されたが、結局、二人の水死体はそれから



2週間程経った頃、海へと続く河口付近で発見されたという。



そして、実は俺もその時撮影したというビデオを見せて貰った事がある。



すると、そこには、彼が話してくれた通り、明らかに人間の女に見える何かが



はっきりと映っていた。



激流に飲み込まれる男性の顔とは対照的に、本当に嬉しそうな顔をした女が・・・。



きっと、あの二人は何か川に悪さをした為に、連れて行かれたに違いない・・・。



山の主である、あの女に・・・・・。



彼はそうこわばった顔で、言っていた。



そして、これは後日談なのだが、その後、数ヶ月後に改めてそのビデオを



友人に頼まれて見せたところ、ビデオの映像からは、すっかりその女の



姿が消えてしまっていたそうだ。

それは、まるで、不自然な特撮映像の様に見えたという。



やはり、その姿を映像に残す事は禁忌なのかもしれない。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:30│Comments(0)
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