2018年11月10日

彼女が遺したもの

これはAさんから聞いた話である。



Aさんの友達に幼稚園の保母さんをしている女性がいた。



同じ小学校、そして中学、そして高校を卒業して、同じ大学に入った。



しかし、それまでは彼女の事は意識した事が無く、初めて話したのは



大学に入ってからだという。



そして、話してみると、何故か2人は不思議と馬が合ったのだという。



どちらかといえば、冷たい印象のAさんだが、何故か彼女の前では



素直になれたという。



彼女自身は、おっとりしたタイプで誰にでも優しく接して、決して他人を



罵倒したりはしない。



まさに、Aさんとは真逆の人間性といえるのかもしれない。



それでも、二人はいつも一緒に居たのだという。



お互いが決して依存せず、それでいて繋がりは強い。



まさに理想的な関係かもしれない。



彼女とAさんは、大学でもかなり成績は優秀だったらしい。



スポーツをしても芸術面でも、そして勉強でも二人はまさに好敵手だった



らしい。



そして、好敵手といえるのはそれだけではなかった。



実は、その彼女というのが、霊感、いや飛び抜けた霊能力を持っていた



のだという。



それこそ、Aさんでも一目置くほどの霊能力を・・・・。



それは、Aさんもそうだったように、彼女も家系全体に霊感や霊能力に長けた



女性が多かったらしく、そんな能力があるという事自体、何も不自然に



思ってはいなかったようだ。



そして、やはり彼女もAさんと同じように永い家系の中でも、ずば抜けて



霊能力が強かった。



Aさんは、それをこう表現していた。



私達はまさに盾(たて)と矛(ほこ)の関係でしたね、と。



私が霊的な攻撃に長けているのとは逆に、彼女は防御に長けていたんです。



彼女の真似は私には出来ないし、私の真似も彼女には出来ない。



どちらが強いかなんて馬鹿な事を試した事は無いですけど、私と彼女が



タッグを組めば、それはもう怖いもの無しでしたね、と。



あのAさんに、そこまで言わせるのだから、きっと凄い能力の持ち主だった



に違いない。



勿論、大学を卒業してから、彼女は幼稚園の保母さんを目指して改めて



勉強を始め、Aさんは、そのまま教師の道に進んだ。



そして、お互いが別々の道を進むようになってからもAさんと彼女には



親交が続いていたようだ。



その後、Aさんは霊的な修行に励み、力をどんどんと増していき、彼女は



結婚して幸せな家庭を持った。



そして、すぐに彼女は妊娠した。



ただ、妊娠というものは女性の体質をも変えてしまうものなのかもしれない。



それまでは、絶対的な護りの力を有していた彼女の霊能力がどんどん弱まって



いった。



その原因が何なのか、全く分からなかった。



それでも、Aさんは、自分の時間を全て彼女に掛けるようにして、必死に彼女を



護った。



Aさんは言った。



それまで、付け入る隙を全く見せなかった彼女だから、その能力が弱まっていく



という事は、それまでに近寄る事が出来なかった悪霊たちが一斉に彼女を



ターゲットにしてしまうのだ、と。



そして、Aさんの言うとおり、彼女の体は悪霊に浸食され、そして



蝕まれていく。



それはAさんの力をもってしても防ぎようがない程に・・・・。



それまでは決して怪奇現象など起こった事も無い病院が明らかな心霊スポットと



化してしまった。



昼夜問わず、霊を目撃する者が続出し、夜ともなれば、当たり前の様に廊下を



歩いているだけで人外のモノにすれ違った。



それが原因なのかは分からないが、窓から飛び降りて自殺する事件まで起きてしまう。



そして、彼女の周りには、いつも何かがやって来たという。



それは看護師の姿をしている事もあれば、医師の姿、患者の姿をしている事もあった。



また、カーテンを閉めている窓からは、一晩中、ノックをする音が聞こえてきた。



だから、Aさんは、彼女の為に、ずっと病院に泊まり込むようになった。



しかし、それでも怪異は収まるどころか増え続ける一方だった。



その時、Aさんは自分の無力さを痛感したという。



いつも、悪霊を攻撃し撃退する事ばかりに専念し、防御というものを



学んでこなかった自分の愚かさを責めた。



そして、自分は彼女がいてこそ、初めて力を振るえていたのだと実感した。



彼女の体はどんどんと弱っていき、出産すら出来ないのではないか、という



状態になった。



しかし、彼女は頑として、子供を産むという選択をした。



それは、自分の命と引き換えになってしまう事なのかもしれないというのに。



そして、予定日より早く彼女は分娩室に入った。



かなり早すぎる時期ではあったが、彼女は医師たちを説得して出産に臨んだ。



そして、Aさんに、こう頼んだという。



無事に生まれてきたら、その子を護ってね、と。



もしかしたら、彼女自身が自分の死期を予感していたのかもしれない。



その言葉の通り、彼女はそれから間もなくして亡くなった。



無事に出産を終えると同時に・・・・。



その時、Aさんは、自分に言い聞かせたという。



これからは何があっても、ずっと彼女の子の傍を離れない・・・。



そうしなければ、生まれてきた子供まで悪霊たちに連れて行かれてしまう、と。



しかし、初めて、彼女の子を見た時、Aさんは、それが要らぬ心配だった



と気付いたという。



とにかく、生まれて間もない赤ちゃんが、それこそ凄まじい程の霊気を



漂わせていた。



悪霊など、全く寄せ付けない程の・・・・。



それはきっと彼女が自分の子供に託した力だと思うんですよ。



自分の死期を悟った彼女が、自分の子供に残してあげられる最大の遺産。



だから、彼女の子供は私なんかが護ってあげる必要なんて無いんです。



Aさんは、嬉しそうにそう言っていた。



その時の子供は今は父親と東京に住んでいるという。



だから、東京は何があっても大丈夫です!



だって、あの彼女の子がいるんですから!



そう言っていたのが印象に残っている。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:32│Comments(0)
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