2018年11月10日

無視し続ける男

彼の特技は絶対に相手に視線を合わせない事だそうだ。



そんな彼は常に霊というものを無視する事に徹している。



霊感が無い訳ではない。



むしろ、普通の人よりも霊感はかなり強い方だと思う。



では、何故、霊を無視するのか?



それは、彼の考え方に依るものらしい。



つまり、霊というものは決して物理的攻撃が出来る訳ではない。



だから、目を合わせない。



無視し続けてさえいれば安全だ・・・・。



そういう考えらしい。



まあ、確かに彼の考え方にも一理ある。


(ただ、実際に物理的な攻撃をしてくるモノも確かに存在するのだが・・・・。)



特に彼の場合、よく霊を引き寄せてしまう事も多いらしく、その経験



から、彼なりに考えだしたのが、霊が現れても徹底的に無視し続ける、



という事なのかもしれない。



そんな彼は、よく金縛りにあう。



最初の頃は思わず目を開けてしまったりして、怖い思いをいた事も



あるらしいが、最近では完全に寝たフリに徹している。



確かに、自分の体の上に誰かが乗っているのが分かったり、自分の



足を掴んで引っ張られる様な感覚があるらしいが、それも、為すがまま



になっていると、やがて収まるのだという。



執拗に自分が寝ている周りを歩き回ったり、耳元で囁きかけたりも



してくるらしいが、それも寝がえりを打ったりする動作で難なくクリア



出来るのだという。



外出した際にも、よく霊を見てしまう事があるらしい。



最初は思わず目が合ってしまったりして、後を憑いてこられる事もあったらしいが、



最近では、すぐに視線を逸らす癖がしっかりと身に付き、余程でないと



危険な目には遭わないという事だ。



そんな彼がある日曜日の午後、とるあ用事を済ませ、帰宅の途についていた時の事。



いつも使う国道は渋滞で全く動く様子がなかったので、彼は脇道に入り、



裏通りを走る事にした。



その道は裏通りとは言っても、道幅も広く、人の往来もかなり在るという見通しの良い



道。



一本、道を入るだけでこんなに空いてるのに、渋滞になんか巻き込まれていられない、



と思いつつ、車を快調に走らせていた。



すると、前方の歩道に誰かが車に向かって手をあげていた。



それが男性だったら気にも留めなかっただろう・・・。



しかし、そこに立っていたのは女性であり、スタイルもよくそして



顔もまさに彼の好みにピッタリの美人だったという。



彼は思わずブレーキを少しだけ踏んでスピードを落とした。



まさか、そんな綺麗な女性が自分に対して手を挙げる筈は無い、と思って



いたが、そんな美人は滅多に見られるものではなかったから、しっかりと



顔を見てやろう、と思ったという。



しかし、車が近づいていくと、どうやら、その女性は彼に対して手を挙げて



いるのだと分かった。



彼は不思議な気持ちで車を停めて、助手席の窓を開けて、その女性に声を



かけた。



どうかしましたか?と。



すると、その女性は、



すみません、何か急に酷いめまいに襲われてしまって・・・。



タクシーを拾って病院に行こうと思ってるんですが、タクシーが1台も



来なくて・・・・。



それで、駄目もとで、貴方の車に乗せて行ってもらえないか、と



思いまして・・・。



と言ってきた。



どうして酷いめまいがしているのに、平然と立って手を挙げていたのか?



という疑問は彼には浮かばなかった。



何しろ、彼の好みにピッタリの女性だったのだから・・・。



彼は二つ返事で、



良いですよ・・・・。



どうぞ、乗ってください。



病院まで送らせて貰いますから!



と返したという。



すると、その女性は、本当にすみません、と言いながら彼の車の助手席に



乗ったという。



彼は、乗るとしてもきっと後部座席だろう、と思っていたから、とても嬉しかった



という。



まるで、こんな綺麗な女性とドライブデートしてるみたいじゃないか、と喜び、



車を発進させた。



女性が告げた病院はそれほど遠くはなかった。



だから、彼は少しでも長くその女性を助手席に乗せて走っていたかったので、



出来るだけスピードを出さないように走った。



すみません…本当に助かりました・・・・。



女性にそう言われるて、彼も悪い気はしなかった。



いや、むしろ、これを機会に、この女性と付き合えたりしたら最高だろうな、



と思っていたほどだった。



だが、彼が思っていたよりも案外早く、女性が指定した病院が見えてきた。



その時、その女性が突然、



あの・・・すみません。



ちょっと急いで貰えますか?



と言ってきた。



彼は、



もう目の前なのに、どうして?



と思ったらしいが、その女性の言うとおり、車の速度を上げた。



その時、突然、助手席から、



視えてるし、聞こえてるんだね・・・・やっぱり・・・・。



そう聞こえてという。



先ほどまでの女性とは違う野太い声だったという。



思わず、助手席の方を見た彼の眼には、ボロボロに汚れた服を着た顔面の



割れた女が助手席に座り、こちらを見ているのが映った。



彼は固まった。



そして、その女の手が、彼が持つハンドルまで手を伸ばすと、一気に



ハンドルを助手席側に大きく切った。



彼の眼にはそれがまるでスローモーションのように映った。



そして、車が病院の敷地の壁に激突した瞬間、その女は助手席から消えたという。



彼は、そのまま、その病院に事故による怪我で入院した。



そして、事故による怪我とは別に、ずっと高熱にうなされ続ける事になった。



結局、彼はそのまま2か月以上、入院してようやく退院出来た。



相変わらず、彼は霊を無視し続けているが、道端で女性を見つける事が



あっても、それ以来、決して停まらない様にしているという事だ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:34│Comments(0)
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