2018年11月10日

化け猫

化け猫と聞くと、どんなものを想像されるだろうか?



江戸時代に起きた化け猫騒動なる事件もそうなのだろうし、日本の古い



怪談映画などにも頻繁に登場しているモノも、まさに化け猫という



イメージなのだろう。



ただ、Aさんから聞いた話では、化け猫というのは案外身近に



いるものなのかもしれない。、



今回はそういう話である。



これは俺のバンド関係の友人であり、同時にAさんとも親しいという女性の



話である。



彼女は、昼間は事務員として働き、夜はスナックで働いていた。



目的はやはりお金という事になる。



昼間の仕事だけでは、良いマンションに住み、それなりの生活を維持出来ない。



それで、昼間の仕事と夜の仕事を両立しているという事だった。



ただ、良いマンションに住み、それなりの生活を維持したいというのは、



決して自分に対してではなかった。



彼女は独身であり、同居している家族はいなかった。



ただ、ずっと前から1匹の猫を飼っており、その猫こそが彼女の精神的な



支え、心の拠り所になっていた。



いつもは好き勝手に行動しているその猫も、彼女が落ち込んでいたり



悩んでいる時には、気が付けばいつも傍に居てくれる。



辛くて死んでしまいたいと思った時には、ベッドの中に入って来て一緒に



寝てくれる。



いつもは、決してそんな可愛い事はしないのに・・・・・。



そんな猫だったから、彼女にとって、その猫は、いつしか飼い主とペットという



関係を超越し、なくてはならない大切な家族、いや、それ以上のものに



なっていった。



そんな彼女に、ある日、彼氏というものが出来た。



どちらかというと派手なタイプで、同じバンド関係ではあったが、俺やAさんに



とっては、どちらかと言えば苦手なタイプ。



そして、どうやら、その猫もその彼氏の事が気に入らなかったらしい。



彼女がその彼氏を自宅マンションに連れて来ると、あからさまに嫌がらせの様な



事をした。



彼女が、その彼氏とのデートに出掛ける時には、何かと邪魔をして家から出ていかない



様にした。



彼女は、きっと、その猫が彼氏にやきもちを焼いているのだろう、と思っていたらしいが、



どうやら、そうではなかったようだ。



それから、しばらくして彼女はその男性と別れた。



暴力を振るわれた末の、破局だった。



俺もAさんも、あんな彼氏とは別れて良かったんじゃないの?



という程度に思っていた。



しかし、それから彼女の周りで怪異が発生する様になる。



彼女の自宅マンションに、一人の女が現れるようになった。



勿論、彼女にはその女に見覚えなど無かった。



そして、その見知らぬ女は、彼女が部屋でテレビを見ている時、食事を



している時、掃除をしている時、突然現れては、彼女を睨みつけ、そして



消えていった。



いつ、現れるかも分からないその女に彼女は恐怖した。



しかし、自宅マンションでの怪異はまだ軽い方だった。



彼女が会社で働いている時、突然、階段から突き落とされた。



振り返ると、まさに、その女が階段の上に立っていた。



駅の階段でも突き落とされ、バスの乗降口からも突き落とされた。



そして、極めつけは、彼女が路上を歩いている時、突然、彼女のすぐ前に



重たい鉄の棒が落下してきた。



そのどれもが奇跡的に軽症で済んだのだが、駅の時もバスの時も、そして



ビルの屋上にも、その女の姿があった。



さすがに、命の危険を感じた彼女は、俺とAさんに相談してきた。



その女はいったい何者なのか?と。



女性には優しいAさんは、すぐに彼女の自宅マンションへと向かった。



勿論、俺も雑用係として同行した。



そして、部屋の中を見回ったAさんは、



ああ・・・なるほどね。



確かに、そういう感じのする奴だからね・・・・。



と言ってきた。



そして、説明を聞くと、どうやら原因は、以前付き合っていた彼氏なのだという。



その彼氏がずっと以前、付き合っていた1人の女性が、暴力を振るわれた挙句、



自殺した。



その彼氏への想いを持ったままで・・・・。



そして、その自殺した彼女が、彼氏に近づく女性を恨み、そして呪い、自分と



同じ目に遭わせようとしているのだという。



それを聞いて、彼女は顔面蒼白になった。



そして、泣きながら、



何か手だてはありませんか?



私はまだ死にたくありません・・・・。



と訴えてきた。



すると、Aさんは、こう言った。



普通、こういうのにつきまとわれた場合には、除霊というのが一番てっとり早い



んだけど、でも、今回はちょっと、それは無理かもしれない。



はっきりいえば、その彼氏が生きている間は、何回除霊してもすぐに復活



してしまうから・・・。



かといって、その彼氏を殺すわけにもいかないし・・・・。



と言ってくるので、俺は、



それじゃ、打つ手無し?



と聞くと、Aさんは、少しだけクスッと笑ってこう言った。



あのね・・・・これは質問なんだけど、自宅マンションでその女の姿を見た時、



その女に何かされた?と。



すると、彼女は、



いえ、不思議なんですけど、自宅で、その女を見た時は、その女は絶対に



近寄って来ないんです・・・・。



すると、Aさんは、



やっぱりね・・・。



あのね…・打つ手はあるよ。



ほら、さっきからずっと貴女の傍を離れようとしない、その猫ちゃん。



きっとその女が現れた時も、ずっと貴女の傍を離れなかったでしょ?



それって、貴女を護っているって事!



その猫って、既に霊力的には化け猫になってるから・・・・。



だから、霊的なものはしっかりと見えてる。



そして、その女よりも遥かにつよい霊力を持ってるみたい。



それは貴女を護りたいという思いがそうさせてるの・・・。



だから、その猫が怖くて、その女は貴女に近づけない・・・・。



この私がこの部屋に来たから、貴女を護る為に、ずっと傍を離れないって



相当な強い想いだと思うよ。



元々、猫っていうのは霊とかそういうのが、はっきりと見えてるから。



その猫は、既にかなりの霊力を持った化け猫っていわれるものになってるから。



犬も猫も、そういう力が強いから・・・。



特に猫は護りに長けてる。



狐は妖狐になるまでに、かなりの年月が必要だけど、猫は案外早くて、飼い主の



愛情をしっかりと受けていると、10年かそこらで、化け猫になってしまう。



化け猫っていうと、妖怪ってイメージがあるんだけど、その殆どは普通の猫と



変わらないの・・・・。



でも、飼い主の危機の時には、しっかりとその霊力を使って、飼い主を護る。



そして、たとえ化け猫になっていなくても、その猫が死んだら、強い霊力を



持つようになって、それからも飼い主を守り続ける。



確かに飼っていた猫が死んでから、ずっとその猫の事ばかり考えて暮らしていると



それはその猫にとって負担にしかならないの・・・。



だから、



今までありがとう・・・・。



そして、これからも見守っていてね・・・・。



という感じで見送るのが一番良いのかな・・・。



そうしないと、猫はずっとあちらの世界に行けなくて辛い思いをしてしまうから。



肉体が亡くなって、あちらの世界に行かなくてはいけないのに、飼い主がずっと



悲しんでばかりいたら、その猫も、苦しまなければいけないから。



だって、それは、こちらの世界にもあちらの世界にも属せないという事に



なってしまうんだから・・・・。



勿論、我が子の様に大切に接してきた猫が死んでしまうと、その悲しみは



大き過ぎてなかなか立ち直れないのかもしれないけど、でも、それって



肉体が無くなったというだけで、その猫の魂とか思いというのは、必ず



この世に残されるから・・・・。



そして、飼い主に何かあった時には、その魂はすぐにこちらにやって来られる。



それだけの霊力を猫は持っているんだから・・・。



そう言うとAさんは、部屋の何か所かに、護符を貼って、



だから、私が何もしなくても大丈夫!



そのうち、その女も諦めると思うよ。



その猫に対して勝ち目が無いと分かったら・・・。



それまで、きっと、この猫ちゃんが貴女を護ってくれるから・・・。



これからも、ずっと・・・・。



そう貴女が死ぬまで・・・ずっと・・・・。



そう言って、さっさとその場を後にしてしまった。



その後、彼女に起こる怪異は少しずつ収まっていきやがて何も起こらなくなった



ということだ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:45│Comments(0)
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