2018年11月10日

奇葬の地

これは大学時代の友人から聞いた話。



彼の母親の実家というのは、兵庫県のとある村。



兵庫県というと、神戸市など海沿いの市が代表的で、お洒落な都会という



イメージが強いのだが、兵庫県といってもかなり広い。



兵庫県は、下は瀬戸内海、上は日本海まで繋がっているのだから、



かなり広範囲な県なのである。



そして、彼の母親の実家があるのは、兵庫県の上の部分。



そこは、もう神戸市などとは完全に別次元ののどかな田舎が広がっている。



そして、そこでは、誰かが亡くなると、かなり変わった方法で



葬儀を執り行うのだという。



それは、亡くなった人を、縄で縛り、動けなくしてから頑丈な



鉄の箱に収める。



そして、丸3日、そのままの状態で、通夜と葬儀を行うのだそうだ。



なんて、罰当たりな!と思ってしまうが、それには、それなりの



理由があるのだという。



その地域では人が死ぬと、その肉体を使って悪霊が悪さをするという



言い伝えがある。



それは、ずっと昔から守り続けられてきた決まり事であり、確かに



以前は、そういう事も起こっていたのだろう。



そして、彼自身も、以前、それに似た現象を目の当たりにした事があるという。



太い縄で縛られた亡骸を納めた鉄の箱。



それが、お坊さんがお経をあげている最中、ガタガタと震えだし、



箱の中からはおぞましい声が聞こえてきたのだという。



だから、彼は今でも、その風習の意味を理解し、信じている。



しかし、やはり、現代において全ての人が、それを信じるという事は



無理な話なのかもしれない。



そして、その村にもある時、そこに住む祖父母を頼って若い夫婦が移住



してきた。



村自体は、過疎化が進んでいた事もあり、若い夫婦の移住を歓迎してくれた。



そして、それからの数年間は何事もなく過ぎていき、その夫婦も次第に



村の生活にも馴染んでいき、知り合いも沢山増えていった。



しかし、彼ら夫婦は、住んでいるのはその村だったが、仕事では



近くの市に在る会社まで働きに行っており、事実上、その村で過ごすのは



夜寝る時と、休日だけだったのも、少しは影響していたのかもしれない。



そう、彼らは、古い村の葬儀のやり方に、全く理解を示さなかった。



勿論、そうだとしても、彼らが通夜や葬式に参列する事は少なかったから



それ自体は対して問題にはならなかったのかもしれないが・・・。



そんなある日、その夫婦の祖母が亡くなってしまう。



祖母は自分の死期を感じていたのだろう。



その夫婦に、昔から伝わるこの村の葬儀についてしっかりと言い聞かせた。



そして、自分がもしも死んだら、ちゃんとそのルールに則って葬儀を



進めて欲しいと言い残した。



さすがに、直に説き聞かせる様に説得された夫婦は、その場では



首を縦に振ったが、もうその頃になると、ある意味、意固地になつて



しまっていたから、心の中では決して納得などしてはいなかった様だ。



そして、通夜の段になり、やはり、その夫婦は祖母を縛り、金属製の箱



の中に入れる事を断固として拒んだ。



祖父が、泣いて懇願したらしいが、それでも、その夫婦は、



亡くなった祖母に対してそんな無礼な事など出来る筈が無い!



と言い張って、頑として首を縦には振らなかったという。



そして、その結果として、村人はおろか、親戚すらも通夜には参列



する事は無かった。



皆、そこで起こるであろう凶事を恐れのだという。



通夜が始まり、参列したのは、祖父とその夫婦だけ。



それは、みすぼらしい通夜だった。



そして、祖父自身も、亡くなった妻である祖父の蘇りを恐れていた。



しかし、僧侶も来ない通夜で、他にお経を読みあげる者もいなかったから、



自ら、必死に祖母の棺桶の一番近くに座り、お経を読み上げ続けていた。



それは、もしも何かあれば、自分が犠牲になって、若い夫婦を守らなければ、



という祖父の強い気持ちの表れだったのかもしれない。



そして、その時、若夫婦も、さすがに少し後悔していたという。



それと同時に、そんな馬鹿げた迷信を信じるあまり、誰も祖母の通夜に



参列しないという薄情さに呆れ果てていたという。



それから、何事もなく、通夜の時間は過ぎていった。



さすがに、3人だけの通夜ということで、誰もその場から離れて



仮眠を取る事も出来ない。



祖父は、まるで何かにとり憑かれたかのように、必死でお経を唱え続けていた。



そして、彼ら夫婦は、その場でこくりこくりと浅い眠りについてしまう。



そして、異変が起こったのは、午前1時を回った頃だった。



突然、祖母が収められた棺桶の蓋が、はじけ飛んだ。



その音に、彼ら若夫婦も一気に目が覚めたという。



ハッとして視線をあげた彼らの目には棺桶からむくりと起き上がる



祖母の姿が目に入った。



祖父は、必死にお経を唱え続けながら、



いかん!・・・・堪えてくれ!



と叫んだ。



しかし、それでも、祖母の遺体は、そのまま棺桶を出て、祖父の横に



立ったという。



そして、祖父から視線を外すと、今度は若夫婦を睨みつけていた。



彼らは、完全にパニックになっていた。



それでも、祖母の直接の孫である夫が、



ばあちゃん・・・やめてくれ!



いつもの優しいばあちゃんに戻ってくれよ!



そう言った。



しかし、その時、既に祖母の顔は、明らかに祖母とは別人の顔になっていた。



亡くなってから死後硬直であんなに小さくなっていた体も、大きく細く



なつており、その顔はまさに般若と呼ぶに相応しかった。



それでも、祖父はお経だけが、その現状を解決してくれると思っていた



から、更に一心不乱にお経を読み上げ続けていた。



しかし、次の瞬間、バタバタという足音とともに、祖母が彼ら夫婦に



駆け寄り、そして、そのまま外へと引きずっていったという。



うわぁー・・・助けてくれ!



彼らの悲鳴は村中に響き渡った。



しかし、村の禁忌に触れる事の恐ろしさを知っていた村人たちは誰ひとりとして



外へは助けに出てこなかった。



そして、ずっと長い間、聞こえ続けていた悲鳴も、しばらくすると、



全く聞こえなくなったという。



そして、朝になり、ようやく外に出てきた村人たちは、祖父から事情を聴き、



有志を募って彼ら夫婦を探しに出たという。



そして、結局、その夫婦は、村はずれのの溜池のほとりで、無残に



引きちぎられた姿で発見されたという。



手も足も頭も、何かに齧られたかのように、欠損していたという。



それから、彼ら夫婦の遺体は、村のしきたりに従い、厳重に縛られたうえ、



金属製の箱に入れられて、通夜と葬儀が行われた。



そして、どうやら、その時にも、まるで彼らが生き返ったかのように、



箱の中からは、どんどんとはこを叩く音が聞こえ、とても人間とは思えない



様なおぞましい声で唸り声をあげていたという。



その事があってから、更にその村では厳しくしきたりを厳守する様に



なったという。



そして、彼は言っていた。



いつの頃からか分からないが、その村でそんな形の通夜や葬儀が



行われるのは、きっと何かの呪いなのではないか、と。



だから、死んだ者は、3日間の間、何かに憑依されて、実害を



伴って現世に蘇る。



そして、3日経つと、まるで何も無かったかのように、普通の状態に戻る。



だから、その3日間だけは、絶対に、その遺体を自由にしてはいけないんだ。



そう言っていた。



ちなみに、その村では今でも厳粛に、そのしきたりが守られている



のだそうだ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:54│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count