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2018年11月10日

あるフランス料理店の話

これは俺が体験した話である。



某県に、とあるフランス料理店が在る。



店構えも高級フランス料理店らしく、豪華でありその味も素晴らしい。



昼夜問わず客が溢れ、週末ともなれば予約を取ることすら困難な



人気店である。



その店で奇妙な噂が流れた。



霊が出るというのだ。



しかも、毎年決まった時期になると・・・。



そんな店に俺が招待された。



店からではなく友人からである。



彼は、その店のオーナーシェフの遠縁にあたるらしく、霊の目撃情報



が増えるにつれて心配になった。



お客が寄り付かなくなるのではないか・・・と。



そこで、俺に何らかの解決策を探って欲しいという旨の依頼だった。



常日頃から、高級フランス料理などとは関わりのない生活を送っている



俺は、二つ返事でOKした。



何しろ、無料でフランス料理が食べられるというのだから、断る理由は



見つからなかった。



そして、もう一人、同じ理由で同行してくれた人がいる。



勿論、Aさんである。



いつもは面倒臭がっていやな顔しかしないのだが、さすがに貧乏生活



を送っているAさんも、俺と同じ理由で快諾したのだった。



勿論、俺としても、俺だけで何かが解決できる筈もないのは重々承知



していたから、Aさんが同行を快諾してくれた事にほっとした気持ちだった。



招待してくれた友人と落ち合ってから一緒にその店に入った。



お店に入るとオーナーシェフ自ら出迎えてくれた。



しかし、どうも様子がおかしい。



霊の出現で困っている様子は微塵も感じないのだ。



それどころか、小声でほかの客に聞こえないように、慎重に霊の事を



聞く友人とは対照的に、大きな声で明るく話してくる。



そして、



そうかぁ・・お前の所にまで霊の話がいってるのかぁ・・・。



こりゃ、更に有名になってしまうかもなぁ(笑)



と妙に明るい。



そして、



まあ、久しぶりなんだから、今日はゆっくりと食事を楽しんでいってくれ!



と言うと、豪快に笑いながら、厨房の方へと消えていった。



俺達は、テーブルを囲んで、不思議な顔になってしまう。



いや、Aさんを除いては・・・。



Aさんは、まるでいつもと変わらない服装で、これまたいつもと変わらない



様子で楽しそうにメニューを見ている。



そして、



今日は食べ放題で良いんでしたっけ?



と聞いたが、友人に、



あの・・・コース料理で既に注文してありますから・・・。



と言われ、少しがっかりした顔になる。



そもそも、フランス料理の食べ放題などというものは聞いた事が無い



のだが・・・・・。



そして、料理が運ばれてくる。



料理の名前も、そして材料も分からなかったが、とにかく久しぶりに食べる



フランス料理はとても美味しいものだった。



そして、驚いたのが、さすがに元々は良家の出身であるAさんは、



ナイフやフォークの使い方はもとより、食事マナーが完璧



だったという事。



実に美味しそうに、そしてスマートに食事を進めていた。



しかし、その日俺達が招待された本題はあくまで霊の確認と対策だった。



だから、俺と友人は、コソコソと話をしていた。



すると、Aさんんが、



食事中にコソコソ話、止めて貰えます?



と冷たい目で睨んでくる。



そして、



霊なら、ちゃんと居ますよ・・・。



ちょうど私達の右隣のテーブルが空いてるでしょ?



そこに居ますね!



そう言うと、再び食事に没頭する。



確かに、ずっと気になっていた。



どうして、満席状態のその店で、そのテーブルだけが空いたままなのか、と。



だから、俺はAさんに聞いた。



そこに居るって・・・・今も座ってるって事?と。



するとAさんは、



それ以外にどういう意味に取れますか?



でも、何か違和感が無いんですよね・・・。



だから、きっとお店の方達は、何か知ってるはず・・・ですけどね。



そう言われてしまう。



だから、俺達は食事が終った後も、オーナーシェフに話を聞く為に、



その場に残っていた。



そして、結局、閉店になるまで、そのテーブルに客が座ることはなかった。



俺達が待っていると、オーナーシェフがやって来て



すまなかったな・・・待たせてしまって・・・。



で、何を聞きたいんだって?



そう言って、俺達の座るテーブルに腰かけた。



友人は、



勿論、霊が出るって事に決まってるじゃない!



実際、どうなの?



困ってるんじゃないの?



と聞くと、そのオーナーシェフは少し笑いながらこんな話をしてくれた。



実は、オーナーシェフがまだ若く有名フランス料理店で修行の後、



独立して、こじんまりとしたフランス料理店を出したそうだ。



シェフはずっと以前から、もっと気軽に誰でもが食べに来られる様な



家庭料理的なフランス料理店を出すのが夢だったという。



そして、念願かなってお店を出したものの、簡素で安っぽい造りの



店に客が訪れるのはごく稀だったという。



そんな時、若いカップルが食べに来てくれたのだという。



二人は、その店の料理をとても気に入ってくれて、毎週の様に



食べに来てくれた。



とても美味しそうに、そして楽しそうに食事をするそのカップルを見ていると



シェフ自身もとても幸せな気持ちになれた。



それから、そのカップルとの長い付き合いが始まった。



カップルはかなり貧しい様で、その店の安いフランス料理を食べに来る事も



かなりの出費だったらしいが、それでも、なんとかお金を工面して



毎週のように食べに来てくれる。



そのカップルにとっても、その店で食べるフランス料理は、つかの間の



贅沢と、そして幸せを感じられる時間だったのだろう。



そのうちに、お店も軌道に乗り始め、徐々にお客さんが増えていった。



そして、数年後には、現在の店へと場所を移し、新しいシェフやスタッフも



増えていった。



しかし、それからも、そのカップルは、毎週の様に顔を出してくれた。



お店の料理のグレードが上がり、値段も上がってしまったが、それでも



店に通ってくれ、値段があがった料理に対して、注文する品数を



抑えることで何とか顔を出してくれていた。



そして、その数年後にそのカップルは結婚した。



とてもお似合いのカップルであり、そのお店でもいつも仲むつまじく過ごす



二人を、お店のスタッフ全員が温かく見守っていた。



そして、それから数ヶ月後、お店のスタッフとシェフは、その夫婦に



とびきりのサプライズを用意した。



それは、二人の結婚記念日に二人を招待し、そして最上級のフルコース料理を



御馳走しようというものだった。



勿論、二人には、その事は内緒にして・・・・。



そして、その当日、二人を待っていたスタッフだったが、結局、二人が



お店に現れる事はなかった。



そして、その後しばらくしてオーナーシェフは驚愕の事実を知った。



それは、二人がその日、お店に向かっている途中、突然の事故に遭い、



そのまま帰らぬ人になってしまっていたという事だった。



スタッフ全員が、その事実を知った時、目の前が真っ暗になった。



もう、幸せそうなあの二人の姿は見られないのか、と。



しかし、それから良い意味で異変が起こった。



お店が暇な時、そして閉店した後などに、テーブルに座り楽しそうに



料理を待っている二人の姿が、何度も目撃された。



それは、店のスタッフだけでなく、お客さんの中にも、その姿を



目撃した者もいた。



しかし、オーナーシェフをはじめ、お店のスタッフは、その事を怖がるどころか、



心から喜んだという。



亡くなられてからも、あの二人はこの店に来てくれていたのだと・・・・。



それからは、二人がいつも座っていたテーブルは、どんな時でも



他の客を座らせることは無くなった。



その席は紛れもなく、その二人だけの席だったから。



そして、今でも年に一度、ちょうど、二人の結婚記念日には、お店を



臨時休業にして、二人の為に、目一杯の豪華なフランス料理を作り、



ワインと一緒にテーブルに並べておくのだそうだ。



そして、そのまま、そのお店は二人だけの貸し切りにする。



無駄なことだと思うかもしれないが、実際、翌日お店に来て、テーブルに



並んだ料理を見ると、確実に食べた形跡があるのだという。



そして、その事は今では常連客も周知の事実であり、誰も怖がる者は



居ないのだという。



それに、二人がいつもお店に居てくれるだけで、お店の中に



幸せな空気が満たされるから・・・・。



だって、二人はいつもこのお店がお客さんでいっぱいになる事を



願ってくれていたんだから・・・・。



だから、ほんのお礼の気持ちだよ!



そう言って、オーナーシェフは笑った。



そして、その話を聞いていたAさんは、



うん・・素晴らしい事をしていますよね!



二人もすごく喜んでますよ!



そして、私も何か幸せな気分になれました!



そう言って、珍しく笑っていた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 09:55│Comments(0)
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