2019年06月08日

交通整理

これは友人が体験した話である。



今はもしかしたら安全の為に、そんな事は行っていないのかもしれない。



しかし、昔は、夜間の交通整理でも、生身の人間が誘導灯を手で振りながら



交通整理をしていた。



そして、これは、よく交通整理のバイトをやっていた友人から聞いた話なのだが。



彼は昼間ではなく夜間。



しかも一般道ではなく、高速道路ばかりで交通整理のバイトをしていた。



理由は簡単。



時給が高いからだ。



昼間よりも夜間、そして一般道路よりも、高速道路の方が危険率が高いからなのか、



とにかく当時としてはかなりの金額でバイト料が支払われていた。



だから、お金に困ると、彼は必ず夜間の高速道路での交通整理に勤しんだ。



それでは、本当に危険なのかといえば、確かに彼も危険な目に遭った事が



何度かあるという。



それは居眠りによる停止指示の無視が最も多いらしく、やはりそういう車は



近づいてくる時から何か挙動不審な動きをするらしく、交通整理をしている



彼らは、その異変に気付いて、すぐにその場から逃げるらしい。



ただ、工事に集中している作業員さん達は、そうもいかず、運転手が気付いて



急ブレーキをかけてから気付く場合が多いらしい。



パイロンをなぎ倒しながら突っ込んでくる車はまさに走る凶器そのものであり、



いつも、怪我人や死人が出ないのが不思議なくらいだという。



では、不思議な事は無いのか?と聞けば、そんな事は山ほど在るという。



先ず、一番多いのが誰も乗っていない車が走っているという事らしい。



勿論、停止の指示にもきちんと従って車は止まり、まるで普通の車と全く変わらない。



しかし、確かにその運転席には誰も乗っていないのだという。



それは古い型式の車に多いらしく、彼は今でも古い車を見ると、思わず



運転席を確認してしまうのだそうだ。



また、こんな事もあったそうだ。



その時はトンネルの中での作業だったらしいのたが、トンネルの出口付近で



交通整理を行っていた彼の目の前を、まるで明治時代の行商の一行としか



見えない年寄りの一団がトンネルの中を縦列を組んで歩いて行ったそうだ。



そして、それは車を運転するドライバーからもしっかりと見えていた様で、



皆、その一団を大きく避けるようにして通過していったという。



また、これも良く見るらしいのだが、運転しているドライバーはどうやら



気付いていないらしいのだが、車の屋根や底に、人らしきモノがピッタリと



くっ付いている事があるらしい。



それらは男の場合もあれば、女の場合もあるらしいのだが、そのどれもに



共通しているのが、とても満足そうに、そして不気味に笑う顔が



見ているだけで背筋が寒くなるのだという。



勿論、それから、その車に何かが起こったのかどうかは分からないのだが・・・。



そして、最も恐ろしかった体験というのは、こんな話だった。



その時、彼は片側2車線の高速道路での夜間作業で交通整理をしていた。



片側2車線だから、車を停止させる必要は無かった。



工事区間の手前で誘導灯を右に振り続けるだけ・・・。



そして、作業区間は少しずつ移動していったらしく、それに合わせて彼も



少しずつ移動していった。



そして、夜間の高速道路には不思議と車が途切れる時間帯というのが



長い時間ではないが、確かに存在するらしい。



そして、そんな時に、彼は見つけてしまう。



対向車線との間にある中央分離帯の向こう側から彼をじっと見つめる



女の姿を。



そんな所に作業員以外の人間が入れるわけは無かった。



だから、彼はそれが人間ではないと確信し、出来るだけそちらを見ないように



努めたという。



しかし、どうしても気になってしまう。



どうやら、その女は白い長袖の服を着ており、そして腰から下の部分は



存在していなかった。



最初は見間違いかと思って何度も確認したそうだが、確かにその女には



下半身というものが無かった。



そして、その女はその場所に留まる訳ではなく、工事場所の移動に伴って



移動する彼の正面にくるように、ずっと移動してきた。



それも、まるで何かのレールの上にでも乗っているかのように平行に移動



してきたらしい。



そして、ニタニタと不気味な笑みを彼に送ってきた。



何がしたいんだよ・・・・この女・・・。



そう思いながらも彼は、バイトに精を出しているフリをし続けた。



しかし、肝心の車は一台も走って来ない。



そして、ある場所まで来た時、ふと、中央分離帯を見ると、その女の姿は



消えていた。



やっと何処かに行ってくれたか・・・・。



そう思っていると、背後から声がしたという。



彼は無意識に振り返ると、そこには、車に轢かれ人間の体をなしていない女が



彼の背後で笑っていた。



血まみれで体中の手足、首が変な方向に向いていたという。



彼は逃げようとしたらしいが、腰が抜けたのか、全く動けなかったという。



すると、その女は彼の腕を掴むと、そのまま追い越し線の方へと彼を



引っ張っていく。



彼は必死に悲鳴を上げようとしたらしいが、声は出なかった。



それどころか、まるで彼の存在を忘れてしまったかのように、作業をしている



周りの人たちは誰一人として彼の異変に気付いてくれなかった。



彼は腰を低くして抵抗したらしいが、それでも、その女の力は強く、彼は



引きずられる様にして追い越し線まで連れて行かれた。



そして、そこでその女は彼に張り付くようにしてぴたりと体を寄せてきた。



全く体が動かなかった。



そして、その時、向こうの方から近づいてくるヘッドライトが見えたという。



彼は、その時、轢かれる!と覚悟したという。



しかし、そのドライバーはかなり慎重な性格だったのだろう。



工事区間という事もあり、かなりスピードを落としたそのドライバーは



追い越し車線でもがいている彼の姿を見て、間一髪停止してくれたという。



すると、その女は、チッという声を出して、今度はその車の中に滑るようにして



入っていったという。



彼はその時点で体の自由が戻り、慌てて元の場所に逃げた。



そして、彼は言っていた。



きっと、あの女はあのドライバーに標的を変えたんだと思う。



その夜、その高速道路で事故があったという話は聞かなかったけど、出来るなら



今でも無事でいてくれると良いんだけど・・・。



そう言って顔を曇らせて見せた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:26│Comments(0)
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