2019年06月08日

隣に駐車した車

これは友人がまだ若い頃に体験した話である。



その頃、彼には付き合いだして間もない彼女がいた。



そして、その夜は夜景を見る為に山の上にある駐車場に彼女を乗せて



車で来ていた。



その山の上にある駐車場というのはかなり有名な心霊スポットの近くにありながら



その夜景の素晴らしさから車で訪れるカップルで週末は渋滞が出来るほど



の場所だった。



そして、彼がその彼女を連れてその場所を訪れたのも、週末の夜だった。



当然、夜景を見にきたカップルの車で賑わっていると思っていたが、



いざ、その場所に来てみると、彼らの他には車は1台も停まってはいなかった。



彼は何度もその駐車場に来た事があったが、そんな事は初めての事だった。



いつもはカップル同士の車が駐車場内にぎっしりと停まっており、正直、



ムードも何も無かった。



だから、彼はそんな状況をラッキーだと思ったという。



確かに、近くには曰くつきのお墓がある心霊スポットなのは間違いなかったが、



それまで彼がその場所で怖い目に遭遇した事など1度も無かったのだから。



だから、彼は窓を開けたまま、前の席のシートを倒してのんびりと



空を見上げながら、彼女と色んな会話を交わしていたという。



すると、突然、窓ガラスにポツポツと雨が降り出した。



彼は慌てて起き上がると、開けていた窓を全て閉めた。



と。その時、彼はふと気付いたという。



駐車場に、彼らとは別の車が1台停まっていた。



その駐車場はかなり広く、どうやらその車も、彼らと近くにならないように



わざと遠くに停まったのがなんとなく分かったという。



ようやく、1台だけ車が来たか・・・・。



そう思うと、彼はまた、倒れているシートに体を預けた。



そして、助手席に座っている彼女に、



なんか、他の車が1台だけ来たみたいだよ・・・・。



車が来た音なんて聞こえなかったんだけどなぁ・・・、と。



すると、今度は彼女がシートから上半身を起こして、辺りの様子を窺った。



そして、またすぐにシートに寝転ぶと、こう言った。



本当だ・・・。



車が1台来てるね・・・。



でも、なんか、気持ち悪いよね・・・。



ずっと、こっちの方ばかり見てるみたいで・・・、と。



そう言われて彼は少し違和感があった。



それは、先ほど見た時には、その車は間違いなく駐車場の端っこに



停まっていた。



そして、此処からそこまでの距離は50メートル以上あり、こんな夜間に



こちらを向いているかどうかなど分かる筈も無かったから・・。



だから、彼はもう一度体を起こして、その車の方を確認した。



すると、その車は、先ほど彼が見た時よりも、かなり近くの駐車スペースに



停まっていた。



そして、彼女が言ったとおり、その車には若いカップルが乗っており、



そして、その二人は間違いなく顔だけをこちらの方へと向けるようにして、



しっかりとこちらを見ていた。



先ほどは50メートル以上あった、その車との距離は、ちょうど半分程に



なっていた。



車を動かしている音など全く聞こえなかった。



それなのに、確かにその車は少しの間にかなりの距離を近づいて来ていた。



彼は少し気味悪くなったが彼女の手前、そんな素振りは見せられない。



彼はシートに再び、寝転びながら、



本当だ・・・。



なんで、あいつらこっちの方なんかジッと見てるんだろうね・・・。



と彼女に言葉を掛けた。



それから彼は出来るだけ、その車の事は考えないようにして過ごした。



彼女との会話を楽しむ事に集中した。



しかし、彼女が突然、こう言った。



もしかして、あの車のカップル・・・。



まだ、こっちを見てるのかもしれないね・・・。



そうだとしたら、怖いけどさ・・・と。



そう言われてしまうと、さすがに彼も気になって仕方なくなる。



それじゃ、ちょっと確認してみますかね!



そう言って、彼は再び、シートから上半身を起こして、その車の方を見た。



心臓が止まるかと思ったという。



彼がその時見たのは、彼らの車に横づけするかのようにピッタリと並んで



停められた車であり、その車の窓から、こちらを見て微笑んでいるカップルの顔が



すぐ目の前にあった。



彼は何も声が出せなかった。



完全に恐怖で固まってしまっていた。



そのカップルのぎこちない微笑みと、普通なら曲がる筈の無い角度まで真横に



曲げられた顔が彼には怖くて仕方なかった。



すると、その時、隣に停まった車の助手席の女が何かを喋った。



と、その瞬間、彼は一気にエンジンをかけて、その場からけたたましい



タイヤの音を立てながら車を発進させた。



驚いて、何があったのか?と聞いてくる彼女の言葉にも反応出来ず、彼は



ひたすら、その場から必死で車を走らせた。



とにかく、何処でもいい・・・。



その車から、いや、そのカップルから少しでも遠くに逃げたかったという。



そして、その場から無事に逃げおおせた彼はそのまま彼女を自宅まで送り



家に帰ったが、結局、朝まで部屋の電気を点けたまま一睡も出来なかった。



そして、彼はこう言っていた。



あの時、助手席の女は、間違いなくこう言ったんだ・・。



ねぇ・・・・一緒に。



それを聞いた時、俺はそこから後の言葉を聞いてはいけない、と思ったんだ。



いや、俺の生存本能が、それを聞いてはいけないと教えてくれたんだと思う。



そして、もしも、その時、その言葉を最後まで聞いてしまっていたら、きっと、



俺は此処にはいなかったんだろうな・・・。



こわばった顔で、そう言っていた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:29│Comments(1)
この記事へのコメント
一気に何通もの通知メールがきて
最初に読んだのがこのお話でした。

世にも奇妙な物語
を見るのも忘れて
読んでます(笑)
Posted by とも at 2019年06月08日 22:35
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