2019年06月08日

人を轢き殺した車

以前、トヨタからソアラという車が販売されていた。



その当時、ハイソカー・ブームというものがあって、トヨタのソアラ、マークⅡ、



ホンダのインスパイアなどは、乗っているだけで何故かIQが高くなって見える



という不思議な人気のある車だった。



そして、その中でも、断トツで人気があったのがトヨタのソアラ。



とにかく、中古車でも値段が高く、ソアラに乗っているというだけで、



簡単にナンパし放題だったというから、幸せな時代である。



しかし、そのソアラの人気車としての宿命なのかもしれない。



やはり宜しくない噂というものも出回っていた。



それは、『首チョンソアラ』という通名だったと思う。



要は、ソアラに乗っていた運転手が、走行中に窓から首を出した際、何かに



ぶつかって、運転手の首だけがもげてしまったらしいのだが、その当時、



中古車としても超人気車種だったソアラをそのまま廃車にするのは勿体ない、



ということで、車を修理して、そのまま中古車として販売し、それが



中古車市場で流通しているという嘘の様な話だった。



だから、異様に安いソアラの中古車を見つけたら気を付けろ、という



事らしいのだが、ただ、その話はまんざら嘘とも言えない要素もあった。



何故なら、その当時、最低でも250万位はしていた中古のソアラが、



ごく稀に、100万を切る価格で売られている子があったのだから。



その車に何かあって、そんな低価格設定にしているのかは分からないが、



素人考えでは、つい、首チョンなのか?と思ってしまうのは仕方のない



事だろう。



そして、実際、俺が学生の頃には一度そういう激安のソアラを見つけた事があった。



勿論、俺が見つけた訳ではなかったが、その話を聞きつけた俺は友人達と



急いで、その激安ソアラを見に行った。



確かに、100万を切った値段で並んでいたそのソアラは、気のせいか



近づき難い様なオーラを発している様に感じた。



運転席のドアや窓ガラスを触っては、



うーん・・・ここから首か飛んだのか~



と妙に納得していたのだから、我ながらなかなかのチャレンジャーである。



そして、実は以前、解体屋に勤めている知り合いから、『人をひき殺した車』



というものを見せて貰ったこどかあるのだが、それもかなりインパクトが



強かったのを覚えている。



それは、何処にでも在る様な普通のセダンだった。



しかし、バンパーは凹み、窓ガラスが割れて大きく車内に入り込んでいた。



ボンネットも大きくひしゃげており、どこの部分に人が当たったのか、と



いう事も想像できる程にくっきりと体の形が浮かび上がっている。



そして、車内には無数の黒い血痕がいたるところに付着しており、



事故の酷さを物語っていた。



そして、俺が最も驚いたのは、その解体屋で、その車を再生しそして



中古車として売ろうという算段だった。



それを聞いた時、それって『首チョンソアラ』と同じじゃないか・・・。



そう思った。



確かに車自体は発売されて間もない新型車であり外装以外は壊れている



所は無いのかもしれないが、それでも、そんな車に知らずに乗ってしまったら



一体どんな事が起こるのだろう・・・。



俺なら、どんなに安くても、そんな車には絶対に乗りたくはない。



だから、俺は、その車を再生して売るのだという事とを聞いた時、



猛反対した。



しかし、どうやら、その車を再生して売るという考えは、その解体屋が



考えたものではなく、その解体屋に車を持ち込んできた業者が決めた



事だから、と言われて話が前に進まない。



車を売る時には、その車の中に数日間置いておいた日本酒を飲んでもらって、



その人に霊感が有るか無いかを見極めてから売るから・・・。



霊感が有る人に、そんな車は売らないそうだから・・・。



と言われても、そんな問題ではない。



そんな車が売り物として中古車市場に出回ること自体が禁忌の行為だと



言って聞かせる。



しかし、全く埒が明かない。



挙句の果てには、



だいたい、霊が見える人なんて、ほんの僅かだしな・・・。



それに、そもそも、霊が存在するという事も実証されている訳じゃないし・・・。



そんな事まで言い出し始める。



俺は仕方なく、Aさんに電話して事情を説明すると、その解体屋の社員と



話してもらって説得して貰おうと思った。



しかし、Aさんは、



いや、別に電話を代わって説得なんかしなくてもいいでしょ・・・。



私も面倒くさいし・・・。



でも、今、その人達はKさんの近くにいるんですよね?



だったらさっさと、この電話を切った後で、もう一度その車の所に



行ってみてください。



きっと、それで思い留まる、と思いますから・・・。



そう言って、Aさんは電話を切った。



俺は半信半疑だった。



確かに、Aさんと近くにいるだけで、自分の霊感がとてつもなく敏感に



なるという事はいつも感じている事だ。



だからといって、電話だけで、しかも、俺の近くに居る、というだけで



彼らの霊感を持ち上げる事など出来るのか、と。



しかし、俺にはAさんに言われて通りにするしかなかった。



そして、彼らをもう一度、その車の近くまで連れていく。



解体屋の廃車置場の端っこに停められたその車は、先ほど見た時よりも



何か、どんよりと暗く感じる。



その途端、彼らのうちの一人が、うわぁ!という大声を出して、その場で



尻もちをついた。



そして、わずかに遅れて、もう一人も、大きな悲鳴を上げて事務所へと



逃げていく。



俺は、良く見えなかったので、その車に近づいて目を凝らして見てみる。



すると、そこには、頭が潰れ、脳が露出し、全身が血まみれの男が



その車の運転席に座り、ハンドルを握っていた。



そして、こちらを見て、嬉しそうに首を上下に揺らしていた。



俺にはその姿が、次の車の所有者を待ち構えている様な不気味な



姿に見えた。



あっ、これは間違いなく成仏出来ていないな・・・。



もつとも、車でひき殺されてしまったら成仏なんか出来ないかもな・・・。



そんな事を思っていた。



そして、Aさんの言ったとおり、翌日には電話が掛って来て、その解体屋は、



その車の再生を断ったという連絡を受けた。



しかし、彼らはこうも言っていた。



新車とか人気車とか、そういう車で事故を起こしても、すぐに再生されて



中古車として市場に出回るのが現実なんだ。



だから、その車と同じようにいわくつきの車なんて、中古車にはゴロゴロ



しているのが現状なんだよ・・・。



だから、まあ、俺は中古車は絶対に買わない事にしてるよ、と。





Posted by 細田塗料株式会社 at 22:33│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count