2019年06月08日

救急病院

これは看護師をしている姪から聞いた話。



俺の姪は石川県でもかなり規模の大きい総合病院に勤務している。



勿論、救命救急に配属されているわけではないのだが・・・。



どうやら、そこに配属された友人もいるらしく、その看護師から聞いた



内容が今回書く話である。



救急車で運ばれて来ると、緊急処置室へと運ばれる。



そこで、患者さんの状況を把握して、振り分けが行われる。



中には、ただの酔っ払いとしかいえない人もいるらしいが、中には



命の危険に曝されている患者さんもいる。



そこで、救命救急医が、治療にあたる。



何度も心臓が止まり、その度に蘇生措置で蘇り、命の危機から脱する



者もいれば、そのまま命を落とす者もいる。



更に、事故で担ぎ込まれた人の中には、一目見ただけで、もう助からないのが



判るほどの患者もいるらしいのだが、それでも、医者や看護師は必死の



蘇生措置を行うらしい。



まさに、死と生の境界線で働く、凄まじい仕事である。



そんな過酷な現場で働いている姪の友人看護師は、ある時、不思議な



事に気付いたという。



それは患者のそばに、ある一定の距離を保って、必ず誰かが立っている



という事。



それは母親の様に見える事もあるし、老紳士の姿をしていたり、子供の姿



をしている事もあるそうだ。



そして、そのどれもが、その患者の事を、まるで何かを観察でもしているかのように



じっと見つめているだけなのだそうだ。



しかも、それらは、軽い怪我や病気で担ぎ込まれた患者のそばには立っていない。



常に、命の危機と闘っている患者さんのそばに、じっと立っているのである。



まるで、その患者の未来が判っているかのように・・・・。



そして、運良く蘇生し命の危機を乗り越えれば、気付かないうちに居なくなっている。



しかし、峠を越えるまでは、ずっとその患者からは決して離れないし、



運悪く命を落とせば、そのかんじゃ遺体の傍らにそっと立ち続ける。



嬉しそうな笑みを浮かべて・・・・・。



だから、病院内では、それらの者を隠語として、『アレ』と呼んでいるそうだ。



”あの患者は、アレが来ていないから助かるだろう・・・・”



”あの患者は、アレがずっと傍から離れないから、かなり危険だ”



そんな感じで使われている。



ただ、彼女が言うには、アレも、患者の生き死にを絶対的に判っている



訳ではないのだろう、という事だった。



それは、過去に、こんな事があったから・・・・。



ある時、事故で、中年男性が運ばれてきた。



かなり危険な状態だったらしく、緊急手術とICUでの必死の看護が



行われた。



何度も心臓が止まったが、蘇生に成功し、生死の境を行ったり来たりという



状態が続いたという。



そして、どうやら、その時にも、しっかりとアレがその男性に付きっきり



だったらしい。



しかし、その男性の危険な状態が1週間以上続いた時、アレが初めて



口を開いたというのだ。



この人は死にそうですか?



それとも、助かりそうですか?と。



そう聞かれた看護師は、



勿論、助かるにきまってるじゃないですか!



と語気を強めたそうだが、そう言うと、アレは残念そうに何処かへ



行ってしまったそうだ。



こんな状態の中で、そんな不謹慎な事を聞いてくるアレが、どうしても



我慢ならず、看護師はつい勢いで、そう言ったらしいのだが・・・。



ただ、何故か、本来は助かるはずの無かった男性はその後、持ち直し、



奇跡的に一命を取り留めたそうだ。



また、アレには、こんな一面もあるのだという。



ある時、30歳くらいの女性が事故に遭い、運ばれてきた。



どうやら、その女性はシングルマザーとして子供たちを育てていたらしい。



母親の事故を知り、小さな子供たちが、その病院に駆けつけてきた。



そして、片時もは親の傍から離れようとはしなかった。



母親は、どう見ても助かる見込みは無かったそうだ。



それが、周りの雰囲気から判ったのか、子供たちは必死に母親を励まし



そして、泣き続けていたという。



母親には3人の小さな子供たちがおり、その子供たちが母親が横たわる



ベッドを取り囲むようにしていたという。



まるで、アレが見えていて、絶対に近づかせない様にしているように・・・。



そして、そのせいか、アレもいつもより、かなり離れた場所から、じっと



その母親を見ていたようだ。



実際、ベッドを取り囲む子供たちは、時には治療の邪魔にもなってしまっていたが、



誰も、それを咎める事は出来なかったようだ。



母親の治療の邪魔になってはいけないと、まだ小さな子供たちは、



声を殺すようにしてずっと泣いていたという。



そんな状態が数日間続いた。



すると、突然、アレは看護師に近づいてきて、



あの子達に伝えてくれませんか・・・・。



もう、泣かなくていいから・・・。



君たちのお母さんは、助かるから、と。



そう言い残して、アレは、何処かに歩いて行って、それっきり現れなかった。



そして、その翌日、母親は、奇跡的に一命を取り留めた。



そんな事があったらしい。



もしかしたら、アレにも、そんな優しい気持ちが少しは残っているのかも



しれない。



何故か、そう感じた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:36│Comments(0)
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