2019年06月08日

あるお店での話

これは、知人から聞いた話である。



彼が飲みに行くのはいつも決まって、片町のとあるビルにあるスナック。



別に綺麗なママさんがいる訳でもなく、料金が安いという訳でもない。



ただ、なんとなく居心地が良いのだという。



いつも決まった客が、いつもと同じ歌を唄っているのを聞いていると、なんだか



ホッとするそうだ。



カウンターだけのその店は客席が全部て8席。



そしてカウンターの中にいるのは年配のママさんと、バイトの中年女性一人。



いつも手料理を出してくれるそうで、彼はそこでいつも季節感というものを



感じているらしい。



スナックといえば、やはり常連客が多く、新規の客というものはなかなか



入店しずらい。



そして、その店も例に洩れず、いつも常連客だけで賑わっているのだという。



その日はウイークディということもあってか、客は彼ともう一人の常連客



だけだった。



相変わらずの空気の中で彼はのんびりと好きなウイスキーを飲んでいた。



そんな時、突然、店のドアが開いた。



他の常連客でも来たのかな、と思い、ドアの方を見ると見知らぬ男が立っていた。



男はまるで通夜の帰りとでもいう様に、白いワイシャツに黒の礼服を



着ていたそうだ。



空いてますか?



そう聞くと、その男は一番右端の席に座った。



右端の席というのは、カラオケの画面が見えないため、常連客は絶対に



座ろうとしない・・・。



そんな席だった。



その時は、まだ誰もカラオケを歌おうとはしていなかったのだが・・・。



その男が席に着くと、お店に置いてあるウイスキーのボトルを指さして、



アレをロックで貰えますか?



と言った。



そして、目の前に出されたウイスキーを一口飲むと、大きく深呼吸をして、



あの・・・・怖い話、聞きたくないですか?



確かにそう言ったという。



彼も、そしてもう一人の常連客もそれまで楽しく飲んでいたそうだが、その一言に



思わず反応してしまった。



というのも、そういう変わった趣向も楽しそうだな、と思ったからだという。



彼が、



何か怖い話を知ってらっしゃるんですか?



と聞くと、



ええ・・・まあ・・・・・。



とその男は返してきた。



だから、彼らは、



本当に怖くなかったら、罰ゲームですからね!



と言うと、その男は黙って頷いてから、ゆっくりと口を開いた。



その話は、内容は書けないが、とある殺人事件に関する怖い話だったという。



そして、その男は話の最後に、



この話を聞いた人の所には、その殺された女性が現れるという事です・・・・。



そう言って一話目を終えた。



確かに怖い話だったし、最後に、そんな言葉を言われたことで、恐怖心が



一気に増したという。



しかし、怖い話にはよくあるパターンだな、という程度で特に気にも



留めなかったという。



そして、その男は続けて2つ目の怖い話を語り出した。



その男の声は小さくそして震えたような語り口調であり、それが怖い話を



一層怖いものにしていた。



第2話目は自殺した女性の話だった。



こちらも、かなり怖い話であり、彼らはすっ気に酔いが醒めていくのを感じていた。



そして、その話が終わると、その男はまた、



この話を聞いた人の所には、その殺された女性が現れるという事です・・・・。



そう、付け加えたという。



もう、彼に話しかける者は誰もいなかった。



というのも、彼によれば、最初にお店に入って来た時、そして1話目の話を



語っている時、そして3話目の話を語っている時、その全てにおいて、



その男性の顔が全く別人に見えていたから、なのだという。



もう一人の常連客は、その男性を制止するように、



もう怖い話はこれくらいでいいんじゃないですか?



と言ったらしいが、その男は、



いえ、この話は3つの話を聞かないと駄目なんです。



そうしないと、もっと危険な事になってしまいますから・・・・。



そう言うと、勝手に2つ目の話を語り出した。



彼は、



もっと危険な事になる、ってどういうことだ?



と考えていたらしいが、元々彼も怖い話が嫌いな訳ではなかったので、そのまま



その男の話に耳を傾けたという。



3つ目の話は、呪いに関する怖い話だった。



いつも怖い話など聞き慣れているはずの彼でさえ、その話はかなり恐ろしいものであり、



途中から聞くのを躊躇ってしまったという。



そして、3つ目の話が終わると、その男は、また、



この話を聞いた人の所には、その殺された女性が現れるという事です・・・・。



と続けた。



そして、更に、



聞いて頂けて良かったです・・・・・。



あの子達も、満足していると思います・・・・・。



今ここで・・・・・。



と付け加えた。



すると、そう言い終えた瞬間、突然店の明かりが消えたという。



彼も、そしてもう一人の常連客も、



ちょっと、こういうのは無しにしてよ・・・・・。



ママ、やり過ぎだって・・・・・。



と言うと、ママさんは、



私、何もしてないって!



と返してきた。



すると、突然、店の明かりが再び点いたと同時に店の中に絶叫が響いた。



カウンターの一番左端の席、そして開いたトイレの中、そしてカウンターの中に



虚ろな目で立っている女の姿があった。



それぞれがバラバラな服装をし、顔が崩れ、手足がもげ、そして皮膚が炭化した様な



姿の女はそれだけでとても人間には見える筈もなかった。



ママさんとバイトの女性はその場にしゃがみこんで悲鳴をあげ、彼らはその場に



身動き出来ずに固まっていた。



そして、次の瞬間、その3人の女は、虚ろな目のまま大きな口を開けて、



言葉にならないような大きな声で絶叫した。



そして、再び店の明かりが消えた。



暗闇の中で続けられるその女たちの絶叫は、まるで耳の鼓膜を破るように



店内に響き渡った。



そして、しばらくすると、絶叫はピタッと止まったが、彼らもママさんも全く



動けなくなってしまっていた。



しかし、しばらくすると、我に返ったように手探りで明かりのスイッチを探り、



そして、そのスイッチをつけた。



店の明かりはすぐに点いた。



しかし、その時にはもう、先ほどから怖い話を語っていた男の姿は



煙の様に消えてなくなっていた。



その店にいた全員が間違いなくその姿を見た。



が、その事に付いて語ろうとする者は誰もいなかった。



結局、も背は早仕舞いする事になり、彼らはその店から追い出された。



完全に酔いが醒めてしまった彼らは、二人でもう一軒別の店に飲みに行こうと



いう事になり、ビルのエレベーターに乗り込んだ。



エレベーターの中は何故か線香のような匂いがしたという。



そして、1階のボタンを押して、エレベーターが降下し始めると、今度は



えれべたーたの中の明かりが消えた。



そして、エレベーターは、彼らが押していない3階で停まったという。



誰かが乗り込んでくるのか、と思っていると、開いたドアの前には誰もいなかった。



すると、彼らの体をすり抜けるよう、背後から3人の女が廊下へと降りていくのが



見えたという。



結局、彼らはそのまま別の店には行かず、さっさと自宅に帰る事になった。



ただ、その時以来、そのビルでは怪奇現象が多発するようになり、今では



完全に廃墟ビルと化してしまったという事だ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:43│Comments(0)
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