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2019年06月08日

怒りが恐怖を超える時

これは俺の知人が体験した話。



その日、彼は仕事関係の飲み会に出かけ、相手方の社長に誘われるままに



何軒かの店をはしごしてしまい、気が付けば時刻は午前3時を回っていた。



一緒に飲んでいた社長さんはそのままビジネスホテルに泊まる事にしたのだが、



彼は翌日、どうしても外せない家の用事があり、そのまま帰宅する事にした。



しかし、何故かその時にはタクシー乗り場はおろか、路上にもタクシーが



1台も停まってはいなかった。



確かに、そんな時刻になるとタクシーの数が激減するのは分かっていたが、



全く1台もいない、というのは初めての経験だった。



飲みに出た時には降っていた雨もあがり、どんよりとした空ではあったが、



雨が降りそうな気配は無かった。



仕方ない・・・・歩いて帰るか・・・・・・。



それに歩いていればタクシーの1台でもつかまるかもしれない・・・・。



そう思った彼は自宅方向に向かってゆっくりと歩き始めた。



その飲み屋街から彼の自宅までは歩けば1時間ほどの距離。



万が一、途中でタクシーが見つからなかったとしても案外良い運動になるかも



しれない・・・・。



そう思い、彼は出来るだけ早足で歩くようにした。



酔いは不思議と醒めていた。



少し冷たく感じる夜風も、酒を飲んだ体にはとても心地良いものだった。



歩き始めて20分ほど経ったが、相変わらず何故かタクシーはおろか、車すら



通らない。



今夜は一体どうなってるんだ?



彼はその時、タクシーが捕まりやすい大通りを歩くのを諦めて、より近道になる



古い街並みのの中の道を歩く事にした。



昼間、その道を歩く事はあったが、夜にその道を通るのは初めてだった。



そして、やはり時間帯のせいか、明かりが点いている家は一軒も無く、犬の鳴き声すら



聞こえないほど静まり返った道を彼は黙々と歩いた。



ここまでくれば、あと20分くらいかな・・・・・。



そんな事を思った時、突然、彼が歩く道の前方に誰かの人影が見えた。



近づいていくとそれが街灯の明かりで照らしだされ、其処に立っているのが



1人の女性なのだとわかったという。



そんな時刻に1人で立っている女性。



それだけでも不気味なのに、その女からは強い違和感を感じたという。



女は寒い季節ではないというのに、薄茶色のコートを着ており、片手には傘を持ち



足には何も履いてはいなかった。



もしかしたら、精神を病んでいる女性かもしれない・・・・・・。



そう思った彼は出来るだけその女性から距離を取るようにしてその女の前を



通り過ぎた。



彼が通り過ぎる時、その女が何かを喋ったのは分かったが、関わり合いにはなりたく



なかったので、そのまま無視して通り過ぎた。



ついつい歩く速度も上がってしまい、彼は一刻も早くその女から離れたかった。



しかし、ふと気付くと、その女はまたしても彼の歩く道の前方に現れた。



まさか?



そう思って、歩いていくと、間違いなく先ほどの女が前方の道の脇に立っている。



しかも、良く見ると、その女が違和感を持っているのは、着ているコートや



裸足のせいだけではない事に気付く。



手足がとても細くて長く、更にその身長は彼よりも優に20センチほどは



高かった。



そして、その高い身長のかなりの部分を女の顔が占めていた。



横から見ると、三日月の様な長い顔が胴体に乗っている印象で、丸まった



猫背の背中と相まってその容姿は異様としか言い様が無かった。



人間ではないのかもしれない・・・・・・。



そう思い始めると、彼の頭の中は一気に恐怖で満たされた。



振り返って、今来た道を走って戻ろうかとも思ったが、その女にが追いかけてくる



気がして、それはしなかった。



彼は恐怖を紛らわすためにポケットから煙草を取り出すと、それに火をつけて



口にくわえた。



そして、また一気に、その女の前を通り過ぎた。



通り過ぎる際、また、その女は何かを喋っていたが、彼にはその言葉を聞く



余裕など無かった。



しかし、彼はすぐにまたその女の姿を前方に見つけてしまう。



彼は完全に震えていた。



自分ではどうしようもないほどガタガタと手が震え、足も攣ってしまいそうなほど



筋肉が痛くなるのを感じていた。



そして、その後は何度その女の前を通り過ぎても、またすぐに目の前にその女が



現われるようになった。



不気味にゆっくりと横に揺れながら立っているその女は、彼に命の危険を



感じさせるには十分だった。



そんな事を繰り返しながら、彼は徐々に家へと近づいていた。



彼の体は緊張と恐怖ですでに疲労しきっていた。



とにかく、一刻も早く家に帰らなければ・・・・・。



家族の顔が彼の脳裏をかすめる。



そして、次にその女の横を通り過ぎる時、彼はその女が思いがけないこどはを



口にしているのが分かった。



それは、彼の妻と娘の名前だったという。



彼は、急にその場て立ち止まった。



妻と娘の名前を聞いた時、彼の数多の中から恐怖は一瞬で消え、その代わりに



自分でも説明がつかない程の怒りを感じたという。



妻と娘を狙っているのか?



怒りが恐怖を超えてしまった・・・・・。



そして、その怒りは彼に予想外の行動を取らせた。



一気に、その女に掴みかかると、コートの襟を掴んで、



妻と娘に何か用でもあるのか!



その女のコートはぐっしょりと濡れていたがそんな事は気にならなかった。



その女のの襟首を掴んで、ブンブンと左右に振り回した。



女の顔は。最初、不気味に笑っていたそうだが、彼の行動に驚いたのか、



すぐに、その不気味な笑みは消え、完全な無表情になった。



妻と娘になにかしてみろ・・・・。



絶対に許さないからな!



そう言って、彼はその女を突き飛ばし、そのまま再び家の方へと歩き出した。



もう、それ以後は前方にその女が現れる事はなかった。



その後、彼は無事に帰宅してから自分のとった行動に我ながら恐怖したらしいが、



それ以後も、彼の周りで怪異は一切発生していない。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:47│Comments(0)
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