2019年06月08日

吊り橋

これは知人が体験した話である。



彼は山を散策して歩くのが趣味だそうだ。



朝早く起きて車で山へと向かい、そこから徒歩で遊歩道を歩く。



空気も美味しいし何より清々しい気分でストレスも吹っ飛んでしまうらしい。



そして、手持ちのカメラで目に留まった生き物や木々を撮影する。



そんな彼はいつか歳をとったら山の上に小屋を建てて、其処で生活するのを



本気で夢見ていたそうだ。



そんな彼がある日、いつものように日曜日の朝、山へ散策に出かけた。



少し空は曇っていたが、雨が降ってくたら、そのまま濡れながら歩くのも



一興かな、と思っていたそうだ。



そして、彼はそこでいつもよりも山の奥へと知らずにら足を踏み入れてしまっていた。



気が付くと、目の前には大きな木が立っており、その樹皮が一部分だけ白く



変色していた。



更に、その木の下にはハンカチや本、そして薬なども置かれている。



嫌な予感がして彼は上を見上げたという。



すると、そこから数メートル上に在る太い枝にロープが巻きつけられていた。



嫌な予感は当たってしまった。



どうやら、その木で以前誰かが自殺をしたようだった。



その時、彼は何を思ったのか、ポケットからカメラを取り出すと、その木を



撮影してしまった。



自分でも何をしているのか、分からなかった。



ただ、その時は何か使命感の様なものを感じて、何度もその木に向けて



シャッターを切った。



暫くして、ハッと我に帰った彼は、その木に向けて手を合わせると、その日は



そのまま車に戻り下山した。



それからしばらくの間は何も起こらなかったという。



だが、ある日、いつもの時刻に寝た彼は、夢を見たという。



夢の中では彼は何かに追いかけられていて狭い道に追い込まれてしまう。



何に追いかけられていたのかは覚えていないそうだが、とにかく彼を追いかけてくる



相手はとても大勢で、しかも強い殺意が感じられたという。



そして、狭い道に追い詰められた彼に、道の両側から追いかけてきた者達が彼に迫る。



もう逃げ場か無い、と思った彼だったが、どうやら、その狭い道の両側には



低い柵があるだけで、策の向こうには広い草原が広がっている。



こんなに低い柵なら簡単に乗り越えられる・・・・・。



彼はそう思い、柵を乗り越えようとした瞬間、彼は寒さで思わず目が覚めた。



すると、彼は真っ暗な暗闇の中に立っていた。



まだ夢の中なのか?とも思ったが、どうやらそうではなかった。



どうやら、彼は1本の橋の上に立っているのが分かった。



どうして、俺はこんな所に立っているんだ?



そう思い、恐る恐る、その橋を戻ると、そこにはエンジンがかかったままの



彼の車が置かれていた。



彼は唖然とした。



もしかして、俺は自分でこんな場所に来たというのか?



まるで、夢遊病者の様に・・・・・・。



帰り道、彼は何度も道に迷いながら何とか自宅マンションに辿り着いた。



その時も、彼には違和感があった。



それは、夢遊病だとしても、どうして行った事もない場所に自分が辿りつき、そして



その場所を知っているかのように、あんな橋の上に立っていたのか?と。



次の日、彼は仕事を早退して病院を受診した。



精神科だったという。



そこで、色々と検査をされたが特に異常は無いと言われたそうだ。



そして、ごく稀に、夢遊病ではなく、寝ぼけてそんな事をしてしまう人もいる、と



聞かされ、彼は少しだけホッとした。



そして、彼はその足で、あの夜、自分が立っていた橋をもう一度見てみるべきだと



重い車を走らせた。



昼間走ってみると、その場所は、彼にとってまさに初めての場所なのだと



実感した。



そんな道を走っていくと山の中の端に出るなどとは、とても思えないような



道であり、同然、彼には以前一度も通った事の無い道である事は間違いなかった。



そして、現地の橋に到着して、彼は更に唖然としてしまった。



その橋は、普通の橋ではなく、いわゆる吊り橋と言われる部類のものだった。



深い谷の上にかかった吊り橋は、そこから落ちれば間違いなく死ぬ事を意味していた。



恐ろしくなった彼は、急いでその場所ほ後にした。



そして、山を降りたところに在ったコンビニに寄った際、何気に聞いてみた。



この先に在る吊り橋って、どんなところなんですか?と。



すると、コンビニの店主らしき男性が少し嫌な顔をして、



お客さんも興味本位で行かれるつもりなんですか?



あそこは、自殺が絶えない危険な場所ですよ。



自殺防止として何かをしても全く効果が無い。



もしかしたら、自殺した死者が呼んでいるのかもしれません。



そんな所に近づくこと自体がまさに自殺行為ですからね。



そう強い口調で言われたという。



しかし、彼にとってはその男性の口調以外に強い衝撃が走った。



やはり、自殺の名所だったのか・・・。



だとしたら、俺はやっぱり死者に呼ばれたっていうのか?



何故?何の為に?



彼の頭の中は既に恐怖で完全に満たされていた。



今度寝たら、今度こそ死んでしまうかもしれない・・・・・。



そう思うと、寝られなかった。



何度も睡魔に襲われたが、決して寝ないようにしていたという。



ただ、それにも限界がある。



そして、疲れ切った挙句、彼は俺に相談してきた。



何とか、助けて欲しい、と。



勿論、俺はすぐにAさんに助けを求めた。



電話に出たAさんは珍しく寝ぼけていた。



明らかに寝起き。



しかし、俺はお構いなしに、現状を説明した。



すると、



すり鉢?自殺?



何なんですか?意味が分からないんですけど・・・・・。



そう言うAさんに、



いや、意味が分からない事いってるのはAさんの方だから・・・・。



とにかく知人の命が・・・・・。



そこまで言うとAさんは、俺の言葉を遮るように、



せっかく夢の中で、お菓子で出来た家を食べてたのに・・・・。



どうして邪魔するのかな~?



と、相変わらず訳の分からない事を言っている。



というか、そんな夢を見るなんて、どんだけお菓子が食べたいんだよ?



そう思ったが、とりあえず、その時、とあるホテルで開催されていたスイーツ食べ放題



に連れていくということで商談?成立!



俺とAさんは、彼の家へと向かった。



そして、改めて彼に詳細な話を聞いた。



そして、話を聞き終わった俺は一つの疑問が浮かんだ。



彼が見つけたのは、大きな木の枝で首を吊った跡。



それなのに、どうして、吊り橋から飛び降り自殺をさせようとするのか?と。



すると、Aさんは、



そんなもの、自殺して死霊になった相手には関係ない事ですよ!



どんな方法を使っても道連れに自殺する相手を探し続けるのが悪霊ってやつですから。



だから、首吊り自殺したからといって、相手に首を吊らすとは限りません。



要は自分よりも酷くて痛い死に方をさせようとするんです。



まあ、今回は運が悪かったですね・・・・・・。



と淡々と説明する。



それじゃ、どうやって助けるの?と聞くと、Aさんは、



まあ、普通は簡単ではありませんけどね。



と言って、辺りをキョロキョロと見回して、



その話に出てきたカメラって今、此処にあります?



と聞いてくる。



すると、彼は部屋に置かれていた彼らを持ってきて、



これですけど・・・・。



とAさんに手渡す。



そのカメラはかなり高額な一眼レフカメラ。



俺には到底手が出ない品物だった。



そして、そのカメラを見て、Aさんは少しだけ微笑んだ。



それを見た、俺は、



いや、今回ばかりは駄目だって・・・。



これ、相当高額なカメラだし・・・・。



もしも、いつものようにするのなら、呪いだけ消し去って俺が貰いたい



くらいだから・・・・・。



しかし、Aさんは、俺の言葉には耳を貸さず、彼に向って真剣な顔で、



あの・・・・このまま死んでしまうのと、大切なカメラを失うのだったら



どちらを選びます?



そう聞いた。



彼は一瞬、何を言っているのか分からない、といった顔をしたが、すぐに



勿論、死にたくないです!



とAさんに返した。



すると、Aさんは、更に嬉しそうな顔で、



それじゃ、金槌とかありますか?



あっ、そうですね。



出来るだけ大きなのが良いです!



と彼に告げた。



彼は慌てて金槌を取りに行った。



そして、それからのAさんの行動に対して、俺と一緒に固まりながらただ見つめている



しか出来なかった。



大きく振り下ろされる金槌。



そして、その度にどんどんと破壊されていく高級カメラ。



その時のAさんの恍惚とした表情は、明らかにホラー映画の1場面だった。



そして、カメラがバラバラになったのを確認したAさんは、大きく息をして



これで大丈夫ですよ!



今日からは好きなだけ寝てください。



そう言い残して彼の部屋から出た。



帰りの車の中で、俺はAさんに聞いてみた。



あのさ・・・・ああいうのって、単にAさんのストレス解消としてやってるんじゃないの?



本当は、あのカメラも壊さなくても何とか呪いは解けたんじゃないの?と。



すると、Aさんは、



普通は、カメラを壊すだけで呪いまで封じるなんて事、出来ないんですからね。



私とか姫ちゃんだから、出来る事なんです。



だから、俺は、



いや、姫が、物を壊すなんで場面一度も見たこと無いんですけど?



と返すと、



本当にうるさい人ですね。Kさんは・・・・。



いいじゃないですか?



いつも、呪いとか厄災に私を巻き込んでるんですから、少し位私も楽しみがあっても、



バチは当たらないでしょ?



と開き直っていた。



その時は、やはり、Aさんという人は、もしかすると恐ろしい人なのかもしれない、と



思ったのだが、どうやら、その後、改めて彼の所に行き、一緒に山の中の木と



吊り橋に行き、完全に呪いを断ち切ってくれたのだと、後になって彼から



聞く事になる。



相変わらずAさんは、よく分からない人なのだが、まあ、極悪人というほどでも



ないのかもしれない。



まあ、絶対に敵に回したくない存在なのは間違いないが・・・・・。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:48│Comments(0)
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