2019年06月08日

人形コレクター

これは知人から聞いた話。



知人の知り合いに人形を収集しているコレクターがいた。



ただし、その男性が集めているのは人形といっても普通の人形ではない。



人を呪い殺す時に用いられる呪具。



つまり、藁人形である。



藁で出来た人形のシルエットや手触りが好きだというが、本当のところは



そうではないらしい。



最初はネットで藁人形の新品を購入していた彼だったが、いつしか、それだけでは



飽き足らなくなり、ついには、実際に丑の刻参りが密かに行われているという



神社に出向いては、実際に呪いの呪具として丑の刻参りに使用された藁人形を



集めるようになった。



通常、丑の刻参りは7日間続けられるようで、その7日間が過ぎてもその



藁人形自体はその場に残されている。



それを密かに持ち帰って来ているらしく、決してその人の呪いの儀式の



邪魔はしていないと言い張る。



やはり実際に人を呪った藁人形には呪った者の怨念が染みついているせいか、



よりリアルに、そして生々しく人間の業というものを感じられ、それが



彼にとっては堪らないのだという。



彼が神社にある森へと藁人形を集めに行くのは決まって晴れた日の午後。



その理由は勿論、丑の刻参りをしている本人との接触を避ける為だと言う。



丑の刻参りは、誰かに見られてしまったら、呪いの効力が無くなってしまうと



同時に、その呪いが全て呪っている自分に返ってくるらしく、その為、



もしも誰かに見られたとしたら本気でその者を殺そうとしてくるという



話を聞いていたから。



だから、神社に一般客が往来し、陽の光が満ちた状態なら万が一にも



そんな危険な目に遭う事は無いだろうと思い、彼はいつも晴れた日の



日曜日の午後を選んで、その神社の森に入っていく。



それが彼が決めた身を護る為のルールだった。



そして、彼によれば、この現代においても尚、丑の刻参りというものが実際に



そして頻繁に行われているらしく、1か月に1本位の割合で新しい丑の刻参りの



痕跡が発見できるのだという。



そんな彼だが、過去には何度も危ない目に遭っている。



どうしても実際に丑の刻参りをしている様子を自分の眼で見たくなった彼は、



それまでの安全の為のルールを逸脱してしまう。



真夜中、午前2時頃にいつもの神社に行った彼は、ライトも持たず、暗い森の中に



入っていった。



事前に丑の刻参りが行われている場所は特定してあったから、月明かりだけでも



特に迷う事も無かった。



目的の木に近づいていくと、



カーン・・・カーン・・・カーン・・・カーン



という釘を打ちつける音が聞こえてきた。



彼は初めて見る本物の丑の刻参りに緊張しつつも気持ちはかなり興奮していた。



どんな奴がどんな格好で、その呪いの儀式を行っているのか?



ワクワクしながらも慎重に彼はその音の方へと近づいていく。



そして、30メートル程離れた、大きな木の蔭からその様子を窺った。



そこには年配の女性が白装束を着て頭にはろうそくを立てた鉄輪を被った



姿で一心不乱に大きな釘を大木に打ち付けていた。



まさに噂に聞いていた丑の刻参りそのものであり、彼は歓喜した。



それと同時に、彼は更に息を殺してその場にしゃがみこんだ。



その年配女性は、数度釘を打ちつける度に、辺りをキョロキョロと見回す。



その視線はまさに常軌を逸した様なギラついた眼であり、さすがの彼も



さの眼にだけは命の危険を感じた。



まるで、自分の姿がその女にバレているのではないか、という不安さえよぎった。



そして、1時間ほど経過すると、その女の呪いの儀式は終わりを告げてその場が



静寂に包まれる。



その時が一番緊張したという。



しかし、何事もなく、その女性は静かに金槌を降ろし、そしてそのまま、まだ



夜明けには程遠い暗闇の中に消えていった。



彼は今自分が見た本物の呪いの儀式というものに陶酔していた。



しばらくは頭がボーっとしてしまい、その場から立ち上がる事も出来なかった。



そして、落ち着いた時、彼は思わぬ行動に出てしまう。



つい、先ほどまで目の前で女が釘を打ち付けていた藁人形を自分のコレクションに



加えたくて仕方なくなった。



勿論、それが危険な事だというのは分かっていた。



しかし、結局彼は自分の好奇心に勝てず、その藁人形を大木から引き抜くと



それを懐に入れてそそくさと自宅へと帰った。



そして、自宅に帰ると藁人形を解体した。



すると、中には一人の男性の写真と髪の毛らしきものが入っていたという。



それからである。



彼の行動がおかしくなったのは・・・・。



常にキョロキョロと周りの様子を窺ってばかりの生活。



そのうちに仕事は辞めてしまい自宅に籠るようになった。



そして、彼から電話があり、こう言われた。



俺はやってはいけない事をしてしまったみたいだ・・・・。



あの女がずっと俺を監視しているんだ・・・・。



きっと、もう俺は駄目かもしれない。



だから、最後の望みを掛けて、あの人形をあの女が打ち付けていた大木に戻して



来ようと思う。



それが彼からの最後の言葉だった。



それから彼の行方が分からなくなった。



部屋も以前のまま残されているが・・・・・。



もしかしたら、再びあの森へ行ってそのまま・・・。



今は彼の無事を祈るしかない。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:52│Comments(0)
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