2019年06月08日

信じる力というもの

これは知人女性から聞いた話である。



知人女性には、同い年の友達がいた。



彼女とは趣味のサークルで親しくなり、それ以来、親交が続いていた。



結婚しない知人に対して、彼女は既に結婚しており、二人の女の子も



授かっていた。



知人は元々独身主義を貫くつもりだったらしいが、彼女の子供たちの可愛い



姿を目にする度に,心が揺さぶられる思いだったという。



そんな幸せな家庭を羨ましく思い、知人も、よく彼女の家を訪れては、つかの間の



家族団らんを満喫していた。



彼女の2人の娘は、ずっとサンタクロースを信じ続けていた。



幼い頃から、サンタの絵本を読み聞かせられ、クリスマス・プレゼントも両親からの



物とは別に用意され、朝起きると、二人の娘の枕元には大きなサンタからの贈り物



が入れられた袋が置かれていた。



そんなだったから、友達に、



サンタなんていないんだよ!



あれは、パパとママがやっいる事なんだから・・・・。



と言われても、サンタクロースの存在を信じる事だけは止めなかった。



2人は毎年、クリスマスの夜にやって来てくれるサンタさんを楽しみにし、



そして、毎年サンタさんに宛てた手紙をそっと置いておくようになった。



サンタさんを信じていれば、願いはずっと叶い続けるんだから・・・。



2人の娘はそう言い合いながら、大好きなサンタさんへの感謝の気持ちも



忘れなかった。



ところが、不幸は突然やってきた。



その時、二人の娘は、それぞれ中学2年と小学校6年生になっていた。



親戚の用事で車で出掛ける事になった彼女たち一家だったが、長女は既に



中学の部活動で頑張っている事もあり、心配ではあったが、長女一人だけを



残して車で親戚の家まで出かけたという。



遅くても夜までには帰る予定だった。



しかし、両親からも妹からも連絡が無く、長女から連絡しても携帯は繋がらなかった。



そして、夜の10時を回った頃、突然、長女1人が待つ家に電話がかかって来た。



警察からの電話だった。



家族3人が乗った車が、センターラインをはみ出してきた対向車とぶつかり



病院に担ぎ込まれたという連絡だった。



パニックになった長女は、知らぬ間に知人に電話をかけていた。



そして、泣きながら家族の事故を伝えた。



慌てた知人は、急いで長女を迎えに行くと、そのまま警察から教えられたという



病院に直行した。



病院に着くと、警察の関係者らしき男がおり、知人に事故の詳細を伝えてくれた。



相手のドライパーは即死。



そして、彼女たち家族が乗った車も大破し、危篤状態であり、3人とも



助からないだろうとつらそうに言われた。



説明を聞き、長女と一緒に集中治療室に入った知人は、その光景に絶望したという。



彼女たち家族は全員が皮膚が見えない程、包帯で巻かれ、繋がれた生命維持装置が



忙しく動き続けていた。



そして、心拍音や呼吸音は、かなり弱々しくなっており、到底回復が見込める



状態には見えなかった。



医師や看護師達も、まるで延命を諦めたかのように、別の患者にかかりっきりに



なっていた。



長女もその様子を見てかなり動揺していたようであり、立っているのもやっと、



という感じだった。



その様子を見て、知人は長女をこのまま病院へ置いておくのは過酷過ぎると



感じたという。



だから、知人は長女を連れて、彼女達の家へと戻った。



家に入ると、家の中はしーんと静まりかえっており、そこでも現実を突きつけられた。



ぐったりとして堪えるように泣き続ける長女を見て、知人は、



もしもの時、いや、間違いなく、この娘は私が育ててあげなければ・・・・。



彼女の為にも・・・・。



そう強く決心していた。



カレンダーには、2日後のクリスマスイブの場所に大きな赤い囲みがしてあった。



楽しい筈の毎年のクリスマスにこんな事になるなんて・・・・。



知人も折れそうな心を耐え、涙を流さないようにするのが精いっぱいだった。



そして、知人は長女に、こう言ってみた。



もうすぐクリスマスなんだから、サンタさんにお願いすれば、きっと助かると思うよ、と。



それは、つい口から出た根拠の無い慰めの言葉だった。



しかし、その言葉を聞いた長女は急に泣きやむと、自分の部屋に入っていった。



まさか…自分も死のうとしてるんじゃ・・・・。



そう思った知人は、長女の部屋へ入ろうとした。



すると、部屋の中から、長女が、



お願い!今、大事なお願いをしているところだから私の部屋には入って来ないで!



そう言ったという。



そして、それから数時間、1人で待っていた知人は、長女の部屋から物音が



聞こえなくなったのを見計らって、そっと長女の部屋に入った。



すると、そこには、机に突っ伏したままの長女が、寝入っており、そこには



こんな手紙が書かれていたという。



サンタさん、お願いします。



今年はプレゼントは欲しがりません。



だから、お母さんとお父さんと妹を助けてください・・・・。



その代りに、私の命をサンタさんに差し上げます。



どうか・・・どうか・・・これが最後の願いです。



お願いです。願いを叶えて・・・・。



その手紙を見た時、知人は声を殺して泣いてしまった。



まだ中学生の長女が自分の命と引き換えに家族の命を助けようとしている事が



悲しくもあり、嬉しかったという。



そして、知人は長女の背中に毛布をかけて、そのまま部屋から出てリビングに



戻った。



自分がしっかりしなければ・・・・・。



まだ中学生の長女があんなに気丈に頑張っているんだから・・・・。



そう思いながら、知人もそのまま寝てしまったという。



そして、早朝、突然の電話で知人は起こされた。



慌てて電話に出るとそれは病院からの電話だった。



やっぱり死んだんだ・・・・。



知人は、そう思ったという。



あの状態から助かる筈はないのだから、と。



しかし、知人は自分の耳を疑った。



病院の看護師から告げられた言葉は、



ご家族は皆、助かりました。



もう大丈夫です。



急いで来て貰えますか?



そんな言葉だった。



まさに信じられない奇跡に知人はボロボロと涙を流した。



そして、それと同時に、一抹の不安があった。



もしも、長女の願いが叶えられたのだとしたら、長女の命はどうなったの?と。



慌てて、長女の部屋に駆け込むと、ぐったりしている長女を揺り動かした。



長女はぐっとりしてピクリとも動かない。



知人はパニックになり、長女の体を激しく揺さぶった。



起きなさい!駄目だよ!死んじゃ!



すると、突然、眠たそうに長女が体を起こした。



どうしたの?大丈夫?



と尋ねる知人に対して、長女は、



え?うん、ごめんなさい。



昨夜はサンタさんと一緒に、病院へ行ってたから・・・・。



なんか、疲れちゃって・・・・。



そう言う、長女に知人は、病院から家族の奇跡的な回復を伝えた。



すると、長女は驚く様子も見せず、



うん。サンタさんと約束したからね。



でも、良かった。本当に!



と言って笑ってくれたという。



知人も、そんな馬鹿な、と思ったそうだ。



しかし、長女の部屋の床には、まるで長靴で入って来たような大きな足跡が



残されていたという。



そして、長女を連れて、病院へ向かった彼女は其処でも同じような足跡を



見る事になった。



医師からは、



奇跡としか言えません・・・・。



これまで医療に携わって来て、初めての経験です・・・・。



そう告げられたという。



それから、数ヶ月後、家族3人は奇跡的な回復を続け、そしてリハビリも



順調だったことから、大した後遺症も無く、無事に退院する事が出来たという。



それは、長女にとって、最後にして最大のクリスマスプレゼントになった。



そして、退院し、家に戻った家族は、遅まきながらもサンタへの感謝の意味も



込めて、盛大な季節はずれのクリスマスパーティを開いた。



知人も、それに呼ばれ、そしてそれは一生忘れる事が出来ない程の幸せな



クリスマスパーティになったという。



そして、後日談だが、どうやら、それからも長女と次女の所には毎年、サンタが



やって来ているそうだ。



両親も知らないプレゼントが毎年、置かれるようになった。



だから、彼女達、家族は今でも、サンタクロースの存在を信じてるのよ。



そして、勿論、私も!



知人は嬉しそうにそう言ってくれた。



確かにサンタクロースが実在するかしないかなんて、誰かが決める事ではない。



もしかしたら、信じ続けている者の所にだけ、今でもしっかりとサンタクロースは



やって来るのかもしれない・・・・・。



そう思うと、俺も幸せな気持ちになれた気がした。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:53│Comments(1)
この記事へのコメント
素晴らしいお話です。本当にありがとうございます。はぁ染みた
Posted by マサヒロ at 2019年06月12日 17:52
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count