2019年06月08日

消えたままの街灯

これは友人から聞いた話である。



彼は家族と新興住宅地の一戸建てに住んでいる。



そして、彼の住む町会というのは、かなり規律やルールが厳しい所らしく



彼も仕事が休みの日も、町会の用事で潰れてしまう事もあるのだという。



街中にゴミなど落ちてはおらず、公園も素晴らしく整備されている。



では、何故彼が休みの日でも忙しく町会の用事をさせられているのかと



いえば、それは彼に限らず健康な男性全てがそうらしいのだが、川のごみ掃除、



花壇の整備、壊れた施設の修理などに時間を取られるからだという。



その中でも特に気をつけているのが町の街灯の整備だという。



電球の球が切れて点かなくなった物を交換したり、場合によっては、新たに



簡単な街灯の設置までやらされるのだという。



それは、街の治安を維持する為であり、夜でも明るい街ならば、女性や子供でも



安心して外出出来るから、というのがその根幹にあるらしい。



そんな、彼が住む町会なのだが実は、1か所だけ明かりが切れたままになっている



場所がある。



勿論、それは町会の誰もが知っている事なのだが、それを修理しようとする者



は、誰も居ないのだという。



そして、これから書くのがその理由という事になる。



ある時からその町会で幽霊の目撃が相次いだという。



それは女の幽霊でありいつも夜になると決まった時間に、決まった場所に現れた。



そして、その場所にある街灯が一つだけ切れた状態になっており、その女の



幽霊は決まって球切れで点かなくなった街灯の下に現れた。



最初は、ほんの偶然で見てしまった幽霊も、それが噂になり、何人もの



人達が、その場所での幽霊見物をしてしまった事で、それは大きな問題



になっていった。



消えた街灯の下にぼんやりと佇む女の姿に怯え、その道を使えなくなる



者も続出した。



だから、その町会でも何度もその街灯を修理して明かりが灯るようにしたのたが、



昼間、点灯する事をしっかりと確認した筈の街灯が夜になると、また点かなく



なってしまった。



何度修繕しても、すぐにまた点かなくなる街灯。



恐怖のあまり、町会でお金を出し合って霊能者を呼び除霊してもらおうという



意見が出され、実際、それには大多数の人達が賛成した。



しかし、ごく僅かではあるが、その意見に反対する者も確かにいた。



それは、かつて、その女が幽霊になる前には、友達だったという主婦のグループ



だった。



そして、その人達が語る話を聞いて、除霊という話は一気に立ち消えになってしまった。



その話の内容とは、



数年前のクリスマス・イブの日に、この街に住む女性が車に轢かれて亡くなった。



その手にはクリスマスプレゼントがしっかりと握られていた。



イブの日に幼い娘を迎えに出て、ちょうどその街灯の下で暴走していた



車に轢かれてしまったのだという。



結局、その母親は娘の姿を見ることなく、その場で息絶えた。



そして、その女性がした間際に言った言葉というのが、



娘が一緒に犠牲にならなくて本当に良かった・・・・・。



というものだったという。



ただ、やはり母親が近所で事故死したというのは夫や娘には耐えられなかったらしく、



すぐに転勤を希望して、遠くの街へと引っ越してしまった。



そして、それからちょうど1年が過ぎたころ、その母親の幽霊が消えた街灯の



下で目撃されるようになった。



その手にはしっかりとクリスマスプレゼントを握りしめて・・・・。



だから、彼女は誰かを怯えさせたり驚かせたりしたくて、その場所に出現



するのではない。



いまだに学校から帰って来る幼い娘を待ち続けているだけなのだと、



娘にクリスマス・プレゼントを渡したいだけなのだ、と



其の人達は説明した。



それを聞いて、その場にいた全員が、思わず涙してしまったという。



そして、町会全体で説明会まで開かれ、協議した結果、その街灯を修理したり、



除霊を行うのは止めておこうという結論に達した。



幽霊になってまで、我が子の事を思い続ける気持ちに、生きている人間も、



幽霊も関係無いのだ、という事に気付いたという。



それは、死んでもなお、娘を待ち続ける母親の気持ちを町会の人達全てが理解した



上での結論だった。



そして、確かに今でもその街灯の下が怖くて通れないという人もいるらしいが、



殆どの人は、まるで何も無かったかのようにその街灯の在る道を利用している。



そして、



こんばんは・・・・。



と声をかけると、その女性は無言のままだが、確かに小さく会釈するのだという。



人間と霊との共存。



そんな夢の様な現実が、その街には存在しているらしい。



そして、最近では、どうやら遠方に引っ越しした娘さんとの連絡が付いたらしく



毎年、クリスマス・イブの夜には、その町内にやって来ては、つかの間の



母娘水入らずの幸せな時間を過ごしている。



その時の女の幽霊の顔を見た者は、皆、幽霊というものに対する考え方が



激変するらしい。



その顔は優しく朗らかに笑っており、怖いどころか、自分まで幸せな気持ちに



なれるのだそうだ。



ちなみに、その町会では、イブの夜、その母娘水入らずの時間を邪魔しては



いけないという暗黙のルールが存在しているらしいが、それでも毎年



その笑顔が見たくて、遠巻きに、その親子を見守る人たちで通りが



溢れてしまうのだそうだ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 22:54│Comments(1)
この記事へのコメント
また泣かされました。kさんが求めているものは、愛そのものなんですね。言葉も出ません。ありがとうございます。実話怪談すきなんですが、そんなもの遥かに超えたお話、ありがとうございます。泣かされてばかりで、勘弁してください
Posted by マサヒロ at 2019年06月12日 18:00
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